Seed-NANOHA_D´s入れ替わり_第3話

Last-modified: 2007-11-17 (土) 03:24:09

ここは私立聖祥大附属小学校。

ここの4-2の教室はいつもとは違う雰囲気に包まれている。

いつも授業中は静かな教室も、ところどころで小さな話し声が聞こえる。

「ねえねえ高町さん」

なのはの横にいる女の子が、その話し声の根源である少女を指差す。

「今日の八神さん、いったいどうしたんだろうね、何か知ってる?」

指差した方向には、はやてが肘を机の上に置き、手を頬にそえ、鉛筆を口にくわえている。

半分寝ているんじゃないかとも思える。

普段のはやてなら絶対にしない行為だ。

なのははその問いに、さあ、解らない、としかいえない。

(ごめんね、嘘ついちゃって)

うそが大嫌いななのはは、心の中で謝る。

だが、いえるはずがない。

いまのはやての中身が、16歳の男性なんて……

(はぁ……)

シンは、最近になって異様に増えたため息を吐く。

つまらない、最高につまらない。

何がうれしくて、こんなガギどもともう一度勉強しなくちゃいけないのだろうか。

ある一部の人にとっては天国だろうが、生憎シンはそんな趣味は持っていない。

今のシンには、周りの声なんて聞こえてはいなかった。



「八神さん、今日はどうしたの?」

1時間目の社会が終わり、休み時間になって、シンに女子が話しかけてきた。

「えっと……特に何にもないけど……どうかした?」

今シンははやてである。

関西弁が話せないシンは、せめてもと思って少しでも女の子っぽく話そうとする。

正直かなり恥ずかしい。

「何かあったら相談に乗るから、次は体育だから早く行こう」

うん、とだけいって、この場をどう切り抜けようか、とシンは悩む。

そこへ、

「はやてちゃん、ちょっと来てくれる?」

と、なのはがシンを呼ぶ。



「くっそおおぉぉぉーーー!!」

シンは、今までの鬱憤を晴らすようにロッカーを思い切り殴りつける。

その顔は赤い。

くだらない授業、無理やりはなささけえればいけない女喋り。

その他もろもろの怒りを拳にぶつける。

「あのー、シン君。とても怖いんだけど……」

いまシンは思いっきり目を吊り上げ、かなり怒っている。

いくら体がはやてでもかなり怖い。

はやてが怒ればああいう顔になるんだなあ、と思えるほどである。



わかりやすくいうと、はやて版ひぐら○の○く○にっぽい感じである。

最も、作者はあんまりこの作品を知らないが……

「それよりもどうすんのよ?このロッカー?」

アリサは、シンのパンチによってへこんだロッカーを見る。

よくもまあはやての体で出来たもんだといろんな意味で感心する。

「ほっといでも大丈夫だろ?どのみちみつかっても、俺がやったってばれはしないさ」

まずこんな華奢な分類に入る女の子が、ロッカーをへこませるほどの力を持つとは思われない。

今は心だけは男だが……

それを聞いて、全員がぽかんとする。

確かに、シンが、自分がやりましたといっても、多分逆に信じてはくれないだろう。

多分この事件は迷宮入りになる。なのはたちは思った。

シンの予想通り、永久的にこの犯人が誰なのか、解ることはなかったのであった。

「で、体力テストどうするの?」

フェイトにいわれ、うーんと移動しながら考えるシン。

「とりあえず、なのは以上フェイト未満ってところかな?」

「え!?」

そういわれて、なのははショックを受ける。

「あはは、言われたね、なのは」

フェイとも、哀れみの目でなのはを見る

「フェイトちゃんまで、ひどいよ……」

なのはの運痴っぶりははやてから聞かされている。

だからはやてのため、そして個人的はプライドのため、なのはにだけは負けるわけにはいかない。

「それにしても……」

シンは下を見る。

「このブルマっていうの、どうにかならないのか?違和感ありまくりなんだけど」

シンの言葉に、そお?と疑問を浮かべるなのはたち。

そりゃまあ彼女達ははきなれているのだろうが……

「なんつうかこう……パンツ一丁で体育する感じがしてちょっとな」

シンの言葉を聞いて顔を赤らめるなのはたち。

「バカ!」

「ぶ!」

かなりに、アリサのビンタの音が廊下に響く。



「シン、ちゃんとやってるかなあ?」

はやては自室のベッドで寝転びながら思う。

学校にはなのはたちがいるから心配はないだろう。

ふと、はやてはあることを思い出す。

シンが美由希に急所を蹴られ、病院に運ばれたことを思い出す。

(なんで女性に蹴られただけで病院に運ばれたんやろう……)

はやては股間を見てふと思った。

はやての顔が少し赤くなる。





(あかん、何考えとんねんうち)

ふと思いつき首を横にふるはやて。

だが、興味が勝ってしまった。

(ちょっとくらいなら……ええよな)

はやてはそう思いおそるおそる手を股間へ近づけ、そして

むぎゅ……

力加減がわからないので意外と本気で握った。

しばらくの静寂。やがて……

「うあああぁぁぁーーーーうああぁぁーーーー!!」

今まで体感したことのない、予想を絶する激しい痛みがはやてを襲う。

あまりの痛みにその場にうずくまるはやて。

「はやてちゃん!!いったいどうした………の?……」

シャマルは、急にはやての悲鳴が聞こえてどうしたのだと思って部屋に入る。

そこには、股間を押さえて奇声を上げながらのたうち回るはやての姿が。

「ど、どうしたのはやてちゃん!?」

シャマルは、はやてが何をしたのかぜんぜんわからなかった。

「どうしたのだ一体?」

そこへ、さっきまで寝ていたザフィーラもやってくる」

「ザ、ザフィーラ……」

はやてによばれて、なんですか?と聞くザフィーラ。

「これが男の痛みなんやな…」

………は?

シャマルとザフィーラは目をぱちくりさせてはやてを見る。

先に気付いたのはザフィーだった。

「急所を打ったのですか?」

だが、ザフィーラの答えは外れらしく、首を横に振る。

じゃあなんなのだ?

そう思ったら、はやては顔を赤くして答える。

「ちょっと……自分で握って……」

……………

しばらく訪れる静寂。

「ほら、以前にシンが美由希さんに同じところを蹴られて病院に運ばれたこと覚えとる?」

話だけなら、とザフィーラとシャマルは答える。

「ほれで、なんで蹴られただけで病院送りになったんか気になって……」

なるほど、とザフィーラは納得した。

「しばらくすれば痛みは引く。ベッドで横になったほうがいいだろう」

ザフィーラに言われてわかった、と答えてよこになるはやて。

「はやてちゃん。いまのはやてちゃんの体はシン君のものだから、ちゃんと扱わないと、かわいそうですよ」

わかった、と簡単に答えて布団にもぐるはやて。

まだダメージは続いているようだ。

その後、ザフィーラが痛みが治まるまではやてのそばにいた。

「うううぅぅぅぅ……」



「高瀬、9秒78、高田、10秒13」

今、なのはたちのクラスは体力テストの50m走をしている。

ちなみに、ここ私立聖祥大附属小学校は、体力テストを1日で済ませる珍しい学校である。



「次、高町と月村」

なのはとすずかは呼ばれて、スタート地点に立つ。

「はじめ」

合図とともに、二人は一斉に走り出す。

もちろんなのははすずかについていけず、だんだんと差を離されていく。

「月村、8秒21、高町、14秒32」

自分の結果を聞いて、なのははうなだれる。

「おつかれさん」

そんな二人をシン達3人は出迎えた。

「すずかって、意外と運動神経良かったんだな」

シンは見た目からは想像できないすずかの運動神経に驚いていた。

逆に、シンはなのはを冷ややかな目で見る。

運動神経が低いとは聞かされていたが……

「どんだけとろいんだよ。よくあれで魔術師になれたな」

シンの容赦ない言葉に、なのはのテンションはいっそう下がる。

「魔術師に運動神経はあんまり関係ないよ……多分……」

なのはのフォローをしようとしたフェイトだったが、なかなか言葉が見つからない。

「でもさ、これでも去年よりは早いわよ」

……これ以上あんまり言わないでおこう。

絶対になのはが壊れる。

「それより、あんまり無理しないでね。はやての足、まだ完全じゃないんだから」

フェイとの言葉に、わかってるよ、と簡単に言う。

「次、八神、結城」

シンは呼ばれてスタート地点に立つ。

「はじめ」

合図とともに走り出す。

そこまで本気で走っていないが、軍で叩き込まれた走り方は、はやての体になっても覚えている。

「八神、9秒54、結城、9秒99」

タイムを聞いて、そんなもんかな?とシンは思う。

足のことを考えて本気で走ってなかったが、本気で走ってもそこまでタイムは変わらないだろう。

「皆足速くていいなあ……」

なのははため息を吐きながらつぶやく。

「恭也さんや美由希さんに教えてもらえばいいでしょ?あの人たち運動神経かなりよさそうだし。多少なら教えてくれるんじゃない?」

それを聞いてうーんと悩むなのは。

やっぱりこういう仕事をするには運動神経は必要だと思う必要だと思うけど……

「なかなか時間がみつからなさそうだし……練習についていけそうにないし……」

そうよねえ…と今度はアリサがため息をつく。

その時、シンが一つの提案を思いつく。

「軍隊式の訓練だったら教えてやれるけど……どうする?」

もちろん、シンなりに優しくアレンジするつもりである。

「俺なら暇だからいつでも出来るぞ」

それを聞いてうーん、と悩む。

「じゃあ、お願いできる?」



こうして、後にシン達による、「高町なのは強化計画」が実行される。

題名は変だがあまり気にしない。



「はやてちゃん、もう大丈夫?」

シャマルは昼食の準備をしようとすると、はやてが降りてきたのだ。

「うん。だいぶ痛みも収まったし、ただ握っただけやしな」

あはは、とわらうはやて。

「それに、うちがおるのにシャマルがお昼作ったらヴィータが怒ってしまう」

その言葉にシャマルはむっとするが、そのとおりなので何も言えない。

こうして昼食作りが始まる。

「それにしても、料理のときはシンの体って本当に便利やな」

はやての体では食器棚の上のほうにある皿を取るのが難しいが、この体では簡単に取れる。

「だったら、ずっとこのままでいちゃう?」

しゃまるん言葉に、はやては少し動きをとめて……

「それは……ちょっとかんにんやな」

はやては苦笑いを浮かべた。



「やっとおわったぁ」

なのはは机にうなだれながらいう。

午前中の時間を使っての長い、なのはにとっては地獄ともいえる体力テストが終わり、昼休みになる。

魔力なら膨大な量を持つなのはだが、体力はあまりない。

小学生が昼までずっと体育をした後、昼からテスト。

少しなのはを心配する。

「なのは、大丈夫か?」

それを聞いてうーんと唸るなのは。

これは少しやばいかもしれない。

「テストがあるから、昼休みは昼飯食ったら少し寝たらどうだ?少しは違うと思うけど」

シンは周囲を見て言う。

周囲は、既に寝ている児童がちらほら見られる。

なのはもそれを見て、そうすることにした。

「さ、立ったら早くお昼にしましょ。

なのはたちは、いつもの場所で昼食を取る。

「毎度ながら、すごいわよねはやてって」

アリサははやてが作った弁当を見て思う。

「シャマルさんに手伝ってもらってるといっても、朝早くからみんなの朝食作って、お弁当も作って……」

すでに小学4年生のすることではない。

「さらに魔法のお仕事もしてるしね」

まさに母の鏡のようである。

「それに比べて……」

アリサは睨むようにシンを見る。

「何だよ?」

シンはそんなはやての手作り弁当を食べながらアリサを見る。

「なーんでも」

シンはなんだよそれ……と思いながら弁当を食べる。



「昼からテスト2時間で終わりか……暇だな……」

シンは、はやてから一応テスト範囲をみたが、既に習っているので何とかなるだろうと思った。

「ちゃんと点を取りなさいよ。はやてのためにもね」

アリサの言葉に心はため息をつく。

小学生のテストの1回ぐらいどうでもいいだろ……

ふと、フェイトは周囲を見る。

なのはがいない。

それにシンがいう。

「あいつだったら、昼飯食って寝るために教室へ戻ったぞ。かなり疲れた感じだったからな」

シンの言葉に、フェイトとすずかがああ、と頷く。

「なのはちゃん、あんまり体力ないからね」

いや、多分あんたらが必要以上体力あだけだろ?とシンは思った。

アリサがしばらく考え、よし!と叫ぶと立ち上がる。

「ちょっとなのはおちょくってこようっと」

アリサは嬉々として教室に向かう。

ちょっと、とすずかとフェイトがとめようとする。

「なのはちゃん寝てるんだから、テストのためにも」

すずかがいうと、ああ、もう…と逆切れ気味にアリサが言う。

「ちょっとぐらい大丈夫よ!それに、直前まで寝てちゃ実力を発揮できないじゃない!」

それはそうだけど、と二人は言葉が返せない。

「ま、起こすだけ起こさないとな」

今度はシンが言う。

その後、油性マジックで顔にラクガキをされたなのはが目撃された。



「もー……」

なのははトイレで自分の顔を見てため息をつく。

まだなのはの顔には油性マジックがあった。

なのはは目が覚め、まだ時間があるなあと思っていたら、起きたときに皆がすくすく笑っていて、なんだろうと思って鏡で自分を見た。

そこには見事に自分の左目の周りに見事に丸印でマークを書かれていた。

気付いた瞬間顔を真っ赤にしてトイレに駆け込んでいって今に至る。

「どうしよう、これ……」

なかなか落ちない油性マジック。

石鹸でもなかなか効果的に落ちない

そのとき、シンが何かをもってやってきた。





「なのは、これ」

そういって差し出したのは、みかんの皮。

「フェイトの昼飯に入ってたから借りてきた」

なのはは、みかんの皮を渡される。

「これをどうするの?」

知らないのか?とシンはなのはを見る。

「俺のいた世界の話だけど、テレビで油性ペンと落とすときにこれ絞って書かれたところにぬると汚れが落ちるっていってたんだよ」

シンに言われたとおりにすると、見る見るうちに消えていく。

だが、流石に全部とまでは行かず、少しあとが残っている。

「これだけ消えればそこまでひどくはないだろ?」

「ありがとう、シ…はやてちゃん」

うっかりシンといいかけるなのは。

ここはトイレだ、誰が入っているか解らない。

こうして、二人は教室に戻り、午後のテストを受ける。