Seed-NANOHA_D´s入れ替わり_第4話

Last-modified: 2007-11-17 (土) 03:24:51

「ただいまぁ」

夕暮れの時間にシンは帰ってきた。

「おかえりー」

はやてが出迎え、着替えるために二人ははやての部屋へ行く。

「全く。どこでもあんまり変わってないな、学校って言うのは」

シンは苦笑いを浮かべながら今日起こったことを話した。

もちろん昼休みに起こったなのはのラクガキ事件のことも話した。

それを聞いたはやてはくすくす笑う。

「ちょっとみてみたかったなー」

着替えも終わり、はやてもそういうと、

「実は、アリサから写メでもらってるんだ、ほら」

シンは携帯を取り出し、あの写真を見せる。

そこには油性ペンで左目に◎を書かれて、少しよだれを垂らし気持ちよさそうに眠っているなのはの姿があった。

それを見て、はやては大いに笑う。

「あはは!なにこれ!?」

どうやらつぼにはまったらしく。その目から涙が出ている。

そういえば、軍の訓練校でも同じようなことがあったっけ?

最も、その時の被害者は自分だったが……

(ほんとに、変わらないなあ、どこでも、コーディネーターでも、ナチュラルでも)

コーディネーターもこの世界に来れば、意外と受け入れてくれるかもしれない。

そう思えた普段の夕暮れ時だった。



「今日はどうにかなったけど、明日はどないしよう……」

はやてはさりげなくつぶやく。

今日は何とかなったが、これがずっと続くとなると、流石にまずい。

「1日くらいなら『ちょっと機嫌が悪い』って言えばすむけど、ずっとはちょっとなあ」

そのことばに、はやてはえ?とシンを見る。

「しょうがないだろ。普段、はやてが普段学校でどんな生活してるかわからないし、関西弁なんでしゃべれないしな」

だから、それとなく女子っぽく振舞っただけだ、とシンはいった。

「まあそれは確かにしょうがないとして、アスカ、あのときの誓いのことは覚えているな」

あの時?とはやてはシグナムを見る。

「解ってる。何もしてねえよ、多分……」

多分?とシグナムはシンを見る。

「シグナム、どういうこと?」

さっきからシグナムは何を言っているのだろうとはやては思った。

「実は、先日アスカに『主の体を使って如何わしい行為などをしたらただでは済まさない』と互いに誓いを交わしたのです」

これも主のため、黙っていてすみません、と謝罪するシグナム。

あれって誓いだったか?とシンは思ったが、もうどうでも良かった。



「それで、多分とはどういうことだ?」

シグナムは睨みつけるようにシンを見る。

怖い…正直言って怖い。

「えっと……」

どうしようか、とシンは思う。

その時……

「シン、もしかして、あれのこと?」

あれって?とシャマルははやてに聞く。

「なんか今日、アリサちゃんがなのはちゃんにいたずらしたらしくて。それと関係があるんかなあって」

何のいたずらだよ?とヴィータはきいて、なのはちゃんには内緒よ、といってはやては携帯を見せる。

だんだんヴィータの顔が緩んでいき……

「あーっはははは!何だよこれ!ぎゃはははは」

ヴィータももろにクリーンヒットし、笑い転げまわる。

「ほなけん、なのはちゃんにいわんとずっとだまっとったってことやろ?」

はやてにいわれて、ああ、まあ……と歯切れが悪く言うシン。

そういうことか、とシグナムも納得してくれた。

「あ、そういえば、そろそろ夕飯の時間やな、シャマル、準備しよか」

はい、と二人は席を立ち、夕食に準備に取り掛かった。



「なのは、その顔どうしたの?」

家に帰って、両親はまだ働いているので、家でゆっくりしていた。

やがて、姉美由希が帰ってきてきた。

そこで、美由希がなのはの微妙に残っている黒い跡を見つける。

「えっと……」

なのはは昼休みのことを姉に話した。

それを聞いて、美由希はくすくすと笑う。

「お姉ちゃんまで笑わなくても……」

姉の笑う姿を見てむくれるなのは。

ごめんごめん、と謝るが、その顔はまだ笑っていた。

「だったら、早くそのペン跡落としたら?」

そうなんだけど……と困った顔をするなのは。

「どうやっても落ちないの……」

はぁ、とため息をつくなのは。

そこで、美由紀はある提案をする。

「だったら、早めにお風呂入ったら?準備ならしてあげるから」

そういって、風呂の準備をする美由希。

どうやら自分も入るようである。

なのははそんな中、明日はすこしアリサをシカトしようかと思った。

(ちょっとくらいならいいよね?)

そう思いながら。





「「いただきます」」

はやて家では、少し早い夕食の時間になる。

「ご飯作るときって、やっぱり背が大きいと便利やなあ」

はやては食事をしながら呟く。

これまで、椅子とか何か補助器具を使わないと料理がしづらい今の子供の姿とは違い、真の体はそんなのがなくても、皿まで自分で準備できる。

「はやても数年したらおおきくなるよ」

シンがそういい、そお?とはやてはため息をつく。

「はやての体も今は成長期だし。そろそろ身長も伸びる頃だとおもうぞ」

シンの言葉に、じゃあ楽しみにしとこう、と少し喜ぶような顔をする。

……しつこいようだが、今はやての体はシンである。

本来自分がしない表情をしているので、シンは相変わらず違和感を感じる。

「にしても、逆にこの体は不便だな、いろいろと……」

なんとなく、見た目は子供、頭脳は大人、なバーロー名探偵の当初の気持ちがわかる気がした。

その後いろいろ話をして、風呂が出来るまで各自思い思いの時間を過ごす。

(風呂が沸くまで、自分の部屋でもいるか)

それにしても……

(またあいつらと一緒に入らなきゃいけないのか?)

そう思い階段を上っている最中だった。

「っつ!」

いきなりだった。

急に足が痺れだしたのだ。

闇の書の呪いは確かに完全には治っていないと聞いている。

「にしても今時かよ」

シンはいきなりの痛みでバランスを崩す。

このパターン、どこかで……

案の定、下にははやてもいた。

しかも本人は気付いていない。

勿論……

ゴツ!……ドサ……

「うわ!」

はやてのそばにいたヴィータが驚く。

いきなりシンが振ってきたのだ。

「おい!はやて!!シン!!しっかりしろ!!おい!!」

シグナムがどうした?と廊下を見る。

そこには、先日の朝のような光景が繰り広げられていた。



「っん……」

はやては頭を押さえて目が覚める。

(えっと……うちは確か……)

はやては思い出す。

確かヴィータと話をしていて、階段を上ろうとしたときに……

そこから一向に思い出せない。





「目が覚めましたか、主……」

横にはシグナムがいた。

そのシグナムの顔は何かおかしいものを見るように笑っていた。

そう思い自分を見る。

(あれ、この手って)

自分の手を見ると、さっきまでシンの体だった。

けど今は……

「うち…元にもどっとる……」

そう思っていると……

「少し前に、アスカが目を覚ましました」

シンが自分の体に戻ったということではやてをシグナムたちに任せ、先に風呂に入った。

時間が込んでるらしい。

シグナムからどうなっているのかを聞いた。

「アスカが階段を上っているときに、魔道書の呪いで足が痺れだして足を滑らせたらしいのです」

なるほど、それでシンが落ちてきた、ということになるのか」

「今回ばかりは足に助けられたね」

はやては笑いながらいう。

「直って良かったなはやて!」

ヴィータは喜びながらはやてにとびつく。

「ヴィータ……」

はやてもほっとする。

これでいろんな心配をしなくてすむ。そう思って。

「ほな、シンが出たら一緒にお風呂入ろうか」

はやての言葉にうん!と喜ぶはやて。

シグナムは、そんな二人を優しく見ているのだった。



「あの……なのは?」

「…………」

学校のバス内で、奇妙な空気が流れている。

「昨日はごめん………」

アリサはさっきから昨日のことを謝っているのだが…

「………」

なのははずっと黙り込んだままだった。

そんな二人をはやてたち3人は笑ってみていた。

「それにしても、良かったね、元の体に戻れて」

フェイトの言葉に、うん、と頷くはやて。

シンはあんな子といってたけど……

(やっぱりええなあ、学校って……)

そう思うはやてだった。

「だからごめんってば!!」

「………」



ここは時空管理局ですら見つけられない、おそらくどの組織も見つけられない空間。

なのは達の世界では「あの世」とか「天国」とも言われているのかもしれない場所。

そこに、一人の女性がいた。

かつて、「夜天の魔道書」「闇の書」などと呼ばれ、数々のし星を破壊した呪文書。

だが、今でははやてのおかげで暴走を停止し、リィンフォースという新たな名前をもらった。

『良かったですね、わが主』

リィンフォースはつぶやく。

それにしても……

『まさか、他人の心が入れ替わるとは……』

魔術所でもわからないものでもあるんだなと思った。

はやては、今までのマスターの中で最も若い。

これからも何が起こるかわからない。

『もう少しだけ見守らせていただきます。これもわが主のため』

年長者として、主として。

そして、自分を救ってくれ、リィンフォースと名前をつけてくれた恩人として……



「ん?」

何かを感じた気がして、はやては立ち止まる。

そしてふとおもう。

(もしかしたら、リィンが助けてくれたんかな?)

はやては、もう二度と会えないあの魔道書を思い出す。

うん、そういうことにしておこう。何ごとも前向きがたいせつや!

そう思いながら上を向く。

ただ……

(出来れば、もうちょっと優しくしてほしかったかな?)

そう思い、はやては苦笑しながら後頭部にあるたんこぶをさすりながら上を向く。

昨日の夜、シンとぶつかったときに出来たものだ。

けど、これでもとの体に戻ったのだから安いといえば安いのかもしれない。

「はやてちゃん、どうしたの?」

はやての言葉に、なんでもないよ、と返事をする。

「そういえば、昨日シン君がね……」

こうして、いつもどおりの1日は過ぎていく。



「今回俺の出番少なかったな………」

自重してくださいシン