第5話 「限界離脱領域」
俺たちは先回の違約金を払うために苦心惨憺していた。
そこで、痔俺会議が開かれた。
「いいか、何とか払うためのグゥレイトアイデアを考えるんだ。」
「じゃ、はい。次回以降のミッション報酬から分割で払うってのは?」
「ダメだ。先回の報酬の10倍以上の請求なんだぜ?とても払いきれない。」
「おいっす。MSを売っちゃうとかどうよ?」
「そんなのダメに決まってるじゃん。次!」
「えーと、そのー、要は請求を出しているところがなくなればいいんですよね?で・・(以下略)」
「お前、顔に似合わず恐ろしいこと考えるなぁ・・・ダメ!絶対ダメ!」
「ウス!金がなかったら働けってばっちゃが言ってたッス!」
「ここがいくら繁盛店だって言ってもなぁ。とても追っつかないぜ?」
こんな感じでしばらくは意見が出されたが、やはり決定的なアイデアは出なかった。
「やっぱ最初の分割案かな・・・イザークはどうしてるんだろう?
アイツは違約金だけじゃなくてスピード違反の反則金に加え、ミッション中のバイク放置の駐車違反まで請求されていたっけな。」
「あ・・はい。ちょっといいアイデアかどうか分かりませんが、いい話がありました。」
おずおずと普段あまり目立たない”俺女”が提案してきた。
「あの、軌道エレベーターってありますよね?あの中にテナントを出店しないかってお話が昨日あったんです。
それで、お話を伺ったんですが、なかなか好条件なのでいいんじゃないかなーって。」
「グゥレイトゥ!それだぜ!」
条件としては、はじめの出店料・設備投資は向こうの一時負担。そして毎月の売り上げの中から支払っていくというものだった。
これなら初期投資が抑えられる!
早速俺たちはテナント出店のための用意をした。
だが、俺は次回のミッションの打ち合わせのためにやむを得なく手続き等を”俺”達に任せるしかなかった。
だが、行政書士”俺”もいるし、炒飯コック”俺”もいるから心配はしていなかった。
そう、あの事件が起こるまでは・・・
その日、俺はミッションの打ち合わせ。”俺”の何人かは軌道エレベーターのテナントの下見に行っていた。
俺がミッションの打ち合わせから店に帰ってきた時、TVで緊急速報が流れた。
「軌道エレベーターで事故が発生し、居住ブロックが宇宙に離脱。地球の重力圏に引き込まれています!」
俺は自分の目を疑った。それはまさに俺たちが出店しようとしたブロックだった。
おそらく下見に行った”俺”達も巻き込まれているに違いがなかった。
俺たちに出来ることは祈ることだけだった。
今からMSを動かしたとしても、絶対に間に合わない事は分かっている。
俺は急いでナスに割り箸を4本突き刺した。
「ディアッカ?それはなんのまねだよ??」
「前にイザークに聞いたことがある。昔、早く帰ってきて欲しいときにこうやってナスに足を付けて飾る風習があったんだと。」
「・・・それ、たぶん違うから。」
「え゛?」
「それさあ、お盆の時に死者を迎える時の風習だぜ?」
「げえっ!」
「そんなことよりさあ、無事を祈るときは頭から冷水をかぶるって習慣があってさ。ちょっとやってみない?」
「・・・否グゥレイト。遠慮しておくぜ。」
そんなこんなで店内は大混乱だった。
通りに向かって塩を撒くもの、炒飯に箸を立てて祈りを捧げるもの、
ギターをかき鳴らし奇声を上げるもの、様々だった。
しばらくして速報がまた流れた。
全員無事救助されたとの事だ。
しかし後日、この一件のためテナント出店の話は流れてしまったことは言うまでもない。
アーイーヲー シラーズー ユーレルーユリーカゴー
とほほほ・・また貧乏だぜ