第6話 「セブン・チャーハン」
俺たちに新しく与えられたミッションは、ソレスタルビーイングとの共同作戦だ。
モラリアでAEUとPMCトラストの合同軍事演習が行われるため、それに「介入」する。
で、俺たちはソレスタルビーイングが仕掛けたときに、洋上に展開する空母からの援軍を合流させないというハイレベルなミッションだ。
まさに俺たちスペシャリストにふさわしいミッションだ。
「・・・気に入らんな」
「イザーク?何が気に入らないって言うんだ?」
「バルトフェルドの事だ。最初に会ったっきり顔を見せないではないか!」
「まあ、あちらさんにはいろいろとあるんじゃないの?
それよりさあ、今回のお相手さんの機体、素早いらしいぜ?」
「イナクトってヤツが最新型だが、数は少ない。大半はヘリオンってヤツだな」
「何だ、知ってんじゃんか。」
俺たちがブリーフィングルームでそんな雑談をしているうちに、レセップスは目的地に着いたようだ。
「お二人とも、準備はよろしいですか?ひとまず開始時間まで待機となります。
作戦開始とともに出撃して下さい。今回のミッションではグウルを使用します。
レセップスには護衛能力がないので、出撃後に安全圏まで後退します。
支援攻撃は出来ませんので、そのつもりでお願いします。
敵空母の位置、また作戦プランは戦闘回線から指示します。」
「・・フン。要するに敵を上陸させなければいいのだろう?」
「いえ、場合によってはモラリア側から空母の救援部隊が来る可能性もあります。
その場合、挟み撃ちにされる危険だけは覚えておいてください。」
「やれやれ。二人だけでやらなきゃいけない仕事の割には大変だぜ。」
「文句があるなら帰れ!臆病風に吹かれたヤツの助けなど要らん!」
「それだけ大変なミッションって事だよ。」
予定の作戦開始時間になった時、モラリアの方から砲火が立ち上った。
いよいよ奴らが仕掛けたらしい。
俺たちも出撃しなきゃな。
「それでは、お二人とも出撃してください。
・・・幸運を祈ります。」
「やれやれ。幸運より増援が欲しいところだけどな。」
「ディアッカ!無駄口をきいてる暇はないぞ!
イザーク・ジュール!出撃する!!」
・・・実は俺、飛行機相手は苦手なんだよな。
オッサンに撃墜されたし。
ま、戦場に出ればそうも言ってられないか。
俺は気を取り直して出撃した。
「左前方方向海上に小型空母が3隻展開しています。
それぞれ艦載機としてMSが15機程度搭載されているものと思われます。」
ダコスタから指示が飛ぶ。
「相手が気づかないうちに先制攻撃を仕掛けるぞ!ついてこいディアッカ!!」
イザークが上空からビームライフルで空母を撃つ。
ビームの槍が空母を貫き、煙を上げ、緩やかに沈み始める船体。
気の毒だとは思いつつも、俺は連結砲を遠距離狙撃ライフルに組み立てる。
なるべく戦死者を出さないように願いつつ、機関部周辺をねらい打つ。
さらに連結砲を組み替え、今度は対装甲散弾でカタパルト周辺を破壊する。
俺たちは破壊の使者の化身のように、相手に反撃を許さずにたちまち空母を沈めた。
「ここまでは上出来だ。だが、奴らのSOS信号を受けて反撃が来るぞ!
ダコスタ!次の空母の位置はどこだ!?」
「は、はい。現在地より12時の方向に大型空母が2隻展開しています。
艦載MSはそれぞれ50機程度。」
「ヒュ~。メインディッシュはずいぶんと豪華だぜ。」
「あ・・・敵編隊来ます。12時方向から距離200。数40!」
「こっちのレーダーでも確認した。・・・思っていたよりも早いな。
気を引き締めろよ、ディアッカ!」
まもなく敵編隊が俺たちを撃墜するために現れた。
イザークはミサイルを全弾発射する。何機かには命中したが、かわされてしまう。
しかし、かわしたところをすかさずビームライフルで狙い撃つ。
炎上し、墜落する敵機。
さらに残った相手に対し、一気に間合いを詰めるとビームサーベルで切って落とす。
相変わらず切り込み戦は見事な腕前だぜ。
俺はあえて連結砲を使わず、両脇の砲を駆使し、牽制攻撃を織り交ぜ1機ずつ打ち落とす。
撃ち漏らした敵はミサイルでしとめる。
敵の数が多いときには連結砲はスキが大きすぎるので使わない。
俺も一応これで、いろいろと考えているんだぜ?
(・・・まあ、いろいろとあったしな)
しかしこいつら、前回相手をした人革連と比べると、
機体が素早いことは素早いのだが、連携が今ひとつうまくいっていない。
各国から集められた寄せ集め集団といった雰囲気だ。
まあ、俺たちはそこにつけ込ませてもらいましょう。
俺たちは敵編隊を片付けると、指示のあった敵大型空母に攻撃を仕掛ける。
護衛として残っていた敵MSが次々と迎撃に来る。
「ディアッカ!MSは引き受ける。お前は船を落とせ!」
「そうは言ってもこれだけ数が多いと半端じゃないぜ!」
「この腰抜けがぁ!」
「・・・へいへい。やりますよっと。」
イザークは次々と武装を駆使して敵MSを打ち落とす。
その開いたスペースにバスターをねじ込み、敵空母を狙い撃つ。
俺は機関部をねらって連結砲を組み替え、遠距離射撃ライフルで攻撃する。
被弾、炎上はしたものの、これだけ大きいと有効な打撃が与えられたのか分かりづらい。
こういう場合、ブリッジをねらうのがセオリーなんだけどな、
だけど、さすがにそれやっちゃったら、ある意味俺たちの敗北だろそれは。
俺は迎撃してくる敵を減らすために、さらにカタパルト周辺を攻撃する。
攻撃を浴びせること数度、ようやく1隻を沈黙させることが出来た。
次にもう1隻落とさなきゃなんないんだが、さすがに敵機が多くて近づくこともままならない。
「イザーク、これじゃ近づけないぜ?」
「分かっている!今やっているところだろうが!!」
次々に押し寄せる無数の敵機、激しい対空砲火。バスターは近づくこともままならない。
そこで俺はある妙案を思いついた。
俺は海面ぎりぎりまで降下する。
ここには対空砲火は届かないし、迎撃機の目を一時くらませることが出来る。
土手っ腹に一撃食らわせてやるぜ!
見事俺の攻撃は船体を貫通し、浸水した船体は傾き始めた。
その時、イザークが叫んだ。
「ディアッカ!キャワセェ!!」
俺には何のことか分からなかった。
しかしその時、上空から敵の爆弾が俺の近くに落ちてきた。
それがバスターに当たったところでどうということはなかったが、
海上に落ちたものが炸裂したときに、いくつもの水柱をあげた。
俺はその水柱に突き上げられて大きくバランスを崩し、
グウルから振り落とされ海中に真っ逆さまに落ちた。
あとはよく覚えていない。
・・・それからしばらくして・・・
作戦終了後、バスターが海面に顔を出したところをイザークに拾ってもらって
無事帰投することが出来た。
イザークにはあきれられるやら怒鳴られるやら
ダコスタには吹き出されるわでさんざんだった。
今回の活躍は「俺」達には内緒にしておこう。