Star Trek Voyager in CCA

Last-modified: 2013-12-25 (水) 17:01:08

 それは、私が考えていた結末とは全く異なるものだった。
 旅の終わりは新たなる人生の始まり……そんな結末が物語のセオリーではあるが、
まさかこの様な終わりを誰が予想出来ただろうか。

「……ミスタートゥヴォック、後方スフィアへ向けてトランスフェイズ魚雷発射」
「トランスフェイズ魚雷、発射」

 後部魚雷発射管よりトランスフェイズ魚雷が射出される。
 トランスワープハブを逃げ切った我々の後方から迫ったスフィアは,
ハブの爆発に巻き込まれ大破しつつも執念の如く我々を追い迫る。
しかし、これまでの私達と違うのは、もはや彼らは敵ではないということだ。

「トランスフェイズ魚雷、命中。ボーグスフィアは爆発しました」
「ふぅ。警戒を解かないで、キム少尉、周辺宙域の長距離スキャンを。ここは何処なの?」

 当面の問題であるボーグはこれで沈黙しただろう。しかし、彼らがアレで終わるとは思えない。
”私達”が放った策も彼らにとっての規模の縮小は意味しても消滅には至らないのだ。
 ボーグは増殖する。それが誰の願いによって作られたものなのかは不明だが、
彼らのシステムはそのように作られて来た。たぶん、それが本来の彼らのシンプルな願いなのだ。
 現在の凶悪さは取り込まれた生命体の意識を吸収する中で醸成された、
複合的な思念とでも呼ぶべきものであろうか。肉付けはされていても、
彼らの願いは至極単純なものなのだろうと推測する。

「艦長、宙域はα宇宙域です。ただ……」
「ただ?」
「……故障でしょうか、惑星間の亜空間通信が一つもキャッチ出来ませんでした」
「……どういうことかしら。セブン、あなたの方で分かる?」
「やってみよう」

 彼女は手近なコンソールからボーグプロトコルでスキャンを命令する。
それらの命令は天体測定ラボを通じてディフレクターから広域スキャンが発せられる。

「ん、これは!?艦長、小型のボーグ船の反応を感知」
「何処からなの!?」
「今スクリーンにラボの分析映像を出す。スクリーン・オン……これだ」

 その映像には宙域に太陽系が表示され、
そちらへ向けて小型のシャトルサイズの船体が進んでいるのが見える。
距離にして数光年程度。こちらがワープで追えばまだ間に合う。
でも、地球へ到達するぎりぎりだろうか。

「ミスターパリス、コースセット。故郷へ!フルスピードよ!」
「はい、艦長、コースセット、地球。ワープ9!」

 ヴォイジャーはワープ航行に入る。
 ボーグ艦を追ってヴォイジャーは故郷への残り僅かな距離を足早に迫った。

「地球が保たん時が来ているのだ」
「それはエゴだ」
「ならば、地球の重力に引かれた連中を今すぐニュータイプにでも変えてみせろ」

 第二次ネオジオン戦争で揺れる地球圏は、
小惑星アクシズを地球に落とそうとするネオジオンに対し、
必死に降下阻止に取り組むロンドベル部隊が交戦していた。
 そして、敵の大将であり、長年の戦争の立役者の一人であるシャア・アズナブルと、
地球連邦軍の英雄でありシャアのライバルとも呼べる
アムロ・レイが戦うという歴史的な一戦でもあった。

『……見つけた。ジェインウェイ、この借りはこの程度で済まされるものではないが、
お前の故郷の消滅でバーターとしてやろう。……今の私は寛大だ。
この程度で許されることを幸運に思うが良い』

 小型のキューブ型シャトルがこの交戦中の宙域のど真ん中に現れた。
突然の登場に双方がこの船の存在に躊躇ったが、ネオジオン型が攻撃を開始したのを見て、
連邦はそれを阻止する様に交戦を開始。
 だが、シャトルはこの彼らの意図とはお構いなく独自の行動を始めた。

『うるさいハエが沢山いる様だ。……少し黙って貰おうか』

 キューブから無差別にビームが一閃する。
 周囲を円を描く様に放たれたビームは射線上の全ての機体を一瞬にして破壊した。
 それはこれまで両軍が使用して来たあらゆる兵器の常識的破壊力を逸していた。

『シャア、アレはなんだ!?』
「知るか!あんな物を用意した覚えは無い。大方連邦の新兵器だろう」
『そんな筈は有るか!大量に味方が破壊されたんだぞ。連邦にそんな余裕は無い!」
「よく言う。ソーラーシステムの事を忘れたとは言わせまい」
『だとしたら、それはソーラレイを撃ったジオンにも言えるだろう!』
「……おかしいな。アムロ、本当に知らないのだな?」
『あぁ』
「ならばアレは何だ。ネオジオンの総帥である俺が知らないのだ。
知っているならこんな質問はしない」
『……』

 二人は戦うのを止め、新たに現れた小型の真四角の物体を注視した。
 物体はアクシズにゆっくりと向かって来ていた。
そして、なにやら緑色の光線をアクシズに照射し始めた。

『ほぉ、地球人は自分の星を自ら滅ぼそうというのか。これは面白い。
私が加担するは本望と見える。フフフ、ならば逝くが良い』

 トラクタービームを半重力ビームとして照射しアクシズの降下を後押しする。
 アクシズはそれまでゆっくりと降下を始めていたものが急速に動き始めた。

『何だと!?』
「ほぉ、これは傑作だ。あのキューブは我々に味方をしたいらしいな。止めるのか」
『勿論だ。お前達の好きな様にはさせない!』

 その時、一筋の緋色の光線がキューブへと命中する。
 衆目がその発射もとへと集まった。
 そこに現れたのは巨大な白いイカの形をした船だった。誰がどう見てもイカだった。

 

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