W-Seed_Desteniy-Walts◆JESTW0zUfg_第02話

Last-modified: 2007-11-11 (日) 13:00:53

一方その頃、ユニウス・セブンでの破砕作業は遅れていた。何故ならば破砕活動を妨害する謎の部隊の出現と、破砕活動に参加する予定のミネルバ隊が来ていないせいであった。
 ミネルバ隊が来ていない理由。それは前方に出現した三機のMSがミネルバの進行を妨げていたからである。
 黒い機体――モビル・ドールビルゴ――はありとあらゆる攻撃をはじき返す装甲を持ち、ビーム攻撃さえも機体の周囲に浮遊するぱっと見機雷の――プラネイトディフェンサー――バリア発生装置があるからだ。
 艦砲射撃さえも無効化してしまうこれに対し、タンホイザーで対応しようと考えたミネルバだが、そのすばしっこさになかなか照準が定められない。
「ちっくしょう! イキナリ攻撃してきて、そんな攻撃方法で、あんた達は何がしたいんだ!」
 だが、シンの言葉は無人のビルゴに届くことは無かった。
 だが、恐らくビルゴを見知っている者ならば、誰もが思うだろう。動きが妙なのだ。まるで、何かを忘れたかのような、ボロボロな動きだった。しかしそれでも、シン達赤服を圧倒する戦闘力を誇っていた。
『ちょっと、シン! もっと息合わせていかないと、倒せないわよ!』
『そうだぞ、少なくともこいつらを倒すには分が重過ぎる。一機一機慎重にいかねば――』
「分かってるよ! でも、そしたら他の機体に……ッ! 危ない、レイッ!!」
 ビルゴのビームキャノンがレイの乗るブレイズザクファントムを捉える。だがシンの言葉を聞いたレイはとっさに機体を退かせて、右腕を飲み込まれるに留める。
「ッ、助かった、シン」
 ミネルバの援護があるおかげでビルゴを抑えることは出来ているが、決定打は与えられない。それどころか、その圧倒的な火力で流れを断ち切っている。
「仕方が無いけれど、多少無理がある状況下でタンホイザーを起動させ――」
 その時、格納庫から緊急通信が入った。
『艦長! オーブの護衛が勝手にザクに!』
「ええっ!?」
 オーブ代表とタリア・グラディスの声が重なる。
 その時、今まで黙って戦況を見ていたギルバート・デュランダルが口を開いた。
「私が議長権限で特例として許可した。彼を行かせてはくれないだろうか? タリア」
 グラディス艦長とは言わずに、愛称でそう言ったデュランダル。
「ギル……しかし……いえ、何でもありません。彼を行かせてやって頂戴」
『はっ、はい!』

『ザクウォーリア、発進どうぞ!』
「アレックス――いや、アスラン・ザラ、ザク、出るっ!」
 今何もしないでただのうのうと戦況を見守ることなんて――出来ない!
 そう強く決心したミネルバから発進したアスランは、ビーム突撃銃を構えてビルゴに乱射した。
「俺が時間を稼ぐ! その間にミネルバは照準を!」
『感謝する!』
 ビルゴはプラネイトディフェンサーを展開してこれを防ぐ、が後方からシンの乗るインパルスがビームライフルを放ち隙を作らせる。
 そこに立て続けにナイトハルトが襲い掛かり、アスランはビームトマホークで相手の隙を突くと、そのまま肩でタックルした。
 その一方でルナマリアはオルトロス高エネルギー長射程ビーム砲をあまり動きが俊敏ではないビルゴに目掛けて放っていた。
 射撃の腕はよくないルナマリアだが、ビルゴはこちらがビーム攻撃を仕掛けたと判断するとすぐにあのバリアを展開してくれるので足止めが出来る、と踏んだのだろう。
 レイは左腕で上手くバランスを取りつつも、ファイヤビー誘導ミサイルを放って相手の足止めに専念していた。
 しかし、既に弾の消費が激しかった為すぐに弾が切れ、右手でビーム突撃銃を放つもビルゴはプラネイト・ディフェンサーを展開し迫ってくる。
 現在の分が切れたら例えカートリッジがあろうとしても弾倉を切り替えることは叶わない。
『レイはさがれ! このままじゃ落とされる!』
「すまない、シン!」
 レイが下がるということでビルゴが自由になり、次の獲物を求めて動き出す。
 ビルゴがアスランに狙いを定めたのかアスランの下へ急接近する。
 だが、ビルゴはそのままアスランを通り過ぎ――轟音と共にタンホイザーが発射され、アスランの攻撃でバランスを崩したビルゴを飲み込んでいく。
 後には、ビルゴの残骸だけ――かと思われた次の瞬間、皆の期待は絶望と共に裏切られることになる。
 ビルゴは健在していた。
 もう一機の飛び込んできたビルゴがプラネイトディフェンサーを展開したのだ。
 そしてそのままミネルバのブリッジに向けてビームキャノンを構え――たところでアスランがそのビルゴ目掛けて飛び蹴りを放とうとする。
 しかし、後方から放たれたビームキャノンを食らって右腕を失い、体制を崩したアスランはそこまで届かず、ビルゴがブリッジ目掛けてビームキャノンを放とうとチャージし――止まった。
 止まったのだ。一切の動作も。
 否、数瞬して、真っ二つに。少ししてアスランのザクの後方にいたビルゴも、胴体が二つに分かれた。
 思わず攻撃の手を休めたルナマリアにこれ好機と迫るビルゴ。接近しビームキャノンを構えて、だがしかし、それもいつの間にかに――真っ二つに。
 数秒して”それ”が姿を現した。
 両手には前大戦でフォビドゥンがもっていた鎌に酷似している――しかし、二つのビーム刃を展開する鎌を持ち、黒いマントを羽織る――Gがいた。死神のような、Gが。

「ええい! ミネルバ隊は何をしている! 何時になったら……ッ!」
『確かに、この数は、洒落になんないでダローが、よっ』
 ところ変わってユニウス・セブンではイザーク・ジュエルとディアッカ・エルスマンの二人がメテオブレイカーを守っていた。
 ジンハイマニューバ2型八機をゲイツR一機、スラッシュザクファントム一機とガナーザクウォーリア一機で相手していたのだ。
 既に仲間の多くが撤退、もしくは撃破されていた。分散してはいるが、この分では他の仲間も危うい。
 そんな時、やっとメテオブレイカーの一つが作動した。立て続けに仲間のメテオブレイカーも作動する。
 三人で残りの数を四機に減らしたところで――残りの四機が撤退していく。代わりに三機。いかにも腕が良いといわんばかりの気迫だった。
「ふん! 受けて立とう! シホの方の部隊もも、少し心配ではあるがなっ!」
『いざ参る!』
 スラッシュザクファントムとジンハイマニューバ2型が激突するのを合図に、両陣営の機体が激突しあう。
 イザークの方は圧していたが、ゲイツRの方はやや圧され気味。ディアッカはガナーウィザードなので、格闘戦は苦手としているせいか、やや圧され、しかし腕のせいもあり互角、といったところだろう。
『つ、強い! しかし、とぉぅりゃぁぁああっ!!』
「来いッ!」
 ジンハイマニューバ2型が斬機刀をまっすぐこちらに向けて突進してくる。イザークはすんでのところでそれを回避すると、ビームアックスを振り下ろした。
 それは見事なまでに相手の機体の腰を両断していた。すぐさま機体を離れさせる。数瞬置いてからジンハイマニューバ2型が爆破した。
 ゲイツRは両腕を切り落とされていたが、どうやら勝ったようだ。ディアッカの方はというと。
 なんとオルトロスを相手に叩き付けて、そのまま蹴り飛ばしたらしい。砲身があらぬ方向に曲がっていたが、相手の機体はコックピットへの衝撃が激しかったらしくそのまま浮遊していた。
「よし、俺たちはこのまま破砕活動に……チッ、もうじき時間か!どうやらシホの部隊もメテオブレイカーの作動に成功したようだな。他にも未確認だがいくつか成功したらしいし……残念だが、撤退する!」
『へぇ? もう少し食い下がると思ったんだけど――』
「俺だって引き際ぐらいは分かる!」
『冗談だよ。そうむきになんな』
 そう言いつつも、内心は後悔の念に満ち溢れていた。それを一蹴して、撤退体制に入る。そこで彼は見た。

 ――翼の生えた”G”を――

「八機目撃破。まさかこうも妨害してくるとはな……」
 肉眼で確認されたのが失敗だった。こちらの性能を見るや否や、十数機で取り囲んだのだ。
 そこまで強くは無い。もといた世界ではこの者達よりも強いものがわんさかといた。しかし、この者達には――気迫があった。
『我らが同志の眠るこの墓標、落とさねば世界は変わらぬ! それをなぜこうもっ!』
 ……落としてどうなる? 
『軟弱なクラインの後継者共に騙され、ザフトは変わった! 何故気付かぬッ!』
 ……関係ない。俺は俺だ。
『我等コーディネーターにとって、パトリック・ザラの執った道こそが唯一正しきものと!』
 ……知ったことではない。
 隊長機の気迫を感じつつも、十四機目を撃破。
 残り三機。
『応えよッ!』
 ややあって、ヒイロがその声に応えた。
「お前達は、そうやって血のバレンタイン以上の悲劇を繰り返そうとしている」
『こっ、子供ッ!?だが、しかし何をっ!』
「恨むなら勝手にしろ。だが、地球は関係ない。変えたければそれは連合に対して行え。地球ではなく!」
『ッ! しかし、現にナチュラルが――』
「お前達は自分達と同じものを増やそうとしているだけだ。悪意がないものでも、身内を災害で失くせば、コーディネーターのせいだと知れば、叫びたくもなる。銃を取りたくもなる」
『……だがっ!今更!』
 十六機目撃破。隊長機の気迫を感じながら、ビームサーベルを構える。
「……そうか、そういうことか。なら、俺はお前を殺さない」
『何ッ!?』
「お前は死に急いでいるだけだ。ただ単に同志達の下へ逝きたいと」
『……』
「だから、俺はお前を殺さない」
『待てッ! 確かにお前の言う通りかもしれない。ならば、せめて最後に戦ってくれ!』
「……一度だけ聞く。お前は勝つために、生きる為にそう言ったのか?」
『ああっ!』
「ならばその言葉……しかと聞き届けた」
 ヒイロと隊長機は互いに距離をとって、互いの得物を構えた。
 大気圏突入コースにに入りつつある状況下で、ヒイロはらしくない、と思った。
 刹那、両者の機体が弾き飛ぶ。両者の機体が入れ替わる。ヒイロの機体は無傷。しかし、隊長機の機体は――頭部がなかった。破壊されていた。
 隊長機は入れ替わりざまに、斬機刀を放った。相手のコックピットめがけて。しかしヒイロはそれを受け流し、ビームサーベルを頭部に突き刺した。
『見事ッ……情けは要らぬ。断ち切れ! 我の屍を乗り越えてゆけ!』
 ヒイロは、躊躇いが血に尋ねた。初めてだった。このような後味の悪さは。
「お前の……名は?」
『サトーだ……そなたは?』
「ヒイロ……ヒイロ・ユイだ」
『ヒイロ・ユイか……悔いは無い。やってくれ』
「……ああ」
 ヒイロは機体を動かして、隊長機……サトーの乗る機体に近付く。
 そして、躊躇わず一閃。
 最後のジンハイマニューバ2型は真っ二つになり、やがて爆散した。
 機体を翻して、ユニウス・セブンの最先端部を目指して機体を全速力で進ませる。
 ヒイロは気づいてはいなかったが、機体のダメージは蓄積されつつあった。向こうの世界での最後の戦いから今日まで、まともに整備をしたことが無かったからだ。だからこそ、簡単なチェックで済ませていたのが、仇になった。

最先端部まで辿り着くと、既に機体は高温にさらされていた。
 しかしその先――ユニウス・セブンの最先端部からやや離れた位置に体制を維持させれる。ツインバスター・ライフルを構えさせて、チャージさせる。
 狙いを定めようとするが、全く定まらない。おかしい。ヒイロは咄嗟にそう思った。
 それどころか、体制を維持させることも出来ない。肩部が火を吹き、腕部はがたがたと震えていた。
 そんな状況で、時間が残り少ないのを悟ったヒイロは無理な体勢からツイン・バスターライフルを発射。左腕は吹き飛び翼は装甲が剥げ、そのまま地球に――
 ユニウス・セブンは半分以上が光に飲み込まれたものの消滅はせず、そのまま共に地球へ――

 一足早く翼の生えたG――ウイングガンダムゼロはオーブ近海へ。ユニウス・セブンは分断された僅かな残骸を伴って地球中に――
 招かれざる来訪者とユニウス・セブンは地球へと降下していった――

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