かつて戦争があった。
それは母なる地球を滅ぼす愚かな戦争だった。
荒野となった大地に、生きるために戦う少年がいた。
少年は少女と出会い、そして仲間達と共に世界の『真実』を見届けた。
生き残った先で彼らは誰と出会い、どの様な道を歩むのだろうか………
「ん…あれ? ここは?」
ガロードは周りの喧騒の中でふっと目を覚ました。
そこはどこにでもある公園のベンチ、ガロードはそこで誰かに寄りかかって眠っていた。
否、ガロードが寄りかかっている相手も自分に寄りかかっているので、その表現は適切ではないだろう。
「…ティファ?」
「ん…」
ガロードが取り合えず左右を見ている横でティファにガロードに寄りかかり安心した寝顔をガロードに見せていた。
ティファの寝顔を見て顔を赤くしたガロードはため息を付いて空を見て…そして驚愕した。
「な!? ここって…? クラウド9?」
「…ガロード?」
ガロードが驚愕する横でティファはガロードの声で起きた。
「あ、ティファごめん。 けど俺達コロニーの中にいる…」
「え?」
「ティファ、ほら」
ガロードがそう言いながら空を指差した。
そこには地球では決して見る事の出来ない『大地』があった。
ガロードは荷物を背負うとティファの手を繋いで公園を後にした。
そこはまさに別世界と言っていいだろう。
今までの荒廃した大地、僅かな機械と石で出来た家から、真新しく、見た事のないような家が並び、道は整備されて車も数が多い。
二人、特にガロードはこの様な光景を今まで見た事が無い。
「ガロード?」
「ティファ…どうしよう?」
ガロードは珍しく弱気にそうティファに訊いた。
「どうしたの?」
「お金に換わりそうなのは持ってっけど何処なら金に換わるか解んないし…
寝るのは何とかなっても食べ物が…このままだと俺達飢え死にしそう」
「………」
ガロードが言うとおり店こそあるがその単位が今ガロード達が持っている物と違っていた。
数字は同じなのだが文字が微妙にことなっている。
それでもガロードは昔取ったなんとやらで読めたりするが、ティファはまさにちんぷんかんぷんだった。
「ティファ…ここ何処だろう?」
「解らない…けど」
「けど?」
ガロードがティファの方を向くとティファは顔を赤くしながら、
「ガロード一緒なら、何処でも平気」
「ガロード!」
二人はとぼとぼと街中から外れたところへ歩いているとティファがはっと顔を上げた。
「どうしたんだ、ティファ?」
「悪意が来ます…世界を揺さぶるほどの絶望と自分以外を拒絶する孤独が混じった…悪意を感じます」
ガロードは不安そうなティファを抱きしめた。
「ここで争いが行われます…とても悲しい…私達に防ぐ力は…ありません」
ティファはそう言うと体を震えさせ、ガロードはそんなティファを何も言えずにただ抱きしめた。
その2時間後、ティファの予言通りここ、ヘリオポリスはザフトの1度目の襲撃を受ける事となった。
最初はコロニーを揺るがせるほどの衝撃だった。
これによりヘリオポリスの中は一時騒然とし、その後放送の指示で住民はあわただしく非難を始めた。
「ティファ…大丈夫?」
「はい…」
その非難していく人ごみの中にティファとガロードが居た。
二人ははぐれないようにガロードがティファを抱き寄せる形で歩いていた。
しばらくすると近くで物音とバーニアをふかす音が聞こえた。
ガロードはそれに気付いていったん立ち止まった。
「ガロード?」
「ティファ…このまま何もせずに逃げるのと力を持って戦うの…どっちがいいかな?」
ガロードがそう訊くと最初ティファは何を言っているのかときょとんとしたが、
こくんと頷き、
「お願いします…けど無理だけはしないで」
「わかってるって♪」
といった。
ガロードはそう言うと嬉しそうに人ごみからはずれ、町…いや戦場に戻った。
「な…あれはガンダム!?」
そこで見た物は3機のガンダムが今にも飛び上がらんとする光景だった。
「何なの? この子」
コックピクトの中でマリュー・ラミアスは困惑していた。
目の前には一つ目の巨人…通称『ジン』といわれる人型兵器が手に持つマシンガンを撃ってきている。
しかしそれは今自分が乗っている人型兵器…通称MSには決して効果をなさない。
「OSを書き換えている?」
マリューの目の前、コクピットの椅子に座る少年は、キーボードを高速で打ち、
様々なシステムを調整していった。
すると今度はマシンガンの衝撃がやんだ。
マリューはその事を疑問に思い前を見、そして驚愕した。
ジンのモノアイはもはや形だけで光を失い、
中のカメラは何発かの銃弾を受けたようで機能してないのがここからでもわかった。
だけでなく右腕の間接部も火花が散っている。
いや、それよりも1対1でこちらが手も足も出ないとはいえ戦闘中のMSに人がぶら下がっている。
マリューはそれに言葉も無く、しばらく呆然としていた。
それとは別にキーボードとディスプレイに向っている少年、キラ・ヤマトは色々とシステムを統合、調整し、
この機体が満足に動ける状態まで持っていった。
「武器は…アーマーシュナイダー…これだけかー!!」
キラはそういってMSを操り、両手に短剣を装備し…目の前のジンが行き成り爆発した。
「え?」
なおその横でマリューは痛みと目の前の出来事に動転し意識を手放した。
時間を戻して3機のガンダムが飛び立った後、一つ目のMS…ジンがその近くに降り立った。
ガロードはそれを見てフェンスの壊れた所から施設に侵入、手にはMS狩りをしている時からの愛用品を持っていた。
「ティファは取り合えず隠れててくれよ?」
「ガロード…気をつけて」
「おう!」
ティファは頑丈そうな施設に向かい、それを確認したガロードはその場で屈伸して体を伸ばした。
施設の方は先ほどまで銃撃が聞こえていたが、ガロードはそれに構わず、ジンの方へ走っていった。
その途中、ジンの目の前に赤いガンダムが飛び立つのが見え、ガロードは舌打ちをした。
「チッ、せっかくのガンダムが…仕方ない、こっちをいただくか!」
ガロードは飛び立ったガンダムを見送るとジンの横の施設の影へ移動した。
ジンがマシンガンを撃つのを確認すると、
ガロードは施設を飛び出して銃を持っていない左腕に向けてワイヤーを発射、
それを命綱に、するするとジンの左肩へ登っていった。
「え~と、まずはっと」
ガロードはなんでもないようにジンの首の後ろを通り右肩に移動、装甲と装甲の間にお手製の爆弾を仕掛けた。
さらに顔の上の角にもう一度ワイヤーを引っ掛け、目の所までのぼり、モノアイを銃で撃った。
それと同時に右肩の爆弾も起動し、美味い事回路をショートさせ、右肩の付け根が火花を上げている。
「さってと、そんじゃ乗ってる奴の顔でも拝みますかっと」
ガロードはそう言うとワイヤーを伸ばし、コクピットのあるであろう場所まで下りていった。
とそこで今まで動きが悪かったガンダムが急に機敏に動き出したのをみて、
ガロードはワイヤーを最大まで伸ばし、一度落下エネルギーを殺してからワイヤーを切った。
ガロードがジンから離れて走った数秒後、ジンは自爆した。
ジンのパイロットはその前に脱出したようで、緑のヘルメットを被った人物が遠くで確認できた。
「あっぶね~…ん?」
ガロードがガンダムを挟んで向かい側に数人の人影を見た。