X-Seed_新たなる道_第03話

Last-modified: 2008-03-05 (水) 12:47:33

その場は取り合えず解散、
フラガの進言でクルーゼ隊が再度襲う前に物資を出来るだけ積み込む事になった。

 

「この状況で寝られちゃうってのもすごいよな」
「疲れてるのよ。 キラ、本当に大変だったんだから」

 

そんな中、ガロード達はアークエンジェルの一部屋に通された。
部屋に着くとキラ爆睡、ガロードはティファとなにやら話している。

 

「大変だったか…ま、確かにそうなんだろうけどさ…
「何が言いたいんだ? カズイ」
「別に。 ただキラには、あんなことも大変だったで済んじゃうもんなんだなって思ってさ。
キラ、OS書き換えたって言ってたじゃん、あれの。 それっていつさ?」
「いつって… 」
「キラだって、あんなもんのことなんか知ってたとは思えない。
じゃあ、あいつ、いつOS書き換えたんだよ。
キラがコーディネイターだってのは知ってたけどさ、
遺伝子操作されて生まれてきたやつら、
コーディネイターってのはそんなことも大変だったで出来ちゃうんだぜ。
ザフトってのはみんなそうなんだ。 そんなんと戦って勝てんのかよ、地球軍は…」

 

カズイの独白にヘリオポリス組みは黙る事しか出来なかった。

 

「てことはやっぱり?」
「ここは違う世界のようです」

 

ティファはそうガロードに言った。
ティファはガロードがストライクの整備をキラ達とやっている間にミリアリアから色々と聞いた。
いわくここはヘリオポリスというオーブ領のコロニーで、オーブは今回の戦争では中立なのだそうだ。
そして戦争はガロード達の世界と同じ、地球に住む者と宇宙に住む者との争いで、
ザフトというのは宇宙のコロニー…こっちではプラントと言うそうだが…の軍隊だという。
また、1年前の月宙域の戦闘も、半年ほど前と言われるし16年前の戦争などなかったと言われ、
さらに先ほどのコーディネイター云々で、ここがガロード達がいた世界と別な事がはっきりした。

 

「どうすっか」
「解りません…ただ」
「ただ?」

 

ガロードがそう訊くとティファはしっかりとガロードを見つめ返し、

 

「過ちは食い止めなければなりません」
「食い止める…か」
「はい…この世界は私達が戦争をした後の世界ではなく、これから戦争が激化する時代だと思います」
「そうだな…うん!」

 

ガロードはそう言うとティファをしっかりと見て、

 

「ジャミルやテクス、フリーデンのみんなに笑われないように…
俺達は過ちを犯した世界から来たんだもんな…あんなのは俺達の世界だけで沢山だ」
「はい」

 

といった。
それにティファは真剣に頷いた。 しかしふっとガロードが考えると、

 

「けど俺達二人じゃできる事に限りがあるし…ああ解んね! 
ジャミル達が居ればもっと色々的確に言ってくれるのに!」

 

といって頭を抱えた。
彼は本来頭を使うのではなくちょっと考えて即行動の人であるゆえ、
自分の一線は持っていても今回のような『世界』をどうのと言う事の智恵もなければ野望もない。
あるのは自分がティファと平和に堂々と暮らすという一点のみである。

 

「クス………二人でこれからそれを探しましょう、焦らなくていいと思います」

 

ティファはそう言うと頭を抱えているガロードにそっと手を置いた。

 

「で? また俺にMSに乗れってか? 報酬は?」
「ほ、報酬?」

 

マリューは今の戦力を考えてみて、
どうしてもガロードにストライクを乗って貰わなければならず説得しに来た。

 

「タダじゃやんないよ! こっちだって命張るんだ、無報酬なんつったらやる気なんて出やしないね!」
「……解りました、確約は出来なけど私が上層部に掛け合ってみるわ。
傭兵という形になると思うけどそれでいい?」
「へっへ、毎度あり! この炎のMS乗りガロード・ラン様に任せときなって!」

 

ガロードがそう得意そうに言う横でヘリオポリス組みは自分達がどうなるのかと不安そうに見ていた。
それに気付いたマリューは、

 

「あなた達は巻き込んで本当にごめんなさいね。
けどシェルターはレベル9で、今はあなた達を降ろしてあげることもできない。
どうにかこれを乗り切って、ヘリオポリスから脱出することができれば…」

 

といってすまなさそうに一度頭を下げた。

 

「あの…」

 

そんな中でティファは手を挙げた。

 

「何? ティファさん」
「私達も傭兵として雇ってはくれませんか?」
「ティファ!?」

 

ティファがそう言うとマリューよりもガロードが驚いた。

 

「報酬は私達を無事にオーブに送り届ける事…ダメでしょうか?」
「そんな! 俺達に一体何が出来るんだよ!」

 

ティファの提案にマリューではなくサイ達の方が異論を上げた。
それに応えたのはマリューだった。

 

「あなた達は確か工業カレッジの生徒だったわね?」
「ええ、まあ」
「実は恥ずかしい話だけどこの船に戦闘に耐えられるほどの人員は殆ど居ないの。
これが普通に運航するだけならまだ良いのだけど…出来れば手伝ってもらえないかしら?」

 

マリューにそう言われサイ達は黙り込んだ。 しかしその中でキラは、

 

「解りました。 僕は戦闘はできないけど彼のOSを汲む位ならお手伝いできると思います」

 

と自ら名乗りを上げた。 それにサイ達は驚いたが、これが呼び水となり他の皆も傭兵に志願した。

 

「すまないわね…それじゃキラ君とガロード君は格納庫へ、
それ以外の子はブリッチに上がってもらえる?」
「あ~、ちょっとタンマ」

 

マリューがそう提案するとヘリオポリス組は頷いたが、ガロードが待ったをかけた。

 

「何?」
「ちょっとティファと話したいからティファも格納庫でいいかな?」
「…解ったわ」

 

まあ、用件はそれだけだっただが。

 

「ティファ! 一体どういう…危ないよ!」
「大丈夫…それに私はガロードと一緒に居たいから…」

 

ティファがそう言うとガロードは顔を赤くして何も言えなかった。
なお二人はストライクのコクピットで話しをしてる。

 

「でも…」
「ダメですか?」

 

ティファはそういいながら上目使いでガロードをみた。
これに耐える男はもはや男と認められないと思わせるほどの魅力が出ており、
当然ガロードもそれにおとされた。

 

「う…わ~ったよ」
「クス、ありがとう」

 

ティファは認めてくれたのと自分の身を心配してくれたと言う両方でお礼を言った。

 

「あ~、出撃なんだが良いか?」

 

二人でいい雰囲気になっていた時、整備のおっさん…コジロー・マードックが訊いた。
なおこの二人のやり取りは画像付きでブリッジに放送されているのを後でミリアリアから聞いた。

 

「え? ああ」
「取り合えずさっき坊主が乗ってたランチャーしかまだ準備できてないんだが…」
「あの威力の高いビーム砲は?」
「アグニな、あれはさっきキラの坊主のおかげで高、低の2段階に分けられる様になった。
切り替えはちっと面倒臭いそうだがまあこれを見てみ」

 

マードックはそう言うとファイルをガロードに渡した。

 

「…それなら私も乗ります」
「「え?」」

 

ティファのあまりと言えばあんまりな言い草に二人は驚いた。

 

「その兵器の切り替えはキーボードとディスプレイがあれば良いんですよね?」
「ああ…取り合えずGシリーズには可変式のキーボードがあるしディスプレイも坊主の邪魔にならんだろ?」
「ならその作業私がやります…やらせて下さい!」

 

ティファがそう言うとマードックは目でガロードに(何とかしろ)と言ったが、
ガロードは首を横に振った。
ティファ相手だとガロードはどうしても強気で否定できなかった。

 

「わかった、取り合えず頭ぶつけない様に……これでも被ってな」

 

マードックはそう言うと一度コクピットから出て簡易ヘルメットをティファに渡した。
ティファが礼を言うと、マードックはコクピットから出て行った。

 

「はあ…それじゃ行こうか、ティファ」
「はい」
『うふ、それじゃガンダム発進、どうぞ!』
「うお! ミリアリア?」
『以後、私がモビルスーツ及びモビルアーマーの戦闘管制となります。 よろしくね! 』
『よろしくお願いします、だろ!?』

 

その会話でブリッチの殺伐とした空気のガス抜きになった。

 

「おう、頼んだぜ! ガロード・ラン!」
「ティファ・アディール!」
「「ガンダム、行くぜ(行きます)!!」

 

二人はそう言うとストライクはアークエンジェルから発進していった。

 

「うひゃ~やってるやってる…ティファ、行くよ!」
「はい!」

 

ティファがそう言うとガロードは右肩のバルカン砲を発射、
ミサイルを両手に持ったジン目掛けてその弾は飛んで行き、ミサイルに命中、ジンごと爆発した。
アークエンジェルのほうに注目していたジンは散開し、二手に分かれる。
ジンは躊躇する事無く両腕のミサイルを発射、ガロードはそのミサイルをバルカンで落としたが、
アークエンジェルの方に行った物まで手が出せなかった。
バルカンは射程外だし、ミサイルはロック不可…アグニは撃ったらアークエンジェルに当たるからである。
実はアークエンジェルにビーム兵器は効かないのだが、それを知らないガロードは、
機体を上昇させ、アークエンジェルに取り付こうとしているジンへアグニを撃った。
威力は抑えてあるがそれでもジンに対しての効果は絶大でその攻撃はコクピットに命中、
ジンは主を失い仮初の大地にその身を抱かれた。
アグニのビームはジンを貫通しコロニーの外壁に命中、威力は落としてるのでコロニーにさして被害は無い。
アグニを撃ったガロードへ後ろからジンが迫っていた。

 

「ガロード、後ろです!」

 

しかしそれはティファによって発見され、ガロードは機体を降下させ、仰向きになった。
少し前までガロード達が居た所へジンが斬りかかったが、それはかわされガロードによって蜂の巣へと変る。
さらにそこへミサイルが放たれるがその位置を正確にティファがガロードに報告、自らに来るものは落とした。
しかし数が多く全部とは行かずジンのミサイルのうち幾つかはコロニーに当たる結果となった。

 

「くそ! このままじゃ…」
「ガロード、あれ!」

 

ティファがそう言うと画面上に2体のMSが写った。
一つは先ほどや最初のジンと違い大きなバズーカらしきものを持っているジン、
さらに赤いガンダムが居た。

 

「うわ~、まじいなこりゃ」
「二人とも来ます! 一人は敵意を持って、もう一人は戸惑いを感じます」
「戸惑い?」

 

ガロードはそう言うがティファにそれに応える間はなかった。
ジンはおもむろにその大きなバズーカを向けるとビームを発射したからである。

 

「ぬあ、危っぶね~…あんなもん当たったら一溜りもないぞ?」
「ガロード、通信です」

 

ティファがそう言うと通信ウインドが開き、中から赤いヘルメットをかぶった青い髪の青年が居た。

 

『キラ! …違う? お前はいったい』
「なんだよ行き成り出てきて! この…」
「左から」

 

ティファがそう言うとガロードは前進、左に身をひねってアグニを撃ち、
ビーム砲を放ったジンは攻撃をかわされ、交換するように撃たれたアグニにバズーカを右腕ごと破壊された。
ジンが放ったビームはそのままコロニーのメインシャフトに命中、
今までザフトのミサイルの攻撃に耐えてきたメインシャフトはとうとう崩壊した。

 

「な! くっそ~…」
『ストライク、何をしている!』
「あんなもんおいそれと食らうかっての! 手かさこっちだって手一杯なんだぞ!」
『そんなことよりもそこを…』

 

アークエンジェルからの交信はそこで途切れた。
メインシャフトが壊れた事で空気が外に流出されそれに巻き込まれて外に放り出されたからである。
なおその時ティファは頭を打ったが、マードックが用意してくれたヘルメットで大事には至らず、
何も付けてないガロードはシートに後頭部を強かに打ち付けた。

 

「X-105ストライク、応答せよ! X-105ストライク、聞こえているか? 応答せよ!
X-105ストライク、応答せよ!」

 

ナタル・バジルールがそう呼びかけるが、なかなかストライクからの応答はない。

 

「X-105ストライク! X-105ストライク! 
ガロード・ラン! ティファ・アディール! 聞こえていたら…無事なら応答しろ!」
『ティファです、あの…』
「はぁ…無事か?」
『あ、はい…あの、X-105とかストライクとかって…なんですか?』

 

ティファの質問にナタルはガクッと肩を落とした。
位置が遠いのか音声だけで画像はブリッチまで来てない。

 

「その機体の製造ナンバーだ…こちらの位置は分かるか?」
『えっと…はい、大丈夫です』
「ならば帰投しろ…ガロード・ランはどうした?」
『今気絶していて…』
『う~ん…え? ティ、ティファ?』
『怪我は…していませんね』
『ああ…ちょっと頭が痛いけどなんとか…ごめんティファ、大丈夫だから…さ』
『うん…よかった』
『う、うわ…ティファ!』

 

画像が来ていなくてほっとした者、逆に惜しいと思った者それぞれ居るが、
なおもガロティファのあま~い雰囲気はブリッジに駄々漏れだった。
その為かガロードが救命ポットを見つけたという知らせがなかなかブリッジに伝わらなかった。