X-Seed_新たなる道_第12話

Last-modified: 2008-03-05 (水) 13:34:01

「キラ~、出来たか~!?」

 

ガロードとティファは帰って来た後一番にストライクの元へ向った。

 

「ずいぶん遅かったわね」
「心配したんだぞ?」
「わりぃわりぃ、ちょっとテロに巻き込まれて狐の所にお邪魔してたんだ」

 

ガロードがそう言うとフラガは一度首をかしげ、
狐と言うのがキラ達の間でバルドフェルドの事を指す事を思い出した。

 

「大丈夫…だったんだよな、傷はなさそうだし」
「まあな…」
「お帰りガロード、ティファ…今やっと試射が終わった所だよ」
「よし、これでまともに銃が撃てるな!」

 

ガロードはそう言うとガッツポーズをとり、
その格好をヘリオポリス残留組+フラガが見て笑った。

 

「なあ、私にもあれのシミュレーションさせてくれないか?」

 

その笑声の中にカガリが入ってきた。

 
 

「ううう…」
「む~…」
「はぁ~」
「ま、最初はそんなもんだ」

 

カガリだけではなくついでにとトールとミリアリアもジンの操縦シミュレーションを行ったが、
全員結果はグダグダに終わった。
フラガはそういって励ますが最初に行ったフラガもあまり変わらない成績だった事を追記する。

 

「な、ならこいつは!?」

 

カガリは諦めきれないと言ったふうにスカイグラスパーの方を指差すが、
そのカガリの襟首を屈強な男が掴み、ずるずるとその場を立ち去った。

 

「ちょ、こら! まだ話は…」
「いい加減にしろカガリ、お前は………」

 

なにやら言い争っているがどうやってもカガリは勝てないだろう。
まさしく大人と子供の構図である。

 

「…行っちゃったね」
「…うん」

 

その様子をガロード達はぽかんと見送った。

 
 

「腹ごしらえ腹ごしらえ」
「ん~…やっぱ、現地調達のもんな旨いねぇ」

 

ガロードとフラガは戦う前の腹ごしらえと言う風にケバブにかぶりついていた。

 

「すごい…」
「俺達はこれから戦いに行くんだぜ? 食っとかなきゃ、力でないでしょ」
「同感、戦闘中に腹減った~なんて言ってティファ一緒に落とされちゃたまらないからな!」
「けどこのケバブのソースはヨーグルトのが旨いぞぉ」
「オレはこっちのチリソースの方が好みだな」
「むむ…お嬢ちゃんはあんまり食べてないな?」
「ティファは基本的に小食だからな…食べ過ぎて動けなくなるのもまずいでしょ?」
「確かに、違いないな」

 

フラガはそう言うと笑った。
その次の瞬間、少し遠くの方から爆音が聞こえてきた。

 

「うわ! 何だ? 爆発!?」
「砲撃…にしては爆発が大きいような」

 

そう言うと新しく入ってきたブリッジクルーの一人が走りながら来て状況を説明した。

 
 

「レジスタンスの罠は最初から解ってたらしいな」
「ま、あったらいいな、レベルだったし、逆に最初に潰してくれてラッキーじゃない?」
「そりゃそうだ」

 

そういってガロードとフラガは笑いあいながら格納庫へティファと共に向った。

 

「それで坊主! パックはどうするんだ!?」
「今回は地上の相手中心だから…ソードで! 後マシンガンと予備の弾も」
「解った!」
「それじゃおれは、1号機にランチャー、2号機にエールだ!
なんでって…換装するより、俺が乗り換えた方が早いからさ!」
「空の敵と臨時の補給は任せるぜ?」
「補給の方はともかく空の方は任せなさいって」

 

二人はそう言うと笑いあい、それぞれの相棒の中へ入っていった。
勿論ストライクの中にはティファがもう入っていて、
ガロードのサポートができるよう予備のキーボードとディスプレイを見て何度も手順を確認していた。
ティファは一度目を離しガロードに微笑むと、急に暗い顔になった。

 

「ティファ、どうしたんだ?」
「………駄目です」

 

ティファはそう言うと急いでブリッジへ通信を入れた。

 
 

「回り込まれているだと!?」
「はい…私達の背中を狙う殺意を感じます」
「背中…?」
「…レーダー、どうか!」
「撹乱が酷くてはっきりとは解りません!」
「辛うじて前方に大型熱量2……敵空母、及び駆逐艦と思われるものしか…」
「信じてくれよ! ティファはこういうのを事前に察知できるんだ!」
「しかし…」

 

マリューがそういい悩む中、ナタルが決断した。

 

「………解った、しかし今の現状ではまず前方の敵に集中しなければならん。
各員は常に後方からの奇襲に注意…今の現状ではこれが精一杯だ」
「いいのか!?」
「ナタル?」
「現状ではこちらの手が足りません。
この場合敵の策に乗ったと見せかけてこちらが動揺しなければ、
相手は戦力を無駄に分散させたと言うまでの事。
まずは目の前の敵を相手が奇襲する前に叩くのが上策かと」
「…解ったわ、
各員は常に後方から奇襲が来る事を警戒しつつ前方の敵の一秒でも早い排除を心がけよ」
「「「「「了解!!」」」」」

 

マリューがそう言うとそのことが艦内放送で流れた。
今のアークエンジェルはヘリオポリスからの避難民を乗せた船ではなく、
ヘリオポリスで傭兵を調達し、途中で兵を足した船である。
多少の不安は感じてもこの放送でパニックになる事はない。

 
 

「フラガ少佐機、発進位置へ。進路クリアー、フラガ少佐、どうぞ!」
「あいよ、取りあえず後ろの敵は見つかるまで無視って事だな!?」
「まずは目の前の敵を!」
「りょ~かい、ムー・ラ・フラガ、スカイグラスパー出るぞ!」

 

フラガはそう言うとアークエンジェルを飛び出していった。

 

「APU起動カタパルト、接続。
ストライカーパックはソード。
ソードストライカー、スタンバイ」
「行こう、ティファ」
「はい」
「システム、オールグリーン…続いてストライク、どうぞ!」
「「ソードストライク、行くぜ(行きます)!!」」

 

二人はそう言うと相手からの砲弾が降る中アークエンジェルから発進した。

 
 

「バクゥは?」
「…5機います」

 

ガロードがヘリをマシンガンで撃ち落としながらティファに聞くと、
ティファはレーダーを見てそう応えた。
バクゥ隊は前に2機、後ろに3機のフォーメイションをとっていた。
そのうちの前衛2機のバクゥが前まではなかったビームサーベルを口に咥えて突っ込んできた。
それに対し右手に持つマシンガンで牽制し、
ガロードは左手のブーメランを戻して対艦刀「シュベルトゲーベル」を引き抜いた。

 

「ティファ、いくよ!」
「はい!」

 

ガロードはそう掛け声をかけるとマシンガンを腰に戻し対艦刀を両手に持った。
マシンガンを使う事により温存していたバルカンを牽制に使いつつ、
ガロードはバクゥ隊の中へ突っ込んでいった。
そのガロードへ後ろの方にいるバクゥ3機がこちらも牽制にミサイルを撃つが、
そのミサイルとバルカンが接触、爆発し視界が一時塞がった。
バクゥ達の前衛はその中へ突っ込んでいったがミサイルを装備するバクゥはその様子を見ていた。
しかしそれが仇となり煙から対艦刀を構えたストライクがそのバクゥへ文字道理飛んできた。
あまりの事にバクゥは反応できず、結果胴を対艦刀で両断され爆発した。
これに浮き足立った後ろ2機のうちに右のバクゥにストライクは左腕のアンカーを打ち込んだ。
打ち込まれたそれはバクゥの頭を掴み、振り回され反対側のバクゥにぶつけられた。
それだけで爆発はしないものの両者の衝撃はすさまじく、
動けない所へバルカンが撃たれ背中のミサイルコンテナに直撃、結果2機とも爆発した。
そこでようやく煙は晴れ、前にいたバクゥ二機はストライクへ再度襲い掛かった。

 
 

「戦況は?」
「ストライクがバクゥ隊と交戦、フラガ少佐がヘリを掃討後現在も駆逐艦へ砲撃をしています!」
「後ろにいるはずの敵は?」
「今だ発見…いえ、いました! 6時の方向に熱源! これは…駆逐艦クラスのものです!」
「ゴットフリート1番砲塔を後ろ駆逐艦へ限界まで回して!
アークエンジェルを1番砲塔が撃てる角度まで方向転換、2番砲塔は目の前の船に固定、
フラガ少佐に正確な位置のデータを送ってもらって! 狙いが出来た物から順に発射して!」
「りょ、了解!」
「艦長! それではローエングリン、バリアントが使えません!」
「ローエングリンは地表への汚染被害が大きすぎるわ! 
今もなおレジスタンスがいる事を忘れないで。
それに後ろを突れるよりもまだ横からの方がましでしょ!? 
今エンジン部をやられたらそれこそ的になるだけよ!」
「く…了解しました」

 

ナタルがそう言った次の瞬間後ろの駆逐艦が発砲したが、
マリューの狙い通りエンジン部への被弾は避けられた。

 

「く…被害状況は?」
「右側のバリアント破損! しかし艦の運航に影響はありません!!」
「ゴットフリートは双方とも砲撃中…あ、10時方向の敵駆逐艦沈黙しました!」
「ストライクがバクゥ隊を撃破! 現在アンノウンと戦闘を開始しています」
「アンノウン?」
「バクゥタイプのカスタム機です!」
「!? 3時方向の艦よりジンタイプ3機がこちらに向っています!」
「く…右側のスレッジハマーで対応して! フラガ少佐に救援を要請!」
「了解!」

 
 

「うわ!」
「坊主、大丈夫か!?」

 

ここは格納庫の中、被弾の振動でよろめいたキラをコジローが支えた。

 

「はい」
「離せ! 機体を遊ばせていられる状況か!こいつで出る!」
「待て! 死にに行くようなものだ!」

 

ちょうどその時、アークエンジェルに入っていたカガリがスカイグラスパーに乗ろうとしている。
それを整備員+カガリ付の大男+トール、ミリアリアが止めていた。

 

「大丈夫、今は皆を信じよう?」

 

キラも止めるのに加わるが、

 

「どこが大丈夫だ! 今アークエンジェルは囲まれているんだぞ!
ガロードも虎の相手でこっちまで手は回らないみたいだし、ここは私が…」
「虎?」

 

カガリの虎発言にキラは首をかしげるとトールが、

 

「ザフトの親玉の事だよ」

 

と教えるとぽんと手を打った。

 

「それにこっち…うわ!」

 

格納庫がもう一度揺れ、カガリは体制を崩してスカイグラスパーから落ちた。
その時格納庫の扉が開いた。

 
 

「ブリッジ! 第一格納庫の扉が…え? フラガ少佐が来る!? 解った、すぐに準備する!」

 

マードックがブリッジに聞くとどうやらフラガが火力よりも足の速さを求め、
エールパックの付いたスカイグラスパーに乗り換えるのだそうだ。
マードックはすぐに整備員やトール達に再発進の準備の指示を出した。
それに応え整備員達は準備を始め終わる間際になってフラガが着艦した。

 

「おっさん準備は?」
「もうすぐ出来るよ!」

 

マードックはそう言うと格納庫内が一時騒然とした。
発射口前方に砂漠型のジン、ジンオーガが取り付いてきたからだ。

 

「くそ! こんな時に」

 

そのジンオーガはヘルダートの弾幕を抜けて来たせいで武器は落としているが、
その巨体を生かして道を塞ぎ例えそこで爆発させてもすぐに機体を発進させることはできなかった。

 

「くそ、どうすれば…」
「あ!」

 

その時キラはこの船にあるもう一つの存在に気がついた。
ジンオーガがゆっくりと格納庫の中に進入し始めると、コジロー達の後ろから駆動音がした。

 

「今度は何だ!?」
「あ、あれは…」
「そうか、でかしたぞ坊主!」

 

そこには実剣を構えたジンいた。

 

「うおおおおおお!!!」

 

そうキラが言いながらジンをジンオーガへ向けて突進させた。
素人そのものの動きは本来は簡単にかわせるそれである。
しかしそこは格納庫前の発射口、左右を壁に囲まれ満足にかわす事は出来なかった。
それでもジンオーガはかわそうとしたが、
ジンに捕まれ、ジンオーガは格納庫の外へジンもろとも出て行った。

 

「でかした坊主!」
「スカイグラスパー出るぞ!」

 

その隙にフラガは発進すると、まずはキラの援護とばかりに、
キラを囲むように動いていたジンオーガを上から狙い撃った。
熱対流の影響もキラが作ったソフトで修正されたその一撃は正確にジンオーガを貫通した。

 

「キラ! お前は速くアークエンジェルへ戻れ!」
「だ、だけど」
「こいつらは俺が…ってそうも言ってられないか!」

 

フラガは駆逐艦を見ながらそう言った。
艦前方の駆逐艦の撃墜はフラガが正確な敵艦の位置をアークエンジェルに送ったから出来たものである。
今も後方駆逐艦へゴットフリートを撃っているが至近弾だけで命中はない。
当れば悪くても中破にはなる一撃だが、熱対流の干渉だけでなく、
熱により光が屈折し、標準自体がずれているのだ。
なのでどうしても駆逐艦の近くによる必要がある。

 

「くそ…任せてもいいか?」
「はい…シミュレーターでは被弾は無しでしたから」
「…死ぬなよ」
「はい!」

 

フラガはそう言うと後方駆逐艦へ飛んでいった。
キラは己の腕が震えている事を自覚しつつも自分を奮い立たせた。

 

「ここは僕が…護る!」

 
 

「ティファ! 残弾は?」
「マシンガンは後マガジン1セット分、バルカンは残り30発…
エネルギーの消費は残り30%…そろそろイエローゾーンです」

 

ガロードとバルトフェルドの戦いはほぼ五分といって良い有様だった。
ストライクは左肩のブーメランを撃ち抜かれ、ラゴゥは右主翼を斬られている。
ガロードはせめて相手の射撃を潰そうとラゴゥの背中に攻撃するも、
マシンガンの弾は僅かにかするだけでその射撃機能は衰えない。

 

「くそ、このままじゃ…何か手は」

 

ガロードはそういいながら辺りを見渡し…そして思いついた。

 

「これなら…」

 

ガロードはそう言いラゴゥと睨み合いながらチャンスを待った。
そしてそれは以外にもすぐに訪れた。
レセップス方向からリニアレールガンが発射されたのだ。
位置はガロードがアークエンジェルを背に、ラゴゥがレセップスを背にしている。
つまりラゴゥにとってはその弾は完全に不意打ちだった。
当りはしないものの後ろからの至近弾はラゴゥの隙を作った。

 

「今だ!」

 

ガロードはそう言うとアンカーを発射、
ラゴゥは隙を疲れて態勢を崩すもののそれでもそのアンカーを避けた。
ガロードは体制の崩れたラゴゥに最後の1セット分のマシンガンを撃ちつくした。
直撃こそ免れたまののマシンガンの弾は背中のビームキャノンを食らい尽し破壊した。

 

「まだまだ、これから!」

 

ガロードはそう言うとアンカーとその先についている残骸を一緒に引き戻した。
それはバクゥの残骸のようで、大きさはストライクの胴と同じくらいあり、
ガロードはそれをぶんぶんと振り回した。

 

実はガロードは面白半分でキッドが開発したハンマーを練習していた時期がある。
結局実戦では使われなかったが、扱いはいまだに自分の体に染み付いている。

 

弾の無くなったマシンガンを捨て、ガロードはワイヤーを右手に持った。
ラゴゥはその姿に一時唖然としたが、気を取り直して自身が持つ最後の武器、
ビームサーベルを展開した。
光学兵器対質量兵器、ぶつけ合うと勿論光学兵器が勝つが、今この場では互角だった。
最初に動いたのはストライクのほうで、即席ハンマーをラゴゥヘ横殴りに飛ばした。
ラゴゥはそれを後退する事で避けるが、ハンマーが通り過ぎると同時に右足に衝撃が走った。
ガロードはハンマーを投げると同時に左手にナイフを装備していたのだ。
そのナイフはラゴゥの右足の間接部に食い込み、機能を停止させた。
さらに追い討ちをかけるように今度は真っ直ぐラゴゥへそのハンマーが放たれた。

 

「まさかこんな攻撃をするとはな、少年…しかし!」

 

それでもなおラゴゥは動き、そのハンマーをジャンプして飛び越え、
ビームサーベルでワイヤーを焼き切った。
ガロードは残ったワイヤーを巻き戻し、背中の対艦刀を引き抜いた。
両者は少しの間にらみ合うとまるで示し合わせたかのように同時に前へと突き進んだ。

 
 

「へへ、俺達の勝ちだな」
「そのようだね」

 

互いに突進をしたがそれは決して互角ではない。
ビームサーベルだけのラゴゥと対艦刀の他にバルカンさらにナイフが一つあるストライクでは、
突進の仕方も変わってくる。
ラゴゥは最後の一撃と突進したが、ストライクはバルカンを牽制に使いつつ突進した。
それに当りはしないものの、ラゴゥはそれで出遅れて結果頭を首から切断。
返す刃で右後ろ足をも切られ、崩れ落ちた。

 

「さあ、止めを刺したまえ」
「死にたいの?」
「それはごめんね」

 

直接通信で離すとどうやらラゴゥにはバルトフェルドの他にアイシャも乗っていたようだ。

 

「え?」
「アイシャ…さん?」
「おや?」
「あら?」

 

それに驚いて二人が声を出すと今度は反対にバルトフェルド達が驚いた。
てっきり乗っているのはガロードだけかと思っていたからである。

 

「おやおや、どうやら1対2じゃなくて2対2だったようだね」
「さながら恋人対決ね」

 

バルトフェルド達に言われ、顔を赤くしその場で黙るガロードとティファだった。
人生経験による先輩はやはり口がうまいのだろう。
結局この場は白けた為これ以上戦闘はせずに解散、
ガロードは結局止めを刺さずにアークエンジェルへ帰艦、
バルドフェルドはザフト残党と共にこの砂漠の地を脱出した。

 
 

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