XXVIIIスレ999 氏_いろんな意味で逆襲のシン=アスカ_第三話前編

Last-modified: 2009-06-07 (日) 19:04:58

「シン、おまえはぁぁぁ!」

 

 激昂したアスランが俺に銃を向ける。避けられない…

 

 …直後に起きた発砲音、
               赤い血、
                    倒れる音、
                          ルナの悲鳴…

 

 倒れたのは俺ではなくメイリンだった…

 

後にキラ本人から、アスランが発砲する直前まで、怪我したラクスを抱き抱えたまま
「これ以上争わせてはいけない!」と考えていた。
だがアスランが銃を抜いた瞬間、キラは近くの石をアスランの拳に全力でぶつけた、と聞いた。
 だがその結果銃口はぶれ、アスランの近くにいたメイリンの腹部…へその下あたりに当たった。
メイリンはパニックになり悲鳴をあげるが途中で気を失ったのか、すぐにぐったりする。
カガリは素早く医師を呼ぶため電話をし、ルナマリアはメイリンの腹部を抑え出血を止めようとしていた。

 

 俺はもう誰も死なせたくなかった、ステラやマユのような理不尽な死はたくさんだった。
マユ…もう一人の造られたマユは震え、涙を浮かべている。
だが今はメイリンを助けることが先決だ…アスランは茫然自失し佇んでいる。
 そんな二人に今はかまえない、だからやれることをする、
メイリンの脈を取りルナマリアに代わり止血する。俺が圧迫するが血は止まらなかった…

 

 また、無情にも命がこぼれかけていた…

 
 

第三話《紅の贖罪 前編》

 

『地球連合政府、保健機構はヨーロッパでSⅡインフルエンザが流行、非常事態宣言を出し、
 各連合傘下国にワクチンの提供を呼び掛けるも、各国からは集まらず、被害は急速に広がり…』
『今日午後アーモリー市の路上でこの町に住む、アイリーン=カナーバ元議長が
 何ものかに拉致されるといった事件が発生、警察が捜査を開始…』
『さて、今日の特集は昨日ケガをしたエルスマン・カンパニー社長、ご存知ディアッカ=エルスマン氏です。
 若者から絶大な支持を集めるファッション界のカリスマ、鯨を使った斬新なアイデア料理から
 炒飯の三界王と呼ばれる料理の腕前、超高級品質の二次元ダイブシステムの作成、
 さらに自身の手懸けるオリジナルブランドはプラントの貿易に貢献しているのはみなさんご存知かと思…』

 

 まだあどけない少女の、大きすぎる二つの膨らみと顔、あらゆるところに白の飛沫が浴びせられる。

 

「ぁん、いやぁ…もぉ…白いのいっぱい…髪にからまって…ベトベトするよぅ、
 お兄ちゃん…いっぱいかかっちゃったよぅ…」

 

 ミユが自分の髪についた白い液体をぬぐう。
コートの下の…かつてスクール水着だったものにもそれは広がりを見せる。
 驚いて上気した顔に白のコントラストが映え、その道の人間ならリビドーを掻き立てる色気がそこにはあった。
シンはミユのミネラルウォーターと自分のハンカチを使いふいてやる。

 

「誰か医者ぷりーづ。」
 一方で迂濶で残念の代名詞は撃沈しているが誰も相手にしていない。

 

「シン、状況が悪くなりそうだ…」
 キラが険しい顔で言う。視線の先にはゲイツタイプのMSがあった。シンは時計を見る。
これくらいの誤差は予想範囲内だ。作戦計画者は予知能力があるのだろうか?
作戦の綿密さと変化した際の対応まで事細かにあるのだから…

 

「そこの車の方、今は戦闘中ですが救助いたします。」
 ゲイツの後継機、通称、『ビルゲイツ』のパイロットがビームサインでこちらに知らせる。
C.E77現在ビームサインはビームサーベルに付属しているため、ほぼ全てのMSが使用している。

 

ちなみにビルゲイツの特徴はバックパックに新たな武装換装システム、「ウィンドウズ」を採用している事にある。
これにより旧型の武装、バックパックを95式、ゲイツRの武装、バックパックは98式、
今いるタイプは2000と呼ばれるものでニューミレニアムシリーズで作られたザクのウィザードを使えるように
変換コネクタをつけたものだった。
他のバリエーションはシルエットを使えるMe、ドラグーン装備のXp、
フリーダム、ジャスティスタイプの武装、ミーティアを使えるVista、
95~Vista対応の7も当然ある。

 

救助作業にあたっているビルゲイツは三機、いずれもガナーウィザード装備だが、
戦闘には参加せずに救助をしている。
戦闘が遠いから油断しているのだろう。武器類は腰にマウントし、先程ビームサインを出したビルゲイツが
キラ達の車に手を伸ばした瞬間、突如その機体が痙攣したかのように震え、機能を停止させる。
異変を察知した他の二機が僚機に近づくが同じ末路をたどる。
キラが短く「時間に正確だな。」と呟く。
 やがて宇宙の一角に歪みが見える、
注意しないとわからない位のその歪みは一瞬ぶれ、MSの腕をのぞかせる。
その漆黒の腕は先端が尖り、まるで獲物を貫くかのような刺々しい印象をもたらすが、
ゆっくり、優しくシン達の車を包むと再度、今度は車ごと消えていった。 

 
 

 アプリリウス市市長補佐エザリア=ジュールは忙殺されていた。
市民の誘導、傷ついた部分の修復、何より攻撃に対しての防御策…光波防御体が機能していないこと、
半年前からの断続的なミラージュコロイドディテクターの誤作動と言われていた現象…
それらの全てが市長補佐である彼女に伝わってなく、結局対策を何も取れなかった。
 そしてラクス=クライン議長は現在月面で火星、月面都市との協定の為プラントを留守にしていた。
そして現在アプリリウス市市長の『あの男』は出勤すらしていない。
 キリキリ痛む胃を抑えエザリアは次々と的確に指示を出す。

 

元ザラ派の…しかもマティウス市の議員だったエザリアがアプリリウスにいる理由は
プラントの人材不足が原因だった。
過去に罪があっても、有能であれば『一定の条件下』つまり今エザリアがしている
紅い犬のような首輪をすることで現場復帰が可能になった。
この首輪にも細工がされていて、ラクスの意志に反することをすると首輪の後ろから微弱な電流が流れる。

 

その電流は脳内のA10神経を刺激し装着者に激しい快楽をもたらす。
この効果をエザリアは初日に味わい、屈辱的な痴態をさらした。

 

 息子イザーク=ジュールも議員になったがその後政治的駆け引きで失脚、
すぐに熱くなる性格が災いしたからだ。
現在は格闘家として、オーブの『アッガイファイト』の大関になり、
さらにエザリアは認めていないが妻のシホと新婚旅行兼修行でギアナ高地に行っているはずだ。

 

「市長補佐、救援要請は?」
「他のプラント市にはすでに救援要請を出しています。ですから職員の皆は安心して仕事に励んでください。」
 柔らかい微笑みで落ち着いて話す。内心焦っていてもパニックにはならない。
そしてまた次々と指示出していた。
「市長とはまだ連絡が取れませ…」

 

 市長の所在を確認しようとした矢先アプリリウスは激震に包まれた…

 
 

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