XXXスレ360 氏_SEED DESTINY AFTER 龍宮の守人編_第14話

Last-modified: 2009-08-20 (木) 02:05:35

○前回までのあらすじ
マユじゃないってば、銀色の腕の少女だってば。

 

では本編です。

 
 
 

「数が多すぎるんだよ、貴様らあ!」

 

群れを成してコロニー《エル・クブレス》に接近する賊のモビルスーツ、モビルアーマーに対し、
最大加速で《グフアサルト》を吶喊させたイザークは、全身に装備されたミサイルランチャーを
展開、即座に全弾発射する。
88基のミサイルは小型弾頭ながらモビルスーツに対しても十分な攻撃力を持つ。まともに弾幕に
突っ込んでしまったモビルスーツは胴体に直撃を受け、四肢を喪失し、戦闘不能に追い込まれる。
しかし、撃退できたのは全体の2割弱に過ぎない…
友軍機の残骸を避けながら依然20を超える賊の機体群は、各個に散開しつつ接近する。
(向こうには砲撃機は無いようだ、ならば守り様もある)
敵機の動きを見てイザークは判断する。しかし、恒常的に1対多を仕掛けられることは変わらない。
賊のうちの4機がイザークをなぶり殺しにせんと、
大きく広がりながら包囲しようと展開した。対するイザークは両腕に取り付けられた
連装ビームガンで牽制しつつ、少しずつ後退をかける。

 

「シン!狩り取れ!」
「了解!」
大きく展開した敵機にシンの《ダガーⅡ》が急接近する。
援護を得られない距離にいた哀れな賊の《ウィンダム》は、
複合兵装ボックス《トイカゴ》から伸びた巨大なビーム刃によって真っ二つにされてしまった。
「手加減なんてしないからな!アンタら!」
トイカゴを構えなおしたシンの《ダガーⅡ》は今度は実体弾を発砲する。
対MS用の散弾をまともに浴びた《ストライクダガー》が両足をスポンジにされ、
機動力を殺がれたところを《グフアサルト》のレールガンで撃ち抜かれ、爆散する。
瞬く間に2機殺られた賊は同様したのか、包囲を解いて後退をかける。
シンもイザークも対MS戦経験が豊富なベテランだ、生半可な腕では太刀打ちはできまい。
なれば、無理に相手をすることは無いのだ。
猛者だとしてもたった二機ではカバーしきれまいといわんばかりに、
広く展開した賊どもが二人を避けてコロニーにタッチダウンをかけようとする。
そんな不埒者に対して、遠距離から高出力ビームが放たれる。
後方に配置したナスカ級《ボルテール》とジュール隊の《ガナー・ザク》、
それとシンの部下の新兵が乗る《ゲイツR》が砲撃を繰り返し、賊を遠ざけようとする。
母艦からエネルギーケーブルを延ばしたオルトロスは不恰好ではあるが、
単騎では不可能な連射を可能とする。

 

「よし!そのまま接近させなければいい!」
数では圧倒的に劣るが、事前に用意していた重火器が役に立ってくれた。
デブリ等の遮蔽物が存在しない宙域であることも助かった。
寸断されることなく続く砲撃は賊の足止めに十分な威力を発揮した。
こうなれば取れる手段はそう多くない。砲兵どうしで殴りあうには向こうも母艦を前に出すしかない、
数に任せて押し切る方法にしても、我が身がかわいい賊や傭兵には採り難いはずだ。
賊は別の方法を選んだ。防御力の高い機種でラインを押し上げるのだ。
「S12エリアから3機突入します。機種は《ユークリッド》と推定!」
前線と《ボルテール》の間を泳ぎ、前線観測を担当しているシホの《スカイアイ・ザク》から報告が入る、
複合センサーパックの修理は完全ではなかったが、彼女の機体の目と指向性ジャミングが無ければ
数の差を補って戦えない。見た目以上に危険な任務をシホは粛々とこなしていた。
「シンは《ユークリッド》を潰せ。俺は戦線を維持する」
「了解…スカイアイ、エルフは捕捉できないのか?」
「強力な量子ジャミングがかけられていて、把握には時間がかかります…」
「シン、心配するのは早いぞ」
「分かってますよジュールさん!先ずは数を減らさないと、こっちが喰われる」
苛立った声をあげながらも、シンは機体を堅牢なモビルアーマーへと向かわせる。
「無事でいてくれ、エルフ…」

 
 

「来たなあ、緑のダガータイプ!」
「知っているぞ?最近賊やテロ屋を喰いまくってるエースの噂は」
「だがしかし!その栄光も今日までだ!」

 

『『『そう!我等白星三兄弟の手によって!』』』

 

わざわざ馬鹿丁寧に名乗りをあげる3機の《ユークリッド》に向けて、シンはトイカゴの砲身を展開する。
長方形が横軸で二つに割れて、銃身代りになる1対のレールを展開、
レールの間にピンク色のビームがチャージされる。
《ユークリッド》各機は前面にリフレクターガンポッドを展開、
射線を遮るようにリフレクターの壁を幾重にも重ねる。
戦艦に搭載される陽電子砲すら弾くリフレクターだ、ダガー程度の火力で貫けるはずが無いと確信して、
白星三兄弟を名乗った傭兵達はダガーの砲撃に備えた。

 

「枯れた技術に頼りすぎて!」

 

シンは照準を《ユークリッド》の真芯…一番リフレクターが厚いところを狙って、トリガーを引く。
トイカゴから放たれたビームは砲身に不釣り合いなほどに細く、
カービン程度の火力にしか見えないものだった。

 

それは違う、
ビームのエネルギー減衰を限りなく抑え、ギリギリまで濃縮された結果が、細いビームなのだ。

 

細身に大出力を孕んだビームは易々とリフレクターを貫き、《ユークリッド》のコクピットを捕らえ、
一瞬にしてパイロットをチリ未満の分子レベルまで焼き切る。
機体本体も熱に耐えられずに、赤黒いマグマのように変形した後、
すぐに絶対零度の宇宙に冷やされ醜い鉄塊のドーナツと化す。

 

「な、何だいまのビームは…」
「リフレクターが効かないだと!?反則だぞ!ザフトめ!」
悲鳴を上げることも許されずに絶命した末弟に代わり、残り二人が驚愕する。
「リフェーザーガン、本物の粒子ビームの味はどうだ!」
シンも初めて発砲した武器だったが予想以上の威力に少し舞い上がってしまったのかもしれない。
散開、回避行動を取る《ユークリッド》に第二射を放つ。
芯は外したが機体底部を茹でたジャガイモよりも簡単に貫通された《ユークリッド》は
プロペラントを誘爆させて、吹き飛んでしまう。
「兄者!俺はもうだめだ、脱出する!」
「ええい不甲斐ない!こうなったら最後の手段だ!」
残された長兄はガンポッドのリフレクターを槍状に展開して、シンの《ダガーⅡ》に突進させる。
本来防御に用いるリフレクターを攻撃に展化する、正に最後の手段だったが
シンは機体をひねらせ、時に大きく動いて、《ユークリッド》本体からの砲撃も含めてすべて避けきる。
「何故だ!何故当たらん!」
「オートコントロールに捕まってたまるかよ!」
そして難なくモビルアーマーの底部に潜り込んだダークグリーンの《ダガーⅡ》は
左腕一本で持った斬艦刀を掲げ、底面を引き裂く。
「馬鹿な…我等三兄弟が敗れるなど…」
らしいセリフを吐きながら散った《ユークリッド》を見ながらシンは呟く、

 

「あの馬鹿共、一体何なんだ…」と。

 
 
 

「アハッ、もうお仕舞いなの?フリーダムの偽者さん」
「お前は!お前だけはアタシが倒す!うおおお!」

 

仲間の死に怒りを燃やすエルフは、機体が背負うフリーダムシルエット…
ウィングと各種火砲の複合パックを大きく展開する。
「モビルスーツ一機ごとき!」
FCSに頼っても掠りもしない。エルフは相手の回避運動を予測して、
逃げ場を無くすほどの砲撃を繰り返す。
核エンジン搭載機にのみ許される出鱈目な火力を、しかし《ディザストレイ》は全てを紙一重で避ける。
銀色の腕の少女の技量に、アストレイシリーズ特有の軽さを生かしたAMBAC、
加えて電磁推進装置のサポートも受けて、《ディザストレイ》は黒い機体を自由に泳がせた。
まるで、人がそらをとぶ能力を持っていたなら、こんな風に飛ぶのだと言わんばかりに。

 

火力で圧倒的に勝る《Nインパルス》が完全に翻弄されていた。自分の腕が悪いからか?
エルフはついさっきまで持っていたモビルスーツ操縦への自信を失いかけていた。
(もう4度も外した!アタシは何て情けないんだ、アハトの仇も討てずに!)
自責するエルフの耳朶をアラートが打つ。回避運動を取っていた《ディザストレイ》が反転し…
「正面から!?舐めるなあ!」
あえて真っ向から突進する《ディザストレイ》に、エルフはライフルを向ける。
殆ど間を置かない三連射を、銀色の腕の少女は機体を少し捻るだけで回避してしまった。
「懐に入るなら!」エルフはあえて自分から前に出た。ライフルの銃口をつぶさんばかりに突きつけて、
至近距離からライフルを叩き込もうとしたが、
「見えてるってば!」
突きつけられる銃口の軌道まで見えているかのように、《ディザストレイ》はライフルを左腕で掴む、
間髪おかずに右手のビームクローで両断する。
「そっちは囮だ!」
失った武器には構わずにエルフは背部の砲を正面に向ける。
至近距離で撃てば自機にも被害がでるが構っていられない。
肉を切らせてでも、仕留めなければ!
1対ずつのプラズマ砲とレール砲から、必殺の一撃が放たれる。

 

「読めてるんだよ!フリーダム!」

 

《ディザストレイ》は必死の策すら読みきって、機体を急に下に「落とす」。
《Nインパルス》の相対的下の位置に潜りプラズマ砲を避けて、レール砲は両肩の装甲に掠らせる。
バク転をするように機体をロールさせて、テールスタビライザーに仕込んだ小型のビームガンを
アイドリング状態のプラズマ砲に向けて発砲する。
ピンホール程度の傷でもそれは誘爆を引き起こし、フリーダムシルエットの上半分をごそりともぎ取った。
「きゃああああ!」
背中から急に衝撃を受け、エルフは悲鳴を上げる。
体勢を崩してしまった。そのチャンスを見逃す銀色の腕の少女ではなく、右手のビームクロウと、
左腰に下げていたビームライフルで《Nインパルス》の両手を同時に潰す。
「あーあ、強そうな機体に乗ってたから、楽しみだったのに」
「う、ああ…」
エルフは呻きながら、後部カメラに映る、背中にライフルを突きつける《ディザストレイ》を
見やるしかなかった…
「期待はずれだったし、死んでいいよ。バイバイ」

 

ビームが放たれる寸前。細い光が《ディザストレイ》のライフルを貫く。
バターのように溶けるライフルからとっさに手を離し、《Nインパルス》から機体を
離させた銀色の腕の少女は、止めを邪魔した奴の姿をを、ツインアイの最大望遠で捕らえる。
「またアンタはヒーローごっこをするんだねえ…緑のダガー!」

 

「エルフ!生きてるか!生きてたら離脱しろ!」
「えっ…シン?シン・アスカなのか?」
「コイツは俺が討つ!早く離脱して、《エル・クブレス》まで逃げろ!」

 

砲身を展開したままのトイカゴを携えて乱入するシンの《ダガーⅡ》
遠距離用の火器を失い逃げ惑う事を余儀なくされる《ディザストレイ》
狩るものと狩られるものの境界は、目まぐるしく変わっていく…

 
 

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