XXXスレ360 氏_SEED DESTINY AFTER 龍宮の守人編_第3話

Last-modified: 2009-05-30 (土) 01:05:24

今日はパトロールのシフトから外れていたはずの《パトクロス》のクルー達が
緊急招集を受けて艦に集合したのが30分前。
慌しく《アーモリー・ワン》を出港した後に、各部署の主要メンバーが集められて
ブリーフィングが開かれた。
勿論パイロットの中心であるシン・アスカとルナマリア・ホークもその中にいた。

 

「急に集まってもらってすまない、状況を説明する」
トライン艦長の指示を受けて、アビーがディスプレイに一枚の画像を表示した。
暗黒の宇宙にぼんやりと浮かぶ、鬼火のように見えるそれは宇宙船のスラスター光であろう。
「定期巡回していた探査プローフが撮影したものだ、
 船の形状だけを見れば連合系の戦艦に見えるが…」
次に表示された画像はコロニーや地球の位置を模式的に表したマップ、
その上に先程の船の位置と予測軌道も表示される。
「規定航路から思いっきりOBしていますね」
シンが率直な感想を述べる。
「うん、しかもこのまま進んでも、特に何も無い所なんだけど、
 あと3時間14分後にはザフトの領宙域に侵入する計算になっている」
「領宙侵犯かあ…」
「しかし、このご時世に連合側が挑発してくる必然性もないし。
 例えばアレが海賊だったとしてどこかにアジトが隠されているかも知れないとしても、
 この宙域はつい4日前にプローフで探査したばかりの区域だ。何も無いのはさっき言ったとおり」
「じゃあ、これから賊がねぐらを作ろうとしているとか?」
「そうかもしれないけど、兎も角我々はあの船の目的を明らかにする事が緊急任務となった。
 他のパトロール隊よりも《アーモリー・ワン》にいた我々の方が近い位置にいたから、
 この任務を仰せつかったわけだ」
そこまで言って、艦長はため息をついた。
士気が下がる所業とも取られかねないが、気心しれている同僚には
そういうキャラだから仕方ないと思われているので問題は無かった。

 

「にしてもマジでコキ使いすぎですよ。他にも《ボルテール》とか駐留してたのに」
ヴィーノがスラング交じりの愚痴を漏らす。
「信用されてるのか疎まれてるのか分かんないよねえ」
ルナマリアの言うとおり、かつての《ミネルバ》クルーが集められた部隊だからか、
上層部からは白眼視されている節があった。
しかして『使える』部隊として認識されてもいて、それゆえのコキ使われ方だった。
「コキ使うならせめて《ザク》でも寄越してくれたらいいのに」
「拘るなあ、ルナ…」
「しかし、艦で捕捉するにはちょっと遠すぎじゃないですかい?
 往復分のプロペラントはありませんぜ?」
わざとラフな格好を装っているごま塩頭の男は《パトクロス》の機関長だ。
艦内最年長者として、若いクルーの模範たらんとする有難い人物だった。
「そうなると、途中までは艦で接近して、そこからモビルスーツで偵察ということになるね…
 ヴィーノ君、装備は調達できてるよね?」
「勿論、《スペースグゥル》4機にエールパック。
 ハインドシールドやら使えそうなものは全部かっぱらってきたさ」

 

《スペースグゥル》とは地球の部隊の撤退を決定したザフトにとって無用の長物と化した
サブフライトシステム《グゥル》を宇宙艇にリフォームしたものである。
思いつきで作られた代物で最初は役に立つのか疑われたものだったが、
実際には輸送、長距離移動、モビルスーツのバッテリー・プロペラント節約、ランチ代わりと
多岐にわたる運用がされる便利なマシンとなった。
現在幕僚長を務めるバルトフェルドなどは
「《スペースグゥル》と探査プローフのお陰で宇宙軍は3倍の効率で動けるようになった」
とまで絶賛したものだ。

 

「というわけで、ミッションプランはこうする。
 ある程度まで艦で追尾した後、シン、ルナマリア両名は出撃、
艦を捕捉して目的を洗い出してくれ。
航続距離は《スペースグゥル》とエールパックを合わせてやっと足りるところだがら、
クィンとボーラスの《ゲイツR》には中間地点に待機してもらって、フォローに当たらせる」
「二人で艦に突っ込むんですか?」
ルナマリアがうへえ、と言いたげな表情を浮かべる。 無理も無い。
「だから、無理に戦闘することは無い。
 アンノウンの正体、目的がわかればすぐに帰還してくれ。
 アジトでもあれば、後に艦隊が編成されて討伐することになるだろうけど…」
「そのためにも、今接触して情報が欲しいってことですよね?わかりました」
「頼む。手空きのクルーは全員《ダガーⅡ》の準備を手伝ってくれ。
 以上、何か質問は…無かったら、現時刻よりミッションスタートだ」
「了解!」ブリッジ内にクルー達の明朗な声が響いた。

 
 

『ようやく追いついたわね』
「ああ、このまま追跡してみる」
シンとルナマリアは有線回線で会話しながら、捕捉した戦艦…ドレイク級の行き先をみやった。
「最大で10機のモビスツーツを積めるんだよなあ、アレ」
『展開されたら即死かも』
「上手く隠れないとな…」
《ダガーⅡ》の左手には擬装用の装備ハインドシールドが握られていた。
簡易式ミラージュコロイドとも言うべきもので、菱形の鏡面に宇宙空間を映すことにより
機体を覆い隠すものである。安価な割りには便利な代物だった。
ザフトのコスト削減主義は時として良く作用したのである。

 
 
 

「どうしたんだい?シルバーハンド。具合でも悪いのかい?」
宇宙船の一室で、顔立ちは整っているが趣味の悪い色眼鏡としゃがれた声が
妙な存在感を出している青年が、こげ茶色の髪を湛えた少女に問いかける。
顔の目から下をすべて覆う黒い覆面を被った少女は、ベッドに寝転がったまま青年に答える。
「ううん、身体は大丈夫なの。でも、何か神経がざわつくみたいな、嫌な感じがするの」
「そっか…楽にしてろよ」返事をしながらも青年は別のことを考える。
(彼女はカンがいいからな…本当に何かあったのかも知れない)
青年は少女に気遣う風を装いながら
「ブリッジに行こうか?宇宙の景色を見れば気分転換になるよ」
と彼女を誘った。
「有難う、お兄ちゃん」
少女は、銀色の機械の右手を伸ばして、青年に身体を起こして貰うようにした。

 

「おいおいチョッサー?ガキをブリッジに入れるなって何時も言ってるだろうが」
色眼鏡の青年をチョッサーと呼んだのはこの船のキャプテンである筋肉隆々とした大男だった。
「すみません。ちょっと様子がおかしかったので…」
「まあ、ガキの事はお前に任せるといったけどな?邪魔はさせるんじゃねえぞ」
本当にすみません。と言ったチョッサーは、少女が見ているもの…
宇宙空間の様子を見やる。
本当に暗くて、何もない…この辺りはデブリ域からも外れていて、
それが却ってチョッサーを不安にさせた。
(地球でもロクなこと無かったけど、やっぱり宇宙は怖いな)
ふと、レーダー手と銀色の腕の少女が口論していることに気がついた。

 

「オラ、邪魔スンナよガキ。しつこいとしばくぞ?」
「だって、おかしいったらおかしいんだもん、ちゃんと見てよ」
「何かあったのかい?シルバーハンド」
「うん…お兄ちゃんも見て、ここ…」
少女が指し示したのは船の後背部のカメラ映像だった。
パッと見では只の暗黒空間にしか見えないが…
「おや?」
何となく、少女の言わんとしていることがわかった青年は、レーダー手に指示を下す。
「この辺りを最大望遠にしてくれ」
「へいへいっと」
いかにも渋々という様子で、言われた通りにしたレーダー手。
その空間はやはり一見何もない暗黒だったが…
「成る程な、良く見つけてくれた。偉いよ、シルバーハンド」
「ホント?有難う、お兄ちゃん」
少女の目が、嬉しそうな形を描く。
「三文芝居は余所でやってくれ。んで、何かあったのか?」
流石に気に障ってきたキャプテンも割り込んできた。
「キャプテン、俺達は尾行されています」
「ふーん…って、何だってぇ!」

 
 

『ハッチ開いた!?気づかれたの?何で!?』
「知るか!兎も角やることやらないと…」
《ダガーⅡ》に乗る二人は狼狽した。
いきなりモビルスーツを展開させ始め、こちらを包囲するような動きを見せたのだ。
《ダガーL》や《M1》で構成されたモビスルーツ群を見て、正規の連合軍ではないと
判断したシンはそれでも、後退をかけながら連中に打電する。
「こちらザフトパトロール!貴艦は領宙侵犯を犯そうとしている!
 速やかに目的を明らかに…って問答無用かよ!」
シンの勧告はビームの砲火によって遮られた。
「逃げるぞルナ!」
『当然!』
そして二人の《ダガーL》は《スペースグゥル》を乗り捨てシールドを放棄して、離脱を開始した。

 
 
 
 

今回はここまでです。投稿の区切りは良く分かりませんOTL

 

・アスランとカガリとメイリンはオーブにいますが、出演する気配がありません。
・ダガーLがカンオケなのはアクマでルナ主観ということで…

 

では失礼しました。

 
 

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