XXXスレ360 氏_SEED DESTINY AFTER 龍宮の守人編_第4話

Last-modified: 2009-05-30 (土) 01:18:54

○前回のあらすじ
右手の力でアクマ召還サーバーを支配し、この世を魔界に変えようとするマユ。
妹の蛮行を食い止めるため シン・アスカはDS片手にデビルサマナーとしての修行を始めた。

 

では本編です。

 
 
 

エールパックの推力を全開にして逃げ始める二機の《ダガーⅡ》だが、状況は芳しくなかった。
『なんなの…、一機やたら上手い!』
すでに糸を切って無線に切り替えた状態でルナマリアが狼狽する。
総勢10機のモビルスーツ群の戦闘に立っている《シビリアンアストレイ》の射撃が、
一直線な離脱を許してくれないのだ。
浅はかに後退は出来ない、かといってまごついていればすぐに集団に弄り殺しになるだろう…
シンは意を決した。
「反転して、交戦する。《アストレイ》だけは落とさないと、逃げられない」
『やるしか無いってことね!』
ビームを回避する合間にシンに応じつつ、ルナマリアは腰に下げていた重機関砲を左手に持たせる。
バッテリー節約のために実体弾を中心に持ってきたのだ。
『3カウントで反転して、一斉射!』
「了解!3、2、1…ファイア!」
二機の《ダガーⅡ》は寸分狂わないタイミングで反転。直後に全火器を発射した。
手持ちの重機関砲に無反動砲、ふくらはぎにつけたミサイルランチャーに果ては頭部機関砲まで。
敵陣に砲火の華が咲く。撃墜は確認できなかったが、敵の分断は出来たはずだ。

 

「《アストレイ》をやる!ルナは援護を!」
弾丸を撃ちつくした武器をすべて放棄して、シンは腰に一振りだけ下げていた斬艦刀を両手持ちに構える。
『了解!』
そしてシンの《ダガーⅡ》はルナマリアのビームライフルによる援護を 受けつつ、
《シビリアンアストレイ》に向かって突入した。

 
 

「やるじゃない。ナチュラルの手練だと思ってたけど。もしかしてコーディネイター?」
《シビリアンアストレイ》に乗っている少女は、獰猛な笑みを浮かべながら舌なめずりをした。
「だったらとっても楽しめそうじゃない、ねえ!?」
追撃を振り切るために、自分を倒して隙を作ろうというのであろう、
ダークグリーンの《ダガーⅡ》が斬艦刀を携えてこちらに向かってきた。
「遊んであげる」
銀色の右手を生物のように動かして、モビルスーツのトリガーを引かせる。
左手に持たせたビームライフルと、右手に取り付けた《アッシュ》の腕の機関砲が同時に火を噴く。
その砲火を《ダガーⅡ》は大きく避けようとはしなかった。
装甲をフル活用して危険な弾だけは回避して、さらに錐もみ回転しながら接近した。
「はああああ!」
雄たけびをあげながらシンは、斬艦刀による必殺の突きを繰り出す。
それを《シビリアンアストレイ》は柔道さながらに右手のクローで腕を取って、
そのまま投げ飛ばすように逸らす。
「バイバイ!蜂の巣になって死ね!」
「まだ!」
シンはスラスターを全開にして無理矢理カーブさせる、
そのまま《シビリアンアストレイ》の背後を取る格好となって、斬撃を繰り出す。
少女も身を捩じらせるようにして回避させたが、左肩を少しスライスされてしまった。
一対一に拘るのは危険か。少女は歯噛みしつつも冷静に判断し、一度後退した。

 
 

『このままじゃジリ貧かも』
ルナマリアが焦るのも無理はない、
さっきの一斉砲火で隊列は乱せたが、撃退できたのは1機だけだった。
濃厚な火線を掻い潜りつつシンの援護を果たそうとするが…
元々2対10をやるには火力も性能も足りなかった。
「持たせて見せる!」

 

迂闊に接近してきた《M1》を横一文字に両断しつつ、
シンはさっきの《シビリアンアストレイ》を探した。
自分が仕留められなかったことを棚に上げるわけではないが、あの一機はエースだ。
野放しにするのは危険すぎる。

 

「緑のは強かったけど、あなたはどうかしら?赤いの!」
《シビリアンアストレイ》は僚機を二機引き連れてルナマリアの《ダガーⅡ》に向かって突入した。
「ルナ!」
シンも同時に3機相手どっていて、援護に入れない。
『アタシだって、赤なのよ!』
舐めるなと言わんばかりに、ルナマリアは3機と正対する。
ライフルを乱射して敵を散開させつつ、左腰に下げたサーベルを引き抜く。
背部のスラスターに直撃を受けた《M1》があらぬ方向に飛んでいき、まず一機。
ビームを受けて火器を失った《ダガーL》がサーベルを抜いてルナマリアに挑むが、
単調な攻撃で回避は容易かった。カウンターで胸の上あたりを突き刺す。

 

「じゃあね、赤いの」

 

その後ろから、《シビリアンアストレイ》が姿を現した。少女は右手にビームクローを発生させ、
そのまま友軍機のバックパックを抉るように破壊、二機いっぺんに蹴り飛ばす。
「バアーン」
少女の声に呼応するように、《ダガーL》が爆散。ルナマリアの機体は青い炎に飲まれた。

 
 

「ルナ!?応答してくれ!ルナァ!」
「キャハ!まだ生きてた。いつまで持つかな?ねえ!?」
爆発のダメージでボロボロになった赤い《ダガーⅡ》を、
《シビリアンアストレイ》は弱った虫をいたぶるようにライフルで責め立てる。
左腕、右足と次々と打ち抜かれ、四肢を失っていくルナマリア機。
「ほらあ!諦めないほうがいいよ?ほら!」
最後に少女はライフルの狙いをコクピットを若干それた位置に定める。
直撃させるより、炎に包まれる己を認識させられる分、より死への苦しみを味わえる部位に。
「バイバイ!…って、何のつもりかな?緑の」
シンの《ダガーⅡ》は射線に割り込むようにして、ビームからルナマリアの機体を身を挺して庇った。
その一撃で左足の膝から下を喪失する
「ヒーローごっこのつもり?舐めるなコーディネイター!」
「ルナ!脱出しろ!機体が持たない!」
聞こえたかどうかはわからないが、ルナマリアがコクピットから脱出するところは確認できて、
シンはとりあえず安堵できた。
「仲間が大事なら、一緒に殺してあげるよ?」
「お前はあ!」
《ダガーⅡ》は手にしていた斬艦刀を投げる。
それが虚を突く攻撃となって、《シビリアンアストレイ》は右腕を丸ごと持っていかれる。
「アハ!やっぱり強いじゃない!でも…えっ」

 

反撃のライフルを繰り出そうとしたときには、いつの間にか密着するほどに接近されていた。
モニターに大写しになる《ダガーⅡ》の無個性な顔が、何故か怒気を孕んでいるように見えて…
「ひっ…」

 

頭部の機関砲でモニターをずたずたにされる。
ライフルを撃っても発射前に腕でどけられてあさっての方向に放たれる。

 

 殺される。

 

確信にも近い恐怖心を抱き、萎縮した少女は《ダガーⅡ》にコクピットブロックを蹴られて、
そのまま吹っ飛ばされた。

 

「何で…生きてるの?」
衝撃に耐え切ったあと、少女の頭によぎる疑問。
その答えはノイズだらけのモニター越しに見える、緑色の《ダガーⅡ》が教えてくれた。
こちらに構わず後退したのである。
さっきの赤い奴のパイロットを、助けに行ったのか…私を無視して。
コケにされた。という感情が萎えかけた闘志に再び火をくべる。しかし…
『後退しろ、シルバーハンド。作戦失敗だ、撤収するぞ』
色眼鏡の青年が、彼女を引き下げようと通信を繋げてきた。
「どうして!わたしまだ戦えるよ!」
『ザフトの増援が来た、2機のうちに掃除したかったがもう無理だ』
「でも!」
『命令だ。今すぐ撤収しろ』
問答する余地は無い、と言いたげな青年の様子を見て。
「わかり、ました…」
銀色の右腕の少女は、母艦に戻った。

 
 

「ルナ!よかった、生きてる…」
機体を捨てて宇宙を流されていたルナマリアにようやく追いついたシンは、
右手でゆっくりと、包むように迎え入れる。
ハッチを開けて、そのままコクピットに彼女の身体を放りこんだ。
「ルナ!大丈夫か!怪我してないか!?」
「うん…何とか平気だったよお」
「よかった…」感極まったシンは、ルナマリアの身体を抱きしめる。
「え、ちょっと、へ?」

 

「もう、急に恥ずかしいことしないでよ」
「ゴメン」二人とも、顔を真っ赤にしていた。
「別に謝らなくても、いいんだけどさ…」
「にしても…随分と流されちゃったな」
あからさまに話題を逸らすとするシンにむっとしつつも無限の空間に目を見やる。

 

本当に何も無い、暗黒と、星の世界…

 

「救難信号は出したから、新兵に拾ってもらうとするか…カッコワリー」
「そしたら私は10倍格好悪いんですけど?」
「違いない…あいてっ」
救助を待つ間はすることも無く、ただ流れに身を任せているばかりだった。
高速で流されてるわけでもなかったし、こういうときは無駄にエネルギーを使わないのが上策だ。

 

「ながれーながされー、いつかーまたあえるー…」
「ルナ、何それ」
「古い歌謡曲よ。ホントこんな感じだからさ…ん?」
「何か見つけたの?」
しかし、シンの眼前には星が広がるばかりであった。
「んー…星の位置が変なのよ」
「変?」
「天体マップって入ってる?」
ルナに言われて、モビルスーツのデータベースに圧縮保存していたそれを解凍する。
普段使わないデータだから、削除しようかとも思っていたものだったが…
「カメラで映してる画を照合して…ほら!エラーが出た!」
「どういうこと?」
「今見てる天体の位置が嘘なのよ。例えば…鏡面で宇宙空間を映している部分があるとか」
「ハインドシールド見たいに?」
「うん、私達が追尾していたのがバレたのも、それに気がついた人間がいたからだと思う」
「分かるかよ、普通…」

 

「だとしたらこれって…コロニーサイズの何かを隠していることになるんですけど…」

 
 
 
 

 …人が生きている限り 人が暮らしている限り
 争いが絶えぬというのなら 私は私の信じるものたちに
 人類の未来を 種の存続を託したい…

 
 
 

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