Z-Seed_◆x/lz6TqR1w氏_第03話『対立』

Last-modified: 2007-11-12 (月) 12:30:40

『破損した部品は俺が回収しておくから、
君はコア・スプレンダーで先に帰投してくれ』
「頼みます」

ドッキングアウトをし、ミネルバへ向かって舵を取る
後方モニターを展開すると、次第に小さくなって行く謎の機体とインパルスの残骸
――そして、前方モニターではその機体が撃墜したアビスの回収が始まっている

「くそっ……もっと上手く操縦出来ていたら……」

悔しさから、レバーを握る力が強くなるのをシンは感じた
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機動戦士ZガンダムDESTINY
第03話『対立』

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「まずは初陣ご苦労様」
タリアの労いに素直に喜ぶことなど到底できないシンの表情は浮かない
今から強奪騒ぎでうやむやになってしまった『隊長』との顔合わせをすることになっており、
レイとルナマリアも姿を見せていた

「早速、本題に入るわね。
貴方たちの隊長となるのは、セカンドステージMSの設計にも関わった者で、
名前は『カミーユ・ビダン』
今、MSデッキにいるそうだから、ちゃんと挨拶するのよ」

三人は敬礼をし、艦長室を後にする
――向かう先はもちろんMSデッキだ

「憧れちゃうな~」

道中にて、ルナマリアが楽しげに口火を切った

「ふん、きっと『安楽椅子のパイロット』だろ。実戦じゃどうだかな?」
シンは苛立ちを隠さずに答えた。デスクワーカーなら図面を引いていればいいのだと言わんばかりの態度だ

「ひどい言い様ね……ボコボコにされたからってイライラしすぎよ」
「うるさいな!」

シンは悪態を突かれて声を荒げたが、ルナマリアは気にせず話続けた

「それに名前からして女の人でしょ?凄いなぁ……」
「その辺にしておけ、ルナマリア」

シンがわなわなと震えているのを見かねたレイの制止に、
ルナマリアは口をつぐんだ

「ああ、カミーユさんなら、あの青いパイロットスーツの人だよ」
古顔のメカニックの指差す先にはインパルスのコンソールをいじっている人影があった
ヘルメットを付けているので表情は分からない

「あいつ……俺の機体に!!」
「ちょっと、シン!」

ルナマリアの制止も聞かずに、疾風怒涛の勢いでコックピットに詰め寄るシン

「あんた!いくら上官でも、人の機体を勝手にいじらないでくれ!」

コックピットの人影は、怒鳴り声に一瞬ぎょっと身を強張らせた

「済まない。気になってしまって」

ヘルメットを外し、表情が露になる

「カミーユ・ビダンだ。よろしく」

少し不機嫌そうな顔つきの上官は手を差し出したが、シンは応じなかった

「……なんだ男か」

何故ならシンは予想とは反した上官の性別に驚愕していたからだ
――カミーユの表情は一層思わしくなくなった

「悪いか?」
「……?」
「カミーユが男の名前で悪いかよ!」
「何を怒ってるんだ!?あんたは!」
明らかにカミーユは激昂している

「だいたい、あの戦い方はなんだ!?
数的不利にも関わらずソードでの出撃!
自信があるのかと思えば、損傷!
再換装してもすぐに戦線離脱!
もう一度、学校からやり直した方がいいんじゃないか!?」
「あ…あんたに何が分かるんだ!」
「一番間近で見れば明らかだ!
今、俺がここでインパルスをいじっているのも、お前の尻拭いの整備のためさ!」
「うっ……」

何も言い返せない――目の前の男は援護に来た機体のパイロットだったのだから――
不満を吐き出しきったのか、去って行くカミーユ――
シンはその場に立ち尽くしていた