「くっそー! 何であんたなんかに!」
「もうお前も! 過去に囚われたまま戦うのはやめろ! そんなことをしても、何も戻りはしない!」
「な、何を!」
「なのに未来まで殺す気か!お前は!」
「は!」
「お前が欲しかったのは本当にそんな力か!」
「くっ……」
『お兄ちゃーん!』
脳裏の中でマユが呼びかけてくる。ここは旅行で行った京都か。舞い散る紅葉の中でマユが呼んでいる。
『お兄ちゃーん!』
「マ…」
呼び返そうとした所で喉が詰まる。そうさ、例えキラって奴をぶっ殺したところでマユは戻りしない!
「だけど! だけどっ!」
この気持ちが治まらないんだよぉ!!
「シン! もうやめて! アスランも!」
「……ルナ! なぜ邪魔をする! お前もかぁーーー!!」
「この馬鹿やろう!!」
「うわぁぁ!! 」
ジャスティスのビームの刃が向かってくるのが妙にスローに見える。
ああ、ここでやられるのか。
マユ、もしもかなうなら、この人生をお前と兄妹じゃなくやりなおしたいよ……
……? コクピット内に、キラキラ光る光の粒が……
「ああ!? どうしても取れなかった大邪神リリカル・ミュミュ様のリストバンドが!」
リストバンドが千切れて、重りの砂が零れ落ちて、光の粒になって……
光は次第に大きくなり俺を包み込んだ――
……気がついたら、俺は、木の椅子に座っていた。目の前のパソコンからはアナウンサーが緊迫した様子で、カオシュンがどうとかしゃべっている。
頭が、痛い。
「俺は、誰だ?」
俺は、シン・アスカのはずだ。だが、よりにもよってキラ・ヤマトとしての記憶がある。ただ、それは感情を伴わない、無機質な記憶。その記憶が、今はC.E71年だと告げていた。
「キラー。こんなとこに居たのかよ、カトー教授がお前のこと探してたぜ」
キラの記憶によると、こいつはトールだ。トール・ケーニヒ。こいつがコーディネイターだろうと関わり無く接してくれる友人だ。
「トール。俺は、キラ・ヤマトか? 今は、C.E71年の1月25日。そしてここはヘリオポリスで合ってるか?」
「なんだ? いきなり? ああ、確かにお前はキラ・ヤマトで今日はC.E71年の1月25日で、ここはヘリオポリスだよ」
「……ふふふ…はっはっはっはっは! やったぁ!!!」
マユ! お前はまだ生きているんだ! そして! 俺とは兄妹じゃないんだ!!!
「キラ、頭、大丈夫か?」
「うわぁぁ!」
「何やってんだ、お前。ほら、行くぞ!
「ああ、うん」
こうして俺の、キラ・ヤマトとしての日々が始まった。