sin-kira_シンinキラ_第09話

Last-modified: 2011-12-10 (土) 22:16:08

◇◇◇

 
 

合流前に、足付きを落とすと言うイザークのプランに、僕は反対だった。冷静に考えて無理がありすぎるからだ。

 

「確かに、合流前に追いつくことは出来ますが…これではこちらが月艦隊の射程に入るまで、10分程しかありませんよ? それにまだ護衛艦が2隻残っていますよ、イザーク」
「10分はあるってことだろ? ニコル。それに、護衛艦だって手負いだろ」
「臆病者は黙っているんだな」
「くっ……!」
「10分しかないのか、10分はあるのか、それは考え方って事さ。俺は10分もあるのにそのまま合流すあいつを見送るなんて、ごめんだけどね」
「同感だな。奇襲の成否は、その実働時間で決まるもんじゃない」
「それは分かってますけど……ヴェサリウスの襲撃ではジンが3機殺られて、それにアスランのイージスも傷を負ったんですよ?」

 

そう。モニターで見たアークエンジェルの搭載機の働きは素晴らしかった。『エンデュミオンの鷹』操るメビウスゼロはもちろん、あの、あっという間に2機のジンを片付けたストライクの動きは! 本当に、何者が乗っているんだろう?

 

「そんなに臆病風に吹かれるなよ。Xナンバーをジンと一緒にするなよな。こいつらとジンの性能差、お前もわかってるだろう? それに俺ら、赤服よ?」
「アスランがやられたのはあいつが間抜けだっただけだ! ヴェサリウスは、ラコーニ隊長の船に、ラクス嬢を引き渡したらすぐに戻るということだ。それまでに、足つきは俺達で沈める。いいな!」
「ОK!」
「……分かりました」

 

イザークもディアッカも逸っている。僕は不安だった。……でも! 臆病なんて呼ばせない! こうなったら絶対に足付きを落とす!

 
 

◇◇◇

 
 

『総員、第一戦闘配備! 繰り返す! 総員、第一戦闘配備!』

 

自室でのんびりしてたらこれだ! くそ! 後もう少しで第8艦隊と合流なのに! てゆーか合流したら低軌道会戦が待ってるのに! これは歴史上の出来事か? それとも俺が来て変わった事なのか? どっちにしろ学校じゃこんな細かい事まで教えてくれなかった。俺は自分の判断で動くしかない!

 

「戦争よぉ! また戦争よぉ! あぁぁ!」
「ああ、ほら、立てよ。ちゃんと安全なところにいるんだぞ」

 

俺はぶつかって来て転んでしまった女の子を立たせると、頭をぽむと叩いて、格納庫へ向かった。

 
 

「くっそー!こんなタイミングで、よくやる! ムウ・ラ・フラガ、出る!」
「エーリッヒ・ハルトマン、出る! イェーガー少尉、ついて来い! 俺たちは一撃離脱に徹する! 10分も凌げば第8艦隊が来るぞ!」
「は、はい! チャック・イェーガー、行きまーす!」

 

「よっと」

 

俺もストライクに飛び乗った。

 

『キラ、ザフトは、ローラシア級1、デュエル、バスター、ブリッツ!』
「奪われた奴か!」
『APU起動。ストライカーパックは、エールを装備します。カタパルト、接続。ストライク、スタンバイ。システム、オールグリーン。進路クリアー。ストライク、発進です』
「シ……キラ・ヤマト、ストライク、行きます!」

 

――! アークエンジェルが被弾した! 敵の艦砲か!

 

「機体で射線を隠すとは! 味なことやってくれるじゃないか!」
「フラガ大尉! デュエルかブリッツをお願いできますか!? 俺は危険度から判断してバスターをまず排除する!」
「わかった!」

 

バスターは右手にリニアレールガン、左手に大型ビームライフルと高出力の砲を撃ってくる!
くっ! デュエルが間に割って入って、ビームライフルで牽制しながらビームサーベルを抜く!
どうする!?
――その時だった! デュエルの前面で対装甲リニアガンの弾頭が続けざまに弾ける! 思わず盾をかざし身を縮めるデュエル。
ハルトマン大尉とイェーガー少尉の奇襲だった!

 

「よし!」

 

俺はデュエルをかわしてバスターに接近する!
後せいぜい10分だ! ビームライフルも遠慮なく撃てる!
とうとう何射目かでバスターの右腰のレールガンを破壊した! やった!
バスターは後退しようとするが、エールストライカーは伊達じゃない!
俺は急接近してビームサーベルを抜き放ち、大型ビームライフルをかわしながら上からバスターに切り付けた! 盾を持たないバスターはそれを防げず、俺はバスターの左腕を見事切り落とした!

 

「気をつけろ! みんな! ブリッツが姿を消した!」

 

フラガ大尉からの通信だ!
その声を聞きながら、俺はデュエルと正対する。

 

「イザーク・ジュール! こんのぉ裏切り者がぁ!」
「なにい! 貴様何者だ!」
「問答無用! ラクスの犬が!」
「にゃんだとぉ!!1!!」

 

お互いビームサーベルで斬り合う。さすが赤服かよ、なかなかの腕じゃないか。だが! エールストライカーの力! 俺が押し気味に斬り合いを進める!

 

『キラ戻って! ブリッツに取り付かれたわ!』
「戻れ坊主! 牽制はしっかりやってやんよ」
「ちっしょうがねえな」

 

フラガ大尉のメビウスゼロがデュエルを牽制するのを尻目にアークエンジェルへ向かった!
そこではブリッツがアークエンジェルにビームライフルを撃ち込んでいた。

 

「させるかよぉ!」

 

俺に気づいたのか、ブリッツは逃げ出した。
……また姿を消した? どこだ? どこにいる?

 

次にブリッツが姿を現したのは、ハルトマン大尉とイェーガー少尉によりぼろぼろにされたバスターのそばだった。
ブリッツは、バスターを回収すると引き上げて行った。
デュエルも、メビウスゼロを牽制しながら引き上げて行った。

 

「やったなぁ! 坊主!」
「撃墜とは行きませんでしたけどね。修理に大分かかるでしょうよ。アークエンジェルも無事だったし」
「うまくいってよかったよ。ヤマト少尉」
「無事に帰れる……よかった……」
「ははは、イェーガー少尉、良かったなぁ」

 

俺達はバスターの左腕をみやげにアークエンジェルに帰還した。

 
 
 

とうとうアークエンジェルは第8艦隊に合流した!
艦隊の織り成す光の粒が頼もしい。
でも、ここでみんなとお別れかな、と思うと寂しくもあった。
そう、ナタルさんに言われるまでもなく、俺はまだアークエンジェルに乗り続けなきゃならないんだ!
ラクスにフリーダムをもらうまで!

 

合流しても、俺は忙しかった。メビウスゼロの修理だ。

 

「すまんな坊主。でも、不安なんだよ! 壊れたままだと……」
「第8艦隊っつったって、パイロットはひよっこ揃いさ! なんかあった時には、やっぱ大尉が出れねぇとな」
「わかってますよ。なにかあったら大変ですからね。急ぎましょう!」

 

この後は低軌道会戦が待っている! 俺も焦っていた。たとえモビルアーマーでも、フラガ大尉のメビウスゼロがあるのとないのじゃ大違いだ!

 

「ねぇ、拾ってきたバスターの94mm高エネルギー収束火線ライフル、使えませんかね」
「面白い事を考えるなぁ」
「確かに、Gにはメビウス搭載のリニアガンは効かない。以外に面白いかも知れんぞ」
「ジェネレーターにバッテリーを積んでも……多少の機動力低下でもメビウスゼロならなんとかなりますか。もともと機動力よりガンバレルで相手を翻弄する機体ですからね」

 

俺達は改造に熱中した。

 

……

 

旗艦のメネラオスからハルバートン准将がやってきた。お髭の素敵なおじ様だ。
みんなで整列してお迎えした。
准将は、マリューさんやナタルさん達と挨拶をするとこちらにやってきた。

 

「……ああ、マリュー大尉。彼らが……」
「はい。ヘリオポリスの学生たちです。彼らがいなければ、この艦はとてもここまでたどりつけなかったでしょ
う」
「君達の御家族の消息も確認してきたぞ。皆さん、御無事だ!」
「あー! よかったぁ」
「よかったねー!」
「とんでもない状況の中、よく頑張ってくれたなぁ。私からも心から礼を言う」

 

そして俺の前に来ると頭を下げられてしまった!

 

「君には、これからも苦労をかけるという。よろしく、頼む」
「は、はい!」
「閣下、お時間があまり……」
「わかった、ホフマン。後でまた君達ともゆっくりと話がしたいものだなぁ」

 

そう言って准将は去っていった。
去ったとたん、俺はみんなから質問攻めにされた。

 

「おい、キラ! お前この艦に残るって言うのか!?」
「そうだよ。せっかく解放されるのに……」
「キラ、ちゃんとした理由聞かせてもらえるんでしょうね?」
「ああ……考えたんだ。オーブに帰って、本当に終わりになるのか、平和になるのかと。中立とは言えオ
ーブの外はやっぱり依然として戦争のままで。もしかしたら巻き込まれるかもしれない。いや、もうとっくに
巻き込まれているんだ。ヘリオポリスの件から見て、オーブは連合と組んでこの戦争に臨んでいるのは確かだ。なら、俺の力がオーブのためになるなら、役に立ちたい」
「キラ……」
「キラ、お前はしっかりしているよ。ほんとにっ! しっかりしなきゃいけないのは私なのに……」

 

カガリは俺の肩をがしっとつかんで……泣かれてしまった。

 

……

 

避難民の人達がランチに乗り込んでいく。

 

「今まで、守ってくれてありがと」

 

女の子――エルちゃんが俺に折り紙で作った花束をくれた。

 

「ああ、エルちゃんを守れてよかったよ」

 

俺は飛び切りの笑顔で答えた。

 

「じゃあな、キラ君」
「あ、アルスター事務次官、フレイ」
「悪かったわ。その、色々と気に障るようなこと言ったり」
「ああ、気にしてないさ。あ、なんならちょっと頼んでいいか?」
「なーに? 私に出来る事なら」
「ちょっと恥ずかしいから……」

 

俺はフレイの耳に囁いた。

 

「やーだ! 恥ずかしい! じゃ、私も耳に、ね?…………」
「ありがとう! じゃ、元気でな」
「ええ、キラも無事を祈ってるわ」

 

俺の頭の中にフレイの「お兄ちゃん、大好き!」と言う声がリフレインしていた。ふふふ、これで後10年は戦える!

 

「おーい! なに妙に嬉しそうな顔してるんだ?」
「あれ、サイ、トールも。お前達、その服?」
「俺達も残る事にしたんだ」
「そんなー! サイ!」
「フレイ、俺達がこの戦争で何をできるかよく考えた結論さ。君は、安全な所にいてくれよ。君を守ってるって思うと勇気が沸くから」
「サイ……」
「あー、熱いなぁ。お二人さん」
「カガリ! カガリは降りなくていいのか? その服装だと志願した訳でもなさそうだし」
「さすがに私が志願する訳にもいかないだろう? 訳のわからんシャトルよりキラに守られる方が安全だと思っただけさっ」
「後悔するなよ」
「後悔なんかしないよっ」
「わ、こら、急に飛びつくな」
「ふむ、だいぶ鍛えてるみたいじゃないか、私に腕相撲で負けてから。感心感心」
「お前に負けたからじゃないぞ。前から鍛えようと思ってたんだ」
「ふふーん」

 

カガリは俺の腕から手を離すと避難民の人達の所へ挨拶に行ってしまった。

 

「なにかあったらちゃんと安全な所にいるんだぞ!」

 

カガリに声をかけ、俺は格納庫へ向かった。
その途中、俺がヘリオポリスで捕虜にしたザフト兵に会った。そういや、こいつとは結局食事を運ぶだけの関係だったなー。俺も、ザフト兵に何言っていいかわからんかったし。ミゲル・アイマンと言うらしいその男は、ヘリオポリスがザフトの攻撃で崩壊したと言う生き証人にでも政治的に使われるのだろう。

 

「おい」

 

……? 彼が声をかけてきた。

 

「世話になったな」
「いや、さほどの世話しちゃいねぇよ」
「そう言えば、いつか歌が聞こえてきたような事があったがあれは?」
「ラクス・クラインかな? 漂流してた所を保護してね。俺が、ザフト軍へ返したよ」
「そうか……感謝する」

 

ミゲルは、メネラオスへのシャトルに連れられて行った。

 
 
 

もう低軌道会戦まで間もないだろう。俺はストライクのチェックをしていた。

 

「あ!? ハルバートン提督」
「ヤマト少尉、感心だな。こんな時にまでモビルスーツのチェックかね」
「はい。いざと言う時に後悔しても遅いですから」
「しかし、改めて驚かされるよ。君達コーディネイターの力というものには」
「……」
「ザフトのモビルスーツに、せめて対抗せんと造ったものだというのに、君達が扱うと、とんでもないスーパーウェポンになってしまうようだ」
「それだけのポテンシャルがありますよ。この機体は……」
「君の御両親は、ナチュラルだそうだが?」
「え! …あ…はい」
「どんな夢を託して、君をコーディネイターとしたのか……」
「…はぁ…」
「何にせよ、早く終わらせたいものだな、こんな戦争は!」
「閣下!メネラオスから、至急お戻りいただきたいと」
「やれやれ…君達とゆっくり話す間もないわ!」
「あぁ……」
「ここまで、アークエンジェルとストライクを守ってもらって感謝している。これからもよろしく頼む。良い時代が来るまで、死ぬなよ!」

 

――! ここだ! 確か低軌道会戦では、『地球軍が端から艦隊戦をあきらめ艦砲射撃をせず、最初からモビルアーマーと個艦の防空力のみに頼ったような行動をした事から十数機のモビルスーツが地球軍艦隊の内懐に入り込め、また敵モビルアーマーの格闘戦を重視する傾向が、第8艦隊を壊滅させるに至った』とか習ったぞ! 歴史を変えるなら今だ!

 

「……あの!」
「ん?」
「もし、ここをザフトに襲われたらどうするおつもりですか? いや、若輩者の意見として聞いてください」
「いや、もちろん君は敵のモビルスーツと渡り合ってきた男だからね、聞かせてもらおう」

 

俺は、ザフトの艦はモビルスーツの母艦としての機能が大きく、ザフト自身が艦船で出来る事もモビルスーツにやらせがちなことを伝えた。単純に戦艦としてみるなら地球軍の方が優れている事も。

 

「要するに、相手の得意な土俵に乗って戦うって事はしない事です」
「ふむ。興味深いな。続けてくれ」
「閣下、お時間が……」
「待たせておけ!」

 

俺は、すぐにモビルアーマーを発進させず、長距離から戦艦による艦砲戦で敵モビルスーツ、及び戦艦を牽制、もしくは弱体化させるべきだと伝えた。それから、メビウスはハルトマン大尉の言う通りに一撃離脱がもっとも能力を生かす道である、とも。

 

「あ…あの…、すみません。素人なのに言いたい事言っちゃって」
「いや、大いに参考になったよ。ありがとう。どうしてどうして、戦理に則っている」
「どうも。アークエンジェルはこれからどうするんですか?」」
「アークエンジェルはこのまま地球に降りる。アラスカの石頭どものところへ実物を持っていってもらわねばならん」
「あぁ…その…もし敵のモビルスーツが出てきた場合、自分も出してもらえませんか?」

 

俺は、未来の経験から、10機程度のジンなら、自分一人でなんとかなると思っていた。

 

「……君がそう言うのはわかる。だが、君が居れば勝てるということでもない。戦争はな、うぬぼれるな! ……無事に地球へ降ろしてやる。安心しろ」

 

そう言って、ハルバートン提督は去って行った。俺は、歴史を変えられるんだろうか。いや、出来たと信じたい!

 
 
 

『総員、第一戦闘配備!繰り返す!総員、第一戦闘配備!』

 

突然鳴り響く警報!

 

「お、坊主、用意がいいじゃねえか。だが、パイロットスーツは着て来い」
「はい!」

 

更衣室に走る。
ブリッジへ向かうサイたちに会った。

 

「頑張れよ、キラ」
「ああ、お前達もな」

 

俺さっさと着替えては格納庫へ向かう。低軌道会戦……モビルスーツ十数機で第8艦隊を壊滅させた、ザフトの栄光ある戦い……くそっ。それが今俺の前に立ちふさがる。

 

今回相手はナスカ級1、ローラシア級2、モビルスーツが確認されているのがジンが10機、その他には奪われたGだけだ。どうやらバスターは突貫工事で直したらしく大分形が変わっている様だ。
もう外では艦隊戦が始まってる。

 

そばのメビウスではハルトマン大尉から艦隊のメビウス隊に命令、と言うかアドバイスの声が飛んでいる。

 

「いいか、一撃離脱に徹しろ! 一撃したら逃げ回れ! 速度と数じゃこっちが勝ってる! 相手を疲れさせるんだ! 相手があきらめて別の奴を狙いだしたらまた攻撃しろ! 絶対密集するなよ!」

 

一機、また一機、弾んだ声で撃墜報告が入ってくる。とりわけローラシア級の撃沈はみなに歓声を上げさせた!
それでも敵のモビルスーツは着実に艦隊に近づき、メビウス隊が発進を始める。出来るだけ多く敵のモビルスーツが撃墜されるように俺は祈った。

 

幸い敵のジンの多くは母艦の喪失に動揺したのか、こちらのメビウス隊で充分拘束できているようだ。撃墜報告も続いている。でも、それを抜けてこようととしているのが、奪われたG4機!

 

『デュエル、バスター、先陣隊列を突破! メネラオスが応戦中』

 

「艦長!ギリギリまで俺達を出せ! 何分ある?」

 

フラガ少佐(昇進した!)が要請する!

 

「格納庫に座ったままやられるのは嫌だ! 艦長!」

 

俺も叫ぶ!

 

「分かった!ただし、フェイズスリーまでに戻れ! 高度とタイムは常に注意しろ!」

 

ナタルさんだ! ナタルさんから注意が飛ぶ!

 

「いいか、いざとなったらGは単独で大気圏突入が可能だ! お前らは惑わされずフェイズスリーまでに戻れ!」

 

「ああ、ちゃーんと防いで帰って来るさ! キラ・ヤマト、ストライク、行きます!」

 
 

……くそ!重力が重い! デスティニーなら……いや、無いものねだりをするな、俺!
修理されて出てきたバスターは、左手がジンの物に、そして肩にリニアレールガンとミサイルポッドを搭載していた。そして身体全体を追加装甲?が包んでいる。

 

「悪いねぇ! 修理してきた所を! 俺は楽な方から片付けたくてね!」

 

バスターから放たれるミサイルを避けながら接近!
バスターは応急で取り付けられたらしい腰のラックからビームサーベルを抜いた。

 

「ほほう。多少機動性が上がったようだな! だが! 付け焼刃ってね!」

 

二・三合打ち合う内に、相手の実力は読めた! こいつ、接近戦じゃそれほどでもない!
俺がバスターの右手を叩き切ると、いきなり爆炎が上がった!
なんだ!?
爆炎が晴れて俺が見たのは、追加装甲を捨て身軽になって逃げていくバスターだった。

 

「チャンスだ! 水に落ちた犬を叩くぞ! イェーガー少尉!」
「はい!」

 

ハルトマン大尉達がバスター目掛けて突っ込んで行く。

 
 

――! ローラシア級がメネラオスに! あれは突撃なんてもんじゃない、特攻だ!

 

「させるかよぉ!」

 

あ、フラガ少佐がビーム砲とリニアガンでエンジンを打ち抜いた! あと一息! ええい!
対空砲火をくぐって艦橋にビームサーベルを突き刺すと重力のまま下に落ちながら切り裂いた!

 

まだか! エンジン部に取り付きビームライフルを連射する!
やった! ローラシア級はあちこちから爆発を起こしながら地球へ落ちていった。

 

「メネラオスに言え! もう俺達だけで充分だと!」
『了解しました』

 

メネラオス始め艦隊各艦は、徐々に高度を上げていった。

 

「ストライクゥー!」
「何?」
「貴様許さん!」
「裏切り者のラクスの犬か! バスターに一本ビームサーベル貸したようだが無駄だったようだな!」

 

俺は嘲笑するように叫び返した。

 

「今度こそ、そのそっ首、ラクスの前に捧げてやる!」
「にゃにおぅ!!1!!」

 

毎度頭に血が上りやすいねぇ!

 

俺達はぶつかり合い、距離が離れる。

 

――! メネラオスのシャトルが! 一瞬、2機の間を通り過ぎた。

 

デュエルは何射かこちらに撃って来るもののまるで当たらない。
何? 狙いを変えた? ――シャトルに狙いを!
馬鹿かこいつ、敵の目の前で! シャトルを撃とうなんて許さん!

 

俺は冷静にビームライフルの狙いを定めると、デュエルを撃った――
頭に血が上っていたのだろう、イザーク・ジュールは碌に防御もしていなかった。
デュエルはビームが当たった右腕が爆発し、そのまま地球へ落ちていった。

 

「キラー!」

 

――なに? 直上からイージスとブリッツが! もう高度が下がって動きにくいってのに!

 

「アスラン・ザラ!」
「キラ! 俺は裏切ってなんかいないぞ! ラクスは親が決めただけの許嫁だ!」
「だから、なんだ! 裏切り者には変わりない!」
「そ、そんな。キラ!」
「アスラン、何を言ってるんです! もう地球降下の用意しなきゃだめですよ! 角度とか!」
「アークエンジェルは撃たせん! 撃たせはせんぞぉ!」

 

ビームライフルを連射する。
手足の先っぽをジンの物に付け替えたイージスはまだなにか言ってたようだけど、ブリッツに引きずられていった。やれやれ。

 
 
 

さて、どうしたものか? 高度が下がりすぎてこちらも、あまりもう身動きが取れん状態だ。それに暑い。
お!? 徐にアークエンジェルが、艦を寄せて来てくれている!
俺はようようストライクを動かして着艦。格納庫まで何とかたどり着くと、気絶した。

 
 
 
 

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