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sin-kira_シンinキラ_第11話

Last-modified: 2011-12-10 (土) 23:15:16

「じゃぁ、4時間後だな」
「気を付けろ」
「分かってる。そっちこそな」
「ヤマト少っぃ…しょっ少年……た…頼んだぞ…」
 
マリューさん、ナタルさんとサイーブさん達が武器の調達に行くと言う。俺も行きたかったが、代わりにカガリとアフメドで日用品などを街で仕入れてきてくれと言われた。
気晴らしをさせようとしてくれているのだろう。ありがたくそうさせてもらう事にした。
ただし、調達する武装に注文を付けて置いた。ジンの重突撃銃にM68キャットゥス500mm無反動砲、パルデュス3連装短距離誘導弾発射筒、8連装短距離誘導弾発射筒と言ったザフトの武装だ。
マリューさん達はあきれていた。保証はできないと言っていたが、ここならかえって手に入りやすいだろう。俺は、今までの経験からバッテリーにすべてを頼るかのようなストライクの武装に不安を抱いていたのだ……
 
「何ボケッとしているんだ? 少ぃ……キラさんよぅ」
「いやほんとに、ここが虎の本拠地かって思ってね。随分賑やかで、平和そうじゃないか」
「ふん! 付いて来い」
「え?」
「平和そうに見えたって、そんなものは見せかけだぜ」

 

アフメドが指し示すその先には、陸上戦艦レセップスが鎮座していた。

 

「あれが、この街の本当の支配者だ。逆らう者は容赦なく殺される。ここはザフトの、砂漠の虎のものなんだ」
「……」

 

俺は何も言えなかった。前世、パナマで、ザフトが何をやったのか。それは恥ずべき行動だと教えられた。それに、イザーク・ジュール。今回は俺が防いだが、前世世界では、シャトルを撃った事で一度は罪に問われたはずだ。ザフトはまだ若い。そんなはねっかえりがいてもおかしくない。アンドリュー・バルトフェルド。残虐な男だったとは聞いていないが、あいつは平時に乱を起こすような行動を取った!

 

 

「これでだいたい揃ったがぁ、この医局のウルシハラ先生の注文は無茶だぞ。アフリカの呪い師の薬壷だのお面だの、こ~んなところにあるもんか」
「お待たせねー」
「キラ、何、これ?」
「ああ、これは……(なつかしい。ジブラルタル基地で食べたな)ドネルケバブさ! 焼きながらそぎ落とした肉を挟んだ物だ」
「そうそう。説明取られちまったけどな。ほんとは肉そぎ落とす所を見ながら食わせてやりたかったが。ほら、お前らも食えよ。このチリソースを掛けてぇ…」
「あーいや待ったぁ!ちょっと待ったぁ! ケバブにチリソースなんて何を言ってるんだ!このヨーグルトソースを掛けるのが常識だろうがぁ」
「そうだな。ヨーグルト掛けて食うのも通だよな~(そうそう、ジブラルタルじゃ、そうやって食った。勧めてくれたのはレイだったか? 若いうちから刺激物を取りすぎると良くないとか言ってて。妙なところで爺むさい奴だったよなぁ。元気か? ルナ、レイ。俺は元気でやってるぞ)」
「な、なんだ? キラの奴、一人の世界に入ってるぞ」
「おーい、大丈夫か、キラ」
「あ、カガリ。ヨーグルトかけてやるよ」
「あ、ありがと……」

 
 

「……おじさんも会話に混ぜてくれないとさびしいなぁ。せっかく同好の士を見つけたと言うのに」

 

――!

 

「お前! アンドリュー・バルトフェルド!」
「おや、珍しいねぇ。本名を全部言ってくれて。最近は虎だけで済まされちゃってね」

 

信じ難い事に、目の前には派手な服を着たアンドリュー・バルトフェルドがいた!

 

「だが、ここでゆっくり友好を深める訳にもいかんようだな。――伏せろ!」

 

虎がテーブルを蹴倒す! 俺はカガリを抱え込んで伏せた!

 

「アフメド! 大丈夫か!」
「ああ、なんとか。しかしなんだってんだ」

 

彼は周囲でいきなり始まった銃撃戦に動転しているようだ。

 

「『青き清浄なる世界の為に』とか言っていたからブルコスの襲撃だろう!」
「なんだって! 俺らナチュラルなのに!」
「狂信者なんてそんな物さ! 自分の都合しか考えん!」

 

――! 目の前に銃が転がってきた。そして視界の隅にはこちらを狙う奴が一人!
なら、やる事は一つしかないじゃないか!
転がりながら銃を拾い上げ、射手に三連射! 射手は崩れ落ちた。

 
 
 

「よし、終わったか?」

 

銃撃戦は終わりを迎えた様だった。アンドリュー・バルトフェルド、指揮を取って襲ってきたブルーコスモスに止めを刺している。

 

「隊長ぉ! 御無事で!」

 

緑の軍服みたいなものを着た男が走ってきた。

 

「ああ! 私は平気だ。彼のおかげでな」

 

アンドリュー・バルトフェルドは、こちらを向いてウインクした。

 

 

「さ、どうぞ~」
「うわ~!」

 

なんだかよくわからないうちに、バルトフェルドにまるで宮殿のような建物に案内されてた。

 

「いえ…俺達はほんとにもう……」
「いやいや~、お茶を台無しにした上に助けてもらって、彼女なんか服グチャグチャじゃないの。それをそのまま帰すわけにはいかないでしょう。ね?僕としては」

 

確かにカガリはお茶を頭からかぶって悲惨な状態だ。
でも油断しちゃいけない。拾ったまま、こっそり腰に挟んで隠してある銃。これが頼りだ。
それを見透かすようにバルトフェルドは

 

「ふ」

 

と笑った。

 
 

「こっちだ」

 

警備兵に促されて建物の中に入る。そこには長い黒髪の、レオタードみたいな服を着た女の人がいた。

 

「この子ですの? アンディ」
「ああアイシャ、彼女をどうにかしてやってくれ。チリソースとヨーグルトソースとお茶を被っちまったんだ」
「あらあら~、ケバブねー」
「ぁ…ぅーん……」
「さ、いらっしゃい?」
「カガリ……」
「大丈夫よ、すぐ済むわ。アンディと一緒に待ってて」
「おーい!君らはこっちだ」

 
 

俺達は広い応接間に通された。

 
 

「僕ぁコーヒーには、いささか自信があってねぇ」
「はぁ……」
「まぁ掛けたまえよ。くつろいでくれ」
「……」
しかたないからみんな腰を下ろした。
ん?暖炉の上に化石みたいなものが飾ってある。

 

「ん?それはエヴィデンスゼロワン。レプリカだけどね。実物を見たことは?」
「プラントに飾ってあるんでしょう?プラントは行った事ないから……」
「そうか。戦争になる前は、あちこちに移動展示もしたもんだが。見てないとは残念だ。しかし、何でこれを鯨石と言うのかねぇ。これ、鯨に見える?」
「そうですねぇ。羽を取れば鯨の化石に見えないことも無いかな……」
「だろう。どう見ても羽根じゃない?普通鯨には羽根はないだろう」
「え…まぁ……あでも、それは外宇宙から来た、地球外生物の存在証拠ってことですから……」
「僕が言いたいのは、何でこれが鯨なんだってことだよ」
「……じゃあ、何ならいいんですか?」
「ん~~…、何ならと言われても困るが…、ところで、どう?コーヒーの方は」
「ん……いけますね。と言ってもまぁ、いつも飲んでる比較対象がインスタントコーヒーですが」
「(おい、なに和んでんだよ)」

 

アフメドが突いて来た。

 

「(そう言ったって、俺らまな板の上の鯉でしょうが)」
「(くっ)」

 

「そっちの君はどうだい?」
「……」
「あ、君にはまだ分からんかなぁ、大人の味は」
「ふん」
「おいアフメド」

 

結局、俺とバルトフェルドで話す形になった。

 
 

バルトフェルドはここでも、未来でも敵のはずなのになぜか楽しく話が弾んだ。
そのうちまた話題が鯨石になった。

 

「ま、楽しくも厄介な存在だよねぇ、これも」
「……厄介、ですか?」
「そりゃぁそうでしょう。こんなもの見つけちゃったから、希望って言うか、可能性が出てきちゃった訳だし」
「え?」
「人はまだもっと先まで行ける、ってさ。この戦争の一番の根っ子だ」

 

そこに、アイシャさんがカガリを連れてやってきた。

 

「アンディー」
「おやおや!」
「へー!似合うじゃないカガリ!」
「あーほら。もう」

 

恥ずかしそうにアイシャさんの後ろに隠れているドレス姿のカガリが前に出される。

 

「あーさすがに、似合ってるよ、見違えた」
「ありがと、キラ……」
「お二人さんだけで雰囲気だされてもなぁ」

 

アフメドがぼやく。

 

「くっはっはっは……」
「ふふふ……」

 

カガリも座り、コーヒーが出される。でも、本当に似合ってる。

 

「ドレスもよく似合うねぇ。と言うか、そういう姿も実に板に付いてる感じだ」
「勝手に言ってろ!」
「そう言うお前こそ、ほんとに砂漠の虎か?何で人にあんなドレスを着せたりする? これも毎度のお遊びの一つか!」

 

アフメドがバルトフェルドに突っかかる。わかっているのか? ここは奴の本拠地なんだぞ?

 

「ドレスを選んだのはアイシャだし、毎度のお遊びとは?」
「変装してヘラヘラ街で遊んでみたり、住民は逃がして街だけ焼いてみたり。ってことさ」
「いい目だねぇ。真っ直ぐで、実にいい目だ」
「くっ!ふざけるな!」
「君も死んだ方がマシなクチかね?」

 

バルトフェルドの顔がきびしくなった。

 

「なにを……」
「――アフメド、やめろ」

 

俺の目に射すくめられアフメドは言葉を継ぐのをやめる。

 
 

「キラ君、君はどう思ってんの?」
「え?」
「どうなったらこの戦争は終わると思う?モビルスーツのパイロットとしては」
「やはり、知っていたか」
「戦争には制限時間も得点もない。スポーツの試合のようなねぇ。ならどうやって勝ち負けを決める?どこで終わりにすればいい?」

 

どうやって終わりにすればいいかって? 本当ならもう疾うに終わるはずだったじゃないか! それを介入して来てめちゃくちゃにしたのはあんただろ! って、過去のこいつに言ってもしょうがないか。

 

「そう、問題はそこです。何故我々はこうまで戦い続けるのか。何故戦争はこうまでなくならないのか。戦争は嫌だといつの時代も人は叫び続けているのに」
「ほう、君は何故だと思う? キラ君」

 

デスクに向かって歩きかけたバルトフェルドの足が止まり、こちらを振り返る。

 

「誰かの持ち物が欲しい。自分たちと違う。憎い。怖い。間違っている。そんな理由で戦い続けている人がいるのも確かです。でもが、もっとどうしようもない、救いようのない一面もあると思います、戦争には」
「ほう?」

 

バルトフェルドに飲まれちゃいけない。俺は、デュランダル議長との、お茶会での会話を必死で思い出していた。

 

「たとえばあの機体、バクゥ。見たところ、またすでに改良型が作られているようですね。こうして新しい機体が次々と作られる。戦場ではミサイルが撃たれ、モビルスーツが撃たれる。様々なものが破壊されていく」
「……」
「故に工場では次々と新しい機体を作りミサイルを作り戦場へ送る。両軍ともね。生産ラインは要求に負われ追いつかないほどです。その一機、一体の価格を考えてみてください。これをただ産業としてとらえるのなら、これほど回転がよく、また利益の上がるものは他にないでしょう」
「確かにな。それで?」
「戦争が終われば兵器は要らない。それでは儲からない。だが戦争になれば自分たちは儲かるのだ。ならば戦争はそんな彼等にとっては是非ともやって欲しい事となるのではないでしょうか?」
「彼等とは?」
「あれは敵だ、危険だ、戦おう、撃たれた、許せない、戦おう。人類の歴史にはずっとそう人々に叫び、常に産業として戦争を考え作ってきた者達がいます。自分たちに利益のためにね。今度のこの戦争の裏にも間違いなく彼等ロゴスがいるでしょう。あのブルーコスモスの母体となった! だから難しいのはそこです。彼等に踊らされている限り、プラントと地球はこれからも戦い続けていくでしょう」

 

バルトフェルドは、しばらく黙り込んでいた。

 

「なるほどね。君は色々知っているようだなぁ。しかし、その考えには穴がある」
「え?」
「昨今の巨大資本にとって全世界を巻き込んだ大戦争などと言う物は、悪夢だよ。なぜなら現代の戦争は彼らの資産を徹底的に破壊し、良質な労働者と言う資源を戦争に取られてしまうのだからね。資本主義の発達した現代、最も大きな消費は民需だ。これを減退させる戦争は企業にとって悪夢に他ならない。そうなれば経済は後退するだろう。現にそうなっている」
「……ぁ……」

 
 
 

俺は、俺の頭の中は真っ白になった。
納得できてしまったからだ。バルトフェルドの言った事が。

 

「まさか……議長の言った事は……俺は……」
「議長? 議長とは?」
「……なんでもありませんよ」
「ま、いいけどね。ともかく、君が何故同胞と敵対する道を選んだかは知らんが、あのモビルスーツのパイロットである以上、私と君は、敵同士だと言うことだな?」
「コーディネイターであるだけで同胞、と呼ぶ割には、中立国も何もお構いなしに地球にばら撒きましたね。ニュートロンジャマー。あれのおかげでどれだけ地球にいるコーディネイターの肩身が狭くなったか」
「む」

 

バルトフェルドの顔がゆがむ。
やった! 反撃に成功した気分だ!

 

「それに俺はオーブ国民です。俺の同胞はオーブの民だ!」
「キラ……」

 

カガリが俺を見上げ、服のすそをぎゅっとつかむ。俺はカガリの手をぎゅっと握った。

 

「ここであなたに俺が言いたいのは一つです」
「ほう、なんだね」
「あなたがクライン派なのは知っています。でもラクス・クラインの言葉が幾ら耳障りのよい言葉だとしてもそれに惑わされないでください」
「なにか、複雑なようだねぇ。なぜシーゲル議長、ではなくラクスなのか? 僕のルートではラクス・クラインを開放したのは地球軍のモビルスーツパイロットからと聞いているし。ま、今日の君は命の恩人だし、ここは戦場ではない。帰りたまえ。話せて楽しかったよ。よかったかどうかは分からんがねぇ」

 

アイシャさんがドアを開ける。

 

「カガリ君、そのドレスはあげるよ。キラ君とアフメド君には……」

 

バルトフェルドさんはポン、と俺とアフメドの手に袋を載せる。

 

「俺が調合したブレンドのコーヒーだ。試してくれ。インスタントよりはましだと思うよ。じゃ、また戦場でな」

 

俺達は宮殿を後にした。
俺は、初めてデュランダル議長に疑念を持った。俺は、間違っていたのか? デュランダル議長をあっさり信じていた俺は……

 
 
 
 

◇◇◇

 
 

「やれやれ、だめだねぇ。アーガイル二等兵もケーニヒ二等兵も」
「ゆっくりでも歩けるようになったのですもの、たいした物だわ。そうではなくて? フラガ少佐」

 

補給を受けたものの、パイロットもいなかったデュエルダガーとバスターダガー。
アーガイル二等兵とケーニヒ二等兵が志願したのはつい先日だった。
デュエル……皮肉な物ね。接近戦用に作られたはずなのに、補給された量産型は接近戦をするストライクを中距離から支援するために、右肩部に115mmリニアキャノン、左肩部に8連装ミサイルポッドと追加装甲を与えられ、そこにある。

 

「まぁ、どうしても坊主と比べちまうからなぁ。でも比べちまえば、俺が護衛してた正規のパイロットも似たりよったりだったか」
「それについては、プログラムの問題もあったかと。ヘリオポリスからの志願兵達がよくやってくれました。補充兵が来て空いた時間を自発的に協力してくれました。さすが工科大学生。プログラムを、ここまで修正できたのも彼らのおかげです」
「坊主がいりゃあ、もっとはかどるかもな。なんにせよ、時間が欲しいな」
「艦長、フラガ少佐! 何をのんびりした事を言っているのです! ヤマト少尉がまだ戻らぬと言うのに!」
「今は焦ってもキラ君の事はしょうがないでしょう。今私達にできるのは手持ちの武器の一刻も早い戦力化です」
「くっ」

 

「艦長! サイーブさんから連絡がありました! 帰って来ました! 3人無事との事です」
「無事か……心配を掛ける」

 

ナタルが心底安心した声で言う。
私はナタルがうらやましかった。この3人の中で、一番キラ君を心配していたのはナタルだろう。
私は心の一部でキラ君をもう無い物として、対策を立てていたぐらいなのだ。
冷たい女ね。私って……

 
 

◇◇◇

 
 
 

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