研究室生活

Last-modified: 2021-08-12 (木) 18:47:26

うる★やつら

実験室(研究室)の雑用はめんどくさがらない

研究室は区切られた空間内で多かれ少なかれ特定の人間が長期間共通の設備で生活することになる。
当然ルールを守らないとギスギスした関係を引きずることになる。生産性は落ちるし誰も得をしない。
研究室の雑用はみんなの仕事だから『他の人がやってくれてるから自分はいいや』だとか『液体窒素が切れてるのに見てみぬフリをする』などはやってはならないこと。
自分の研究室生活がスタッフやメンバーに支えられてるという意識をもって生活しましょう。
ただし、あなたは研究室の『雑用係』ではないので、押し付けられてばかりならば周囲の人に相談することも必要です。

研究室の懇親行事には積極的に参加する

あなたがもし、アカデミックポジションを希望していたり将来研究グループのリーダーになる気があるのだったら、懇親行事(忘年会や遠足など)には必ず参加すること。
酒が飲めないなどの理由で飲み会に気が向かない場合でも、最後の10分でいいから顔を出す。遠足には差し入れだけでもする。
行事のあとで研究室がギスギスした雰囲気になり、生産性が低下して被害を被るのは自分だから。そしてそういう雰囲気は数週間にわたって続くことになる。
飲み会に10分顔を出して、冗談の一つも言えばそんな事はみんな回避できたのにと思っても遅い・・・

「実験の腕」ってなんですか?

  • どうしてもうまくいかない反応やたまたまうまくいった反応を、「腕」のせいにすることを「腕が悪い」といいます。

ラボに気にくわない奴がいる

  • 実験のやり方で気にくわない奴がいるぐらいで、怒ってはいけません。特に実験報告会で極端に実験量が少ない奴がいたとしても、吊るし上げることは愚の骨頂。そんなことにエネルギーを使うのは、損だと知るべきだ。
    怒る前に「こういう検討はしましたか?その検討にはどのぐらい時間がかかりますか?どういう優先順位でやるつもりですか?」と誘導すべきです。評価はあとからついてきます。
    もしあなたがスタッフであれば、研究室の不満の声を聞いてガス抜きすることは立派な仕事であることを知らなければならない。学生と一緒になって攻め立てたとすれば、学生気分が抜けないただの馬鹿と言われても仕方が無い。
  • 内部を加圧するよりも、外部に減圧源を用意したほうがいい。
    加圧すると、下手すると爆発して飛び散るからね。

どうしても実験がうまく行かない。泣きたい。

  • 万策尽きたと思ったら、一旦実験をやめて、今まで検討したことを細かくパワポや資料にまとめなさい。そして実験報告会やセミナーのついでに教授・PIやラボのメンバーに時間を取ってもらい、今までの検討内容をすべて公開してどこに問題があるのか検討してもらう。
    どこに問題があってどんな実験が必要なのか、整理をつけることが問題解決の近道だ。そして、あなたが悩んでいることを周囲に知ってもらうことはあなた自身の精神的負担を激減させる。

全合成やって、一体何の意味があるんだよ?

  • 心配すんな。世界中でこの質問にまともに答えられる人なんか、誰もいない。
    20年位前には「全合成によって新しい知見が得られる」とか「生化学のツールが得られる」というセリフにもそれなりに説得力があった。だけど、全合成でその夢が実現された例は殆どない。それは団塊研究者の怠慢だった。
    その後、世界的に「論文が掲載されるのに何の文句があるのか?」と居直るバカが出現した。ノーベル賞目前まで行った研究者もいたが、結局、幻に終わった。
    今や全合成は中韓の研究者がやるもんで、日本の全合成研究は末期にある。
    ただ、大学院生だったらこの問題を一度くらいはまじめに考えろ。それもできないような奴は、研究者を名乗らないで欲しい。
    • 合成も似たようなもんだが
    • 基礎研究に意味を求めるなよ
      • そういうこと言ってるからダメなんだよ

ラボの若手スタッフの意見が合わない

実験操作上の問題で、直属のスタッフ(または院生)と他のスタッフの意見が合わないことはしばしば発生する。普通は直属のスタッフの言うことを聞くべきだが、そうも行かない事情も発生する。
板挟みにあったあなたは、どっちのやり方を採用しても「俺の話が聞けねえのか?」状態に突入して内部抗争の鉄砲玉となりかねない。この状態は、学生が体と心を壊す大きな原因の一つである。

 

まず問題の整理をつけるべし。Aという方法は、こういうメリットがありこういうデメリットがある。一方Bでは逆にこれこれである。今回の実験で問題になっているのは、これこれという問題であるから、それを解決するためにこちらの方法を採用した。
これを十分に整理してから、御前会議である実験報告会でデータとともに晒らして教授の裁可を仰げ。

  • ただし、ほとんどの場合「どっちでもいい」んだけどね。

1日に4本も5本も反応し込んで精製してデスクにもちゃんといて帰るのも早いヤツがいる。どうやったらそうなれる?

  • そういう人は大学にも会社にもいる。
    そういう人は次にやることが細かいことまで完全に理解して準備もしているから恐ろしいまでにムダな動きがない。
    • 作業の効率化
      30分でやっていた作業を意地でも20分で出来るようにする。
      1つあたりの作業時間が短くなれば、当然実験にかかる時間は短くなる。
      最初は神経も体力も使うからクタクタになるけれど慣れる。
  • 作業の並列化
    反応を回している間は何もしなくていいのに食事時間などに反応を回していない、などは非効率的。
    例えば、反応の準備(10分)→食事(30分)→反応を仕込む、回す(3時間)→器具を片付ける(20分)と順番にやると4時間の作業を
    反応の準備(10分)→反応を仕込む、回す(3時間)→・・食事(30分)、器具片付け(20分)・・→で3時間10分にすれば50分の時間が浮くことになる。
    反応中に前に仕掛けた反応の分析をする、原料合成をとなりで回しておくなどは基本技術。
    こういう時間の流れを意識して反応を仕掛ければ時間をかけずに効率的に実験を進められる。
  • ベンチに使わない試験管だとか色々と置いたままでデッドスペースを作り、ちまちまとあっちこっちと入れ替えて実験をしてる人は意外と多い。
    後でまとめて片付けるからとはせずに、こまめにきれいに片付けて貴重なスペースを効率的に使えるように心がけるといい。

ただし、せっかく作業時間が短くなったのに以前は出来なかったこともやろうとして結局以前と帰宅時間が変わらないとか作業効率を意識する余り実験が雑になるなどしては本末転倒。
下記にもあるように頑張るのはいいけれど、あるところで「やめる」というのも実験では必要だと思うぞ。

  • 条件検討をあるところで「やめる」という技術が大事。大学ではだれも「やめろ」と言ってくれないから、自分でしかできない。
    その見極めが上手になると効率は飛躍的に上昇する。
    それから条件を闇雲に振るのではなく、うまく行かない理由を考えて振れば効率はよくなる。
    反応時間と後処理にかかる時間を前もって考えてからやる。

    そもそも有機化学の実験では毎日仕込む反応のうち、論文に使えるデータは人にもよるが2割ぐらいだ。それを5割にするためにはどうすればいいか、考えるところにエネルギーを使うべきだと思う。
  • 論文に載ってなくても、実験室的に重要な事もあるからな。
    別に半分を使えるデータにする必要も無いと思うぞ。
  • GTD(Getting Things Done)というのを一度学ぶといい。正直世界が変わる。
    実験ノートを数日前から準備する。前日に試薬も機材も確保して、当日はタイミング良く仕込む。
    考えながら行動するより、よっぽど早くなる。
  • ある所属先で、諸事情から1日あたり3時間ぐらいしか実験ができなかった
    ことがある。しかし、それ故に無駄玉を打たずに計画的に実験した。
    1週間先の実験まで決めて計画的に原料を調製し、見切り発車をせずに実験した。#br
    するとびっくり、他の人より効率は倍以上。
    「時間じゃねえな」とつくづく思った。但しこれは経験してみないとわからないだろう。

夜遅くまで実験室にはいなければならないものなの?徹夜はしなきゃダメ?

もちろん、深夜残業も徹夜もいらない

  • ただ、古い先生は長時間研究室で実験することで成功した経験を持っている。その成功経験に打ち勝つ指導原理が必要。
    それは「合理性」だ。
    きちんと計画立って実験し、成功した理由・失敗した原因を考察する習慣をつける。こうした合理性があれば、根性主義を上回る成果を出すことはさほど難しくない。

気分転換に学会や公開セミナーに行こう!

気軽に学会やシンポジウム、他大学の公開セミナー・外国人講演会などの行事に足を運ぼう。研究室によってはボスが嫌な顔をすることもあるが、そんなのは時代遅れ。ドクターコースの学生だったら、そのぐらいの行動は自分で決める。時間的余裕があれば、懇親会にも出よう。
ネット検索では得られない生きた話が聞けるし、知り合いもできる。自分の専門に直接関係がある会もよし、全然関係ない分野もよし。そんな勉強は学生の間にしかできない。スケジュールは「化学と工業」などの学会機関誌にいくらでも掲載されている。
特に首都圏の大学にいる人は交通的にも気楽に参加できるのに、行かないのはただの損である。

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文献紹介の論文をどう選ぶか?

論文の選択は「自分はこういう研究に興味がある」ということを、教授をはじめとして研究室のメンバーにアピールする数少ないチャンスである。また、自分の研究に対する疑問をもっとも平和的に提示できる手段でもある。
だから大学院上級学年になって将来研究で飯を食うつもりならば、絶対に手を抜いてはいけない。あなたの研究に対する哲学が問われている。

修士まではいいとして、ドクターに進学すべきでしょうか?

迷ったらやめろ。
人生に対するビジョンと自信なくして、ドクターには絶対に進学してはいけない。
ドクターを取得したら、自分は自分の研究ジャンルに責任を持つ立場にあるのだ、ということを自覚すること。修士で企業に就職した同級生は、すでに会社の将来に責任を持つ立場になっている。学生気分が抜けずに教授の指示でしか仕事ができないようでは、社会人として失格である。