ミヤコショウビンとは、カワセミ?の仲間で20cm程度のカラフルな鳥である。
目次 
概要 
学名は、Todiramphus miyakoensis (Kuroda, 1919)
ショウビンとはカワセミの別名で、どちらも「翡翠」と書く。
沖縄県の宮古島?にだけ生息していたとされるがとにかく謎が多く、生態も絶滅の原因もまったく不明。
少なくとも生態は他のショウビン類と同じだった(マングローブなどがある海辺の林に住んでいた)と考えられている。
1887(明治20)年2月5日に宮古島を訪れた田代
それから30年以上経ってから新種と認定されたのだが……
なんと最初の発見から30年間ずっとサンプルどころか目撃情報すら皆無で、
それ以降もやっぱり見つからなかったので「これでは絶滅したと見なすしかない」と1937(昭和12)年にリスト入りしてしまった。
絶滅の原因は、都市開発や広範な農業化による生息地の破壊であると考えられている。
ちなみに採取から新種認定までこんなにかかったのは、田代が標本を東京帝大*1の動物学教室に置きっぱなしにして忘れていたから。
それを鳥類学者の黒田
動物学者の菊地米太郎を通して田代に問い合わせたところ「確か1887年の2月5日に宮古島で採取した」という回答が得られたので
標本ラベルを書き、新種として発表したのだった。
ただ標本ラベルには「宮古島産」ではなく「八重山産?」と書かれている。
その標本は、現在山階鳥類研究所?にある。
見た目 
頭と下面は橙褐色。目の上に小さな白い斑点がある。
目の下には緑がかった細い青色の縞模様があり、首の両側に向かって広がっている。
背中の上部と肩の部分は濃い緑青で、背中の下部と尾の上部はコバルトブルー。
手羽先は茶褐色の黒。翼表と尾は緑がかったウルトラマリンブルー。
胸の上では、色が少しだけ濃くなっている。
足は暗赤色で、爪は茶色。
標本のくちばしが損傷しているため色の識別は不可能で、両者の飛翔羽の比率はほとんど同じである。
体 長 | |
---|---|
全長 | 22cm |
翼長 | 105mm |
尾長 | 80.5mm |
蹠長 | 17mm |
中趾 | 22mm*2 |
嘴峰長 | 38mm |
だが… 
実はこの証言、かなり怪しいものがある。
それは「本当にその日に宮古島で採取したの?」ということ。
田代は1889~90年に調査研究のためグアムを訪れており、そのグアム?や周辺の島にはミヤコショウビンに近縁とされるズアカショウビン?やその亜種のアカハラショウビンが生息している。
※アカハラショウビンは野生のものが絶滅しており、いわばクニマスや日本産のトキみたいな状態になっている
さらにミヤコショウビンの標本を採取したという2月5日とはグアムを発つ前日。
ちょうど3年開いているので本当に1887年の2月5日だったとしても矛盾はしないが、問題なのはその確証がないこと。つまり田代の記憶だけが頼りだったわけだ。
しかし30年も経ってたら本人だってうろ覚え、下手したら記憶がこんがらがっていた可能性だってあるだろう。
というわけで、「グアム島での研究の時に手に入れた標本を記憶違いで"これは宮古島で採取したものだ"と思い込んでいた」だけじゃないのかと疑う意見もあるのだ。
グアムの方もよりによって田代以外の証人はおらず、詳細な記録もないというアリサマ。
「グアムにはどんな鳥がいたか」とか文字だけでも記録してればまだ手がかりはあったのだが、報告書には「(グアムの)鳥はメチャクチャ多くてややこしいので説明をカットします(意訳)」とだけ書かれて一切の説明が無かったのだった…。
結局何者なの……? 
唯一の証拠である標本はズアカショウビンやアカハラショウビンにそっくりで、特にアカハラショウビンはオスの個体が、
黒い鼻帯がなく、足が赤いこと以外はほぼ一致する。
足の色はミヤコショウビンがオレンジ色、アカハラショウビンは黒。
その他細かい違いは「目の上に白い模様があるかどうか」(ミヤコにはあるがズアカやアカハラにはない)と「目元にある線(過眼線)」。こいつはその線が背中まで続いているが、アカハラは首の後ろで繋がってハチマキのような感じになっているのだ。
残念ながらくちばしは傷んでしまっている(そして標本自体が古いせいでかなりくすんでいる)ので比べようがないが、ほぼ全身の色がそっくりなこいつらを「全然違う種類です」という方が難しいだろう。
そんなこいつの正体についてはいくつか説があり、有力なのは以下。
ズアカショウビンの亜種 
亜種というのは「ほぼ同じ種類だけど細かいところが違う」生き物。例えるなら兄弟姉妹のようなもの。
つまりズアカの兄弟分が日本に住んでるようなもので、ズアカやアカハラと違う部分があることも無理なく説明できる。
なおこの説が合っていればミヤコショウビンは晴れて新種ということになるが、今度は「なぜ絶滅してしまったのか」について考える必要性が出てくる。
アカハラショウビンかズアカショウビンがたまたま宮古島に飛んできただけ 
本来生息地でない場所にやって来た鳥を迷鳥という。
めったに見られないため目撃情報や捕獲例がない事にも説得力を持たせられるが、細かい部分が違うのを説明できないので可能性は低めか。
※迷鳥
渡り鳥が群れからはぐれたり悪天候に見舞われたりで「仕方なく近くの陸地に不時着した」状態であることがほとんどだが、ズアカショウビンもアカハラショウビンも渡り鳥ではない。
ただし、一年中その地域に定住している鳥(留鳥)でも風に流されたり悪天候で飛ばされたりすると生息地から外れた場所まで行って迷鳥になることがある。
アカハラショウビンとズアカショウビンの雑種 
亜種説と同じように、違う点があるのを無理なく説明できる。
そしてそれが迷鳥として飛んできたとすれば、目撃情報や捕獲例がない事も十分説得力を帯びてくる。
突然変異の個体だった 
アカハラかズアカにたまたま普通の個体とは模様が違う個体がいて、それが宮古島に迷いこんだという説。
突然変異というのはポケモンで例えれば色違いみたいなもので、本来それが生息していないはずの場所で色違いに出会うという二重の奇跡。
いくら偶然とはいえ色違いの個体がグアムから宮古島までふらふらと飛んでくるのか……?という疑問もあるが、この説もかなり説得力はある。
ちなみにこの「色違い」でも子孫を増やして定着していけば亜種?として成り立つ。
たまたま色のついたフナ?やコイがいて、そこから金魚やニシキゴイが生まれたようなものである。
これらが外部から持ち込まれたor飼っていた個体が逃げ出した 
もともと宮古島にいないんだから見つからないのもとーぜん!
迷鳥説と同じ理屈なので、いまだに再発見されていないことを説明できるが模様が違うことが説明できないという欠点もそのまま。
その他 
以上のというものや、
- ラベルの付け違い(アカハラショウビンの標本と間違えた説)
- ラベルの表記そのものが間違っている(つまり田代自身の勘違い・記憶違い)
……と人為的ミスを疑う意見も。
あまりにも謎だらけなので、学者でも「そもそもミヤコショウビンなんていなかったんじゃね?」と考えている人は少なくなく、国際自然保護連合作成のレッドリストでは、載せられていない。
昔なら完全にお手上げだったが、DNA調査という奥の手も登場したので確かめようが出てきた。
果たしてミヤコショウビンとは何者だったのか、今後の情報が待たれている。
参考画像集 
コメント 
- グアムを発つ前日というのは、発見の3年後の2月5日です。 -- 2019-06-07 (金) 14:50:46
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