不動産鑑定士

Last-modified: 2020-07-12 (日) 12:11:43

不動産鑑定士は、不動産の鑑定評価に関する法律に基づき制定された国家資格であり、不動産の経済価値に関する高度専門家である。

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概要

家や土地といった不動産には、当然だが金額で表せる「価値」が存在する。不動産鑑定士は、住宅やマンション、店舗やオフィスといった不動産の鑑定をおこない、それらの金額(適正な価格)を決定するプロフェッショナルを指す。
不動産の適正な価格が必要になるのは、一般的に不動産を売買するときである。買う側は安く買いたいし、売る側は当然だが高く売りたい⋯そんなときに不動産鑑定士の出した評価額が両者の参考になる。不動産を相続する場合も同様に適正な価格が必要になる。例えば一軒家を遺産分割する場合、家を細かく分けて相続するワケにもいかないので、家の適正な価格を出して、金額で相続分を算出する。その場合もやはり不動産鑑定士の評価が参考になるのである。その他にも、不動産を賃貸借するとき、不動産を担保にしてお金を借りるときまたは貸すとき、不動産を等価交換するとき、不動産を証券化する際の資産評価(後述)をするときなどは、不動産鑑定士のおこなう評価が重要になる。

仕事内容

一言に「不動産」といっても、住宅やマンション、店舗、工場、農地、さら地など種類も価値もさまざま。土地だけならまだしも、その上に建物があれば、所有者と使用者の権利が複雑になる場合もある。
そのため不動産鑑定士は、土地や建物に関連するさまざまな法律的な側面、さらに土地の価値や、周辺の利便性などの環境面、不動産市場等の経済的な条件面も考慮する必要がある。不動産鑑定士は公平中立に不動産の鑑定評価をおこない、適正価格を決定し、その根拠となるものが 「不動産の鑑定評価に関する理論」であって、不動産に関する法律、経済、税金等にわたる広範囲な専門知識を備えていなければならない。また、地価公示などの公的評価も不動産鑑定士の重要な仕事の一つである。不動産鑑定士の業務は「不動産の適正価格を決める」という鑑定評価だけではなく、不動産に関わるコンサルティング業務等にまで大きく拡がっている。

必要性

不動産鑑定士は、弁護士・公認会計士と並ぶ三大国家資格とかつては言われていた。しかし現在は、司法試験と並ぶどころか、実質的には名実共に弁護士・公認会計士に及ばない。ただし、現在は弁護士も公認会計士も数が増えすぎて、それらが必ずしも優位な資格であるとは言えない。不動産鑑定士の資格の方が優位であるケースも大いにあり得る。
不動産鑑定士は、独立して開業できるのは当然だが、企業内において不動産鑑定士として活躍可能(これが最大の魅力と言ってもいい)。不動産鑑定士は単に不動産の鑑定評価をおこなうだけではなく、不動産会社、金融機関、官公庁、商社、コンサルティング会社等々で専門知識を活かして活躍できる。よって、大手建設会社でマンション開発のプロジェクトや土地開発業務に参加したり、不動産の価値に基いて融資や投資事業をおこなう銀行や証券会社で活躍することもある。特に最近では、不動産の証券化が活発になってきており、不動産鑑定士の需要が飛躍的に高まっており、不動産鑑定士の活躍の場は社会的なニーズの高まりとともに拡大している。
結論を出すと、不動産鑑定士は独立して開業しなくても、さまざまな場面で活躍することができる役立つ資格である

需要

不動産の証券化とは、土地やビルなど、そのままでは分割して切り売りできないような資産価値のあるものを、例えば将来入ってくるであろう家賃収入などを担保として(有価証券に替えて)資金を集めることを指す。従来不動産に抵当権を設定して銀行からお金を借りるのが主流だったが、不動産の証券化により低コストで資金調達ができるメリットがあるため、ここ数年でかなりメジャーな手法となってきた模様。その際、不動産の価値を判断するのが不動産鑑定士である。最近はこの業務が大幅に増え、評価する不動産の金額も大きいため不動産鑑定士の花形業務になっている。
さらに、不動産の価値を決めるのは、売買や不動産の証券化のときだけではない。相続の際にもっとも揉めるのは不動産で、揉め事を減らすためにも相続人が納得いくように不動産鑑定士は公平に不動産の価値を判断しなければならない。マンションのローンが支払えなくなり、競売にかけられるときも不動産鑑定士が出した評価基準をもとに裁判所が公示する(地価公示などの公的な評価の際も不動産鑑定士の役割は非常に重要)。

試験

不動産鑑定士試験は、かつては大卒などの受験資格が規定されていたが、2006年から撤廃(受験者数の減少などが主な理由)。現在は受験資格はなく、年齢や学歴に関係なく誰でも受験できる。
不動産鑑定士試験は、一次試験に該当する短答式はここ5年ほど32%前後の合格率。二次試験に該当する論文式は14%ほど。最終的な合格率は5%前後である。ちなみに平成30年度の結果は、短答式33.4%、論文式14.8%、最終合格率は5.1%(ここ5年ほどはいずれの合格率も上昇傾向で、若干だが合格しやすくなっている)。やはり弁護士や公認会計士、司法書士と並んで高い難易度であるが、司法書士よりも取得するのは易しい。資格取得の平均年齢は40歳前後のようで、若いときから不動産鑑定士を目指す者は少数。
短期合格などは稀で、多くは学習を始めてから合格するのに4年以上ははかかっている。不動産関係の仕事に従事している人が受験するケースが多いようだが、将来の事を考え全くの異業種で受験する方も珍しくない。
難関試験なので独学ではまず合格するのはまず無理だと思われる。それに受験生の数が少ないので、テキストを購入したくても本屋さんにほとんど並んでいない。資格予備校に通うか、通信講座を受講することを推奨する。難関資格だが、特に不動産関係の仕事に従事していなくても、未経験で知識ゼロからでも十分に合格を狙える資格である。

試験の難しさ

不動産鑑定士試験は①短答式試験、②論文式試験の2段階の選抜方式により合否を判定する。短答式試験は五択式のマークシートによる回答で、比較的難易度の低い出題形式とされており、全体の7割程度が正解していれば合格できる模様。短答式試験だけに限っていえば受験者のうち25%が合格することができるとされており、さほど難易度は高くない。この短答式試験に限っていえば独学でも十分合格することは可能であると言える。
一方、不動産鑑定士試験の本番は論文式試験にあるといわれる。8月の暑い中、3日間連続して4時間以上延べ12時間の論文を書き続けるという試練とも言うべき過酷なスケジュールで試験は進行。この状況下での論文式試験では、途中で諦めて席を立つ受験生が多く、最後まで書き続けた人であっても9割は合格できないとされるほどの難関と呼ぶにふさわしい難易度である
つまり最終的に論文式試験を突破するためには、独学だけでは必ずしも対応しきれない部分がある。論文である以上、第三者に客観的に読んでもらい、内容を評価をしてもらう必要がある。これから不動産鑑定士試験を受験しようと考えている者は、まず独学で学習して、結果次第で予備校に通うかどうかを判断するのが懸命である。