宿題はペットの犬が食べました

Last-modified: 2022-12-06 (火) 17:10:32

宿題はペットの犬が食べました(英語:The dog ate my homework,My dog ate my homework)は、英語圏において、子供が宿題が終わっていないときに使う言い訳。20世紀初めから存在するフレーズで、目的語や主語は改変して使われることがある。ジョーク色が強く、実際に犬が食べたのが本当かどうかは定かではないのだが、2022年には教師が生徒の宿題を飼い犬に食べられたなんていう珍事が起きた。

イメージ動画
宿題を食べる犬のイメージ。概要欄にはWho ever said "My dog ate my homework." was not a good excuse? Anyway, my dog does eat my homework.(これまでに誰が「宿題はペットの犬が食べました」なんて悪い言い訳だ、などと言ったのだろうか?ともあれ、私の飼い犬が私の宿題を食べている)とある

歴史

前史

動物が人の意に反して物を食べるという話は古くから伝えられており、飼い犬に宿題を食べられたというフレーズもまたその一つである。しかし、この手の話は当初、言い訳として使われるというより、宗教的な寓話という性格が強かった。

例えば、著述家のフォレスト・ウィックマン(Forrest Wickman)はNPRの記事で、最初期の例として5世紀頃の人物聖ティロン(Saint Tyron(ph))を挙げている。それによれば、聖ティロンはキツネを見つけ、仲良くし始めたのだが、あるとき、そのキツネは聖ティロンの詩篇を食べてしまったという*1

犬の場合、1808年のSporting Magazineで似た話を見ることが出来る。話の中で、トランプ遊びに耽っている集団のうちの1人が、相手は負けるカードを犬に食べられなければ負けただろう、と発言している。

また、The Cambrian 25~26巻(1905) p.396では、説教に使う本のページが犬に食べられた結果、程よい長さの説教になったという聖職者の話が紹介されている。このように、自身の不注意を動物に責任転嫁するような言い方は100年以上前からあった。

初出

校長を退職する間近だったジェームズ・ベウシャー(James Bewsher)は1929年に次のように演説しており、これがマンチェスター・ガーディアンに掲載されたのが、本項目のフレーズの文献上の初期の例とされる。内容から察するに、フレーズとしては以前からあったものと見られる。

It is a long time since I have had the excuse about the dog tearing up the arithmetic homework.(Where Did The Phrase "The Dog Ate My Homework" Come From?(Dictionary.com)より)
算数の宿題はペットの犬にズタズタにされました一そんな言い訳を聞いてから、ずいぶん経ちました。

1936年には作家のジョン・スタインベックが、飼っていたアイリッシュセッターに『二十日鼠と人間』の原稿の半分程度を紙吹雪にされてしまったとして、締切日を2ヶ月延ばしてもらうよう編集者に乞うた、という話もある。

大衆化

大衆に知れ渡るようになるのは1960年代から1970年代以降である。ベル・カウフマンの小説『下り階段をのぼれ*2』(1965年)では宿題を忘れた時の生徒の言い訳がいくらか載っているのだが、その中にMy dog went on my homework(飼い犬に邪魔された)やMy dog chewed it up(飼い犬に宿題を噛まれた)とある。

新聞でもいくらか使用例が見られる。以下に"The dog ate my homework" (student excuse)(barrypopik.com)から抜粋する。太字は引用者によるもの。

新聞紙
日付
該当箇所和訳
ボストン・グローブ
1932/06/23
When the time came for his address, he rose and side: "Gentlemen, I had prepared a speech of more than six pages, but I left it on my study table and my dog ate it."講演の時間になると、彼は立ち上がりこう言った。「皆さん、私は6ページを超える分の講演を用意していたのですが、原稿を机の上に忘れてしまい、飼い犬がそれを食べてしまいました
シカゴ・トリビューン
1960/10/17
"A Chicagoan vacationing in California answered our inquiry one year that a dog had eaten it," Machinis said. "Another replied the baby had lost it."「カリフォルニアで休暇中のシカゴの方が問い合わせに答えたのです。犬に食べられました、と」マチニス氏は話す。「もう1人は、赤ちゃんが失くしました、と」
ニューヨーク・タイムズ
1962/02/18
Homework still isn’t handed in because the book was left in school; the dog ate it; the baby ate it; little brother scribbled all over it; mother was sick; last night was Scout meeting; it rained.宿題はいまだに提出されていない。ノートを学校に忘れたから、飼い犬に食べられたから、赤ちゃんに食べられたから、下の子が落書きしたから、お母さんが風邪をひいたから、昨晩はスカウトのミーティングがあったから、雨が降っていたから…
ヘラルド・コースター
1971/04/04
A THOUSAND AND ONE EXCUSES FOR NOT HAVING HOMEWORK
1. I forgot.
2. I lost my book.
3. I didn’t understand the assignment.
4. My pencil lead broke.
5. I had arthritis in my hand.
6. My dog ate it.
宿題を忘れた時のあらゆる言い訳
1. 忘れたので
2.ノートをなくしたので
3.宿題がよく分からなかったので
4.鉛筆が折れたので
5.手が故障したので
6.ペットの犬に食べられたので
Morning-Star
1976/10/11
As long as we have homework, we will have excuses for not getting it done.
One of the most interesting is, “I did it, I really did, but my dog ate it at the bus stop.”
宿題というものがある限り、私たちは宿題が終わらなかったことに言い訳を並べ立てることだろう。最高級に面白い言い訳はこれだろう。「宿題はやりました。本当にやったんですけど、バス停でペットの犬に食べられちゃいました
The Free Lance-Star
1978/10/25
A 13-year-old boy who tells the teacher, “The dog ate my homework,” should not be permitted to go to the movies on Saturday with his chums.宿題はペットの犬に食べられました」なんて先生に言うような13歳の少年が、土曜日に親友と映画を見に行くなんてこと、許されていいわけがない。

これ以外にも、1987年1月4日のニューヨーク・タイムズでは、生徒の母親から宿題を飼い犬に食べられましたと言われてノートを受け取ったことがあるという教師の話が紹介されている。

1980年代から1990年代にはますます一般的となり、1988年には時のアメリカ合衆国のレーガン大統領がdog-ate-my-homeworkと発言している。1989年のテレビドラマSaved By The Bellのテーマソングの歌詞にもAnd my dog ate all my homework last nightというフレーズが見られる。

フレーズをもじったタイトルを冠する児童書が出るのもこの頃である*3*4。2000年代にかけてもこうしたフレーズを冠する書籍は見られたが、2010年代以降の今となっては下火になったようである。

ただし使用例自体はあり、2012年にはアメリカ合衆国大統領選挙に向けて選挙運動をしていたバラク・オバマ陣営が、ニコロデオンの特別番組(Kids Pick the President)に都合がつかないとして出演しなかったミット・ロムニーについて、「ミット・ロムニー氏にとっては残念なことだが、大統領立候補者は「飼い犬に宿題を食べられました」を言い訳にして休むことはできない*5」と非難している。CBBCは2014年から2021年にかけて、The Dog Ate My Homeworkというテレビ番組を放送していた。

参考リンク

  1. Where Did The Phrase "The Dog Ate My Homework" Come From?(Dictionary.com)
  2. The Cambrian, 第25~26巻(T.J. Griffiths)p.396
  3. Computer Crashes Before Computers: When John Steinbeck's Dog Ate His Manuscript(The Marginalian)
  4. I'm a teacher 一 and my dog ate my students' homework(New York Post)
  5. "The dog ate my homework" (student excuse)(barrypopik.com)
  6. Saved By The Bell Theme Song Lyrics(Lyrics On Demand)
  7. Why Do We Say "The Dog Ate My Homework"?(Slate)
  8. Can The Dog Still Eat Your Homework?(NPR)
  9. BLACKBOARD NOTES; Excuses Go High Tech(The New York Times(Archived))
  10. Feathers fly at Nickelodeon(The Washington Post)
  11. The Dog Ate My Homework(comedy.co.uk)

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*1 Dictionary.comでは、6世紀の人物、クロンマックナスの聖キアラン(Saint Ciarán of Clonmacnoise)の伝説として次の話が紹介されている。聖キアランは師匠に作品を持っていかせるため、若いキツネを飼い慣らしていたのだが、ある日、そのキツネは成長し、作品を持っていく代わりに作品を束ねていた革紐を食べることにした、という筋書き
*2 原題:Up the Down Staircase。ニューヨーク市の高校を題材にしており、1967年には映画化されている
*3 例:A Dinosaur Ate My Homework(恐竜)、Aliens Ate My Homework(地球外生命体)、Godzilla Ate My Homework(ゴジラ、ここではペットのモルモットの名前)、My Teacher Ate My Homework(先生)
*4 これに先立つ1974年にはThe Cat Ate My Gymsuitという書籍が出版されている。ポーラ・ダンジガー(Paula Danziger)のヤングアダルト小説
*5 原文:Unfortunately for Mitt Romney, ‘The dog ate my homework’ just doesn’t cut it when you’re running for president.(Feathers fly at Nickelodeon(The Washington Post)