資本主義終焉説

Last-modified: 2021-12-31 (金) 21:08:14

中立的な視点で書くように努めていますが、そもそもの理論がかなり左側に傾いているため、記事内には中立的でない部分があります。

資本主義終焉説とは主に経済学者・水野和夫氏や斎藤幸平氏が提唱する経済理論。特に水野氏の著書「資本主義の終焉と歴史の危機」でその内容が語られている。

概要

簡単に言うと、資本主義が終焉し、現在のような成長教(近代と同義)にしがみつ続けると近代国家の基盤が危うくなるとする理論。無理な利潤追求は格差・貧困・中間層の没落を生み出すと忠告。現在を経済システムの大きな転換期だと位置付ける。

昨今、先進各国の国債利回りの利子率が際立って低下している。金利とは資本利潤率を意味するのでゼロ金利とは「資本主義が機能していない」としている。

理論の立証

「長い16世紀」と「長い21世紀」

16世紀と21世紀は特に「革命」と言えるほど利子率が低下しており、これを「利子率革命」と称する。この革命は、長い16世紀はイタリアのジェノバで、長い21世紀は現在の世界各国で起こっている。

利子率2%以下(超低金利)が10年間続く(利子率革命)と既存のシステムの維持が不可能になる。同様に10年国債利回りの超低金利の長期化は企業の設備投資の拡大が不可能になったことを意味する。従って、利潤率の低下とは「過剰」な設備になったことを示す。

両者とも「利子率革命」を主体としながら、「緩やかなデフレ期(労働者の黄金時代)→価格革命→空間革命→格差拡大(賃金下落)」という過程を経る共通点がある。

長い16世紀

始点は東インド会社の設立(1600年)。

1316年~1477年には緩やかなデフレ期に突入。農業技術の革新により供給が十分になって農村開拓はピークに達していた。この時期はペストの流行により人口の3分の1が亡くなったことで、実質賃金が上昇したことから「労働者の黄金時代」とも言われる。封建領主は経営が困難となり、封建制システムの危機に見舞われる。

ジェノバでは南米のポトシ銀山により市場が銀で溢れ、山の頂上までブドウ畑を開拓したために投資先が無くなっていった。

この後、穀物の価格が急騰する「価格革命」が起こる。価格革命とは、空間が統合される前に「周辺」が供給していたモノが非連続的に高騰することを意味し、通常のインフレとは異なる。また、空間革命の収縮は新たなシステムが誕生するときにしか起きず、政治・経済システムを根底から揺さぶるもの(歴史の危機)である。「長い16世紀」では東欧(周辺)からローマ(中心)に供給していた小麦が、ヨーロッパ内で経済統合したことにより人口が増加して、食糧需要が高まったことにより発生した。

ここで覇権がスペイン(陸の国)からイギリス(海の国)へと移り(空間革命)、イギリスは海洋支配をもとに資本を蓄積していく。「主役は神から人間」へ、「中世荘園制・封建社会は近代資本主義・主権国家」へと変わっていった。特に15世紀後半から、封建領主内の力がある者が国王となり権力が集中(絶対王政)。資本は国家と一体化し、国家が利潤の独占へと向かうようになる(近代主権国家の誕生)。これに付き従って、労働者の実質賃金は下がっていった。

そして「中心」を先進国(北)、「周辺」を途上国(南)として先進国は海の支配を強めていった*1。このようにして格差は南北に拡大した。

長い21世紀

長い21世紀の始点は1970年代*2

1918~1991年頃までは「長い16世紀」と同様に実質賃金が上昇(労働者の黄金時代)。福祉国家も実現するようになる。

しかし、1973年・1979年のオイルショック及び1978年のイラン革命による資源ナショナリズム勃興で、エネルギーコストの不変性が崩れた(価格革命)。「周辺」の経済圏が中心を飲み込んだことから生じ、新興国の生活水準が向上したために資源価格は急騰した。

また1975年のベトナム戦争でアメリカが敗北し、「地理的・物的空間」の拡大が不可能になった。アメリカが創出した「電子・金融空間」の支配*3により、1995年に国際資本が国境を自由に越えるようになって、先進国と新興国が一体化(空間革命)。長い16世紀から交易条件が反転し、グローバリゼーションが加速したことで「周辺」は無くなってきている。

最終的に、先進国も新興国も各々の国内で格差を二極化していく。

交易条件

日本の交易条件(輸出物価指数/輸入物価指数)の悪化は、そのまま利潤率の低下を意味する。特に1999年以降、新興国が近代化して原油価格が高騰し、投入コストが上昇・粗利益を圧迫したために生じた。

各国の資本主義

資本主義の覇権はイタリアのジェノバ→オランダ→イギリス→アメリカの順で移っているが、資本が蓄積するほど投資効率が低くなり最も成長した国の金利は(むしろ)低くなっている。また、水野氏によるとこの覇権交替理論は資本主義の枠内の理論であるため、アメリカから中国への覇権交替は起こらないとしている。

日本

近代資本主義の枠内で覇権交替はあり得ず、覇権を握るのは「資本主義とは異なるシステムを構築した国」だとした場合、水野氏はその可能性を秘めている国を(近代ピークの最先端を走る)日本に置く。つまり、先進国のなかで最も早く資本主義の限界に突き当たった日本は、新しいシステムを生み出すポテンシャルで最も優位にいることを意味する。なお、ピークであることは超低金利時代が既に立証している(例えば1973年に中小企業・非製造業の利潤率がピークに達して拡大路線を終了させたこと。1974年に合計特殊出生率が2.1を下回り、そのまま下落し続けていることなど)。

日本は1970年代に省エネ技術でオイル・ショックを乗り切り、1980年代に自動車・半導体の生産で「ジャパン・アズ・ナンバーワン*4」と言われるほど成長を成し遂げて、そこから金融バブルが生まれた。バブルの発生条件は欧米に先駆けて整っており、その条件は①国民の貯蓄が豊かで、時代が変わるユーフォリア*5があること、②「地理的・物的空間」拡大が限界を迎えてしまうこと(日本では乗用車とテレビの普及率がほぼ100%になった)の2つである。

バブル崩壊後の日本は金融グローバリゼーションに巻き込まれ、資本主義の矛盾を更に露呈することになる。例えば、2002~2008年に日本は景気回復を果たすが、ここで「景気と所得の分離」が起こる。資本主義の最終局面において経済成長と賃金の分離は必然的であり、グローバル資本主義の維持は雇用なき経済成長をそのまま意味する。日本でも労働市場の規制緩和は総人件費抑制の手段と化し*6、1990年代後半の(派遣が自由となる)労働政策では大量の雇い止めが発生した。

日本の経済政策

金融緩和によるデフレ脱却(アベノミクス第一の矢)はできないと考える。「インフレ・デフレ=貨幣現象」は閉じた経済の枠内(国民国家)でしか成立せず、貨幣が増加しても金融・資本市場で吸収され資産バブル生成を加速させるだけだからである。

また、積極的な財政出動(アベノミクス第二の矢)は無効だと考える。これを行えば、企業が過剰設備を抱え、その分の維持コストがかかることになり、固定資本減耗が増加する。企業経営者は配当を増やすため、最終的には雇用者報酬を削減してしまうからである(これは経営者が自分勝手だという意味ではなく、配当を増やさなければ自分も株主総会で株主からクビにされてしまうからである)。故に、アベノミクスの積極財政政策は過剰な資本ストックを一層過剰にする。

さらに、水野氏は大構造改革も失敗するのが歴史の常だと考える。かつてのスペインが中世の領土拡大モデルを強化して財政破綻に陥ったように、現在の先進国も成長信仰を強化すれば財政危機に陥る。資本は前進すればするほど雇用を犠牲にする。

日本やアメリカの膨大な国家債務は成長を過剰に追い求めた結果である。資本主義を乗り越えるために日本がすべきことは、①財政均衡(ゼロ成長でも維持可能な財政制度の設計)と②エネルギー問題の解消(国内で安いエネルギーを自給する)である。

アメリカ

既存の「地理的・物的空間」で高い利潤を得られなかったため、1971年頃から「電子・金融空間」をつくり、資本主義の延命を図る。1995年には金融帝国を確固たるものにし、世界中のマネーがウォール街に集中して金融資産がつくり出された。主役は商業銀行から投資銀行に入れ替わり、「電子・金融空間」のマネーはITバブル・住宅バブルを引き起こした。

しかし新自由主義(政府よりも市場の方が正しい資本配分ができるという市場原理主義)が金融市場の拡大を後押ししたため、中間層の成長は放棄され格差が拡大した。市場は資本側のリターンを増やすため当然である。

また2008年に起こったリーマン・ショックによりアメリカ金融帝国は崩壊した。金融機関がレバレッジの重さで自壊してしまい、「電子・金融空間」は縮小に転じる。その後アメリカは非伝統的金融政策(ゼロ金利政策)へと舵を切るが、これは1990年代のバブル崩壊後の日本と似ている(債務返済のため企業がリストラ→賃金も下落→経済のデフレ化)。なお、ここから新たな空間を創出してもバブルの生成と崩壊を繰り返すだけで意味はない。

なお、水野氏はオバマ大統領の輸出倍増計画は旧システムの強化策にすぎないとして挫折すると主張。台頭する新興国は生産・消費を自国で行うようになるため、先進国の輸出指導は叶わないとする。また、シェール革命も100年程度の延命策だとし、シェール・ガスも金融商品として「電子・金融空間」の中に組み込まれるとしている。この「電子・金融空間」は結局のところ、バブルの生成・崩壊を生み出し、過剰債務と賃金低下を引き起こし、格差を拡大させる。

中国

現在は成長が著しく、2030年代前半に中国の1人あたり実質GDPが日米に追いつくまで価格革命(資源価格上昇・新興国のインフレ)は収束しないと見込まれる。

先進国の余剰マネーは新興国に集中するが、新興国はこれを吸収できず過剰な投資を抱えることになる。特に中国は外側に過剰設備を受け入れる国がないため、日本以上にバブル崩壊の危機を齎すと考えられる。資本主義が内在的に過剰・飽満・過多を有するシステムであることを鑑みれば、21世紀の中国のデフレ時代は避けられない。

ヨーロッパ

ヨーロッパでは、2010~2012年の間にPIIGS諸国を中心として財政危機に陥った(欧州危機)。水野氏は、これを単なる経済危機ではなく、西洋文明の根幹に関わる問題だと指摘した上で、近代資本主義・西洋文明そのものの終焉の始まりだと予感する。

「海の国(イギリス・アメリカ)」は資本を蒐集し、政治とは市場の支配を意味する。対して「陸の国(ドイツ・フランス)」は領土を帝国化するが、政治と経済は必ずしも一致しない。この前提から帰結するEUの性格は「陸の国である独仏の領土帝国」だと捉えることができる。事実、ヨーロッパは複数の国民国家からユーロ帝国へと領土化している*7

近代は「海の国」が「陸の国」に勝利することで幕が開いた。しかし、現在は「海の国」が崩壊し、EU・中国・ロシアなど「陸の国」が台頭してきている。EU(ドイツ・フランス)はこれに対抗すべくユーロ帝国を構築し、脱近代を試みる。この方向性は新中世主義をベースとしているが、(上述したように)南欧諸国の思わぬ反乱に遭い、欧州危機の深刻さを示している。

EUは国民の枠を取り払って国家を大きくし、グローバリゼーションに対応しようとした。しかし、EUですら結局は資本の論理に巻き込まれてしまう。新中世主義が行き詰まることは、ヨーロッパ精神を形作ってきた「蒐集」が止まり、そのまま「ヨーロッパの死」をも意味する。

ドイツは蒐集を止めることができないため、PIIGS諸国を救済せざるを得ない。独仏が目指す領土空間の「蒐集」はヨーロッパの政治統合であり、経済合理性よりも優先される。

また「欧州統一」というイデオロギーはヨーロッパにおいて古代から続いている(奴隷の蒐集など)。独仏政治同盟は着々と領土の蒐集を続けているが、現在はその限界の兆しが見えている。

西欧はそのときどきで蒐集に最も適したシステムを選択してきた。資本主義勃興時は重商主義で、自国の工業力が強くなると自由貿易を強調、他国が力を増すと植民地主義で牽制し、IT・金融自由化が進むとグローバリゼーションを推し進めてきた。

新興国

アメリカは「電子・金融空間」を無限に拡張し、新マネーを創出したため、BRICSに代表される「新興国市場」を生み出した。アメリカはこれら新興国の近代化により新たな投資機会を生み出そうと考えていた。

BRICS諸国は2000年代に急成長するものの、2012年より成長が鈍化した。リーマン・ショックによって消費ブームの戻らない先進国に対して、新興国の輸出が減ったことがその背景にある。従って、新興国は以前の成長を取り戻すことはできず、現在の課題としては先進国の過剰マネーと新興国の過剰設備の解消が挙げられる(ただし、この是正は信用収縮や失業を齎すため難しい)。

先進国の過剰マネーは大量に新興国に流れ込んでおり、新興国の成長が持続することは資本主義システムが限界に向かってスピードアップしているとする。また、近代の延長線上で成長を続けている限り、新興国も現在の先進国と同じ課題(少子高齢化・バブル危機・国内格差・環境問題など)に直面する。

資本主義の性格

「中心」と「周辺」

グローバリゼーションが加速すると、雇用者と資本家は切り離され中間層は没落する。つまり、グローバリゼーションとは「中心」と「周辺」を結びつけるイデオロギーであり、これらの組み換え作業である。途上国が新興国に成長した現在、先進国は新たな「周辺」をつくる必要を迫られ、国内に「周辺」を創出する。これがアメリカではサブプライム層であり、ヨーロッパではギリシャやキプロスであり、日本では非正規社員である。

従って、現在のグローバリゼーションは先進国・新興国共に国内の階層の二極化を推し進めている。グローバリゼーションとは、言い換えれば、「南北の格差を、北側・南側各々に再配置するプロセス」だと言える。先進国は1970年あたりから中間層を没落させていったが、新興国は経済成長と二極化を同時に進行させていくことになる。この理論に従えば中国の民主主義の成立も難しいことが予測される。

つまり資本主義の本質は富を周辺から蒐集し、中心に集中させることである。上述したように、グローバル資本主義は、国家の内側にある社会の均質性を消滅させ、国家の内側に「中心/周辺」を生み出していくシステムである。1870~2001年の間に全人口の上位15%(日本やアメリカを含む)は豊かな生活を享受できたが、一方で資本主義は世界の人を豊かにできるシステムではないと言える。

民主主義とのつながり

資本主義が「資本のための資本主義」になれば、中間層が没落し民主主義も同時に破壊される。民主主義は情報の公開性を原則としており、特に2013年のスノーデン事件は民主国家の危機を象徴する。

新自由主義には「最弱の貧者は自己責任で住宅を奪われ、最強の富者は公的資金で財産は保護される」性格があるとし、バブルを資本主義の限界と矛盾を覆い隠すために引き起こされるものだとする。

近代社会は、経済的側面で見れば資本主義社会であり、政治的側面で見れば民主主義社会であるが、両面とも「過剰」を作り出すシステムであることに変わりはない。16世紀のヨーロッパ人は「無限の空間」という概念から、過剰を過剰だと思わなかった(これは近代の思考の特徴でもある)。しかし20世紀のグローバル資本主義になって、漸くその概念が幻想だと発覚したのだ。

「情報革命」と「利子率革命」が同時進行するのは必然である。政治・経済・社会が不安定化すれば格差の偏在が顕わになり情報が誰のものか問われるようになる。長い16世紀では聖書を通じて覇権はラテン語から(周辺の)ドイツ語・フランス語・英語へと移った。同時に長い21世紀でもスノーデン事件にその兆候が見られるが、まだその混迷は続くようであり大きな顕在化には至っていない。

成長教

量的緩和政策(マネー膨張)は富裕層のみを豊かにするバブルを醸成するだけである。特に1995年以降の世界ではマネー・ストックを増やしても国内の物価は上昇していない(ベース・マネーの増加は、物価ではなく資産価格を上昇させる)。というのも、そもそも量的緩和政策はグローバリゼーション以前の閉鎖経済を前提としているからである。

醸成されたバブルは崩壊し、需要の急激収縮を引き起こして企業のリストラや賃下げが行われる。しかし、ここで皮肉にも更に成長信仰(金融緩和・財政出動)は強化され、バブルの生成・崩壊は繰り返される。これは、「脱成長の時代に逆行する悪あがきであり、同時多発テロ(2001年9.11)、リーマン・ショック(2008年9.15)、福島原発事故(2011年3.11)はいずれも近代強化による反近代(デフレ)である」とする。

企業利益と雇用者報酬の分離

日本では1999年以降、企業利益と雇用者報酬が分離し始め、実質賃金は好不況無関係に下落している。グローバリゼーションの時代になると、資本側が分配比率を変えてしまったので景気回復も「資本家のための景気回復」になりつつある。これは言わば「資本側の完勝」であり、法人税の引き下げや雇用の流動化*8などにもその傾向が見られる。

21世紀の価格革命で資本主義は「資本に国家が従属するものに変貌した」とする。1995年まで国民と資本の利害は一致していたが、資本主義は「資本のための資本主義」へと変質していった。これは「電子・金融空間」創出の必然的帰結の出来事だといえる。

エネルギー問題

先進国12.4億人は資源を安く手に入れられることが前提で、かつ500年という年月をかけて近代化に成功した。これと同様に新興国56.8億人は20~30年の短い年月で先進国のような豊かな生活水準を手にいれることができるだろうか。もし同等の生活水準を実現させるには、(データから予測して)電力消費量は現在の2倍、鉄鋼消費量は3倍程度必要になるだろうと考えられる。原油価格の高騰と資源の有限性からこれらの実現は難しく、全世界の近代化は不可能といえる。

未来からの収奪

拡大・成長の追求は、同時代だけでなく未来世代からもモノを収奪する。例えば、財政出動は将来の需要を過剰に先取りし、時価会計は将来の人々が享受すべき利益を先取りし、事実エネルギーに関しても化石燃料を僅か二世紀で消費しようとしている。

始点

資本主義の始まりは諸説あるが、12~13世紀のイタリアのフィレンツェに置くのが通説である。根拠は以下の2点ある。①利子が事実上、容認されたこと(これにより時間は神のものから人間のものへと変わった)。②ボローニャ大学が神聖ローマ帝国から大学として認められたこと(これにより知も神のものから人間のものへと変わった)。

①は利潤追求へと繋がり、イギリスの海賊資本主義へと発展する。②は宗教改革の契機となり、出版資本主義(主役がラテン語から俗語へと移る)へと発展した。

なお、ここから資本主義は事業清算型(13~15世紀の地中海)→永続型(17世紀の東インド会社)→バブル清算型(現在)へと変化している。

なぜ存続したか

資本主義が存続しているのは過去にブレーキ役がいたからであり、例えばアダム・スミス(多くの富は「徳の道」から堕落させると説いた)、カール・マルクス(資本家の搾取が利潤の源泉だと見抜いた)、ジョン・メイナード・ケインズ(失業は政府が責任を持つべきだと考えた)などが挙げられる。しかし、ミルトン・フリードマンやフリードリヒ・ハイエクなどの新自由主義が台頭し、資本主義は「ブレーキなき資本主義」へと化した。この新自由主義に警鐘が鳴らされるのはリーマン・ショックの後である。

資本主義の終焉

現代に「周辺」がないため、資本主義は必ず終焉(地球上がゼロ金利・ゼロ成長・ゼロインフレになる)する。よって、リフレ理論やケインズの「大きな政府」、長期停滞論などとは決別しなければならない。

水野氏は「利子率の低下は資本主義の卒業証書である」と考える。タイム・イズ・マネーの時代が終焉し、先進国はインターネットで知を独占したことから「資本主義は神の所有物を人間のものにしていくプロセス」だと捉え、現在はその臨界点にある。「強欲」資本主義は黎明期から内蔵されていたとも言えよう。

そこから、デフレ・超低金利を経済低迷の元凶だとせず、新たな経済システム構築の与件だと捉える。むしろ問題なのは雇用改善のない景気回復であり、これは民主主義の崩壊にも繋がりかねない。

二つのシナリオ

現状の資本主義を放置(ハードランディング)すれば、巨大なバブルの生成と崩壊は免れない。そこで、我々は資本主義に一定のブレーキをかけなければならない(ソフトランディング)。

ハード・ランディングシナリオとは、中国の過剰バブルの崩壊である。中国の過剰な設備投資に、小さい欧米の消費、領土問題における対アジア輸出の縮小、中間層がか細いため内需主導への転換も不可能となり、バブルは崩壊する。バブルが崩壊すると、新興国も先進国も低成長・低金利の経済に変化する(=過剰設備バブル)。その後は、企業倒産・賃金下落・財政破綻・資本家と労働者の闘争など、マルクスの予言通りに資本主義が終焉する。

一方でソフト・ランディングシナリオとは、G20が連帯して巨大企業に対抗するものである。法人税の引き下げ競争に歯止めをかけ、国際的な金融取引に課税するトービン税の導入(税金は食糧危機・環境危機に陥る地域に還元)などを検討する。

日本の課題と対処

現代の我々は「定常状態(ゼロ成長社会)」に直面している。特に日本は人口が9000万人で横ばいとなり、買い替えサイクルだけで生産と消費が循環するようになるだろう。従って、定常状態の維持実現のアドバンテージは日本がもっていると言える。

日本は、ゼロ金利だけでは十分でなく、国の巨大な債務が税負担を高めるから、基礎的財政収支を均衡させておかなければならない。ただし、1000兆円の借金は「日本株式会社」の会員権への出資だと捉え、この金額で固定しておくことが重要だと考えられる。その実現には、消費税の増税ではなく、法人税や金融資産税の増税が不可欠である。

まとめると、定常状態の実現には以下の2点が必要である。
①人口減少を9000万人あたりで横ばいに保つこと。
②安いエネルギーを国内でつくり、原油価格の影響を受けないこと(例えば、太陽光発電なら1kWあたり20円以下で作れるとよい)。

また、現状の日本では、約30%の世帯が金融資産を全く持たず、また生活保護世帯・低所得者層が増加傾向にある。問題の解決には、労働時間の規制を強化しワークシェアリングに繋げること、過剰労働の規制を強化し減少分の雇用を確保すること、労働規制の強化をし正社員としての雇用を義務付けること、などが挙げられる。

借金や資源価格の放置はマイナス成長社会を導き、貧困社会へと我々を追いやる。我々はゼロ成長の維持と共に、借金均衡・人口問題・エネルギー問題・格差問題に対処しなければならない。

まとめ

現在取りうる選択肢は、グローバル資本主義にブレーキをかけることである。定常状態の必要条件は「ゼロ金利・ゼロ成長・ゼロインフレ」であり、これらは資本主義を飼い慣らすサインである。

誕生時から過剰利潤を求めた資本主義は欠陥のある仕組みであった。我々は「脱成長という成長」を本気で考え、資本主義を「より速く・より遠く・より合理的な」ものから「よりゆっくり・より近く・より曖昧な」ものへとシフトしなければならない。

コメント

  • それな -- カール・マルクス 2021-12-02 (木) 21:59:06
  • 経済理論の記事がこれしかないとかこのwikiおかしいよ -- 2021-12-03 (金) 06:34:33
  • 資本主義を根絶やしにせよ! -- ヨシフ・スターリン 2021-12-05 (日) 08:47:45

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Tag: 資本主義 経済理論 経済


*1 交易条件・市場規模を拡大し、名目GDPを増やした
*2 正確には1974年から利潤率が低下
*3 レバレッジを高めた
*4 社会学者エズラ・ヴォーゲルによる1979年の著書
*5 土地価格が永遠に上昇し続けるなどの陶酔
*6 これは、本来ならば労働の多様化を促進する目的であった
*7 帝国化はベルリン政府最大の関心事だという見方
*8 一見、労働の多様化を推進しているように見えるが、資本側が労働者を解雇しやすいような制度であったとする