陽川 ユエ

Last-modified: 2025-09-04 (木) 12:38:50

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※このページに記載されている「限界突破の証」系統以外のすべてのスキルの使用、および対応するスキルシードの獲得はできません。

通常next step
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Illustrator:カオミン


名前陽川 夕映(ひるかわ ゆえ)
年齢22歳
芸名ユエ
職業モデル
  • 2024年9月5日追加
  • LUMINOUS ep.Vマップ1(進行度1/LUMINOUS PLUS時点で95マス/累計95マス)課題曲「X.Y.Z.」クリアで入手。

鬱屈とした田舎を抜け、都会で活躍するトップモデル。
彼女はあの日手を差し伸べてくれた『センセイ』との出会いを振り返っていた。

スキル

RANK獲得スキルシード個数
1オールガード【LMN】×5
5×1
10×5
20×1


オールガード【LMN】 [GUARD]

  • 固定ボーナスと回数制限付きのダメージ無効効果を持つ初心者向けスキル。
  • LUMINOUS初回プレイ時に入手できるスキルシードは、SUN PLUS終了時点のオールガード【SUN】のGRADEに応じて変化する(推定最大100個(GRADE101))。
  • GRADE70でボーナス量は頭打ちになり、GRADE71以降はダメージ無効回数が増加するようになる。
    なおGRADE200で無効回数の増加も打ち止めとなる
    • なお、CHUNITH-NETではダメージ無効回数は確認できないため要注意。
    効果
    推定理論値:90700(5本+12700/18k)
    [条件:GRADE70以上]
    ゲーム開始時にボーナス (+?????)
    一定回数ダメージを無効化
    GRADEボーナス無効回数
    1+10000(20回)
    2+10300(20回)
    3+10600(20回)
    ▼ゲージ5本可能(+18000)
    28+18100(20回)
    31+19000(20回)
    41+22000(20回)
    51+25000(20回)
    61+28000(20回)
    70+30700(20回)
    71+30700(21回)
    72+30700(22回)
    73+30700(23回)
    80+30700(30回)
    90+30700(40回)
    100+30700(50回)
    101+30700(51回)
    ▲SUN PLUS引継ぎ上限
    150+30700(100回)
    200~+30700(150回)
    推定データ
    n
    (1~70)
    +9700
    +(n x 300)
    (20回)
    シード+1+300
    シード+5+1500
    n
    (70~200)
    +30700((n-50)回)
    シード+1(+1回)
    シード+5(+5回)
プレイ環境と最大GRADEの関係

プレイ環境と最大GRADEの関係

開始時期所有キャラ数最大GRADE
2024/5/9時点
LUMINOUS11133
~SUN+233
所有キャラ

所有キャラ

ランクテーブル

12345
スキルスキル
678910
スキル
1112131415
 
1617181920
スキル
2122232425
スキル
・・・50・・・・・・100
スキルスキル

STORY

※STORYにはかなりの鬱・胸糞展開が含まれています。閲覧の際には注意と覚悟が必要です。

ストーリーを展開

EPISODE1 監獄みたいな町「早くここからいなくなりたい……大人になればこの檻から抜け出してどこへだっていけるのに」


 事前に打ち合わせしたテーマに合わせて、私はめまぐるしくポーズを変え続ける。
 真っ白な背景布をバックに立ち、カメラマンに向かって視線を送ったり外したりしていると、シャッター音とストロボの光だけがスタジオを満たしていく。
 瞳に繰り返し飛び込んでくる眩しい光。
 どこかで目にしたことがあるこの感覚の正体を、忘れたはずの記憶の奥から思い出した私の意識は、高校生だった頃の自分へと思いを馳せはじめていた――

 ――高く上った太陽を受けて、川面がキラキラと輝き続ける。
 その川から流れる澄んだ水を浴びた草花は、四季を通して青から黄色、そしてまた青へと彩りを変えていく。
 どこを見渡しても壮大な山々にぐるりと囲まれ、山を越えるにも道は限られる。そんな檻の中にいるみたいな、まるで監獄のような地。
 どんな風景もうんざりするほど見飽きた、大嫌いな場所。
 これが、私の生まれ育った田舎町だ。
 もう50年以上デザインの変わらないダサい制服のスカーフが胸元でなびく。
 丈詰めもしていない長いスカートの裾が揺れる。
 木枯らしに吹かれながら、夕日に照らされるだだっ広い田んぼをひとり見ていたら、自然と口から言葉がこぼれた。

 「早くここからいなくなりたい……」

 私は――陽川夕映は、自分の無力さと生まれた地を呪いながら、鬱屈とした高校生活を送っていた。

 帰り道でもある、この辺りでは一番大きな国道をとぼとぼ歩いていると、県外ナンバーをつけた大きな車とすれ違った。一瞬車内に見えた垢抜けた若い4人組は、どう見ても地元の人じゃないことが分かる。
 あの若者たちみたいに、こんな“監獄”にも大して美味しくもない郷土料理や温泉、憎らしいほどの大自然をわざわざ愛でに来るという物好きな観光客が時折やってきた。
 そして、彼らは口を揃えて言う。
 「ここはなんて暖かいんだろう」と。
 ただ古いだけの家屋に勝手にぬくもりを感じ、“最先端”から遠く離れた住民を素朴で優しいともてはやす。
 そんな光景に遭遇する度、私は思いきり叫びたい衝動に駆られていた。
 あなたたちが感じたぬくもりなんて、全部嘘で塗り固められたまやかしですよ、って。

 要領だけは良く、あまり苦労もなく学業でトップの成績を取れば、嫉妬と妬みの感情を隠す素振りもなく浴びせられ。祖父に外国の血が入っていたせいか、他人より長い足と整った顔立ちに育てば「男遊びをしている」と根も葉もない噂を流される。
 いつからか私は町中の住民という“看守達”から監視される立場となり、彼らの醜い娯楽の対象になっていた。
 もちろん友達なんていない。
 教師も蔑むような視線か下品な笑みを浮かべるだけ。
 私という存在が町で浮いているせいか、家族の関係も冷え切ってる。
 そんなこの町の、この人達の、どこが暖かい?
 どこが素朴で優しい?
 すくなくとも私は、そんなぬくもりなんて感じたことはない。

 でも、私は絶対に泣かないと決めていた。
 しくしく泣いて、自分は不幸だと嘆いていても、誰も救ってくれないって知ってるから。
 もう少し……もう少しで私はこのダサい制服を脱いで大人になる。
 どこだっていい。その時が来たら、ここじゃないところへ逃げ出してやる。
 そう決めているから、泣く理由なんてなかった。

 国道沿いにある私の家へと続く道を無視して、私はまっすぐ歩き続けた。
 授業はとっくに終わって、部活をやってる生徒以外はとっくに帰宅している時間。
 だけど私はいつもこうして回り道をしている。
 町だけじゃなく、家の中にだって居場所なんてないから。

 山の方へ道を逸れて、やがて谷川を渡す橋の真ん中に辿り着くと、欄干に肘を載せて頬杖をつく。
 窮屈でつまらない毎日。思わずため息が漏れそうになるけど、私はそれをグッと飲み込む。
 マイナスの感情に飲まれるのはよくない。こういうときこそ楽しいことを考えなくちゃ。そう、未来のことを。
 私のことなんて誰も知らない都会の街。
 狭くても、好きなものでいっぱいにした一人暮らしの部屋。
 やりがいがあって情熱を持って打ち込めるお仕事。
 価値観が似てて、趣味の合う本当の友人。
 きっと私は生まれ変わる。この町でのことなんて全部無かったことにして、眩しいほど輝く新しい人生が始まるんだ。
 そう考えると、自然と笑顔がこぼれた。
 そんな未来を掴める保証なんてない。でも私には、紛れもなく希望そのものだから。

 ――――カシャ。

 シャッターを切る機械音が川の流れる音に混ざって響いた。
 写真を撮られた。
 そう判断した私は一瞬で笑顔を引っ込めて、代わりに鋭い視線で音の鳴った方へと睨み付ける。

 「ごめんごめん、あまりに画になってたから思わずさ。そんな怖い顔しないでよー」

 大きなレンズをつけたカメラを手にした女性。
 歳は大学生か、それより少し上くらい。
 太ももがほとんど見えるほどダメージの入ったジーンズ。
 どこか浮世離れした微笑を浮かべながら、両手を合わせて私に謝っている。
 さっきの若者達以上にすぐに分かる。絶対に地元の人じゃない。
 この“檻”の外からやってきた人だ。

 「せっかくだからもう1枚だけ!」

 そう言って再びカメラを向けられて、私は仏頂面で顔を背ける。
 ヘラヘラしていて、都会の匂いを隠しもしない、ずうずうしい変な人。
 これが、私と『センセイ』の最悪の出会い。
 私が檻の扉へ手をかけた、最初の瞬間だった。


EPISODE2 屋上に吹く風「本当はこういう風に話したかったのかもしれない。そんな自分に気付かせてくれた……変な人」


 『えー、ここで今日から教育実習を行う先生を紹介します』

 講堂に音質の悪いマイクの音が響く。
 月に2度ある全校集会。壇上にいる教頭先生が登場を促すと、袖から1人の女性が姿を現した。

 「あ」

 思わず口から出てしまった声を手のひらで抑えていると、現れた女性――あのカメラを持った変な人が余所行き声で話し始める。

 『本日からこの学校で講師を務めさせていただく花岡です。担当学科は美術なので、あまり触れあう機会は多くないかと思いますが、みなさんと実のある学校生活を送れればいいなと思っています』

 そう言って頭を下げた途端、講堂に集まっていた生徒達は色めき立つ。
 若くて身綺麗で見るからに垢抜けた女の人が、この何もない町の高校へとやってきた。ここの生徒達にとっては特大ニュースなんだろう。ざわめきは伝播していき、みるみる大きくなっていく。
 「かわいい」「美人」「何歳なんだろう」「彼氏とかいるのかな」、ゴシップ記者みたいに妄想混じりであることないことを捲し立てながら、ギラギラと目を輝かせている様子を見て、また私の心は静かに冷えていった。
 私は、この人達とは違う。ここにいるべき人間じゃない。
 胸の奥でそう呟きながら。

 多少落ち着いたとはいえ、花岡先生を巡る生徒達の喧騒はあれから一週間経っても続いている。
 その幼稚さや、他に話題もないこの町の現実にほとほと嫌気が差して、いつも以上に教室の中に居心地の悪さを感じた私は、2時間目の授業が始まる前にボイコットすることにした。
 別に初めてのことじゃない。時々ガス抜きするようにサボることはこれまで何度もある。
 だからといって監視の目だらけのこの町のどこかへ繰り出すことはない。ただ、息苦しさが紛れるような空の見えるお気に入りの場所でぼうっとするだけ。

 校舎の階段を最上階まで上ると、スチール製の鍵の掛かった扉が見えてくる。
 私はそのドアノブに目もくれず、隣の少し高い位置にある小さな窓の鍵ハンドルを引き下げた。換気のための窓なのか、扉に比べて厳重な施錠はされていない。
 今度は引き手を持って開け放つと、勢いよく飛び上がってサッシに足を掛ける。そのまま窓枠をまたがるようにして向こう側へ出ると、緑色のペンキで塗られた床の上へと着地した。
 ここは本来立ち入り禁止の屋上。私のお気に入りの場所。
 学校の中で唯一落ち着ける場所が禁止区域だなんて、なんだか皮肉だ。

 「天気良い……」

 ぽかぽかとした陽気に心地よく吹く風。教室の窮屈さから逃れた開放感もあって、いっきに気が抜けて眠くなる。
 ここは校舎のどこからも視線が届かない。もちろん周りに高層ビルなんてない。
 誰の目も届かない場所で、たった少しの時間でも今だけは檻の中から解き放たれる、そのはずだった。

 「やっぱ画になるよね、君」

 するはずのない声が頭上から聞こえて、思わず身構えてしまう。
 こうやって不意を突かれるのはもう2度目。誰もいるはずがないだろうという先入観から、油断していた。

 「今度しっかり撮らせてくれない? ご飯くらいは奢るから……さっ!」

 言いながら、扉の上にある貯水タンク用のスペースから花岡先生が身軽そうに飛び降りると、パンツスーツについた白い汚れをはたきながら子供のように笑っている。

 「……何、してるんですか」
 「ん? サボりー。授業ない時間もあれこれ雑用させられてさ。勘弁してよーって」
 「教育実習生がそんなことしていいわけ。っていうか、どうやってここに……」

 答える代わりに屋上への鍵らしきものをチラチラと振って見せながら、

 「正直どうでもいいんだよね。ウチの親が教員免許は取っとけっていうから実習に来ただけ。美大まで通わせてもらった感謝のポーズくらいは、ね」
 「……適当な人」
 「あはは、よく言われるー」

 花岡先生は一度大きく伸びをすると、こちらに向き直って再び問う。

 「で、本気で考えてくれない? モデルになるの」
 「なんで私が……」
 「それだけの魅力があるからだよ。画になるっていうか……“いる場所を画にする”力がある人のほうが近いかな」
 「馬鹿みたい。そもそもなんで美術の教育実習生がカメラなんて……」
 「いやー絵で大学入ったのにこっちにハマっちゃってさ。実習終わったら東京に帰って、大学卒業を待たずにカメラマンとして本格的に修行することも決まってるんだ。まだ親には内緒だけどね」

 そう言って目を輝かせる花岡先生の目は、私を含めたこの学校のどの生徒よりも純粋で幼く見えた。
 同時に、迷いなくそう言い放てる自信と、まっすぐ未来を見据えたごまかしのない言葉に、手も届かないほど遠くにいる大人のような印象も持つ。

 「まあ腰掛けだけど、授業はマジメに取り組むから許してよ……夕映ちゃん」
 「な、なんで私の名前……!」
 「そりゃ有名人だもん。良くも悪くもね。頭良くて、美人で、それでいて全然媚びない。なんていうか……生きづらそうだよね、こんな小さな鳥かごじゃ」
 「……!!」

 私は言葉を失ってしまった。
 苦しんでいる私を見抜いた上で、取り巻く環境を“鳥かご”だと先生は言った。
 そんなことを言われたのは初めてだ。
 分かってもらおうと思ったことなんてない。でも、いざそう同情されると、感情が波立って震えてくる。
 自分でも気付かなかった。本当の私は、誰かに寄り添ってもらいたかったのかもしれない。
 先生のたった一言で、私はそれに気付かされてしまった。

 「ま、これからもちょくちょくサボりに付き合ってよ。悪いようにはしないからさ」
 「嫌だって言ったら?」
 「ここに忍び込んでること、バラされたくないでしょ?」
 「……卑怯者」
 「大人はみんな卑怯なんですぅー」

 私と先生のおかしな交流はこうして始まった。
 いい加減で、不真面目で、人のことをからかうように話す変な人。
 だけど私は、腹を立てたり軽蔑したりといった感情は微塵も湧かず、ただ静かにこの先生に惹かれ始めていた。


EPISODE3 茜色の夕日に照らされて「センセイは道を照らしてくれた。だから待ってて。本当の自由がある、センセイの元に必ず行くから」


 「っていうかさ、ほとんど毎日放課後こうしてるけど、センセイは帰らなくていいの?」
 「いーのいーの。どうせやることもないし。それにほら、ここなら写真の現像もできるしさ」

 あれからしばらくして、気付けば“私の居場所”は増えていた。
 雑談のためにサボりの頻度が増えることを危惧したセンセイは、授業が終わった放課後、美術準備室を2人のたまり場として解放してくれた。ウチの美術部はほぼ漫画研究会になってて、別の教室で活動してるから他の生徒が来ることもない。家にも居場所がなくて毎日時間を潰していた私は内心多いに喜び、以来毎日のようにここへ通っている。

 「勝手に私物化して……もう美術っていうより写真の部屋じゃん」
 「いいんだよー写真だって立派なアートなんだから。筆を使うかカメラを使うか。風景を切り取るための道具の違いだけ」
 「ふーん……そういうものかぁ」

 雑然と画材道具が並ぶ美術準備室。フィルムの現像っていうものをするには光が入ってはいけないらしく、窓にはギッチリと段ボールが貼り付けられている。
 蛍光灯の明かりだけが光る、ほこりっぽくて薬品の独特な匂いのする部屋。
 それが私の――センセイとの新しい居場所だった。

 「ねえ、東京でのこと教えてよ」
 「えーまたその話ー?」
 「いいじゃん、まだまだ聞きたいんだもん」
 「そう言われてもねぇ……別にこっちと大して変わらないよ?」
 「もう、またそれ! 都会の人はみんなそう言うけど違うに決まってるじゃん!」

 いつだったかふと話題に出た時以来、私はセンセイから東京という街について教えてもらうことが楽しみになっていた。
 いくら田舎だといってもテレビもネットもある。東京がどういう街かくらいは分かる。でもそれはキレイにラッピングされた表面的なものだけだ。
 楽しいことだけじゃなくて、辛いこと、苦しいこと、理不尽なこと、全てをひっくるめた、実際にそこに根を下ろしていた人の生の言葉。
 それはここで手に入るどんな娯楽よりも刺激的で、磨かれる前の宝石みたいな、どんなにいびつでも惹かれてしまう魅力があった。

 「そう言われてもなー。学校行って、バイトして、適当にお茶したりとかー。私は街でイイ感じの人見つけたらストリートスナップ撮ったり。夜は友達が働いてるバーに遊びに行ったりとかねー」
 「やっぱり全然違うじゃん。こっちじゃボロボロの喫茶店しかないし、おじさんばっかりの居酒屋しかないもん」
 「でもやってることは一緒だよ。お茶飲んでお酒飲んでる」
 「もう……絶対話すのがめんどくさいだけじゃん……」
 「あははは、ごめんごめん。まあ実際違うところはあるかな」
 「……なに?」
 「自由なとこ。確かに娯楽はたくさんある。でも、それを“やってもいいし、やらなくてもいい”の。みんなが好きなものを好きになる必要はないし、それを誰も咎めない。そもそも見ていない。そういう冷たい自由さがあると思う」
 「……それ、すごく素敵だね」
 「うん。夕映には合ってると思うよ」

 高校卒業後の行き先は、この町じゃなければどこでもいいと思っていた。でも今は、もう心の中ではっきりと決まっている。
 私は東京へ行く。
 埋もれるほどたくさんの人がいる、私のことを誰も知らない街で、生まれ変わるために。
 だけど、東京に行くと決めたと同時に、長年秘めていたその決心は矛盾しはじめる。
 自分でも都合がいいなと笑ってしまうけど、過去の私にはちゃんと謝るから許して欲しい。
 私は行きたい。
 私のことを誰も知らない街じゃなくて、たったひとりだけ知っている街に。

 「ここも良いとこだとは思うけどねー」

 貼り付けた段ボールを1枚めくりながら、外の風景を眺めるセンセイの横顔が見える。
 まだ沈みきっていない茜色の夕日に照らされて、蛍光灯の明かりに包まれたこの部屋の中でセンセイだけが別の世界の人みたいに思えた。
 私は――センセイのいる街へ行きたい。
 友達というには私よりいろんな世界を知ってて、大人というには浮世離れしてて自分の世界を生きてる。
 センセイと過ごす日々の中で抱いた憧れの感情は、いつの間にか自分でもよく分からない何かに変わっていた。
 でも、その正体なんてどうでもいい。
 ただ、センセイの側で広い世界を見ていたいんだ。

 「よーし、運動部も片付け始めてるから、そろそろ帰ろうかー」
 「うん。あ、そういえば最近モデルになれって言わないね」
 「え!? やってくれるの!? あんなに嫌がってたじゃん!」
 「うーん……やっぱまだ考え中」
 「うう……ぬか喜びさせないでよ……」
 「あはは。じゃあセンセイ、また明日」
 「うん、また明日」

 ――また明日。
 その言葉を重ねるごとに、日々は過ぎていった。
 分かってはいたけれど、この日が来ると現実を直視したくなくて、半分夢を見ているようなぼんやりとした気分になる。
 美術準備室の段ボールは全部片付けられ、今はただのほこりっぽい部屋になっている。センセイの私物も配送手配済みらしい。この先、私があそこに立ち入ることはもうないだろう。
 センセイと私の時間は、ひと月も経たずあっけなく終わった。
 最初から、そう決まっていたのだから。

 「わざわざ駅まで見送りに来るなんて、思っていたより愛されてたのかな?」
 「違うって言ったらどうするの……」
 「あー……うん。面白くない冗談だったね。ごめん」

 駅員なんていない無人駅。車社会の町では利用者さえほとんどいない。
 私とセンセイだけが立つ駅のホームで、私達は電車がやってくるのを待っていた。
 電車に乗るのはセンセイだけ。腰掛けの実習が終わった今、ここへ戻ってくることもないだろう。

 「写真、頑張ってね……応援してる……」
 「ありがとう。夕映のほうこそ頑張れ――とは言えないか。頑張らなくていい。すぐに広い世界へ行けるよ」
 「うん……でも……私……」
 「あーもうどうしたのよーそんないじらしくなっちゃってー! ギャップにキュンキュンするわ!」
 「だって……」
 「ほら元気だして。しょげてる顔より笑ってるほうが似合うんだから」

 覚悟はしているつもりだったのに、いざホームへとやってくると色んな気持ちが溢れだして、私はそれを押さえつけるだけで精一杯になっていた。
 大好きな人がいなくなって、またひとりぼっちになる。
 ひとりには慣れていたはずだったのに、甘やかされた私の心は砂山みたいに脆くなって、サラサラと崩れ続けていく。
 私はその砂粒たちを必死にかき集めて、平静を装おうとする。とっくに手遅れなのは分かってる。でも、そうしないとセンセイの側にいる人として相応しくないと思ったから。
 それでも、離ればなれになる不安を埋めるように、私は欲しがる。
 言葉だけじゃなく、確かなぬくもりを伴った、私とセンセイを繋ぎ止める魔法を。

 「行く前に……ハグして」
 「うん、いいよ」

 ふたつ返事でそう言ったセンセイは、一度大きく腕を広げてから私を抱きしめた。もういつ以来かも思い出せない人の体温を感じながら、私はセンセイを抱きしめ返す。
 センセイの襟元から、愛用してる香水の香りがして鼻をくすぐる。
 その香りも、ぬくもりも、逃がしたくなくてめいっぱい腕に力を込め直した。

 「センセイ……私、ずっとこうしていたい」
 「ふふ、それはちょっと困るなあ」
 「こうしてたいんだもん」
 「最後の別れじゃないんだから。東京、来るんでしょ?」
 「うん……」
 「じゃあ待ってるから。続きは、その時ね」
 「ほんとに?」
 「その代わり、次に会った時はモデルになってね」
 「いいよ。ヌードでもなんでも撮らせてあげる」
 「あはは! じゃあそれに相応しい大物カメラマンにならなくちゃね」

 冗談交じりの約束と、微かな香水の香りだけ残して、センセイは行ってしまった。
 香りはすぐに消えたけど、この数週間の出来事は火傷のように私の心へ痕を残し、いつまでも消えずに残り続けていく。
 これが、高校生の陽川夕映の思い出。
 あの頃の私とセンセイの、幼く青い、大切な思い出。


EPISODE4 ストロボの光、独りの夜「私、モデルとして東京で頑張ってるよ。もしもこの街にいるのなら……会いたいよ、センセイ」


 どこまで行っても巨大なビルが建ち並び、青空を埋め尽くす。
 そのビルとビルの間を縫うように伸びる高速道路は、この東京の街に絡みつく蛇のように見えた。
 私はマネージャーの運転する車の後部座席に座って、交差点の信号を渡る無数の人々をぼんやりと眺めていた。

 「ほら、ユエちゃん。掲載始まってる」

 マネージャーに促されて見上げると、ビルの屋上の看板広告に私の姿があった。
 ダークネイビーを背景に、目を細めて見下すような表情をした私。彩度の高い真っ赤な唇だけが、暗闇の中に浮かんでいるような印象を受ける。
 鳴り物入りで日本上陸を果たしたばかりの、セレブ御用達海外ブランド。その今季新作コスメのモデルに私は選ばれた。

 「ユエちゃんもここまで来たねー! 良い仕事ガンガン取ってくるから、頑張ろうね!」
 「……そうだね」

 マネージャーにそう返しながら、私は微笑んでみせる。
 嬉しくないわけじゃない。ただ、自分の現状に気持ちがついていかないのか、現実味がない。

 高校を卒業して、4年の月日が経った。
 それは同時に、東京にやってきてから流れた時間でもある。
 家族にさえ行き先も告げず、あの監獄に似た町を飛び出した当時の私は、僅かな貯金を握りしめて東京という砂漠を彷徨っていた。
 その日寝る場所にも困るような、野良猫みたいな生活。苦ではなかったけれど、若い女がひとりフラフラしていれば、やはり怖い目に遭うことも何度かあった。
 でも、そんな生活は一週間も経たずに終わりを迎えた。
 今のマネージャーからモデルとして芸能事務所にスカウトされた私は、悩みながらもそれに了承すると、あとはあっという間の出来事だった。
 契約周りのことは全て事務所から両親を説き伏せてもらい、給与関係から住居、レッスンに至るまで、全ての手配が一瞬で行われた。
 こうして田舎町の少女だった陽川夕映は、モデルの『ユエ』へと生まれ変わる。
 都会の街を無邪気に遊び、年齢以上のクールな妖艶さを併せ持つ女性。そうブランディングされた人物へ。
 私は私ではない誰かに、文字通り生まれ変わった。

 「あの日ビビッときた直感を信じてよかったわー。こんなシンデレラストーリー、業界でもなかなか聞かないもん」

 マネージャーの言う通り、私は異質とも呼べる成功をしている最中らしい。
 モデルになって2年目の頃、何度目かの仕事で春服コーデの参考例として私の写真が使われた。そのたったワンカットの写真がネットを中心に話題になったようで、それから加速度的に大量の仕事が舞い込むようになる。
 仕事の規模も日に日に大きくなっていき、ついにこの度ブランド専属モデルに抜擢されることになった。
 素人の小娘からの4年としては、確かに異質なものだった。

 車は繁華街を抜け、数年前に再整備されたばかりの住宅街エリアへ辿り着く。
 緩やかな坂道の途中にあるタワーマンションの地下駐車場に入っていくと、地下エレベーターエントランスでブレーキを掛けた。

 「じゃあ、明日の撮影前に迎えに来るから。寝坊だけはNGね」
 「うん」
 「寝坊しなくても、こないだみたいに心ここにあらずなのもダメ。今大事な時期なんだからプロ意識持って」
 「……分かってる」

 マネージャーの車が駐車場から出て行くのも見届けず、私はハンドバッグからカードキーを取り出した。
 そしてエントランスのロック、エレベーターのロック、そして数分もかけて昇ってから、今度は部屋のロックを解除する。マンションを出入りする度に行うこの大層な“儀式”に、私はいまだ慣れずにいる。
 ヒールのあるサテンミュールを玄関に脱ぎ散らかし、センサーライトの灯りに誘導されるようにリビングへ抜ける。ほとんど使ってないダイニングテーブルへハンドバッグを投げ捨てながらベッドルームまでまっすぐ向かうと、真っ白いシーツの上へと倒れ込むようにして飛び込んだ。
 ハイブランドのドレスワンピースに、きっとシワがついてしまう。だけどそんなこと気にもならない。

 「疲れた……」

 私は『ユエ』でいることに疲れていた。
 仕事漬けの怒濤の日々を送っている頃は気付かなかった。でもこうして名前が売れたことで事務所がブランディングのために仕事を選び始め、時間に余裕が出てくると、自分が何のためにここにいるのか分からなくなっていく。
 今の自分を創り上げるまで力を割いてくれた大人達には感謝してる。だけど、ユエという存在が大きくなるほど見失いそうになるのだ。
 私は――モデルになるために東京に来たわけじゃないから。

 「センセイ……どこにいるの……」

 シーツに顔を埋めて呟いたくぐもった声は、誰にも届くことはない。

 あれから4年。
 あの人を呼ぶ私の声が届くことは、これまで一度だってなかった。

 センセイが実習を終えて東京に帰った日から、私達は時々他愛のないメールのやりとりをしていた。
 だけどあの日、卒業式を終えた私が上京する日の朝。
 「これから出発する」という内容で送ったメールを最後に、返事は返ってきていない。
 解約したのか電話も繋がらず、住所も知らない私は、センセイとの連絡手段を完全に失った。
 それでも仕事の合間を縫って当てもなく探してはみたものの、この広大な東京の中で探し出すことはできなかった。
 花岡という名前の、カメラマンの姿は。

 「大物カメラマンになるって言ったじゃん……嘘つき……」

 モデルとして大成すれば、向こうから見つけてくれるかもしれない。
 そんな不確かな希望を持って頑張ってきたけれど、事務所に来る連絡は話したこともない同級生くらいのものだった。
 “センセイの側にいる”といる夢が叶えられず、この場所にいる自分の存在意義が揺らぎ始めた私は、仕事にも身が入らなくなりはじめている。
 少しは大人になって身についてきた責任感と、もうどうだっていいやという投げやりな気持ちがせめぎ合って、余計自分自身に苛立ってくる。

 「自由……確かに自由だけど、全然満たされないよ……」

 メイクも落とさずに目を閉じる。
 時を置かずやってきたまどろみの中、まぶたの裏にはもう何度見たかも覚えていない、センセイと美術準備室で過ごす夢がおぼろげに映り始めた。
 私はそれを、懐かしくも切ない気持ちで感じながら、そのまま深い眠りに落ちていった。


EPISODE5 再会は懐かしい香りと共に「軽くて中身のない会話に、救われている自分がいる。何もかも忘れさせてくれるなら、いまはそれでいい」


 センスの良いセレクトショップや飲食店が建ち並ぶ街。
 すぐ近くにある繁華街に集まるのは若者中心なのに対して、ここは比較的大人向けの隠れ家的なお店を求める人が多い場所だ。
 そんな街の片隅にある、芸能人御用達のバー。
 朝から晩まで拘束されるハードな撮影の仕事を終えた後、ふらふらとこの店に立ち寄った私は、カウンターに座って疲れ切った体をテーブルへ預けていた。

 お酒の味は覚えてはいるけれど、ただ法律上許されるようになっただけのこと。
 飲み歩く趣味もない私は、たいして美味しくもないカクテルを義務的にあおり続けていた。
 存在意義を見失って、むなしさに耐えられない夜くらい私にもある。
 そんな時は、近くで誰かの楽しそうな声がするここへ来るようになっていた。
 学生の頃は誰にも見つからないようになりたいと願っていたのに、皮肉なものだ。

 「あれ? ユエちゃんじゃん! なんか久しぶりじゃない?」
 「うん。忙しかったからね」
 「だろうね! 業界でユエちゃんの話聞かない日ないもん」
 「それはどうも」
 「ち、ちょっとちょっと、なんか冷たくない?ユエちゃんと俺の仲じゃん!」

 そう言って軽そうな男が、おもむろに隣の席へと腰掛けてくる。
 確かにこの店の客は業界人が多い。マスターを含め、店全体の“暗黙のルール”がある。
 それでも、軽率に“匂わせる”ような発言をするこの男に、私は頭痛を覚えながらため息をついた。

 「軽々しくそういうこと言わないで。私とあなたの関係はあの日だけで終わった話でしょ」
 「あ、いや……それはごめん……でもさ、俺は本気だから」
 「冗談やめて。そういうのもナシって言った」
 「わ、分かった分かったって! とりあえずさ、乾杯しよ? ね?」

 差し出してくるグラスを無視しきれず、私もしぶしぶグラスを合わせた。
 もう何年も売れる兆しのない俳優くずれの男。
 あれは去年だったか一昨年だったか、ほんの気の迷いでこんな男に許してしまった自分を恨む。
 軽くて、お調子者で、夜遊びばかりしているダメなやつ。絶対に好きにならない相手だからこそ、自分の中で欠けている隙間を埋めてくれるとでも、あの日の私は思ったのかもしれない。

 「まあユエちゃんは今が激アツな時期だもんね……ヘタなことはできないかぁ」
 「どんなにめんどくさいことになるか身をもって学んだからね」
 「それ俺のこと? あははは、いやー厳しいなーー」
 「だからそういうのは今後もないから」
 「了解ですよっと。でもユエちゃんも珍しいよね。俺の知ってるモデルなんてみんな派手に遊んでんのに」
 「ひとくくりにしないでよ。あなたが遊ぶ場所にいる子たちがそうだってだけでしょ」
 「あー“類友”ってことかー! そりゃ確かに!」

 何が面白いのか、嫌味を言われたはずなのにカラカラと笑っている。
 そうだった。私は彼のこういう所はそれほど嫌いじゃなかったんだ。
 町中から浮いていた青春時代を過ごした私は、正直言って他人とのコミュニケーションが得意なほうではない。
 仕事以外で笑顔を見せることは多くないし、思ったことをはっきりと言い過ぎる部分があることを自覚してる。
 なのにこの男は私の言葉を受け流したり、時には受け止めたりしながらいつも笑っている。それがなんだか心地よくて、たとえ下心があると分かっていても、私は初めて仲の良い友人ができたかのように錯覚してしまうのだ。

 実際、この日も彼に救われたところは大きかった。
 中身はなくても思わずクスリとしてしまう会話は、色々なものを忘れさせてくれる。
 それはほつれた服をピンで留めるような、その場しのぎのものだと分かっていても、今の私にとっては確かな救いだった。
 だからだろうか。お店を変えてもう少し話したいという誘いに、私は首を縦に振ってしまった。

 各々お会計を済ませてから、彼を待たせて私は一度お手洗いへ向かった。
 アンティーク調でまとめられた洗面台で手を洗いながら、少し酔いが回った頭で考える。
 ――もうそろそろ、前に進まなくてはいけないのかもしれない。
 思えば、数週間交流をした実習生と生徒というだけの関係だ。もうとっくに忘れられてしまっているだろう。
 たとえ夢見た未来の形が変わってしまっても、それを受け入れることもきっと必要なことだ。
 きっと、そうなんだ。

 「ただいま」
 「いーえ。じゃあ行こうか。コンフィが美味いビストロがあるんだ。ワインで乾杯しなおそうよ」

 得意げにそう言う割に、スマホを眺めながらモタモタしている彼に呆れつつ、私は店を出ようとさっさと席を後にする。
 バーの出入り口には年季の入った木製ドア。重厚なドアの重みに負けないよう、力を込めて押そうとしたその時だった。
 ふいに向こうから扉が開け放たれ、空振りしてつんのめった私は、扉を開けた人物に体を預けるようにぶつかってしまう。

 「あ……ごめんなさい」
 「いえ、こちらこそ」

 女性の声。
 それと、微かに漂う香水の香り。
 預けた体を離し、恐る恐る顔を上げる。
 イメージと違うナチュラル系の服、ヘアスタイルもメイクも変わっている。
 それでも、私が気付かないはずがない。

 「センセイ……?」
 「……夕映」


EPISODE6 埋められていく空白「この4年間、私たちはお互いにすれ違い続けていた。でももういい。これからは2人で歩き続けられるから」


 「え、なになに? 知り合い?」

 この再会がどういうものか当然分からず、遅れてやってきて呑気な声をあげる男に私は言い放つ。

 「……やっぱ今日は行けない」
 「えーなんでー」
 「どうしても行けないの」
 「……おけ、分かった。また遊んでね」

 さすがに何か察したのか、それとも夜遊びを通じて培った勘なのだろうか。それだけ言うとわざとらしく肩を落として店を出て行った。
 悪い事をしたとは思う。でも今は、センセイにしか意識を向けることができない。
 話したいことは山ほどある。それなのに最初の一言さえも出てこないで固まっている私に、センセイはあの日と同じ、からかうように片眉を上げながら言った。

 「よかったの? 彼」
 「別に……そういうのじゃないし」
 「ふーん。夕映も男を宙ぶらりんにするようにまでなったかー」
 「そういうセンセイも変わったね……色々」
 「そりゃあ4年も経てば変わりますよー。ここじゃ邪魔になるしさ、出て話そうか」

 もっともな意見に同意して、私とセンセイは連れ立って店を出た。
 どこかの店に入るわけでもなく、すっかり夜も深まった静かな街を、互いにどこかぎこちなく歩く。

 「勢いで出ちゃったけど……飲みたかったんじゃないの」
 「いやーいきなりかつての生徒とかんぱーい、っていうのはまだ心の準備がね」
 「ふふ、なにそれ。先生らしいことなんてしてないくせに」
 「それもそっか。そもそも先生でもなんでもないのにね」

 まだぎこちなさはある。でもあの頃に似た空気が一瞬流れて、私達はくすくすと笑った。
 センセイは、センセイのままだ。
 外見のスタイルが変わっても、中身はそのまま。
 いい加減で、不真面目で、人のことをからかうように話す変な人。
 私の大好きなセンセイ、その人だ。

 「……センセイ。どうして連絡くれなかったの」
 「わーお、直球だ」
 「私……ずっとどうしたらいいか分からなかったんだよ。センセイがいるから東京に来たのに、一度だって話すこともできないなんて」
 「そっかぁ……そうだなぁ……」

 センセイは目を伏せて、しばらく言葉を選ぶように考え込んだ。
 そして何か諦めたように一度だけ大きく息を吐くと、私に向き直ってこう言った。

 「“センセイ”でいたかったんだよね、たぶん」
 「……?」
 「東京帰ってからカメラマンの修行始めたけどさ、ぜーんぜん上手くいかなくて。そんな状態で夕映に会ったらガッカリさせちゃうんじゃないかって……ううん、違うな。かっこつけたかったんだよね、単純に」
 「そんなことで――」

 ほんの少しだけこわばったセンセイの声が、私の言葉を遮る。

 「そんなことじゃないよ。夢に向かって走り続けてるのに、ほんの少しでさえも前に進めない状態って……キツいよ」

 少し分かる気がした。
 外の世界を夢見続けながら、檻の中で身動きひとつ取れなかったあの頃の自分。
 無力で、情けなくて。誰かに優しくするなんてできなかった。

 「夕映さ、私のこと探した?」
 「当たり前だよ。色んなジャンルのカメラマン調べたんだから」
 「でも私の名前はどこにもなかった……でしょ? それが答え。才能か、運か。そのどっちもかもしれない。4年の時間を使っても、私はプロになれていなかったんだから。見つかるわけない」
 「センセイ……」
 「私だって、何度も夕映に連絡しようとしたよ。でもさ――」

 気付けば、いつの間にかブランドの路面店が並ぶ通りまでやってきていた。
 センセイはとあるショップの前に立つと、私に大きく手を広げて見せながら言う。

 「夕映はこーんな凄い人になっちゃってるんだもん!のこのこ会いになんて行けないよ!」

 営業時間を終えて閉店したお店のウインドウには、私がモデルを務めたあのコスメのポスターが貼ってあった。
 ポスターの中の私は、私じゃない顔をしてこちらをまっすぐ見つめている。
 創り上げられたモデルの“ユエ”。
 生まれ変わった私の姿。
 私ひとりでは、ユエはここまで来れなかった。

 「……センセイ。私がモデルをやってみようって思えたのは、センセイのおかげなんだよ。センセイが褒めてくれたから、画になるって言ってくれたから。センセイがそう言うなら、それはきっと私の武器なんだ、って。仕事を頑張れたのだってそう。有名になれば見つけてもらえるかもって思ったからだよ」
 「夕映……」
 「でも……とっくに見つけてもらってたんだね。はは……なんか気が抜けちゃった」

 見つけてもらおうと頑張るほど、センセイの心は遠くなっていた。
 お互いの気持ちなんて分からないからこそ、私達はずっとすれ違っていた。
 近付こうとするほど離れていたなんて、私は何をしていたんだろう。

 「……ごめん、夕映。私が子供だった。夕映がどんな気持ちかなんて全然考えてなくて……」
 「謝らなくていいよ。またセンセイに会えて、お互いどういう思いだったか知ることができた。私はそれでいい。それだけでいいんだよ」
 「そっか。うん……そうだね」
 「それに、無駄だったとも思ってないよ。辛かったこともあったけど、今の仕事が嫌いなわけじゃないから。そう思えるようになったのもセンセイのおかげ。センセイはどう? 諦めてなんかないよね?」

 わざと挑戦的にそう言うと、センセイはまたいつも通りの表情になって、片眉をあげて答えた。

 「そんなわけないでしょー? 大器晩成型の女をナメないでよね。これでも着実に前進してるんだからー」

 センセイはそう言いながら、ポーチの中から1枚の名刺を取り出して渡してくる。
 そこにはセンセイの名前と、フォトグラファーという肩書きがシンプルなフォントで印刷されていた。

 「センセイ! プロになれなかったんじゃないの!?」
 「独立したてホヤホヤなんだ。まだ仕事も何もないから、これが最初の一歩ってとこ。だから……今日会えたのは運命だったのかも」
 「絶対に運命だよ。だからセンセイ、もう私の前からいなくならないで。夢を追いかけるなら、2人のほうがいいよ」
 「……分かった。2人で、だね」
 「うん、2人で」

 すれ違い続けた4年間なんて、私にとってもう些細なことだ。
 センセイがいる。
 それだけで、何回だってやり直せる。
 モノクロームに映っていた世界に、色が取り戻されていくような。
 優しい風を頬に受けながら、青々とした芝生の上に寝転ぶような。
 未来に向かって生きるということの本当の意味を、私は分かりはじめたような気がしていた。


EPISODE7 0時過ぎの魔法「センセイ、好きだよ。あの日からずっとずっと。だから叶え続けようよ。私と……2人の夢を」


 色んな会社の偉い大人の人、メイクやスタイリスト、撮影に関わる技術スタッフ、それにカメラマン。
 たくさんの視線を浴びながら、撮影は進められていく。
 これだけの衆目に晒されても、不快な感情はない。みんなが見ているのは陽川夕映じゃなく“ユエ”だから。
 それに、あの頃向けられたものとはまったく違う。誰もが私のことを、私の仕事を尊重してくれている。
 基本的に静かで、必要最低限のことしか話さない撮影現場。
 その空間で、言葉を使わずに行うディスカッションのようなこの仕事が、案外私は好きになっていた。

 セットを変え、小道具を変え、もちろん衣装も次々と入れ替わり続ける。
 与えられた衣装の魅力を引き出すにはどういうポージングをすればいいか。
 カメラの中で私が演じる女性は何を思い、どんな顔をするのか。
 想像し、組み立てて、時には裏切って。
 ほんの数秒ごとに生まれる物語を、カメラマンは切り抜いていく。

 「はい、オッケー。ユエちゃん、今日ヤバイよ。相当キテるね。なんか心境の変化でもあった?」
 「ふふ、どうでしょう。ただ、この現場がすごく楽しいことは事実です」
 「うわー、嬉しいこと言ってくれちゃってー」

 カメラマンさんが本当に嬉しそうな顔でそう言いながら、写真のチェックのためモニターをのぞき込む。
 それに続いて私とディレクターもチェックに参加し、あれこれと意見を出し合っていく。
 撮影段階ですでに手応えがあることを誰もが感じ取りはじめ、現場全体を包み始める高揚感で一体となる。
 そのきっかけは自分であると自負するほどに、私はモデルとして勢いづいていた。

 「では、本日の撮影は終了となります! みなさんお疲れ様でした!」

 拍手の音がスタジオに響く。
 撮影後の雑談タイムもそこそこに、メイクを落とした私は手早く身支度を整えてスタジオを後にした。
 今日はセンセイが私の部屋に初めて遊びに来る日。
 私はどうしても浮き足だってしまう自分に苦笑しながら、そんな自分さえ愛しく思い始めていた。

 ――22階にある私の部屋。
 この部屋に人を招いたのは、マネージャーを除けばセンセイが初めてのことだ。

 「はぁー……想像はしてたけど、すごいとこ住んでるねー」
 「事務所が用意してくれたから、最近引っ越してきただけだよ。セキュリティがどうこうって」
 「でもそれだけの価値があるって思ってもらえてるってことでしょ。田舎でひとり、誰にでも噛み付きそうな目をして過ごしてた夕映がねぇ……」
 「もう、やめてよ」

 “陽川夕映”として話すのは、センセイだけだ。
 それは私にとって痛みではあるけれど、どこか嬉しさもある。

 「いいからセンセイ、ワイン開けたからまずは乾杯しようよ」
 「いいねー。何に乾杯する?」
 「うーん……再会の記念に、とか?」
 「それも悪くないけど…………そうだ」

 センセイはにやりと笑って、グラスを掲げながら言った。

 「二人の門出に。乾杯!」

 センセイと私だけの二人きりのパーティーは、0時を回っても続く。
 いまだに夢見心地の私は、シンデレラの魔法みたいにこの夢が消えるんじゃないかと思って、時計を確認してほっと息を吐いた。

 ――再会してからというものの、センセイとはもう何度も会っている。
 それなのに、話したいことは尽きることがない。
 センセイが東京に帰ってからのこと、追いかけてきたあの日のこと、4年間の間に起きたこと。
 長い間せき止めていたものが溢れ、濁流となって流れるように、私は私の思いをセンセイに話し続けた。
 その度にセンセイは「頑張ったね」と頭を撫でてくれる。
 それが嬉しくて、私は子供みたいに甘えてしまう。

 「……ねえセンセイ。私、センセイのこと好きだよ」
 「あー酔ってるなー? この酔っ払いめー」
 「真剣なんだけど」
 「もちろん、私も好きだよ」
 「それは……私の好きと一緒?」
 「……たぶん、そうじゃないかな」

 センセイは笑いながらそう答える。その表情からはまだ真意が見えない。
 私は、確信が欲しい。
 これから先いつまでもずっと、2人一緒だという確信を。
 だから私は、子供らしくないやり方を使ってでも壁を越えていく。

 「それが本当なら……今日は帰らないで」

 センセイは、驚いたり茶化したりすることもなく、じっと私の目を見つめたあと、ふっと息を吐いて笑った。

 「あーあ、いよいよ本当に先生失格だ」

 私の夢は叶っていない。
 センセイと一緒に一日一日を過ごすことで、“叶え続けている”からだ。
 今まで感じたことのない、おかしくなってしまいそうなほどの多幸感に包まれながら、なぜか私はあの生まれた町の自然豊かな風景を思い出していた。

 (自由って……こういうことだったんだ……)

 ――センセイと結ばれて以来、私は今まで以上に充実した毎日を送ることになる。
 プライベートの夕映が幸せな気持ちになればなるほど、その力はユエの仕事に変換されていく。
 それはクールさを全面に押し出していた事務所の方針を変えるほど、“ユエ”の表情にも変化を与えたようで、自覚はないけれど「柔和で素朴な親しみが出た」と、クライアントやファンには好評みたいだ。
 何もかもがうまく行く、自信と気力に溢れる日々。
 だから久々に事務所に呼び出されたのも、何か新しい仕事の打ち合わせだと私は思っていた。

 「ユエちゃんには申し訳ないけど、一緒にいる花岡って人のこと調べさせてもらった。会社の立場からすると、ちょっと見過ごせないかな」

 マネージャーがそう言いながら、机の上に置いてある中身の詰まった大きな封筒を私へと押し渡す。
 その封筒には、有名な探偵事務所の名前が書いてあった――。


EPISODE8 嘘と写真「あの町の風景、思い出、あなたの香り。何もかも遠い過去。なのにどうして、この幻は消えてくれないの」


 「カメラマンの事務所もない、住所もでたらめ、実績も何ひとつなし。その上、彼女の私生活も……あまり褒められたものではないと思う」

 そう話すマネージャーに返事もせず、私は封筒の中身に目を通す。
 それは、センセイについて調べた報告書だった。写真や文章で構成されたそれは、ここ数年のセンセイの情報が記されている。
 カメラマンを目指して修行していたのは最初の1年だけで、あとはその日暮らしの日々。
 さらには男を漁っては幾人も渡り歩き、それが複数同時になったことも。
 日中、本屋でレジや棚整理をしているセンセイの写真。それを1枚めくると、男性と腕を組んで夜のホテルに入っていく姿を収めたものが現れた。

 「……ユエちゃんにとっても、会社にとっても、今スキャンダルを起こされるのは代償が大きすぎる。よく考えてくれないか」

 諭すようにマネージャーが話すけど、きっと私に拒否権はない。
 いつもはひょうきんに振る舞っているけれど、こういう顔をするときは完全にビジネスモードの時だ。万が一、クライアントとの色んな契約がダメになれば、賠償金はものすごい額になるだろう。
 だからといって、尻込みする私じゃない。センセイのためなら、モデルなんてやめてしまったって構わないのだから。

 「とりあえず……本人と話してみる」
 「1人で平気? 念のため一緒に……」
 「大丈夫。そんな人じゃないから」

 もしも事実だったとしたら、嘘をつかれていたことは少し悲しい。
 だけど、私を思う気持ちがあれば、それだけで十分だ。
 どんな男と関係を持っていようが、それは全て過去のこと。
 私には、センセイとの未来があればいい。

 ――その日の夜。
 事務所を後にした私は、まっすぐ都内のレストランへ向かった。元々今日はセンセイと食事をする約束をしていたからだ。
 イタリアの国旗が飾られたお店の入り口を入ると、店員さんが予約していた個室席へと案内してくれる。
 真っ白いテーブルクロスがかけられたテーブル席にはすでにセンセイが座っていた。

 「おつかれー! なんかいい店すぎて緊張してたよー」

 そう言って顔を上げたセンセイの、いつもと変わらない笑顔。
 だけど私はどう答えたらいいか分からず、席についても何も言えずにいる。
 そんな私の様子を見て何か察したのか、センセイの笑顔は冷たく暗いものに変わっていった。

 「……あーあ。どこまで知っちゃったの?」
 「たぶん……全部」
 「そういうパターンも覚悟してたけど……早かったなぁー」

 そう言って、椅子の背もたれに身体を預けて天を仰ぐ。
 センセイの言葉はあの報告書の内容が事実であると証明していて、私は肩を落とした。

 「写真、とっくにやってなかったんだ」
 「うん。一般の賞レースにさえかすりもしなかったんだもん。普通に無理でしょ」
 「でも……続けてればいつか実力だって――」

 センセイは私の言葉を遮って、私を咎めるように鋭く言った。

 「夕映に分かるわけない。スカウトからたった数年でスターになるシンデレラストーリーなんて、選ばれた人間にしか味わえないんだよ。一緒にしないで」

 初めて会った時からこの瞬間まで、センセイが声を荒げることなんてなかった。
 ある意味、傷に触れてしまったことで思わず溢れた本心なのだろう。

 「じゃああの名刺は何? わざわざあんなもの作るなんて、本当は諦められてないからじゃないの?」
 「あれは……」
 「センセイは私に嘘をついた。理由もなく嘘つくはずない」
 「…………」

 きっとセンセイは、自分に言い聞かせてるだけだ。夢なんて叶うわけないって。
 私だって、努力は必ず報われるなんて子供騙しは信じてない。
 でもそれは、やりたいことをやらない理由になんてならない。
 過去のことは関係ない。私がそうだったように、センセイだってやり直せる。

 「……前の男のことも聞いた。でもそんなのどうでもいいの。私にだって色んな過去はあるし。私にとって大事なのは今この瞬間で、センセイが側にいることだから。だから……私、モデルやめる」
 「ええっ!? やめるって……どうして」
 「事務所は私にセンセイと別れてほしいみたい。でも、そんなことしてまで続けても意味がないから」
 「でもそんな……」
 「いいの。全部捨てて、またただの陽川夕映に戻るだけだよ。だからセンセイ、2人でイチから歩き直そうよ。本当にやりたいこと、もう一度目指したっていいんだよ」
 「2人で……イチから……?」

 別に東京の街じゃなくたっていい。センセイと一緒なら、どこでだって生きていける。
 なんならあの田舎町でだっていい。大人になった今、私を閉じ込める檻なんてもうないだろう。
 だからセンセイ。顔を上げて、いつもみたいにからかうように笑ってよ。

 「――ふふっ。イチからなんて……そんなことやるわけないじゃん」
 「……え?」
 「恋とか愛とか寂しいだとか、私がそんな理由で男と寝てたと思った? だとしたら大間違い。そんなもの、欠片もない」

 センセイはそう言って、自嘲するように吐き捨てる。

 「ぜーんぶお金のため。夕映だって分かるでしょ? この街でそれなりの暮らしをするにはお金がいるって」

 いつもの顔、いつもの声。なのに聞こえてくるのはセンセイのものじゃないような言葉。
 4年という時間は私が思うよりも長いものだったのだろうか。
 私が変わったように――センセイも変わってしまっていた。
 それでも、まだ信じていたい自分がいる。最後の望みをかけて、私はセンセイに尋ねる。

 「――じゃあ、私は?」

 センセイは答えず、眉を上げて困ったように笑って見せた。
 その目には見覚えがある。
 あの町で散々向けられた、下卑た目だ。
 変わってしまったからなのか、それとも最初からだったのか。
 私の好きだったセンセイは、もうどこにもいない。

 「まさか本当に東京まで来るとは思わないじゃん。さすがに重いって」
 「喋らないで」
 「売れっ子だから偶然装って近づいてみたら、上手くいきすぎちゃうんだもん」
 「喋らないで」
 「モデルやめられたら生活できないじゃん」
 「喋らないで!!」

 レストランの個室の中が静寂に包まれる。
 怒りと喪失感。それ以上に胸の奥にしまってあったとても大事なものがボロボロと崩れていく感覚を覚えながら、震える足で私は立ち上がった。
 気を抜くと、何か言いたくて口を開きそうになるのをぐっと堪える。
 これ以上言葉を交わしたら、もっと嫌いになってしまうから。
 大切だった思いも、思い出も、薄汚れてしまうから。
 私はバッグから財布を取り出すと、予約していたコース料金には十分すぎるお金を、叩きつけるようにテーブルに置いた。

 「さよなら」

 そう言って背を向け、個室を出ようとした時。

 「……ごめんね」

 そんな言葉が、聞こえたような気がした。

 ――
 ――――

 あれから、私は無理を言って少しのオフをもらったあと、モデルとして仕事に戻っていた。
 そして今、あの人がいなくなっても、これまで以上にプロとして高みを目指している。
 やりがいを感じているからだけじゃない。私を突き動かしているのは、かつて以上に不純な動機。
 “私が有名であればあるほど、きっとどこかであの人の目に入り続ける”。
 これは私がかける、小さな呪いだ――。

 撮影を終えてマンションに戻った私は、ポストの中に一通の手紙が入っていることに気がついた。
 差出人は――あの人の名前。
 ざわつく胸を抑えながら、いまだに慣れないセキュリティの数々を通り、部屋へと入った。
 玄関を抜けていつも通り誰もいないリビングへやってくると、手紙の封を開ける。
 中に入っていたのは、たった一枚の写真。
 写真には、頬杖をついて微かに笑う制服姿の自分が写っている。
 後ろに広がる景色には見覚えがある。谷川を渡す橋の上、今はもう懐かしい風景だ。
 衝動的に私は両手で写真を持ち、指先に力を込めた。
 あとは右手を振り下ろすだけで、幼い自分は真っ二つになる。
 なのに、私の手は震えるばかりで何もできずにいた。

 「……馬鹿みたい」

 一面ガラス張りになったリビングの窓。
 あの美術準備室で見たような茜色の夕日が落ち、見下ろす街には夜の帳が下りようとしている。
 私はそれを眺めながら、からかうような笑顔を思い出す。
 それから、あの日泣かないと決めてから初めて、少しだけ涙を流した




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WORLD'S END
■ キャラクター
無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE
NEW / SUN / LUMINOUS / VERSE
マップボーナス・限界突破
■ スキル
スキル比較
■ 称号・マップ
称号 / ネームプレート
マップ一覧


コメント

  • セガは百合に親でも殺されているのか? -- 2024-09-15 (日) 14:41:43
  • ↑それ僕も思った…悲しい結末すぎて -- 2025-06-22 (日) 14:11:33

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