ワールド・設定

Last-modified: 2022-02-09 (水) 21:03:39

D&Dは当初、ダンジョン探索が中心のゲームだったためその舞台となるワールドについては多少の指針が記述されているだけで、詳細はDM次第だった。
しかし、『ルーンクエスト』をはじめとする独特の設定と世界を持つRPGが増えてくると、D&Dシリーズにも様々な設定や舞台が作り出されていった。
それらの世界は「キャンペーンセッティング」と呼ばれるBOXセットやサプリメントを購入することで遊ぶことができるようになる。それぞれのキャンペーンセッティングは、基本ルールセットからいくつかのルールやデータを追加もしくは削除することで適応させることになる。
以下に代表的なキャンペーンセッティングを挙げる。

アル・カーディム (Al-Qadim)

AD&D第2版対応。
「フォーゴトン・レルム」(後述)の南方にある「Zakhara」が扱われている。世界観としては「アラビアン・ナイト」風。

エベロン(Eberron)

D&D3.5版以降で扱われている。WotC社による公募が行われ、その中から選ばれたという経緯を持つ。
魔法を使った機械技術が発展している世界で、魔法の技術で動く列車や飛行機械が登場し、プレイヤー向け種族として「ウォーフォージド」と呼ばれるロボットのような種族を選択できる。現実世界の第一次世界大戦後をイメージしていると言われているが、銃火器はない。
『ダンジョンズ&ドラゴンズ オンライン』はこのエベロンを舞台としている。

オリエンタルアドベンチャー (Oriental Adventures)

AD&D第1版、D&D第3版で扱われている。版により背景世界は異なっているが、どちらも「西洋人から見た幻想的な東洋世界」が舞台となる。
AD&Dでは「フォーゴトン・レルム」世界の東方地域「カラ・トゥア」(Kara-Tur)地方となっている。D&D第3版では戦国日本風の文化を持つ異世界「ロクガン」(Rokugan)。ロクガンはLegend of the Five RingsというD&Dとは別のゲームでも舞台として扱われており、REAPER社からはメタルフィギュアが販売されていた。
なお、Dragon誌121号ではオリエンタルアドベンチャー特集となっており、(西洋から見た)中世日本の価値観や日本風の名前のランダム表、2つのNPC専用クラス「ゲイシャ」(芸者)と「ゲニン」(下忍)が掲載されている。126号のBazaar of the Bizarreでは東洋のマジックアイテム特集となっている。

グレイホーク (Greyhawk)

Original D&D、AD&D第1版、AD&D第2版、D&D第3版/3.5版、D&D第4版で扱われている。ゲイリー・ガイギャックスが創造したワールド。
惑星オアースのフラネス大陸を舞台としており、「邪神に率いられた悪の大帝国が、世界征服を狙って、各地の善の王国に魔物の軍団を送り込んでいる」というとてもシンプルな世界観。D&Dのアライメントというシステムに合致している。D&D第3版では特定のキャンペーンセッティングを導入しない場合、このグレイホークが舞台であるという扱いになる。

アクセサリー

  • Greyhawk Ruins
    128ページの冊子。遺跡と化した、3つの塔から成るグレイホーク城という広大なダンジョンを舞台とするアドベンチャー。
    対応レベルは2~15で、キャラクターは5~7人用。
    ダンジョンの全階層は2ダース以上、部屋の総数は1000以上らしい。
  • GREYHAWK Wars
    ボードゲームが同梱された設定資料集で、グレイホーク東部全体を戦域とした5年に渡る戦争を扱っている。
    軍隊の強さや主要な戦いの図などが含まれている。

スペルジャマー (Spelljammer)

AD&D第2版のみだが、後にd20システムで復活している。
宇宙での冒険を扱うが、「星の海を魔法の帆船で航海する」というファンタジー的な要素が強い。スペルジャマーではD&Dの各世界は宇宙の海でつながっているという設定がある。ただしスペルジャマーの宇宙観は、後に出たプレーンスケープの設定「多元宇宙」と矛盾するところがある。
宇宙に浮かぶ魔法の帆船の構造図やフロアプランなどがあり、なかなか面白い。

アクセサリー

  • SJR2 Realmspace
    アクセサリー。フォーゴトンレルムのワールドスペースの設定資料集。
    フォーゴトンレルムを含む太陽系や衛星、小惑星などが解説されている。
  • SJR3 DM Reference Screen
    アクセサリーで、スペルジャマー用のマスタースクリーン。32ページの冊子付。

ダークサン (Dark Sun)

AD&D第2版、D&D4版で扱われている。アサス(Athas)と呼ばれる惑星を舞台とする。
「剣とサンダルもの」をモチーフにした世界観だが、古代の高度な魔法文明が崩壊したために大半の土地が砂漠化しているという設定。そのため、この背景世界では資源が枯渇しており、過酷な環境下に置かれている。
数は少ないが、このワールド設定のメタルフィギュアもいくつか販売されていた。

トーチポート

D&D第3版/3.5版対応だが、ライセンスとしてはd20システムとして扱われている。ホビージャパンがアイデアを一般から募集した日本の独自設定の街。
初心者が使いやすいように意識されており、一応「ファーガンド大陸」という設定はある。ただし「グレイホーク」や「フォーゴトン・レルム」などの他の背景世界にも適応可能。

ドラゴンランス (Dragonlance)

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AD&D第1版、AD&D第2版で扱われた。
小説『ドラゴンランス』シリーズの舞台である「クリン」(Krynn)を扱う。「神々に見捨てられた世界」という設定のため、かつて栄えた魔法文明も信仰も忘れられており、神々と魔法の力が弱くなっている。これにより、クリン世界では鉄の価値が高い、魔法使いの成長に制限があるといった独自のルールを有する。

バースライト (Birthright)

AD&D第2版対応。後にd20システムで復活した。
Aebrynisと呼ばれる世界のCerilia大陸を舞台とする。この設定の特色として、PCは古代の英雄の子孫であり、全員が国家運営に関わるような王侯貴族であるという点が挙げられる。このためPCたちは国家や世界の歴史を左右する活躍を常に求められる。

フォーゴトンレルム (Forgotten Realms)

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AD&D第1版、AD&D第2版、D&D第3版/3.5版、D&D第4版で扱われている。
惑星トリルのフェイルーン大陸を舞台としている。地域ごとに詳細なデータが積み重ねられており、膨大な規模を誇る。
標準的な「剣と魔法のファンタジー世界」だが、他のワールド・設定に比べて神々や魔法の力が強いのが特徴。
『アイスウインドサーガ』『シャドウデイルサーガ』『ムーンシェイサーガ』などの小説作品、『プール・オブ・レイディアンス』『アイ・オブ・ザ・ビホルダー』などのコンピュータ作品はこの世界を舞台としている。また登場人物のメタルフィギュアも少なくない。

ブラックムーア (Blackmoor)

Original D&D、クラシックD&Dで扱われた。デイヴ・アーネソンが創造したワールドで、D&Dの背景世界として最古のもの。ただし出版順はグレイホークが先んじている。
元々はOriginal D&Dの背景設定だった。後に「ミスタラ」世界に組み込まれ、クラシックD&Dのシナリオが発表されている。

プレーンスケープ (Planescape)

AD&D第2版対応。多元宇宙を舞台にしたキャンペーン・セッティング。
これを導入すると「D&Dで扱われる全ての世界は、それぞれ平行世界として存在している」とされて、世界から世界の移動が可能になる。さらには全世界の神々が住む天界のような世界と、全世界の悪魔たちが住む魔界のような世界も設定された。
D&D第3~3.5版ではこのプレーンスケープで扱われた多元宇宙の設定が基本ルールブックに盛り込まれ、キャンペーンセッティングとしては扱われなくなった。

ミスタラ (Mystara)

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クラシックD&D、AD&D第2版で扱われた。もともとはクラシックD&Dの舞台として設定されており、カラメイコス大公国をはじめとする設定はエキスパート・ルール・セット以降のルールセットやモジュールで展開されていった。
「ミスタラ」と呼ばれる惑星を舞台としており、古代ローマ風、ヴァイキング風、遊牧民風など、多様な文化圏の国々が存在する。またこの世界は地上世界である「ノウン・ワールド」と地下空洞世界である「ハロウ・ワールド」に分かれている。
クラシックD&Dでは「Gazetteer」と呼ばれるサプリメントを国や文化圏ごとに出版しており、新和版ではミスタラのことを「ガゼッタワールド」と独自の呼称を用いていた。
また「Gazetteer」ではサプリメントごとに様々な追加ルールが発表されており、後のD&Dシリーズに影響を与えたとされている。
カプコンが制作した「タワー・オブ・ドゥーム」と「シャドー・オーバー・ミスタラ」はこの「ミスタラ」を舞台としている。

ランクマー(Lankhmar)

AD&Dシリーズで扱われた。
米国のSF・ファンタジー作家であるフリッツ・ライバーが執筆した『ファファード&グレイマウザー』シリーズの「ネーウォン」という世界を舞台とする世界設定で、原作小説を元にして作られている。モジュールやアクセサリーが複数作られているが、多くは小説の舞台となった大都市「ランクマー」での冒険となっている模様。
ちなみにD&Dシリーズを生み出したゲイリー・ガイギャックスはD&Dに影響を与えた人物の1人としてフリッツ・ライバーを挙げている。

  • LNR1 Wonders of Lankhmar
    商品コード9295。96ページ。
    1~2ページのミニアドベンチャーを集めた本。
  • LNA1 Thieves of Lankhmar
    商品コード9276。96ページ。
    シナリオソースブックと称されている。ランクマー市のシーフギルドの詳細な設定が付いている。
  • LNR2 Tales of Lankhmar
    ランクマーの世界である「ネーウォン」を舞台とする7つの冒険を含むアクセサリー。

レイヴンロフト (Ravenloft)

AD&D第2版対応。ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社は第3版での展開を行わなかったが、一時期サードパーティによる第3版仕様のサプリメントが作られていた。
ゴシック・ホラー風の世界を舞台としている。「レイヴンロフト」は時空の狭間にある小世界で、悪徳が支配する闇の領域。善なる力は弱体化し、悪徳を為せば為すほど成長するという独自ルールがある。このため、世界は吸血鬼や悪魔といった闇の眷属や人間の悪漢たちが、善良なる人々を支配している。
レイヴンロフトには様々な世界から「迷い込んでくる」者たちがおり、PCはそうした遭難者というイントロダクションが普通。この世界から脱出するか、闇の力に染まるかはPC次第となる。

アクセサリー

  • Ravenloft
    第2版仕様のボックスセットで、レイヴンロフトの基本設定集と特別ルールが入っている。
    144ページの冊子とポスターサイズの地図4枚、アドベンチャーカード24枚という内容。
  • RR1 Darklords
    第2版仕様のアクセサリー。レイヴンロフトの世界にいるクリーチャーの独自能力や歴史についての解説がある。
  • RR2 Book of Crypts
    第2版仕様のアクセサリー。
    ゴシックホラーでは定番の恐怖スポットであるcrypt(地下墓所)に焦点を当てたアクセサリー。
  • RR3 Vampires
    第2版仕様のアクセサリー。
    レイヴンロフトでの吸血鬼を始めとするアンデッドや、アンデッドのキャラクターに焦点を当てたアクセサリー。

その他

他には、ドラゴンの島を舞台にする「Council of Wyrms」、幽霊が集う街を舞台にする「Ghostwalk」、オンラインゲーム『ディアブロ』を原作とする背景世界も発表されている。
またD&D第3版以降は、D&Dの版権元であるWotC以外からも、d20システムを使ったキャンペーンセッティングがいくつも発売されている。ただし、これらは一部を除いて、D&Dと互換性を持つd20システムという扱いであり、「D&D」のライセンスを持つわけではない。