呪文

Last-modified: 2023-05-21 (日) 21:15:25

原語は「Spell」。「呪文」の他に「魔法」、「魔法の呪文」とも表記される。ファンタジーを題材とする作品にはよく登場する用語。
ダンジョンズ&ドラゴンズにおける呪文は、まずはあらかじめ呪文を記憶しておく。そして一度使用すると再び記憶し直すまで使用できないというシステムが基本となる。
大別すると、マジックユーザーメイジウィザードが使える呪文と、クレリックドルイドなどが使える呪文がある。

クラシック・ダンジョンズ&ドラゴンズ

大別すると、マジックユーサーとエルフが使用するマジックユーザー呪文と、クレリックが使用するクレリック呪文の2つ。コンパニオン・ルール・セットではクレリック呪文から派生する形でドルイド呪文が設定された。その他にもGAZシリーズで追加ルールがあった際に、呪文が追加されることがある。
呪文の説明は呪文名に続いて、範囲・持続時間・効果がそれぞれ記載、その後に解説文が続く。範囲と効果に関しては誤植や誤記、あるいは分かりにくい説明が多く、DMやサークル・グループなどによって解釈が異なったりする。
またハウスルールとして新呪文を開発、採用するグループやサークルもあった。

呪文データの書式

クラシック・ダンジョンズ&ドラゴンズでは呪文のパラメータ数は少なく、呪文の名称を含めても4つしかない。しかし、ルールブックやモジュールによって名称に違いが見られたり、同じデータでも表記が異なるなどの統一されていない部分があった。

  • 呪文名
    呪文の名称。新和版では「・」がなしで表記されている。ただし後に日本語訳されたアクセサリーモジュールでは「・」が入っている事があり統一されていない。ルールサイクロペディア版では呪文名に「・」が付いている。またカタカナでの表記も本来の発音に近いものに改められた。
  • 範囲(距離)
    ルールサイクロペディアでは「距離」と訳されている。
    呪文が届く距離を数字で表現している。単位はフィートが基本だが、屋外ではヤードに変更される。
    • 0
      効果が術者にのみ作用する呪文は「0」と表記される。ディテクト系呪文などの「術者だけしか見えないものを視る」が代表的。
    • 接触
      接触した相手や物体にのみ作用する呪文。味方は隣接していればよいが、敵に対して効果を発揮するためには命中判定に成功する必要がある。
  • 持続時間
    呪文の効果が続く時間を表す。ラウンドもしくはターン単位が多いが、時間(6ターン)単位などの他の単位を用いることも多い。
    • 瞬間
      呪文の効果が発動すると、わずかな瞬間だけ効果が表れるタイプの呪文。代表的な呪文は「ファイヤーボール」など。
    • 永続(永久)
      ルールサイクロペディアでは「永久」と訳されている。
      一度発動すると、呪文の効果が破壊されない限り、永久に続く。代表的な呪文はコンティニュアル・ライトなど。
      例外として、治療系の呪文の効果はわずかな時間しか発揮されない。しかし同じような負傷を再度被らない限り、治療により回復した傷が勝手に悪化することはない。ディスペルマジックの効果が成功したからといって、治療された傷がひらくわけではない。
  • 効果(効果範囲)
    ルールサイクロペディア版では「効果範囲」と訳されている。
    範囲(距離)を中心にして、どのくらいの範囲に呪文の効果が及ぶのかを示す。直径20フィートだったり、幅5フィート長さ60フィートといった表現をされることが多い。もしくは対象となる生物の数やヒットダイス数が示されることもある。

GAZ5「アルフハイムのエルフ」

GAZ5「アルフハイムのエルフ」では、アルフハイムで習得可能になるエルフの「エルフ・ウィザード呪文リスト」が出てくる。呪文の記憶と行使のシステム自体はこれまでと同じだが、このリストにある呪文の中には本来ならドルイドクレリックの呪文が幾つも含まれている。
エルフ・ウィザードの呪文リストにある呪文は、アルフハイムにいるエルフが習得可能なものである。5レベル以下のマジックユーザー呪文に関しては他のマジックユーザーから教えてもらうことで習得が可能。しかし6レベル以上の呪文に関しては、エルフ独自の環境によるものであり、アルフハイムか類似した環境の場所でなければ習得はできない。
なおエルフ族の聖宝である「生命の樹」の世話をする者のみが使用可能な呪文もある。


上記の解釈だと、エルフ・ウィザードは独自の呪文に加えて第5レベルまでのマジックユーザー呪文を行使することが可能となる。
この新和版の日本語訳だと、マジックユーザー呪文として習得したものとエルフ・ウィザード呪文として習得したものを明記しないとややこしいことになる可能性がある。

ルールサイクロペディア

ルールサイクロペディア版ではマジックユーザー呪文が「魔法使い呪文」、クレリック呪文が「僧侶呪文」と表記されている。他に呪文名に「・」が入ったり、訳語が変更されている。また魔法使い呪文には各レベルに1つずつ呪文が追加されているが、日本語に訳されたのは5レベル呪文までに留まる。

アドバンスド・ダンジョンズ&ドラゴンズ

呪文の系統はまず上記の2つに大別されるが、さらに8つのスクールという専門分野に分かれている。

呪文データの書式

日本語訳されたアドバンスド・ダンジョンズ&ドラゴンズ第2版での呪文データの書式は名称を含めると8つ、プリースト呪文の場合はスフィアーが加わるため9つになる。
なお日本語版では未訳だがWizard’s Spell Compendium(全4巻)とPriest’s Spell Compendium(全3巻)ではさらにSpell Frequencyというデータが追加されている。

  • 呪文名
    新和が発行しているがクラシック・ダンジョンズ&ドラゴンズと比較して、「・」ありになった他、カタカナ表記も改められたものがある。
  • スクール
    略語は無く、呪文名の後に括弧書きで記されている。プリースト呪文にも記されているのを不思議に思う人もいるかもしれないが、特定のスクールに基づく呪文効果に耐性がある種族やスペシャリスト・メイジセーヴィング・スローの扱いなどに影響する。
    詳細はスクールを参照。
  • スフィアー
    略語は「S」。
    プリースト呪文にのみ記載されている。信仰する神や哲学、エネルギーといった権能に関わる項目。詳細はスフィアーを参照。
  • 距離
    略語は「R」。
    呪文の効果が発動する場所と、術者との間の距離を示す。
    呪文は、呪文の「距離」内で術者が視認できる点を中心に効果を発揮すると規定されているため、視認できない場所に呪文を撃ちこむという事はできない。またアロースリットのような隙間からの視認では呪文を発動できるが、覗き込んで見るような小さな覗き穴からの視界では呪文を発動できないと明記されている。
    • 0
      呪文の効果が術者に対してのみ作用するか、術者自身から発散されることを意味する。
    • 接触
      術者が物理的に触れることができれば、他者に対して効果が発動する。クラシックと違い、味方にかける場合でも戦闘行動中であれば命中判定が必要な場合がある。
  • コンポーネント
    略語は「C」。
    呪文の発動に必要な構成要素を表す。それぞれに略語があり、その呪文の発動に必要なものだけが記されている。
    • V
      Verbal Componentの略。バーバル・コンポーネントと訳されていた。
      所謂「詠唱」のこと。発声する必要があるため、サイレンスの呪文により封じられてしまう。また聴覚喪失により呪文の発動に失敗する可能性が発生する。
    • S
      Somatic Componentの略。ソマティック・コンポーネント。
      手足などの肉体を用いた動作のこと。麻痺やホールドなどにより封じられてしまう。
    • M
      Material Componentの略。マテリアル・コンポーネント。「マテコン」と略された紹介記事もあった。
      当時のAD&Dの小説では「触媒」と翻訳されていたが、本来の意味とは異なるため誤訳と思った人もいた。呪文の発動や維持の際に必要となる物質のこと。基本的に消耗品が多いが、プリースト呪文のホーリーシンボルのように消費しないものも少なくない。第2版の刊行当初の記述では消費する物と消費しない物の区別が曖昧なものが多かった上、必要とする物質の価値や数量も曖昧なことが多く、当時のプレイヤーたちを悩ませた。一応、日本語版刊行前に発行されたプレイングガイドに第1版のマテリアル・コンポーネントの記事が翻訳掲載されていたため、これを入手した場合は参考にすることは可能だったが。
      未訳ではあるが、後にマテリアル・コンポーネントの詳細が決まっていき、入手難度や価格、数量といったデータが補われていった。
      一方で、マテリアル・コンポーネントのルールを適用すると術者(とDM)の負担が増す。特に重量の選択ルールを採用すると、呪文書だけでなくマテリアル・コンポーネントの重量まで加算されてしまい、防具を着けていないのに所持品の重量が重装備の前衛クラス並みに嵩上げされてしまうという事態に陥ることがある。
      上述した重量の問題がないとしても、マテリアル・コンポーネントで消費する物質の管理と、それにより呪文の選択が狭められるといった負担がかかるため、プレイヤーによっては嫌われることがある。
  • 持続時間
    略語は「D」。
    呪文の魔法エネルギーが尽きるまでの時間を表す。
    持続時間が「瞬間」の呪文でも効果が「永久」というものが存在するが、その場合は「瞬間」的に呪文が効果を発揮した後に魔法エネルギーは消えてしまうという解釈になる。
    また術者が任意に呪文の効果を切ることができる場合、術者は呪文の「距離」内にいること、術者が解除の言葉を唱える必要があることが明記されている。
  • 詠唱時間
    略語は「CT」。
    選択ルールの1つ。詳細は詠唱時間を参照。
    なお、この項目は「呪文を発動するために必要な時間」という意味で使われているため、「詠唱」を必要としない呪文に対してもこの項目の解説は適用される。
  • 効果範囲
    略語は「AE」。
    呪文の効果の対象となる面積や体積、あるいは生物や重量などが記載されている。
    効果範囲が面積や体積の場合、特に記述されていない限り、最低単位は10フィートでされている。効果範囲を術者が任意に決定できる場合でも、一辺を10フィート未満に設定することはできない。
  • ST判定
    呪文の対象となった生物や物体が、セーヴィング・スローにより呪文の影響を免れたり効果を減ずることが可能かどうかを示す。
    呪文の対象となったクリーチャーは、ST判定を任意で放棄することもできるが、その場合呪文は効果を普通に発揮する。なお、術者が対象のクリーチャーをだましてST判定を放棄させることもできる。
  • Spell Frequency
    未訳のサプリメントに掲載されているパラメータで、正規に日本語訳された範囲では登場しない。
    その呪文の入手難度や認知度を表現している。加えて、その呪文の初出となった書籍やサプリメントが記載されている。このパラメータは、ワールドやDMの判断により変更させてもよい。
    なおSR(スーパー・レア)とかUR(ウルトラ・レア)は無い。
    • C
      Commonの略。
      ウィザード全般に知られている呪文。基本的にはプレイヤーズハンドブックに掲載されている呪文で、1レベルのゲーム開始時に選択可能となる。ただし呪文名に開発した個人名が含まれている呪文は、「グレイホーク?」世界の登場人物が開発したという設定のため、DM次第では「U」(下記参照)扱いにされる場合がある。
    • U
      Uncommonの略。
      未訳のサプリメントである『Tome of Magic』に登場するものが多い。一般的なメイジにはあまり知られていない。しかしスペシャリスト・メイジの場合は自身が専攻するスクールの呪文に関しては知っている可能性がある。また、ゲーム開始時の呪文や、レベル上昇時の過程での修得は原則できない*1
    • R
      Rareの略。
      モジュールやアクセサリーで登場するものが多い。特別な秘伝扱いであり、種族や氏族に代々伝わる呪文だったり、特別な集団や組織により秘匿されている呪文。
      発見して修得する場合、スペシャリスト・メイジは自身の専攻するスクールの呪文であればボーナス修正付きで通常の判定で修得可能。メイジの場合は修得確率にペナルティが付く。
    • VR
      Very Rareの略。
      Dragon誌などの雑誌記事で紹介された呪文。変わった効果を持っていたり、強力だったりすることが多いため、導入には慎重になるよう示唆されている。なおこの呪文の多くは後述される制限呪文(Res呪文)の属性が付くことが少なくない。
    • Res
      Restrictedの略。訳すると「制限呪文」だろうか。
      特定の術者やグループ以外には使用が禁止されてしまう呪文。『Complete Necromancer Handbook』のネクロマンサー専用呪文などが該当する。
      こういった呪文もリサーチ(研究開発)は可能だが、その必要な時間や費用は最低でも2レベル上の呪文と同じ扱いになる。

ダンジョンズアンドドラゴンズ第3~3.5版

D&D第3~3.5版ではウィザードソーサラー?が使う秘術呪文?と、クレリックドルイドが使う信仰呪文?に大別される。


*1 術者の師匠が教えてくれる場合は例外。