クリスタル・ドラゴン

Last-modified: 2014-02-24 (月) 02:21:59

クリスタル・ドラゴン/あしべゆうほ

137 :クリスタル・ドラゴン〈序〉1 :04/04/25 00:43 ID:???

『クリスタル・ドラゴン』(著・あしべ ゆうほ)は、主人公が仲間やアイテムを集め、
それなりの力を得て敵を倒す…ことになるんだろーなーと思われる物語です。
大雑把にまとめただけだし文才もないので、わかりにくい所もあるでしょうがご容赦を。
先に、説明すると長くなる事や、知っていたら話がわかりやすいかも?と思う事を書いておきます。
〈クリスタル・ドラゴン〉
伝説の竜。 水晶宮に住んでいる。
〈エリン〉
アイルランドの古名。 アリアンロッドの故郷。 住民はケルト人であり、金髪碧眼が多い。
〈アリアンロッド〉
主人公。 名は『銀の車輪』の意。 魔法使いの弟子。 気が強く大雑把な性格。
黒髪で、取り替えっ子と言われながら育つ。
(黒髪の者は、本来妖精郷に生まれるべきであったが、妖精と取り替わって人間に生まれたのだとされている)
〈サークレット〉
リング状の装飾品。 額を横断するように頭につける。 ドワーフの作品には不思議な品が多い。
アリアンロッドのサークレットは聖なる力を持っており、時々形が替わる。 アリアンの力を引き出すための道具。
〈真実の名〉
通り名とは別のもの。 その人間(精霊なども)の本質であり、それを知れば支配することもできる。
〈クラーナ〉
一族のこと。 大抵は一つの一族が一つの村を作っている。 族長(リー)が治めている。
族長を束ねるのは上王(アード・リー)で、エリンには7人の上王がいる。
アリアンロッドのクラーナはグリアナン・クラーナ(緑の原の一族)
〈邪眼のバラー〉
ドームニュー・ガワン・クラーナ(深淵の谷の一族)の族長。
姉である魔法使い・エラータの魔力により、邪悪な闇の神と契約を交わして一族を支配している。
右目は邪眼、普段は眼帯で隠しているが、はずすことで闇の神と入れ替わる。 アリアンロッドとは古の同族。 


138 :クリスタル・ドラゴン〈序〉2 :04/04/25 00:44 ID:???

説明すると長くなる事や、知っていたら話がわかりやすいかも?と思う事2です。
〈ヘンルーダ〉
グリアナン・クラーナの族長の娘。 気が強くしっかり者。
〈杖なき魔法使い〉
古い予言の詩に出てくる人物。
  古き砦に闇が巣くう時  杖なき魔法使いが現れる
  杖なき者は魔法を持たず  闇は嵐を呼ぶだろう
  杖なき魔法使いは杖を求め  天と地との境 水晶宮への道をたどる
  黄昏の地にて杖を取りし者は  闇が光掲げて己を広げし様を見るだろう
  光が闇の翼に包まれているのを知るだろう
〈グリフィス〉
バラーの側近。 頑固で義に厚く、信頼できる人物。
子供の頃バラーに助けられた事があり、以来バラーに忠誠を誓っている。
アリアンロッドの敵でありながら、なぜかいつも手助けをしてしまう。
実はアリアン・サイドに立つべき人物であったらしい。
〈狂戦士(ベルセルク)ソリル〉
『百の傷のソリル』と呼ばれている屈強な大男。 陽気で女好き。 中々の策士でもある。
ヴァイキングの村の次期族長。 現族長の息子が病弱であるため養子となった。
ローマで剣闘士として戦っていたこともあるが、貴族に不敬を働き船奴隷として売られた。
アリアンロッドの乗った船にいたが、仲間のヴァイキングに助けられ・・以下あらすじで。
〈北欧〉
アリアンロッドの国はケルト神話の世界。 ソリルの国は北欧神話の世界。
国が違えば言葉も神話も違う。
例えば『女魔法使い』はドルイダス(ケルト)→セイズコナ(北欧)
〈盾の乙女〉
スカルメールまたはワルキューレ。 男達と共に戦う戦乙女のこと。
男達の士気を鼓舞し、瀕死の戦士の魂をワルハラ(天国みたいな所)に送るのが主な役目。     


145 :クリスタル・ドラゴン 1 :04/04/25 02:25 ID:???

エリン>>137に住む幼いアリアンロッド>>137は、海辺でレギオンと名乗る銀髪の美しい戦士に出会う。
彼はアリアンに、地下の小人族・ドワーフの細工したサークレット>>137と真実の名>>137を与える。
数年後、成長したアリアンは見習いの女魔法使いとして修行に励んでいた。
しかし、アリアンの一族グリアナン・クラーナ>>137は、
ドームニュー・ガワン・クラーナの邪眼のバラー>>137によって滅ぼされてしまう。
復讐を誓ったアリアンは風の精の王・パラルダの助けを借り、
ローマ貴族アントニヌスの娘コンスタンスと偽って、ドームニュー・ガワンへ乗り込んでいった。
アリアンは捕らえられていた同族の娘・ヘンルーダ>>138に再会し、
そこで出会った元奴隷の少年・ボリと共にバラーを殺そうとする。
だが、黒い血を持つバラーは心臓を刺されても死なず、
邪眼のせいで視力を失ったアリアンは、火の精の王・ジィンの力で何とか谷を脱出した。
『七つの眠りの島』にやって来たアリアンは、これより後に現れる全ての魔法使いの杖がある『学びの園』で、
自分が詩に伝わる『杖なき魔法使い』>>138であることを知る。
〈ドームニュー・ガワン〉
バラーは自分の血をヘンルーダの額につけ、ボリと共にアリアンの元へ返した。
そして、アリアンがバラーの胸を貫いた短剣は側近のグリフィス>>138に渡され、
グリフィスはアリアンを捕らえるべく後を追う。
二つの血は惹きあい、たとえアリアンがどこへ行こうともグリフィスをその場へ導くのだった。


146 :クリスタル・ドラゴン 2 :04/04/25 02:26 ID:???

〈アリアンロッド〉
ヘンルーダと再会したアリアンは、一族の復興を誓い、バラーに対抗できる『助け手』を探して旅立った。
一行は上王にして予言者・ミアーハの治める沈黙の一族の村へ入る。
祭りの準備で賑わう村にはレギオンも来ていた。
だがこの時、ドームニュー・ガワンでは村への襲撃準備が進んでいた。
祭りの夜、巫女役を引き受けたヘンルーダは妖精の輪の中に消え、アリアンもその後を追っていく。
直後、村は襲撃されて惨憺たる有り様となり、上王・ミアーハも殺されてしまうのだった。
辛くも生き残ったボリはレギオンと共に旅立ち、
妖精の道を抜けたアリアンは、ヘンルーダの待つ『眼病を癒す泉』へ到着する。
泉の精の助言によりアリアンの視力は戻った。
そしてしつこく追ってくるグリフィスの手を逃れ、海へと脱出する。
エリンを離れブリタニーに入ったアリアンとヘンルーダ。
二人が逗留したイケニの村はローマの支配下にあった。
だが、後継者問題から一族は蜂起し、アリアンとヘンルーダも争いに巻き込まれてしまう。
イケニ一族は奮戦し、ローマのコロニア(駐屯地)を占領した。
ところが、息つく間もなくグリフィスが現れる。
しかし今は同種族で争っている時ではない。 グリフィスはイケニの族長の願いを受けて味方についた。
そして、ローマ軍の反撃が始まった。
大掛かりな武器を使うローマ軍に前に、勇猛果敢なイケニもついに敗れ、族長は自害した。
死を覚悟したアリアンだったが、ローマ貴族アントニヌスに救われ命拾いする。
(アントニヌスは以前アリアンが騙ったコンスタンスの父。その縁からコロニア占領の折アリアンが助けた)
アリアンとヘンルーダは旅の再開を決めた。
だがその時ヘンルーダの身に異変が起こる。 バラーに付けられた血がグリフィスを呼んでいるのだ。
ヘンルーダの額に浮き出た黒いシミが原因だと悟ったアリアンが
自分のサークレットで封印すると、ヘンルーダはたちまち気を失った。
正気に戻ったヘンルーダと共に、アリアンは船で出発した。


166 :クリスタル・ドラゴン 3 :04/04/25 18:15 ID:???

順調な航海も束の間、船はヴァイキングに襲われ、狂戦士ソリル>>138の奴隷として彼の故郷へ向かうことに。
風の精の王に助けを請おうにも、国の違ってしまった今風は応えず、アリアンは孤立無援だった。
〈ドームニュー・ガワン〉
谷ではバラーが花嫁を迎えていた。
冷酷非情なバラーに嫁いだ上王カメロンの娘・ウーナ、その不幸な身の上の少女は、
バラーを殺すため谷に入り込んだ沈黙の一族の刺客・ラズモアを愛してしまう。
〈アリアンロッド〉
北欧>>138のソリルの故郷に入ったアリアンは、女魔法使い・ハルベラに預けられた。
翌日、川で女が殺される。
傍に倒れていたヘンルーダの頭にサークレットは無く、その腕は血まみれになっていた。
人殺しと罵られるヘンルーダを助けたのはソリルだった。
そしてアリアンは、族長の息子・病(肺結核)持ちのギルスと共にサークレットを探して回る。
白妖精に持ち去られたと知った二人は妖精を追い、そこに現れた老婆に妖精郷へ招待された。
だがサークレットは老婆が、『ミズガルズの蛇』と呼ばれる竜に贈ってしまいすでに無かった。
アリアンは代わりの護符を老婆にもらい、人間界へ帰る。
護符を身に付けたヘンルーダは、己の身に不安をいだきながらも気丈に日々を過ごす。
そして実直な優しさを示すソリルに惹かれていった。
アリアンは盾の乙女>>138となるべく剣の特訓に明け暮れる一方、妖精郷の老婆の元へ通い魔法を学ぶ。
そこへやって来たレギオンに「名は変われど、それはそれ」と教えられ、
国や名は違っても本質は変わらないことを悟って、風の精の王を呼べるようになった。


168 :クリスタル・ドラゴン〈序〉3 :04/04/25 19:20 ID:???

説明すると長くなる事や、知っていたら話がわかりやすいかも?と思う事3です。
〈ラズモアの恋〉
実はこの辺り、当り障り無く書いたので、ラズモアとウーナが恋人同士のように見えるけど、
ラズモアが本当に好きなのはバラーで、ウーナには同情してるだけだと思います。
何でそう書かないかというと、作品中にはそう思わせる描写があるだけではっきり書いてないからです。
人物の行動から推理したことを書いてみます。
 〔ラズモアは友に「ウーナを助けるから自分のことは見捨てろ」と言う〕腹の子がバラーの子でなければ
 ウーナ共々殺されるので、谷から逃げることではなく、ウーナが殺されない様にするための計画を立てた。
 〔友が密告する〕これは計画のうち。
 〔ラズモア、毒を手に入れる〕バラーを殺すため。自分も死ぬつもり。
 〔逃げるが捕まる〕はじめから逃げられるとは思っていないので、計画のうち。
 〔ウーナと腹の子を人質に逃げようとする〕これは狂言。周囲の人間にバラーの子だと思わせるため。
 〔バラーに好きだと告げ、毒を含んでキスをする〕ここでバラーを殺せばウーナの子は族長の子として
 大切にされるはず。ウーナも殺されない。
 ただし、愛の告白はキスをするための口実だと周囲には思われるけど、実は本心。
 刺客であるラズモアがバラーを自分のものにし、なおかつ子を救うには上手い計画だと思う。
以上です。 もしコミックスを読む機会があったら考えてみてください。
〈竜の杖〉
杖なき魔法使いの杖。 一人の魔法使いに一本の杖が原則だが、竜の杖だけは持ち主が幾人も替わっている。
魔法使いの祖のものであったとされ、太初の強大な魔力を持ち主に与える。
4つに分断されその所在は不明。 女好きでノリの軽い、ふざけた樫の精霊でもある。
〈巫女姫セクァヌ〉
元は『泉の女神セクァヌ』の加護を受けた巫女。 
バラーの姉・エラータの呼び出した魔に体を乗っ取られ闇の巫女となる。
バラー(の中の闇の神)に心酔している。
〈ペトロニウス〉
ローマ貴族。 ここではただの脇役。 『サテリコン』の作者。
『サテリコン』は、古代ローマの頽廃的な社会に生きる若い学生のぶっ飛んだ話。


169 :クリスタル・ドラゴン 4 :04/04/25 19:23 ID:???

〈ドームニュー・ガワン〉
バラーはウーナの父、自分の義父でもある上王・カメロンを討ち、自ら上王となる。
日々の辛さにウーナは泣き暮らし、ラズモアに救いを求めるのだった。
そんなある日、ウーナはラズモアの子を妊娠し、そのことを彼に告げる。
二人は谷から逃げる決心をするが、逃亡は失敗し、ラズモアはバラーの毒殺を計る。
 だがバラーに毒は効かなかった。
ラズモアは死に、女魔法使い・エラータはその骸に沈黙の一族の上王・ミアーハの魂を入れた。>>168
〈アリアンロッド〉
ソリルの村では、族長と隣村の若者による女の取り合いで殺人が起き、
その場に居合わせたヘンルーダの護符が壊れてしまう。
そしてヘンルーダは、エラータの放った悪霊の宿主と化してしまうのだった。
殺人事件は戦へと発展し、アリアンも盾の乙女として参戦することとなる。
しかし、仲間の死を見て戦うことのむなしさを知ったアリアンは、風の精の王を呼んで強引に終結を促した。
身の内に不気味な存在を感じるヘンルーダは自分が信じられない。 
そんなヘンルーダを慰めるソリル。 その日二人は結ばれた。
アリアンとヘンルーダはサークレットを求めて旅立った。
ソリルはその後を追おうとしてボリに出会う。
そして「ヘンルーダを助けたいなら南の聖地へ向かえ」というレギオンの伝言により、ボリと共に出発する。
アリアンとヘンルーダは北へ急いだ。
吹雪の中を進むアリアンは、途中で行き倒れたグリフィスを救った。
〈ドームニュー・ガワン〉
谷はいよいよ闇の気が濃くなってくる。  家畜や人から禍々しい姿の者が生まれだしていた。
〈アリアンロッド〉
命を助けられたグリフィスは、アリアンに一時協力することを誓い、三人で『火と氷の島』へ行く。
そこで現れたレギオンに案内され、眠れる竜・ミズガルズの蛇の寝床へ入ったアリアンは、
サークレットと自分の杖(竜の杖)>>168の一部を手にした。
その時巨大な穴が出現し、三人は穴の中へ落ちていった。


172 :クリスタル・ドラゴン 5 :04/04/25 21:40 ID:???

〈ソリル〉
聖域に入ったソリルはレギオンに会い、納められている聖剣を手に入れるよう言われる。
だが剣を手にするためには、少年の姿をした幻と戦わなければならなかった。
傷だらけになりながらも資格を認められたソリルは剣を取り、いきなり現れた悪霊の影を切る。
切られた悪霊はヘンルーダに姿を変えた。
ミズガルズの蛇の寝床と聖域の空間がつながったのである。
しかしアリアンとグリフィスは聖域に入れず、異空間を流されていった。
ソリルが切ったのはヘンルーダの中の胎児であった。
まだ生まれてもいないヘンルーダとソリルの息子、彼は少年の幻として父に剣を渡し、
母の代わりに悪霊を取り込んで切られたのだった。
〈アリアンロッド〉
アリアンとグリフィスは、ローマの近くアレシア村の巫女姫セクァヌ>>168の元に現れた。
セクァヌは結界を張って二人を街に閉じ込め、グリフィスにアリアンをローマへ連れて行くよう命じるのだが、
グリフィスはそれを拒み、一人結界を抜ける方法を探した。
一方アリアンは、ローマ軍こそがバラーを倒すための『助け手』ではないかと考え、
ローマ商人・エフィデルに雇われてローマへ行く機会を待つ。
祭りの夜、グリフィスはセクァヌを襲った。
しかしセクァヌは、二人を結界に封じるために使用した金円の首飾りを残して逃げてしまう。
街の結界は消え、商隊はローマへ向けて出発した。
〈ソリル〉
ソリルはローマの船主に雇われローマへ向かった。
浮気を心配したヘンルーダは、軍艦の艦長・フリウスに頼み船に乗せてもらうのだが、
彼はセクァヌに「ヘンルーダを得れば益となる」と入れ知恵された人物だった。
途中の港町でヘンルーダの事を知ったソリルは、急ぎローマへ向けて発ち、山の中でグリフィスに出会った。


173 :クリスタル・ドラゴン 6 :04/04/25 21:42 ID:???

〈アリアンロッド〉
ローマへの山越えの途中で商隊は山賊に襲われ、アリアンは重傷をおって捕らえられてしまう。
山賊の狙いは商隊の荷だけではなく、アリアンでもあった。
アリアンは山賊の村を仕切る年老いた巫女に洞窟へ連れて行かれる。
そこには数代前の朽ちかけた巫女がおり、アリアンの杖を奪って洞窟の奥へ向かって行った。
巫女を追ったアリアンがそこで見たのは、竜の杖を手に水晶の中で眠るレギオンの姿だった。
朽ちかけた巫女の名はサリ。
その昔レギオンを愛し、彼を目覚めさせるためにドワーフの血を吸って生き長らえ、竜の杖を探していたのだ。
アリアンは襲ってきたサリを殺し逃げるが、自分の竜の杖を無くしてしまう。
だがそこへドワーフが現れ、竜の杖は彼等が探してくれることとなった。
また、ドワーフの長・リアムの話により、洞窟のレギオンは水晶宮に眠る彼の幻影であることを知るのだった。
〈ヘンルーダ〉
ローマに着いたヘンルーダはフリウスにサークレットを取られ、その瞬間セクァヌに取り憑かれてしまう。
そしてバラーのため、ローマを手に入れようとするセクァヌの暗躍が始まった。
〈アリアンロッド〉
山賊村の年老いた巫女の恨みを買ったアリアンは、サリの子孫・少年サールに奴隷市場へ連れて行かれた。
売られまいと騒ぎを起こしたアリアンに奴隷商人・フロンティヌスが近づき、
「ヘンルーダがローマにいるから共に来い」と言う。
それがソリルの差し金であることを知ったアリアンは、奴隷としてローマへ行くことにしたのだった。
〈ドームニュー・ガワン〉
ミアーハは事あるごと人々に反乱を起こせと説いて回る。
だが人々の心は弱く、邪悪な気はますます強まっていく。
異形として生まれた人間や家畜はその中で強く育ち、やがて普通の人間までもが体に変化をもたらしていった。


216 :クリスタルドラゴン1:エリン編A :04/04/26 20:18 ID:???

(以後は>>146さんがまとめられている内容です)


ヒロイン、アリアンロッド(和訳『銀の車輪』)はエリンの島(アイルランドの古名)
の緑の原の一族(グリアナン・クラーナ)に生まれた長い黒髪の巻き毛の娘。
ケルト人は一般的に金髪碧眼であり、珍しくも黒髪のアリアンは幼少時より
一族から外れた「妖精の取り替えっ子」(イギリスの『取り替えっ子』民話
=親に似ない子は妖精に取り替えられた子 を参照)
と言われ差別を受けていた。
が、そんな自分を卑下する幼いアリアンの元に、自然界の精霊を従えた不思議な銀髪の男が現れる。
男はレギオンと名乗り、アリアンロッドに真の名と美しいサークレットを与えるのだった。
「真の名」とは日本の言霊のようなもので、精神的な力を持つゆえに安易に他者には
明らかにしてはならず、他者に真の名を握られると、呪術を用いて支配されるなど
制約を受ける材料にもなる。
つまり、人間であれ精霊であれ、他者を支配するには真の名を知らねばならない。
(ちなみにアリアンの「真の名」は以後、現連載に至るまで明らかにされていません)


成長し美しくなったアリアンは、魔法使い(ドルイドと読む。
古代ケルト民族の呪術者であり、賢者であり、医者であり、
また政治的にもある程度の発言力を持つ)に弟子入りする。
エリンのドルイドには古くから伝わる伝説があった。


【古き砦に闇が巣くう時、杖なき魔法使い(ドルイド)が現れる。
杖なき者は魔法を持たず、闇は嵐を呼ぶだろう。
杖なき魔法使い(ドルイド)は杖を求め、天と地の境水晶宮への道をたどる】
(↑以後の展開に関わってきます)


217 :クリスタルドラゴン2:エリン編B :04/04/26 20:19 ID:???

しかし平和だった一族の生活は突如壊乱される。
緑の原の一族は、突然、最近に勢力を伸ばしてきた深淵の谷の一族
(ドームニュー・ガワン・クラーナ)に侵略を受け、アリアンを残して全滅してしまった。
憔悴したアリアンは領地に残されるが、精霊の助けによって一族の女達と
族長の娘、ヘンルーダが生きていることを知る。
アリアンは戦士であった実の父と代父ともいえる師・ドルイドの死を共に見届け、
復讐を誓うのだった。


ケルト人、つまりエリンに住む者はほぼ金髪であるが、南方に住み
イングランドに駐屯地を置いているローマ人は黒っぽい髪・瞳の者が多い。
それを利用し、また、なぜか自らアリアンに真の名を教え、使役されることを
了承した風の王・パラルダから援助を得たアリアンは、単身、深い淵の一族の
本拠地に乗り込み、族長バラーを殺して自分の一族の復讐を遂げることを計画する。
現時点で、アリアンの持っている利点は
「容貌から緑の原の一族とは見破られにくいこと」
「風の王・パラルダの助けを得られること」
「師のドルイドが死ぬ間際に真の名を託した火の王・ジィンの助けもまた得られること」
である。


風の王・パラルダはイングランドに駐屯するローマ貴族の娘・婚スタンスが
海遊びで遭難し、亡くなったことを告げる。
深い淵の一族が勢力を伸ばしてきた背景には、族長がバラーという名の片目で
冷酷無比な若者に代替わりし、また、バラーの姉がエラータという強力な女魔術師
(ドルイダスと読む。『ドルイド』の女性形)であることに由来する。
しかし、深い淵に乗り込んで「私は海で遭難したコンスタンスです」と
名乗っても、実際に遭難したコンスタンスがいるのでは、エラータの得意とする
水鏡による占術でも真実は見破られにくいだろう。
アリアンは「コンスタンス」と偽り、単身深淵の谷の一族の本拠地へ乗り込むのだった。


219 :クリスタルドラゴン3:エリン編C :04/04/26 20:21 ID:???

乗り込んだアリアンは、
元バイキングであり、囚われて深淵の谷の一族の奴隷となっている少年ボリや
ヘンルーダと再会し、復讐を共にする味方を得る。が、
同時にエラータや、族長バラーの側近であり小姓でもあるグリフィスにも素性を疑われる。


そんな折り、アリアンはバラーの寝所へと呼ばれた。
ただの気まぐれでローマ娘を弄ぼうとするバラー。
ここが正念場とバラー殺害を企てるアリアン。
アリアンは隙を見て、ついに宿敵バラーの胸を短剣で突き通す。
しかしバラーは死なない。
その胸から流れ落ちる血は赤くはない。人の物ではない、黒い血…。


なぜならば、バラーは族長となる際に、闇の術に長けたエラータの協力を得て
闇の者(アリアンが協力を得ている精霊とはまた別種の、暗黒の精霊)に
その身を明け渡していたからであった。
バラーが片目なのはその代償である。
バラーは生まれた当時は両目が揃っていたが、片目を闇の者に捧げることによって
闇の精霊の援助を得る。
よって、バラーは生まれた当時の目で見ている時は生身の人間だが、
生まれたときの目を塞ぎ、闇に捧げた目で生きる時は不死の闇の者であるのだった。


(このバラーの二面性は後でも伏線になってきます)
(また、アリアンを近づける際、危険を感じて「人間バラー」の承諾を得ないまま
自己判断で「闇のバラー」に変化させておいたのはグリフィスです)


220 :クリスタルドラゴン4:エリン編D :04/04/26 20:23 ID:???

バラーが死ななかったことによって、バラーへの刺客という正体がばれ、
深淵の谷の領海内で追われる身となったアリアンは窮地に陥る。
しかし回廊で松明を見つけ、師から伝授された「火の王サラマンダー・ジィン」
に助けを求めることによって、かろうじて我が身一人は脱出する。
しかし、取り残されたヘンルーダとボリは尋問にあう。
ヘンルーダはエラータの魔術によって、幻惑され真の名を明かしてしまい、
以後エラータの魔術(闇の魔術)の支配下に置かれるのだった。


脱出したアリアンは風の王・パラルダに導かれ、全てのドルイド候補が
ドルイドとなるために修業するという「賢者の島」にたどり着いていた。
この地には、過去から現在にかけて、すべてのドルイド/ドルイダスの杖が
存在するという。
しかしアリアンは自分の杖を見いだせない。
アリアンが伝説の【杖無き魔法使い(ドルイド)】である可能性が示唆されるのだが…?


「賢者の島」から戻っアリアンは、(実はエラータによってわざと逃がされた)
ヘンルーダとボリと再会する。
アリアンとヘンルーダは、一族の復興とバラーへの復讐を誓う。
「蒼天我が身に落ち来たらぬ限り、緑なす海我が身を飲み込まぬ限り」
そして二人とボリは、現時点ではバラーに敵わぬことを悟り、
協同してバラーにあたることのできる「助け手」を求めて旅立つのだった。


しかしヘンルーダは真の名を握るエラータによって放たれた餌だった。
ヘンルーダと共にいる限り、アリアンの居場所は察知され、
またヘンルーダの体もエラータに支配されるので、二人の行動を遮る事もできる。
更にバラーの側近グリフィスは、「人間バラー」の了承を得ずして
「闇のバラー」を目覚めさせた為に、「人間バラー」の怒りを買い、
代償としてアリアンロッドを生かして連れ戻すことを命じられる。
ヘンルーダへの呪いという枷、グリフィスという明敏な追っ手。
これからの二人と一人の旅はどうなるのだろうか!?


226 :クリスタルドラゴン5:エリン編E :04/04/26 21:17 ID:???

(すいません;上の「賢者の島」は>>146さんの「七つの眠りの島」が正しいです)


旅を続ける二人はヘンルーダの親族、上王(アード・リーと読む。
「族長」(リーと読む)の数種族を統べる格上の族長)ミアーハの
沈黙の一族に援助を求めて訪れる。


しかし「沈黙の一族」は突如侵攻してきたバラーに破れてミアーハは戦死。
一族は緑の原の一族ほどのダメージは受けなかったものの、かなり弱体化する。
しかしかなりの戦士が残ったのだから(当時は男は皆殺し、女は捕虜が慣習だったらしい)
これで一族を復興しようというミアーハの母(=ヘンルーダの姉。よって親族)
しかし、あくまでバラーへの復讐を企てるミアーハへの忠誠が強い一派。
後者に属する「狼」と「狐の手袋(ラズモア)」は深淵の谷へと潜入し、バラー暗殺を企てる。


「沈黙の一族」は精霊との直接交渉を持つ稀なる一族であり、
ミアーハ自身も予知能力を持っていた。
彼の予知によるものか、それとも運命だったのか、アリアンとヘンルーダの二人は
再度の戦が始まる以前に時を飛び越え、後の季節へとたどり着いていた。
(ここで未来へと飛べなかったボリと一旦別れる)
そして既に沈黙の一族が破れたことを吟遊詩人の歌で知るのだった……。
エリンでの助け手に希望を失った二人は、海を渡って隣のブリタニー
(イングランドの古名)へと向かおうとする。
ヘンルーダの呪いという道しるべがあるグリフィスは、追跡を止めない。


(ここでエリン=アイルランドから離れます。ので、一旦切ります)