サムライうさぎ

Last-modified: 2009-01-27 (火) 11:27:29

サムライうさぎ/福島 鉄平

68:サムライうさぎ(単行本1巻):2009/01/21(水) 23:27:32 ID:???
<主な登場人物>
宇田川伍助…侍。うさぎ道場師範。剣術が得意で、頑固で不器用だが真っ直ぐな性格。志乃は「ごっちん」と呼ぶ。15歳。
宇田川志乃…伍助の妻。天真爛漫な働き者。うさぎが大好きで、自作のうさぎのお面をよくしている。15歳。
摂津正雪…志乃の兄。うさぎ道場門下生。茶屋(遊郭の一種。現代のキャバクラみたいなもん)に入り浸っている遊び人だが、妹思い。22歳。
千代吉…うさぎ道場門下生。江戸の外れの農村出身の農民の子。鍬の扱いが得意。志乃は「ちよっち」と呼ぶ。12歳。
マロ…うさぎ道場門下生。無口で素性不明。時折奇妙な行動をとるが、稽古自体は真面目に取り組む。志乃は「マロマロ」と呼ぶ。17歳。

作事方物書(文書の清書をする役職)として江戸城に勤める御家人・宇田川伍助は、見栄や体面を重んじ
様々な慣習に縛られた武士社会に疲れる毎日を送っていた。
そんなある日、先輩の侍・摂津正雪からの紹介というか半ば押し付けられる形でその妹・志乃と結婚することになる。
天真爛漫な志乃を見て自分の信じることに身分も体面も関係ないと気付かされた伍助は、
江戸城下に天下一の剣術道場・うさぎ道場を開くと志乃に告げる。
全ては妻である志乃に認められるため。志乃の大好きな、月を目指して飛び跳ねるうさぎのように。



69 :サムライうさぎ(単行本1巻):2009/01/21(水) 23:33:37 ID:???
結果的に他流の道場を乗っ取るという形で手に入れた道場の改築もなんとか済み、
門下生募集へと踏み切ったうさぎ道場だが一つ問題があった。
それは、うさぎ道場には道場に特に重要とされる「道場の理念」がないこと。
伍助としてはただ剣術が好きな者が集まってくれれば良しと思っていたのだが、武士の嗜みとして
剣を学び、剣から武士の生き方を学ぼうとする者たちにとってはそうもいかないらしい。
頭を抱えた伍助は街の他の道場を回った後、茶店で一服しながらそれについて考えていると
「買い食いなど武士のすることではない」といきなり二人がかりで斬りつけられる。
すんでのところでかわして撃退した伍助だったが、斬りつけてきた二人と同じ羽織を着た集団に連行されてしまう。

彼らは幕府お抱えの剣術指南所「講武館」の者だった。
結局この件は講武館師範・清木清左衛門(きよき・せいざえもん)によって不問にされ、
「武士道といふは死ぬ事と見つけたり」という講武館の理念を彼から聞かされた伍助は感服。
これに武士の本質を見出す。
しかし、そんな伍助の考えと清木の考えは全く食い違うものだった。清木たち講武館は、日々市中を見回り
武士の慣習から外れた武士を斬り捨てる「巡回」を行っているという。その対象は武士に留まらない。
昼間に使いの者に任せず自ら食材の買出しをする、武士の妻らしからぬ行動を取った「うさぎの面をつけた」
武家の女を斬り損ねたと清木はこぼす。
その一言に激昂した伍助は清木に斬りつけるも防がれ、腕の立つ門下生達に放り出されてしまう。
伍助は決心した。
うさぎ道場で自分の決めた自分の武士道を貫き、せめておいしいごはんぐらい好きに食べられる世の中に変えると。

そしてうさぎ道場は個人が思い思いに剣術を学ぶ「特に理念のない道場」となり、
それに幻滅した大勢の門下生達は去ったが、三人が残った。
一人は遊び人な志乃の兄・摂津正雪。一人は農民の子・千代吉。
また一人は無口で素性が知れないどころか人間かどうかさえ疑わしい(摂津談)マロ。
とりあえず、ここにうさぎ道場が本格始動した。



70 :サムライうさぎ(単行本1巻):2009/01/21(水) 23:35:47 ID:???
千代吉が自分の故郷の農村まで来て欲しいと頼んできた。
彼が月謝として納めてきたクソマズい草もちの原料「ナナ菜」(ぶっちゃけただの雑草だが千代吉はウマイと信じている)の名産地だそうで、
それで腹を下したばかりの伍助は正直行きたくなかったが、少ない門下生がこれ以上減っても困ると思い渋々承諾した。
とりあえず千代吉の故郷「七菜村」に着き、村長をはじめ村の者達から話を聞くと、
名産のナナ菜がさっぱり売れなくなってから村の過疎化が進み困っているので力になってほしいとのこと。

次の朝、伍助のもとを訪れた千代吉は、ナナ菜の守り神「ナナガミ様」のご神体をぶった斬る手伝いをしろと言い出した。
この状況下で何の助けもしてくれないナナガミ様に業を煮やした末に出した案であり、村の者達も承諾したらしい。
ご神体の所まで行く道中、千代吉は伍助に問いかけた。「嫁さんに裏切られたらどうする?」
神だって見捨てるんだ、そんな訳無いってことは無いと続けた。

ご神体のある神社に着くと、一人の巫女が飲んだくれていた。千代吉曰く、彼女は加代といい、飢饉で滅びた村から
命からがら歩いてきた千代吉を一番世話してくれた人だという。
そしてその時村人にナナ菜を沢山食べさせてもらったおかげで命拾いした。
しかし、本来酒嫌いだったのに村が衰えてからは今のように飲んだくれるようになってしまったらしい。

その夜、加代は伍助にナナ菜がまずいということに気付いている旨を漏らす。そして、それを聞いていた千代吉に
「ご神体を斬るの斬らないの言っているうちは村の繁栄はないのではないか」と伍助が諭すも、
千代吉はやはりご神体を斬ろうとし、それを止めようとする伍助と交戦。
元々なかなかの強さを持つ千代吉に、迷いで剣の鈍る伍助は苦戦する。
志乃に見捨てられてしまったら、自分も今の千代吉のようになってしまうのか…?



71 :サムライうさぎ(単行本1巻):2009/01/21(水) 23:38:48 ID:???
まさにとどめというその時、加代がうさぎのお面に仕込まれた仕掛けを見せる。
そのお面は、自作のお面を悪ガキに捨てられた志乃が、それを改良して伍助に持たせたものだった。
それに思わず夢中になる千代吉の様子を見て、伍助は迷いを振り切り、抜刀して千代吉の得物の鍬を破壊。
志乃はお面を捨てた悪ガキに対して何か思うのではなく、楽しんでほしくてその仕掛けを作ったのだと思う、と伍助は言う。
そして、妻に裏切られてもどうもしない、その時が来るとしたらきっと自分に至らぬところがあった時だと先程の千代吉の問いに返した。

その直後、ひょんなことからご神体に扉がついていることに気付いた伍助と千代吉。中に入ってみると、なんと酒蔵。
ナナ菜をもとに名産品を作るべく、加代が密かに酒を造っていたのだ。
飲んだくれるようになったのは酒の味見をするためだった。
「酒嫌いの自分でもこれだけ飲めるんだからいい名産品になると思う」と加代。
加代の努力を知った千代吉は、伍助と加代に心から謝る。
村は加代の作った「ななな酒」を名産にすべく一致団結し、一件落着と相成った。

帰路に着く伍助の見送りに来た千代吉は、「嬉しいが、加代姉はナナ菜じゃなくて別のものを作ったほうが早かったんじゃないか」と漏らした。
すると伍助は、愚かながら自分も同じ質問を加代にしたという。
その質問に加代は「千代ボーの命を救った草だ。マズくてもないがしろにはできない」と答えた。
それを聞き、一人涙を流す千代吉であった。



72 :サムライうさぎ(単行本1巻):2009/01/21(水) 23:41:39 ID:???
土産のななな酒を担いでなんとか屋敷へ帰ってきた伍助に、志乃が出会い頭にパンチを食らわせた。
怒っているようなのだが、理由はさっぱりわからない。
おかげで道場の稽古にも身が入らない。義理の兄である摂津に
「志乃もさみしがってるだろうから今日ぐらい一緒にいたらどうだ」と提案され、半ば強制的に稽古は中止に。
伍助は志乃の機嫌を直すための試行錯誤の末、結局あまり相談したくなかった摂津に相談したが、摂津は先程の言葉に加えて
「志乃だって人間だ。本当に(伍助を)クソヤローだと思ってるならニコニコ身の回りの世話なんてしない。
ツンケンするにはそれなりの意味がある」と言い、伍助を突き放す。

伍助には結局理由がよくわからないまま夜を迎え、床につき志乃が洗ってくれないためにザラついて染みのついた枕に頭を乗せる。
その時、枕のザラつきが塩であることに気付いた。そういえば新婚当初からずっと志乃は毎晩枕を濡らして眠っている。
志乃は摂津の言うとおり、伍助がいない間寂しさを紛らわすために伍助の布団で寝ていたのだ。
それに気付いた伍助は普段別室で寝ている志乃のもとへと布団を運び、そこで寝ることに。
余計に怒られたら寝相が悪かったことにしようなどと言い訳を考えつつ、ドキドキしながら床へつく。
だがどうにも緊張してしまって眠れないため、少しずつ、少しずつと自分の位置を志乃の布団から離していく伍助。
翌日早起きした志乃の目には、まず同室の端でいびきをたてる伍助の姿が映った。

機嫌は、すっかり直っていた。



73 :マロン名無しさん:2009/01/21(水) 23:44:01 ID:???
とりあえず1巻まで。細かい動作がストーリーに絡んでくるせいか非常に長くなってしまいました。