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バナナブレッドのプディング

Last-modified: 2008-10-08 (水) 15:43:00

バナナブレッドのプディング/大島 弓子 Edit

234 名前:バナナブレッドのプディング 1[sage] 投稿日:05/02/06 23:01:07 ID:???
「きょうはあしたの前日だから………だからこわくてしかたないんですわ」

人とちょっと違った思考回路の持ち主の少女、三浦衣良。
両親も彼女を持て余し、姉の沙良だけが唯一の理解者だった。
しかし沙良は結婚して家を出ることになり、両親がそれを機に自分の精神鑑定をしようと言っているのを
聞いた衣良は不安にさいなまれる日々を送っていた。

結婚式の前日、転校した学校で衣良はさっそく「血液がフリーズドライ化するほどこわい日」といった発言を
して教師に不審がられるが、幼なじみの御茶屋さえ子と再会する。
話を聞いたさえ子はボーイフレンドが出来れば治るといい人を紹介すると言うが、衣良の理想の男性像は
「世間に後ろめたさを感じている男色家」というとんでもないもの。
何とかしようとマネージャーをしているサッカー部の部員を当たり、片思いの相手の奥上が男色家だと知り
さえ子はショック。しかし世間に後ろめたさを感じているという条件には当てはまらない。
そこにコーチであるさえ子の兄峠が現れ、衣良は峠をさえ子が紹介する人だと勘違い。さえ子もいい手かも
しれないとそのまま通すことに。何も知らない遊び人の峠はさっそく衣良と放課後会う約束を取り付ける。

放課後。二人は昔一度だけ石蹴りをして遊んだ話から石蹴りで対決をすることに。
衣良は「私が勝ったら結婚してください」と峠に言い、冗談だと思った峠はそれを了承。結果は衣良の勝ち。
その後衣良が好きだった庭の薔薇の木の話をしたりといい雰囲気に。
明日アパートに行くという衣良の言葉に峠はすっかり有頂天になる。

翌日沙良は式を挙げ、衣良も峠と結婚するべく家を出て行ってしまう。
さえ子は衣良の両親を説得することに成功。一人残された峠はさえ子が置いた手紙で真実を知り大慌て。
しかし結局は、さえ子に促されるまま衣良と形だけの式を挙げることに。



235 名前:バナナブレッドのプディング 2[sage] 投稿日:05/02/06 23:03:00 ID:???
さえ子は「義理のきょうだいねわたしたち」と衣良とはしゃぐが、峠は複雑だった。
式の最中、衣良はあなたの恋人も呼ぶべきと言い出し、峠はかわそうとするがさえ子は奥上を連れてくる。
奥上は恋人と待ち合わせがあったが、さえ子に頼まれ恋人役を引き受けてくれたのだ。
自分はカモフラージュだから峠が奥上との関係を隠す必要がなくなったら出て行くという衣良の言葉に、
峠はうまくいけば早く解放されるかもしれないと思う。衣良が嫌いではなかったが、こういう状態になるのは
我慢ならなかった。

その夜衣良は、子供の頃からよく見る人食い鬼に捕まり食べられる夢を見る。しかしその日の夢では、
途中で峠が現れ衣良を助けてくれる。衣良はいつまでもここにいてくださいと頼むが、峠は去っていく。
悲しい夢だと衣良は思った。

翌日、奥上に会ったさえ子と峠は彼が傷だらけなのにびっくり。忘れ物を届けた際衣良がいたので
芝居をしていたのだが、それを彼の恋人が目撃していたらしいのだ。奥上は芝居を降りてしまう。
午後には衣良の目の前で恋人同士のキスシーンをすることになっている(隠す必要がないことを
証明するため)のにと困る峠だが、どうにか柔道部の友人に代役を頼むことに成功する。

放課後、奥上の見舞いに行ったさえ子は彼が寝言で兄を呼びながら泣いているのを見てしまい、改めて
自分が失恋したことにショックを受ける。
峠も作戦通りに芝居を決行しようとするが失敗。衣良にはごまかしたおかげでばれずに済んだが
衣良が嬉しそうにしているのを見て、彼女の事をまったく考えていなかったことに気づき反省。
不安定な衣良のためにしばらくは彼女の「ライナスの毛布」でいようと思う。
衣良もまた、峠の側から離れなくてすむ事が嬉しい自分に戸惑っていた。



236 名前:バナナブレッドのプディング 3[sage] 投稿日:05/02/06 23:05:19 ID:???
サッカー部は大会を控え特別練習に入り、衣良は峠や部員達におやつを持って行ったりと二人の中は
急接近していく。一方で衣良は峠を神様みたいな人だと思わないようにと必死だった。
そう思っていた人は皆――沙良も、衣良の側から離れていってしまったから。

奥上は寝不足の日々を送り、練習でも倒れるようになる。
たった一度芝居に付き合っただけだが、峠に対して特別な感情を抱くようになってしまったのだ。
その日も眠れないでいたところに、峠が部屋を訪ねてくる。奥上は大喜びするが、それを見ている人影が。

翌日奥上は学校を休み、気になったさえ子と峠が部屋に様子を見に行くと奥上は傷だらけだった。
夕べのことを恋人に目撃され、やられたのだと話す奥上に元はといえば俺が芝居を頼んだからだとそいつと
話をつけるという峠。ところが奥上の恋人は峠の大学の教授で、男色家であることを公にされることを
嫌うからよしてくれと言う。後をつけて来ていた衣良は全てを聞いてしまい茫然。
嘘をつかれていた事を知り、自分が何のために峠と一緒にいるのかがわからなくなる。
その夜、沙良が新婚旅行から帰ってるはずと衣良は家に戻るが、沙良は帰っておらず両親が
「なんであの子(衣良)ちゃんと沙良のように育ってくれなかったのかしら」と話しているのを聞いてしまう。
自分の居場所がどこにもなくなったと感じた衣良は「沙良の赤ちゃんに生まれ変わりたい」と涙を流す。

峠は教授の家に向かう途中、自分そっくりの男に出会う。捕まえて見るとそれはさえ子だった。
夕べ奥上の家を訪ねたのは峠に変装したさえ子で、彼女もまた、教授に全てを話そうと種明かしをしに
行く途中だった。
教授の家に着くとそこには衣良が。衣良も誤解を解きに来たのだが、峠に残酷な仕返しをしたいと思った
教授の策略で、衣良は峠と別れ教授と同居することを決めていた。



237 名前:バナナブレッドのプディング 4[sage] 投稿日:05/02/06 23:08:31 ID:???
教授は巧みに衣良の両親を説き伏せ、治療を目的に自分との同居を承諾させる。
衣良は泣きながら去っていく母を見ながらいつもどおりだと思う。
自分のやることなすこと、母は泣き、父はため息をつく。
新しい生活を始めた衣良だが、理想通りの人と生活しているはずなのにどうしても峠のことを考えてしまうことに
悩んでいた。ずっと憧れていたバナナブレッドのプディングも「枯葉の味」がするだけ。
峠のほうも、衣良がいなくなったことで心に重い何かが残っていた。
さえ子はまた峠に変装して奥上に会うが、へまをしてもまるで動じない彼に何があっても奥上が兄を好きな
気持ちは揺るがないということを思い知らされただけで終わってしまう。

教授と二人で散歩に出た衣良は、他の女性と話している峠を目撃。今まで感じたことのない感情にその場を
逃げ出す。
「ああどうしようああどうしよう。こわれそうこわれそうたすけてたすけて」
衣良は再び人食い鬼の夢を見る。峠に助けを求めるが今度は来てくれない。
「おまえはわたしにくわれてわたしになるんだ。そして峠をにくむようになっていつか峠をやっつけてしまうのだ」
鬼に捕まり食べられてしまう衣良。
起きるとさえ子が尋ねてきて、土曜にサッカーの試合があるから応援に来るようにと誘う。
だが衣良は複雑だった。何もないのに峠が憎くてたまらない。
峠なんか試合に負ければいい、大嫌い――そう大声で叫ばなければ気がすまない自分が不思議でならない。
衣良はそれを、夢の中の鬼に食べられて自分も鬼になったせいだと思い込む。



238 名前:バナナブレッドのプディング 5[sage] 投稿日:05/02/06 23:10:52 ID:???
鬼になったという思い込みで衣良は自分を次第に追い詰めて行く。
教授は久しぶりに奥上と会う。しかし彼の意に反して奥上は峠を本気で好きになったから別れると告げる。
激怒した教授は奥上の顔を木の枝でひっぱたき去っていく。
様子を見ていたさえ子は変装して彼に合うのをやめることを決意。何となくふらふらしていたところを、
かつて教授に救われた大学生に呼び止められ、成り行きで彼にこれまでのことを相談することに。
変装したのは兄と一心同体になりたい願望があるからだといった妙な理屈に押され、さえ子は兄と距離を
置いたほうがいいというアドバイスに従い留学することを決める。

家でひとり飲んでいる教授の様子を見に行く衣良。しかし酔った教授は衣良を奥上だと思い首を絞めてくる。
抵抗した衣良は果物ナイフで教授を刺してしまう。ほんのかすり傷程度だったが、泥酔して眠り込んだ教授を
見た衣良は教授が死んだと思い込み、家を飛び出し自殺をしようとする。
お手伝いさんから知らせを受けた両親も追いかけてきて、衣良は峠の家に着く。
中に入ると留守かと思われた家には峠がいた。峠は飛び降りようとする衣良を止めようとして頬を切られる。
それを見て我に返った衣良は糸が切れたように眠り込んでしまった。



239 名前:バナナブレッドのプディング 6[sage] 投稿日:05/02/06 23:16:04 ID:???
衣良は自分が鬼になることを恐れ両親の言うとおり病院へ行こうかと考えるが、峠はこれからさえ子が
留学するから一緒に食卓を囲んでほしいと衣良を引き止める。
それでもいつか人殺しだってやるかもしれないと恐れる衣良だが峠はそれでも構わないと「きみが大好きだ」
と告白。衣良は驚く。

――わたし、薔薇の木は大好きだった。
でも、薔薇の木から好きだよなんて言ってもらえるなんて夢にも思わなかった。
夢にも思わなかったわ……。

衣良は再び、峠の元に戻ることに。

沙良は不思議な夢を見る。
まだ生まれてもいない赤ちゃんが男と女、どちらに生まれたほうが生きやすいかと尋ねる夢だ。
どっちも同じように生きやすい事はないと答えるが、赤ちゃんはさらに生まれるのが怖い、一人ぼっちは嫌だ
と言う。
沙良は答えた。「まあ生まれてきてごらんなさい。最高に素晴らしいことが待ってるから」

――わたしが答えた「最高の素晴らしさ」ってなんなのだろう。わたし自身もまだお目にはかかっていないのに。
ほんとうになんなのでしょう。わたしは自信たっぷりに子どもに答えていたんです。


<完>