ブラック・ジャック ~黒い医師~

Last-modified: 2011-04-12 (火) 20:36:59

ブラック・ジャック ~黒い医師~/山本 賢治

448 :ブラック・ジャック ~黒い医師~:2011/03/06(日) 14:58:39.10 ID:???
第一話「ナダレ」
大江戸大悟博士はD・O(ディーオー)効果の研究により、ノーベル医学賞を受賞する。
D・O効果とは「脳を頭蓋骨から腹部に用意した広い容器に移して、
脳を大きくして発達をうながす」というものだった。
博士は天才外科医、ブラック・ジャック(以下、BJ)に手術を依頼して、
唯一の肉親としてかわいがっているシカ、ナダレでの動物実験に成功していた。
BJは手術に気が進まない様子だったが、博士は自分が責任を取ると請け負う。

そしてノーベル医学賞を受賞した博士が山に戻ると、
知能を得たナダレは家から逃げ出し、人を殺し続ける化け物になっていた。
BJからナダレが自然破壊を行う工事現場の人間を58人も殺していると聞き、
博士は動揺しながらも鹿笛でナダレを呼び戻す。
まるで野生に戻っているように、見上げるほど大きく逞しく育ったナダレに対して、
博士は人間を襲うのをやめるように諭した。
「人間は人間が裁くんだ…… わかるよなお前の頭なら」

しかし博士の恋人の存在を知ったナダレは、恋人を襲って殺してしまう。
もはやナダレと分かり合えないと感じた博士は
再びナダレを呼び出し、無防備なナダレを猟銃で射殺した。
血塗れで倒れたナダレを抱きしめて博士は号泣する。
「ナダレ…許してくれ… お前は裁かれなきゃいけなかったんだ……」
その様子を見ながら、BJは嘲笑った。
「お前さん 昨夜言ってたよな "人間は人間が裁く"って」
「人間には動物を裁く権利があるのかねェ?」



449 :ブラック・ジャック ~黒い医師~:2011/03/06(日) 15:00:17.79 ID:???
第二話「ふたりの黒い医師」
新幹線から降り立ったBJとピノコは、仕事帰りのドクター・キリコと遭遇する。
キリコはメイド服の黒髪幼女(めちゃ強い。荷物持ち兼ボディーガード?)を連れている。
安楽死を人殺しだと非難するBJに対して、キリコは悪びれなく見解の相違だと答えた。

労災病院を訪れたキリコは、頚椎損傷で寝たきりになった久我静音の依頼を受ける。
ふたりの子供に負担をかけ続ける事を気に病んだ彼女は、
自身の生命保険金二千万円で安楽死を頼んだ。
一方、静音の子供たちは必死に稼いだ八百万円で、BJに手術を依頼していた。
BJは母親の値段には安いと冷たく断るが、キリコの介入を知って手術を請けることにする。

BJの手術中、静音の息子に問い詰められたキリコは、
戦争中に苦しみ続けた負傷兵を安楽死させてやった経験を語る。
感謝の言葉を告げながら死んでいくゲリラ兵達。安楽死の仕事は人助けだ。

そして手術が成功して数ヵ月後、BJとキリコは再会する。
「だがねブラック・ジャック 人はいつか必ず死ぬ
 あの親子だって例外じゃない 人は死から逃れることなんかできないんだゼ」
「少なくとも私が手術した患者に死は無関係だ
 無論 お前さんに殺してもらう必要もない」
「傲慢だな」
「いや自信だ」
その時、BJの携帯が鳴った。静音が死んだという知らせにBJは驚愕する。
病院の送迎バスにトラックが突っ込み、親子三人は即死した。
三人の死を知り、高笑いをしながら去っていくキリコ。「……それでも」とBJは言う。
「それでも私は人を治す! …それが私の仕事なんだ!」



450 :ブラック・ジャック ~黒い医師~:2011/03/06(日) 15:02:27.90 ID:???
第三話「魔王大尉」
アメリア国陸軍のケネス大尉は、どんな戦場でも死なない魔王と呼ばれていた。
しかし側頭部に弾丸を受け、その摘出手術を受けにBJのもとにやってきたのだった。
大尉はテロリストの村として、紛争地帯のクラン村を焼き払った過去があり、
日本に逃れてきたクラン村の孤児たちは、BJにケネス大尉を見殺しにするように求める。
「私は医者だ どんな人間でも患者である以上 治療するのが私の仕事だ!」
「誰が払おうと金は金だ お前さんたちが1千万ドル払えるならケネスの手術はやめてやるよ」
その言葉に怒った孤児達に、BJは石を投げつけられる。

家に到着したケネス大尉に、BJは尋ねた。
「大尉が殺してきたのは本当に全員がテロリストだったのかね?」
大尉はBJの質問を「そんなもんカンケーないっ!」と豪快に笑い飛ばす。
「神サマってヤツはね 生きていい人間とそうでない奴らの区別が分かってんのさ」
「所詮ナツメ共和国の虫ケラ共とアメリア国軍人の俺とじゃあ命の価値が違うのさっ!」

BJは大尉の手術に立会人を呼び込む。それは、大尉を激しく憎むクラン村の孤児たちだった。
麻酔が効き始めて動けない大尉は泣き叫ぶが、BJは冷たく笑って言い放つ。
「手術中も神サマのご加護があるといいな…… ケネス大尉」
BJは孤児達に「この男をどうしようがお前さんたちの自由だ!!」と言った。
「――だが 人の命を救うという事に少しでも意味があると思うなら静かに見ているんだ」
孤児達は手術の様子に動揺し、最後は無言で頭を下げて手術室を出て行った。
「そうだ… 殺せばこいつと同類になったところだ」

手術は成功したが、大尉はひどくおびえている様子だった。
大尉の付き人に叱責されると、BJは言い返す。「人の心の傷を治すとは言ってない」
「悪いがその男 ハッキリ言って手遅れだね」

大尉はクラン村の亡霊におびえて錯乱し、迎えに来たアメリア国軍人達を撃ち殺す。
そして笑い声を上げながら武器庫で自爆してしまう。
TVでそのニュースを見ていた時、BJの電話が鳴った。「ええ…… 今ニュースで見ましたよ」
「お気の毒でしたね 私にできることがぜひお手伝いを……まあ値段は応相談ということで」



451 :ブラック・ジャック ~黒い医師~:2011/03/06(日) 15:04:04.28 ID:???
第四話「ネコと庄造と」
深夜、BJの家の電話が鳴った。
一億払うという依頼人の申し出にBJはいそいそと出掛けていくが、
依頼人の男に「息子のマモル」と紹介されたのはただの子ネコだった。
「ありゃネコだろっ!」と怒るBJに、依頼人は逆切れしてBJを家から追い返す。

気になったBJが一ノ谷医院を訪ねると、例の依頼人は庄造という名前だとわかる。
もともと地盤の悪い家が台風で崩れて、嫁と子供ふたりは死亡。
庄造自身も頭を強く打って現実を認識できなくなってしまった。
庄造は帰るはずのない家族を待ち続け、やがてノラ猫を家族と信じ込んで、
一緒に暮らしはじめたのだという。

正造は猫耳裸エプロンの嫁(猫の洋子)、息子ふたりと一緒に満ち足りた生活を送っていた。
しかし脳血腫は悪化しており、このままでは命に関わる。
脳底の難しい手術だと知り、BJは庄造に家を売った不動産屋を訪ねた。
「被害者が治るならいくらでも出す」という約束を取り付けた所で、
庄造の家で再びがけ崩れが起こったという知らせが入る。

BJは不動産宛ての10億円の請求書を作成するように言って、
庄造の頭と猫のマモルの手術を行う。
正気を取り戻した庄造は家族の死を受け入れ、猫の家族をすっかり忘れてしまっていた。
やがて退院の日を迎えた庄造は、町を出ることにした。
庄造は自分を慕う猫を追い払って歩いていくが、バスに乗ろうとして、乗務員に呼び止められる。
「あのお…動物は置いていっていただかないと」
庄造が振り返ると、三匹の猫がこちらを見上げていた。猫はバスに乗ることができない。
庄造は迷い、歩くことを決意する。
そして母猫に呼びかけた。「おいで 洋子」



452 :ブラック・ジャック ~黒い医師~:2011/03/06(日) 15:07:09.41 ID:???
第五話「ディンゴ」
オーストラリアの一部では謎の奇病が流行していた。
手付金50万ドルと一緒に患者の依頼を受けたBJはオーストラリアの家を訪れるが、
一家は数日前に例の病に侵され、死に絶えていた。
車で帰ろうとするBJの前で飛行機が納屋に突っ込み、ガソリンごと燃えてしまう。
パイロットもまた、奇病に特有の赤い斑点が身体に浮き出た状態で死亡していた。
荒野の一軒家。ガソリンもない。
帰路でガス欠にみまわれ、BJはサバイバル生活を余儀なくされる。
徒歩で移動する途中、発熱、腹痛に見舞われ、とうとう奇病の証である赤い斑点が腕に現れた。
自身の排泄物の検査でエキノコックスを見つけたBJは
唯一の手段として自身に外科手術をしてエキノコックスを摘出することを決意する。
新種のエキノコックスを取り出し、あとは縫合を残す段階になったところで、
血の臭いに呼び寄せられたディンゴ(野生の犬)の群れに襲われる。
あわや、というところで猟銃を持ったおっさんに助けられる。

奇病の原因は、ディンゴの体内で農薬によって突然変異を起こした新種の寄生虫だった。
かつて人間はオーストラリアに犬や牛など家畜を持ち込み、大陸の固有主を次々と殺した。
そして持ち込んだ犬が野生化して、その体内で生まれた新種の寄生虫が人間を殺す。
ニュースを聞いたBJは言う。
「人間ってヤツはおろかだよ ……それに気付いてもまだやってやがる」



453 :ブラック・ジャック ~黒い医師~:2011/03/06(日) 15:10:06.70 ID:???
第六話「99.9%の水」
ある時、BJはどこか見覚えのある女性の依頼を受けて、患者のいる孤島に出向く。
患者はドクター・キリコ。依頼人はキリコ唯一の肉親である妹だった。
キリコはBJの治療を拒否するが、キリコの妹に泣きつかれて、
BJは「あいつの邪魔をするのも悪くない」と考え直す。
キリコの肝臓には水が溜まり、その腹は奇妙に膨れ上がっていた。
前の仕事の際に、南米のアマゾン上流で流行っている"グマ"という伝染病に感染したのだった。
キリコは治療法がないことを悟ると自分自身を安楽死させる道を選び、BJを追い返そうとする。
BJは暴れるキリコを無理やり眠らせて、"グマ"の原因である肝臓の切除手術をした。
妹はキリコの無事を喜んで安楽死をやめるように懇願するが、
キリコは手術など頼んでいないし、これからも安楽死をやめる気はないと言い返す。

BJは"グマ"の元凶である、肝臓に溜まっていた水をふたりに見せる。
水を凍らせて表われたのは一種のアメーバで、99.9%が水でできていた。
BJはもしかして地球外からきた生物かもしれないと語り、キリコに問いかけた。
「どうだい? お前さんの手で安楽死させてやるかい?」
「下らん さっさと始末してくれ!」

満天の星空の下で、キリコの妹はBJに話しかける。
「新しい病気として学会に発表なさったら? きっと大さわぎになりますよ」
BJは「そんなモンに興味はない」と答えて、夜空を見上げた。

「降るような星空か……」
「寿命がつき毎日いくつもの星が消滅しても 星の数は一向に減らない」
「病気ってヤツはこの星空みたいなモンなんだ」



454 :マロン名無しさん:2011/03/06(日) 15:12:19.37 ID:???
こんな感じで一巻おわり。
基本的に、原作とまったく同じストーリーです。
主な違いはBJの性格が人情味よりニヒルさ、金・仕事へのこだわりが強調されてたり、
キリコがピノコと対になるようなデザインの黒髪幼女を連れていたり、
時代が現代っぽかったりします。(金額設定が高め、携帯電話が出てくるなど)