ベルセルク 2

Last-modified: 2009-12-31 (木) 11:51:40

ベルセルク/三浦 健太郎

225 名前:ベルセルク 投稿日:04/06/30 15:38 ID:???
一方ガッツは追い詰められていた。さすがの大剣も100人斬りでガタがきていたために
折れたのだ。そのまま馬からも落とされ地面に転がるガッツ。
他の兵が助けに入っても、とても敵う相手ではない。
だがその時、離れた岩山から見下ろしていた騎馬の影が、巨大な剣を投げつけて来た。
それは数百m離れたところから飛び、正確にガッツの前の地面に突き立った。
それを投げた相手の姿もほとんど見えず、何が何だか分からないまま、
ガッツはその剣を取ると一発逆転、馬とボスコーン自身の首を刎ねた。
チューダー最強の戦士ボスコーンの敗退にどよめく敵を、更なる衝撃が襲う。
背後の城塞に、無数の鷹の団の旗が揚がったのだ。

大将は倒れ城は落ちたとなれば、数は多くとも既にチューダー軍の負けであった。
鷹の団は勝利を宣言、勝鬨をあげる。チューダー軍は敗走を開始し、それに対する残党狩りが始まった。
引くなと言っても既に命令を聞く者もなくなったゲノンは、グリフィスに追い詰められる。
一夜限りとはいえ恋焦がれた仲だ。見逃してはくれんかと言うゲノン。
だがグリフィスの冷たい目に、恨んでおるのか・・・?と怯えて問う。
それに対しグリフィスは、私はあなたに対して何の感情も持ち合わせてはいません。
利用されていただいたまでですと答え、一突きでゲノンを殺した。

城で1人休んでいるキャスカと出会ったガッツは、身体の動かないキャスカを
抱え上げ、グリフィスの出迎えに向かう。
だがガッツには気になっていることがあった。飛んできた剣の形には、見覚えがあった。
そう、ガッツの睨んだ通り、剣を投げて寄越したのは“不死のゾッド”だった。
ゾッドは1人、つぶやきながら去った。
まもなく蝕がくる・・・魔王降臨も近い・・・・・・と・・・



307 名前:ベルセルク 投稿日:04/07/09 16:37 ID:???
王都ウインダムに凱旋した鷹の団は、歓喜の声に迎えられる。
シャルロットも喜んで、最大限おめかしして迎えるが、
城の上からの呼びかけは届かず、戦勝祝賀会を待つことに。
グリフィスはドルトレイ攻略の功績で将軍になるという。それも白虎・白龍に
連なるミッドランド軍の最高位“白の称号”を受けると。
一方でそんなグリフィスの成り上がりを認めない守旧派は密会を開き、
戦勝祝賀会でグリフィスを暗殺することを決める。
その企みが明るみに出ることのないよう内々に処理することを約束する
守旧派の支えはミッドランド王妃であり、実質上仕切っていたのはフォス大臣であった。
王妃は、王弟ユリウスと不倫関係にあった。事情を知っているフォス大臣は
ユリウスの暗殺がグリフィスの仕業と睨み、王妃にそのことを吹き込んだのだった。

だが、暗殺計画を進める中、一通の書簡を受け取ると、フォス大臣は顔色を変えた。

貴族の出で立ちになり、祝賀会場の宮廷に入る鷹の団の主要メンバー達。
英雄達に宮廷の女達も群がり、慣れない皆は戸惑う。
1人さっさと集団を離れたガッツを、「貴族のドラ息子達がしつこいから
連れのふりをしてくれ」とキャスカが強引に連れ出した。
初めて見るドレスを着て飾り立てたキャスカの姿に、ガッツは最初
随分と驚いたが、やがて「結構イケてるぜ」と認め話し込む。
そんな中やはりガッツに鷹の団脱退の意思を見て取るキャスカだが、ガッツは
彼女を一足先に宮廷内に戻らせる。



308 名前:ベルセルク 投稿日:04/07/09 16:39 ID:???
国王からチューダーとの休戦、そしてグリフィスへの“白の称号”の叙爵が発表される。
鷹の団は白鳳騎士団となり、千人長――ガッツ達主要メンバーには全員、
騎士の称号と爵位が与えられるという。
グリフィスに祝杯が渡される。そこには、守旧派の手によって毒が入れられていた。
口にした途端グリフィスが倒れ、場は騒然となる。
毒を入れた給仕は報酬を持ってさっさと逃げ出したが、待ち伏せていた者に斬られてしまう。

守旧派の密会。暗殺の成功を喜ぶ王妃達だが、推進者であった当のフォス大臣は
顔色が悪く、実行した給仕も始末したことを告げると、一足先に退出する。
その直後、その建物は火に包まれた。気が付いた時には逃げ場も失われている。
王妃が外を見ると、グリフィスが立っていた。
グリフィスが口にしたのは一時的に仮死状態を作り出す秘薬、そしてそれは
この通り、自分を狙う者達を一網打尽にするために。
命乞いする大臣達、激しく怒る王妃に、グリフィスは言い放つ。
「これは戦です。戦場に観覧席はありません。戦場で死ぬのは王族でも貴族でも
平民でもありません。敗れた者が死ぬのです」

建物が焼け落ちるのを見届けたグリフィスが声をかけた相手、この手引きをしたのは、
フォス大臣だった。なぜ計画を知りえたのかと問うフォス大臣に、グリフィスは答える。
知りはしなかった。ただ、あなたが自分の敵になることは予測していた。
なぜならあなたの目が、自分を恐れていたから。
ただそれだけのことからここまで読んで行動したグリフィスに、
フォス大臣はただ恐怖するばかりだった。

更にフォス大臣がグリフィスの言いなりにされたのは、娘エリーゼを拉致され
人質にされていたからだった。その娘を返すと、拉致に雇われたチンピラ達も
去る途中、ガッツに斬られる。給仕を殺したのもガッツだった。
この真相を知るのは当のグリフィスとガッツのみで、全ては闇に葬られた。
ただ、グリフィスは何事もなかったように帰還し、皆を喜ばせた。



309 名前:ベルセルク 投稿日:04/07/09 16:39 ID:???
1ヵ月後の夜更け、キャスカは旅支度として城を去ろうとするガッツを発見、
呼び止める。だがガッツの決意は変わらなかった。それをコルカスとジュドーも見つけ、
ジュドーは「ちょっとつき合えよ」とガッツを飲みに誘う。
キャスカは1人、グリフィスのところへ向かった。ガッツを止めてもらうために。
話を聞いてコルカスは言う。今や自分達は救国の英雄、もうすぐ貴族にまでなれる。
それを捨てようとは信じられねえぜ、と。ガッツは答える。グリフィスを
振り向かせたいから、自分で手にする何かで、あいつの横に並びたい、と。
それはもちろん地位や階級ではない。そんなものに興味はない。
コルカスは激昂する。自分で勝ち取る何かなんて、そんなものが簡単に見付かれば
苦労しない。もし見付かっても勝利者になれるのは一部だけだ。そこでガッツに
「お前にはねえのか、そういうの」と言われると、「付き合いきれねえ」と帰ってしまう。
ジュドーはそんなコルカスが小さな盗賊団の頭だったことを語り、「ささやかながらも
あいつは自分で勝ち取る何かってやつを持っていたのかも知れないな」と言う。
更に、自分は何でも小器用にこなせたけれど、どれも一番にはなれなかった、だから
一番になれそうな奴の下につこうと思った、とも。
「最初から何も欲しがらない奴なんていないさ・・・・・・でも誤解すんなよ。
結構気に入ってんだ、今の自分の立場もさ」
そして自分が3年前に「ここならお前の居場所も見つかるだろう」と言ったことに触れ、
「はずれちまったな、オレの勘」と言う。最後に「見つかるといいな、お前の何かっての」
と言って、近くまで送ることを申し出た。



310 名前:ベルセルク 投稿日:04/07/09 16:39 ID:???
道中、ジュドーはキャスカの名を出し、崖から落ちた一件以来、ずいぶん親密になった
ようだが、誘ってみちゃどうだ、と言い出す。もちろん、キャスカがグリフィスを
想っていることは両者とも知っている。けれどそれは多分、叶わない。
グリフィスの立身出世には、シャルロット姫をいただくことが必要だから。
偶然にも第二王位継承権者ユリウスとその息子で姫の婿候補と言われたアドニス、
厳格で名高い王妃と守旧派の大臣達は皆死んでいる、という話になった時、
ガッツのアタマには複雑な思いがよぎった。グリフィスは、みんなを信用しない
わけじゃないが、自分の薄汚い部分はあまり見せたくない、と言って、そういうことには
ガッツだけを付き合わせていたのだった。そんなガッツの表情に目を止めつつ、
適当に流して、ジュドーは続ける。キャスカはグリフィスに恋心以上に、崇拝に
近い感情を持ってる。でも、惚れた相手なら抱かれたいと思うのが普通だろう。
そして自分は与えることのできない、男の一番望んでいるものを、シャルロットは
与えることができる。「たまんねーと思うぜ、そういうの」
ガッツは「あいつはいい女だけど、女というより戦友だから」と答えかけて、否定する。
「あいつが見つめているのはグリフィスだから。今のオレじゃだめなんだ」
「そっか・・・」とどこか寂しそうに言うジュドーにもそろそろ戻ってもらおうと
した時、前方の道にはキャスカ達皆が待ち受けていた。グリフィスも。



311 名前:ベルセルク 投稿日:04/07/09 16:40 ID:???
泣きつくリッケルト。切り込み隊長のガッツがいなくなったらみんなも困るだろ、
と言われると、コルカスは「こいつが入る前だってオレ達ゃ無敵だったぜ」と言い、
更にガッツに悪態を吐く。グリフィスは黙って剣を抜くと、
「オレはこれでお前を勝ち取った。オレの手の中から出て行きたいのならあの時と同じ、
剣で自分をもぎとって行け」と宣言する。ガッツも荷物を下ろし、剣を構えた。
止めようとするキャスカだが、ジュドー達は言う。「剣で取られたら剣で取り返す。
それが傭兵の・・・オレ達の鉄則だろ」一方で内心ジュドーは、以前のキャスカなら
仲間が傷ついても意に介さなかった、グリフィスの意思が全てだった、とその変化に気を止めていた。

さて、グリフィスは確かに天才だが、ガッツは切り込み隊長としてこの3年間、
危険に身をさらし、生死の境で剣を鍛え上げて来た。グリフィスの表情にも余裕がない。
2人の力は拮抗していた。
グリフィスも読んでいた。今のガッツの剣を受けきるのは、できたとして2,3撃が限度。
勝機は最初の一撃。ガッツの剣を叩き落し、そのまま肩口に一刀を叩き込む。
手元が狂えば殺してしまうかも知れないが、手に入らないのなら・・・
グリフィスが一気に間合いを詰め、ガッツが剣を振り下ろす。両者の剣が接触し・・・
ガッツの剣はそのままグリフィスの剣を切断し、グリフィスの肩の装甲に接触して、
止まった。呆然とへたり込むグリフィス。
振り返りもせず去っていくガッツの背中から、キャスカは目を離すことができなかった・・・



399 名前:ベルセルク 投稿日:04/07/20 09:11 ID:???
鷹の団を脱退したガッツは、久し振りに1人で、剣を傍らに野宿する。
そこに突如として出現した、異様な殺気。それはあの“不死のゾッド”と同じような
ものを感じさせた。反応する間もなく、その気配の主、得体の知れない何者かに
背後をとられていた。必死で薙ぎ払うが、そこには誰もいなかった。
敵の殺気を読み違えたことなど、今までなかったといのに。
気配の主は少し離れたところから、今度こそ姿を見せた。
それは髑髏の兜をつけ、骨格をかたどった鎧を纏い、
やはり骨を模した兜をつけた馬に乗った騎士だった。
髑髏の騎士はガッツのことを「もがく者」と呼び、「一年の後、蝕の刻」
死が訪れることをほのめかす。だが同時にガッツは「誰よりも死に近く、
それゆえ死から逃れる術に長けている」とも言い、「もがき、足掻く」ことで
対抗できるかも知れない、ともほのめかし、姿を消す。
幻覚か、とも思われたが、雪の上には馬の蹄の跡が残っていた。

冷たい雨が降る中、ユリウス、アドニスに続いて、不仲だったとは言え義母を亡くした
シャルロットは沈み込んでいた。その時、窓の外の木の上に、グリフィスが現れる。
「誰かに見つかりでもしたら・・・」というシャルロットの心配もあり、
部屋に上がるグリフィス。ようやく間近で再会できて、泣きつくシャルロット。
グリフィスはそのまま、シャルロットを押し倒した。それはガッツを失った反動だったか。
激しく交わる2人。だが、通りかかった1人の女官が、鍵穴からその様子を覗いていた。



400 名前:ベルセルク 投稿日:04/07/20 09:12 ID:???
夜が明け、グリフィスが後宮を抜け出すと、兵士達に囲まれ、引っ立てられる。
抵抗しようにも剣が先程ガッツに折られ、持っていなかった。
国王は自らシャルロットの部屋に乗り込んだ。いくつかの痕跡に目を止める王。
更にシーツを引き剥がすと、ベッドには破瓜の血の跡があった。

グリフィスは地下牢に幽閉された。
グリフィスに大きな期待を寄せていた王が今回は一転、激しい怒りをぶつける。
戦乱の世の中、愛娘の温もりだけが光明だったと語る王。それに対しグリフィスは、
「いっそ自分で抱きたいのですか? いや、抱いてほしいのでは?」とその本心を指摘する。
王は一層怒り、グリフィスを鞭で打ち据えるが、その表情を変えもしないグリフィスを、
やがて拷問官に一任する。少なくとも1年は生かして、好きに責め苦を与えよと。
シャルロットの名誉のため、この件は一切秘密にされた。

眠っているシャルロットの様子を見に行った王は、衝動に駆られて娘の服を剥ぎ、
押し迫ってしまう。だが目を覚ましたシャルロットは悲鳴を上げ、
グリフィスの名を叫んで泣き叫び、王を蹴飛ばして抵抗した。
血を流して退散しながら、王は更にグリフィスへの怒りを燃やすのだった。

鷹の団は全員、グリフィスの命令ということで装備もなしに召集される。
そこへ射掛けられる矢の雨。周りは味方のはずのミッドランド軍に包囲されていた。
脱出すべく咄嗟に指揮をとるキャスカだが、彼女にも矢の雨が襲い掛かる。

地下牢で責め苦に遭いながらもグリフィスは「つまらないな・・・こんなの」と
つぶやくだけだった。拷問官はその首にかけていたベヘリットに目を止め、欲しがって
手に取るが、目を開けたのに驚いて水路に落としてしまう。



471 名前:ベルセルク 投稿日:04/07/29 17:07 ID:???
鷹の団脱退から1年、ある貴族の主催する武芸大会に飛び入りで現れたガッツは
圧倒的な強さを見せていた異国からの戦士・シラットを一蹴する強さを見せる。
(このシラットというのが褐色の肌でターバンに覆面というイスラム風の風体で、
変幻自在の対術と変わった武器を使う)
ガッツの力を見た貴族は、近々領内で行われる盗賊狩りに参加しないかと誘う。
そこでガッツは、盗賊団の名前としてよく知った名を耳にすることになる。
「1年前ウインダムで反乱を起こした鷹の団と、その女首領キャスカ」の名を。

1年前、鷹の団はキャスカがとっさに指揮をとったおかげで全滅を免れた。
主要メンバーも全員生きていたが、その後は長い逃亡生活を強いられていた。
どこかの国で1からやり直そうにも、グリフィスがいなければどうにもならない。
そこでグリフィスを救出しようとし、ウインダム城の最下層、最も古い地下牢に
監禁されていることまでは判明していた。
だが、今でも生きているかどうか、とコルカス辺りは悲観的だ。

そこへ例の貴族が組織した討伐隊が襲撃する。先陣を切るのはシラットだ。
直接キャスカに挑み、変幻自在の体術で追い詰めるシラット。その時、背後から
シラットを蹴り飛ばした者があった。ガッツの登場だった。



472 名前:ベルセルク 投稿日:04/07/29 17:07 ID:???
シラットはまずチャクラムを投げるが、ガッツは2つ同時に受け止める。
そこでシラットが取り出したのは最強の武器・ウルミン。刃の鞭が5本あるもの、
それを両手に持ち、10本の刃を操って敵を切り刻むという代物だ。
普通には剣で受けるのは不可能なものだが、ガッツは剣を一振り、風圧で鞭をはねのけて
攻略する。シラットもとっさに短い武器に持ち替えて剣をしのぐが、味方も総崩れで
一端退却、この場はガッツの勝利となった。

かつての切り込み隊の部下達に、そして仲間達に帰還を喜ばれるガッツ。
(コルカスは「一番大変な時にいなかった野郎を仲間なんて呼べるかよ」という態度だが)
とりあえず敵から逃れるべく移動したところで、ガッツは事の次第を聞かされる。
突然グリフィスが捕まり、鷹の団は追われたこと。戦死したり抜けたりで仲間は5分の1に
減ってしまったこと。それでも、キャスカがリーダーとなったおかげでやってこられたこと。
そして1年前、5箇所も矢傷を受けながら指揮を取り続けた、キャスカの勇姿のこと。
また過去の話だけでなく、近い内にグリフィスの救出計画を実行することも聞かされる。
一方でこの1年何をしていたのか聞かれたガッツは、山に籠もって剣を振っていたから、
諸国に噂となった鷹の団のことも知らなかったと答える。
「例のものは見つかったか?」とジュドーに聞かれると、ガッツは答える。
「正直、まだわかんねえ。だけど、ひとつだけわかった。どうやらオレは・・・
剣を振る以外のやり方じゃ何も実感が持てない、何も答えが出せない性分らしい」
「真顔でそこまで言えりゃ上出来じゃん」とジュドー。最後にジュドーはそっと言う。
1年前、矢傷で生死の境をさまよったキャスカは、うなされながら何度も、
グリフィスとガッツの名を口にしていたことを。



473 名前:ベルセルク 投稿日:04/07/29 17:08 ID:???
翌朝早く、ガッツはキャスカに呼び出される。
いきなり「構えろ」と言い、斬りかかるキャスカ。この事態は「おまえが出て行ったせいだ」
と言うのだ。「あのグリフィスがそんなことで駄目になるはずがない」皆、ガッツも
そう思うが、キャスカは分かっていた。「グリフィスはおまえがいなきゃだめなんだ!!!」
それを先刻された時、ガッツはあえてキャスカの突きを受けた。戸惑いながら答えるガッツ。
「グリフィスと同じように、オレは自分のことをやっただけだ」
キャスカは、ガッツは正しいと分かっている、と言った上で語る。
「わたしはあの人の剣になりたい」ああ言ったのは本当じゃない、自分も女だ。
けれど、グリフィスはミッドランドの王座を狙うために、シャルロット様を娶るだろう。
それでも、女としてグリフィスに寄り添えなくても、夢を実現させるのに欠かせないものに
なれると信じていた。でも、1年前ガッツが去った時、分かってしまった。
グリフィスの隣に、自分のいる隙間などないと。「疲れちゃった・・・後はおまえがやれ・・・」
そう言ってフラリと倒れ、背後の崖から落ちかかるキャスカ。
だがガッツはその手を掴み、必死で引き上げた。
先程自分が突いた傷から血がしたたり落ちるのを見て、泣きつくキャスカ。
「いつも私のせいで・・・いつも血ィ流してるな。バーカ・・・」
森の中で、静かに口付けをかわす2人。



474 名前:ベルセルク 投稿日:04/07/29 17:09 ID:???
2人は裸になって激しく交わる。だがその時、ガンビーノに売られ、ドノバンに犯されたことが
ガッツの脳裏をよぎる。気が付けば、その手はキャスカの首を絞めていた。
気付いて手を離すと、泣きながら当時のことを断片的に口走るガッツ。
ようやく正気に戻ると、ガッツは謝って背を向ける。だがキャスカは、その背を優しく
抱きしめた。「キズのなめ合いでもいい。私は弱いところもおまえに全部さらけ出して
しまったから。これでやっと対等になれた気がする」

陽が昇る。グリフィスの救出後も鷹の団に残らないかとキャスカは呼び止めるが、ガッツは断る。
ガッツはこの1年、ゴドーという年老いた鍛冶屋のところに居候していた。
ゴドーは裏山(かつて妖精が住んでいたという)でいい鉱石が取れるからという理由で、
山奥で幼い娘のエリカと2人暮らしをしていた。物心ついた頃から、好きかと考えるより前に
鍛冶屋をやっていたというゴドー。ただ、鉄を叩く時の火花は気に入っていると言う。
そこに自分を重ねたりしつつ、ガッツは決めていた。自分の意思で、自分の戦をすると。
だから、グリフィスの救出に付き合ったら、また旅を続けると。
「勝手にどこかへ行っちまえ」と叫ぶキャスカだが、ガッツは言う。「来いよ」と。
「とにかくこのままじゃ・・・オレはおまえを抱き足りねえ」



545 名前:ベルセルク[sage] 投稿日:04/08/09 18:32 ID:???
いよいよグリフィス救出作戦開始。主要メンバーの中ではリッケルトだけが
怪我のため残留する組に入る。健康な者達は救出部隊として、ウインダムへ。
3日後ウインダムへ到着すると、夜更けにガッツ、キャスカ、ピピン、ジュドーの精鋭4人で
墓場から城の霊廟へと続く抜け道を通り、潜入する。こんな抜け道を見つけることができたのは
他でもない、シャルロットと内通していたためだった。
グリフィスが幽閉されているのは再生の塔、ミッドランド建国当時あるいはそれ以前から
あるという、城内でも最も古い塔の地下牢だった。
塔の前まで来たところでキャスカはシャルロットには帰ってもらおうとするが、
ジュドーは人質になるよう連れて行くことを提案する。そして、シャルロット自身も
それに賛成、志願するのだった。今のままならグリフィスはただの一罪人だが、
姫様を連れ出したとなれば国家規模の問題、加えて婦女子を人質にとったりしたら
グリフィスの消えない汚名になる、と説得するキャスカ。しかしシャルロットが駄々をこねて
騒ぎかけ、「グリフィスが駄目だと言ったらあきらめる」約束で同行することになる。
そう言いつつ自分は内心シャルロットに嫉妬している、と気に病むキャスカだが、ガッツにたしなめられる。
ジュドーの投げナイフで衛兵を射殺し、塔に潜入する一行。

その頃傷病兵達の部隊にいたリッケルトは、水を汲みに行った時、大きな妖精のようなものが
飛んでいくのを見る。その直後、仲間のところから聞こえる悲鳴。
急いで戻った時には皆の姿は消えていた。そして、闇の中から現れたのは、
瀕死の仲間を加えた、(後にガッツと戦う)巨大なナメクジのような伯爵だった。
更によく見ると背後には、仲間の死体が積み上げられ、虫のような怪物が群がっていた。
さっきの妖精のような少女がそれを見下ろしており、やがてリッケルトに虫達を向かわせる。
その時、後方からガッツの前にも現れた髑髏の騎士が出現する。彼が剣を向け、
「貴様らとてこんな暇はないはず」と言うと、怪物達は去っていった。
髑髏の騎士も姿を消し、仲間の全滅した中にリッケルト1人が残された。



546 名前:ベルセルク[sage] 投稿日:04/08/09 18:33 ID:???
再生の塔の地下は、深い縦穴の壁に螺旋状に階段が造られ、その途中に牢の部屋が並んでいる。
シャルロット曰く、この地下牢は塔の高さとほぼ同じ深さまでだが、穴自体は
ミッヂランド中のどの山よりも深いという。そして、これにまつわるある話がある。
約千年前も、今と同じような戦乱の続く時代だった。そこに現れたのが覇王ガイゼリック、
国々を平定し、大陸全土に渡る大帝国を一代で打ち立てた皇帝である。
彼が歴史の表舞台に出現する以前の記録は一切残されていない。そして、彼は戦いの際、
髑髏を模した兜を愛用していたという。(ガッツは当然、あの髑髏の騎士を思い出す)
これに関しては、ジュドー達もおとぎ話として聞いたことがあるという。
やがて王の暴政を見かねた神様が天から5人の天使を遣わし、一夜にして都を
消し去ってしまったというのだ。(キャスカは天使が「4人じゃなかった?」という)
シャルロットは言う。実在したその都の名はミッドランド、“国の中央の地”
天変地異によって地中に没したその都は、この縦穴の奥深くに眠っているという。
皇帝の死後、国々は徐々に今のように分かれていった。皇帝は子を成さなかったので
直系ではないが、ガイゼリックの血縁を持つのはミッドランド王家だけだとも言う。
また、この穴の地下に何度か調査団が下りたが、一人として無事に戻った者はおらず、
再生の塔はその不浄の過去を封印するために築かれたという。

ここでキャスカが岩に頭をぶつけ、たいまつを落としてしまう。その穴の底には、
深すぎてガッツ達の目にも止まらなかったが、巨大な遺跡と、無数のミイラ化した
死体があった。その死体全ての額には、後にガッツに刻まれるものと同じ烙印が。



547 名前:ベルセルク[sage] 投稿日:04/08/09 18:33 ID:???
一番下の地下牢を、塔の衛兵から奪った鍵で開けて入る。中は静まり返っていたが、
その奥に一人の人物が倒れていた。傷だらけの裸身で(背中など皮膚をはがされている)
頭部にはグリフィスの愛用していた兜と似た、鷹の鉄仮面をかぶせられている。
ガッツは真っ先に駆け寄って抱き起こす。体中のあちこちに皮膚をはがされたりした
拷問の跡があり、手足の腱も、舌も切られていた。更に仮面の下の顔は・・・
(その様を間近で見たのは、ガッツとジュドーだけ)「これがあのグリフィスのはずがねえ」
と言うガッツだが、気が付いたグリフィスはガッツの名を呼ぼうとし、力なく手をガッツの身体に伸ばす。
その時拷問官が現れ、扉に鍵をかけて一同を閉じ込めてしまう。勝ち誇り、興奮した様子で
グリフィスへの拷問のことを語る拷問官。しかしガッツの怒りの剣がハンマーでも
敗れないという扉ごと拷問官を貫き、その死体は遥か穴の底へと投げ落とされた。

牢を出ると既に、拷問官の呼んだ兵士達が駆けつけていたが、ガッツが凄まじい勢いで
戦い、斬り捨てていく。とにかくグリフィスを連れて塔から脱出する一同。
城内を逃げる一同を狙撃しようとした兵は、王に止められる。シャルロットに当たる
危険があるためだ。この1年で見る影もなく老いていたが、その目はグリフィスへの執念に
燃えている王は、暗殺者の一族“バーキラカ”を呼ぶ。
(呼ばれたバーキラカは5名、褐色の肌でインド風の風体)



548 名前:ベルセルク[sage] 投稿日:04/08/09 18:34 ID:???
グリフィスをピピンが担ぎ、シャルロットとその侍女アンナを連れて元来た地下水路を
逃げるガッツ達に、バーキラカが襲い掛かる。
手足の長い男が両手に爪をはめ頭上から来たかと思うと、銛を持ったカエルのような男が
水中から襲う。更に、小さな男が壁の穴から現れ、吹き矢でグリフィスを狙った。
それにいち早く気付いたシャルロットがグリフィスをかばい、小さな男はガッツが
斬り捨てたが、吹き矢に塗られた毒にシャルロットは倒れる。
手足の長い男は「解毒剤はこちらの手にある。こちらも姫に死なれては困る」と姫を
渡すようもちかけ、取引は成立。だが姫とアンナの身柄を渡したところで、バーキラカは
再び攻撃を始めるのだった。しかも手足の長い男と水中男に加え、巨躯の男が
離れたところから、大砲のような威力で槍を投げてくるのだ。灯りを消せば槍の狙い撃ちは
避けられるが、手足の長い男と水中男に襲われる。だがそこでジュドーの発案が。
まず灯りを消すと槍の飛んできた辺りにナイフを投げるジュドー。それが壁に当たった火花で
一瞬相手の姿が見えると、次のナイフは槍投げ男の頚動脈をとらえていた。
更にピピンが戦槌で壁を叩き、その火花で残る2人の男を見極めて、見事仕留めるのだった。
しかしすぐにバーキラカの最後の1人の女の、水路に粉を撒き、粉塵爆発を起こす攻撃が。
元鉱夫のピピンがいち早く気付き、走って逃げることに。爆発に追いつかれそうになるが、
ピピンが天井を崩して爆発を逃がし、どうにか助かるのだった。
そのバーキラカの女も、戻ったところで姫を傷つけた責任として、王に処刑される。
更に王はグリフィスへの追っ手として、「黒犬騎士団」を差し向けるのだった。



9 名前:ベルセルク[sage] 投稿日:04/08/18 16:29 ID:???
黒犬騎士団は罪人を集めて作られた兵団、団長のワイアルドは猿顔の原人のような男で、
どこか人間離れした雰囲気を持ち、皆から(王にさえ)恐れられている。
何しろ5年前、罪人を集めて新たな兵団を結成しようとした時、「強い奴が指揮をとる」
と名乗り出たワイアルドは、「じゃあ俺だ」と出てきたバーボという巨漢を、
自らは武器も持たず、手枷をはめたまま、塔の先端に串刺しにして見せたのだった。
その恐怖で、罪人達の人心を掌握することに成功したのだ。
その後、黒犬騎士団の働きぶりは中々のものだったが、同時に敵地・領内を問わず
略奪・陵辱・殺戮の限りを尽くす素行の悪さだった。
王の命令を伝え聞いたワイアルドは「今日はヤボ用がある」と断りかけたが、
その命令が鷹の団団長の追撃だと聞くと、
「そいつは奇遇だ。オレのヤボ用ってのもその鷹の大将になんだよ」と、行動を開始する。

王都近隣の村で馬車を入手、王都を離れるガッツ達に、黒犬騎士団が追いすがる。
しかも、さっき馬車を入手した村の娘達を陵辱し、殺した上、
手足を切断した死体を串刺しにして掲げているのだ。
ガッツとピピンが食い止めるが、何人斬っても黒犬騎士団の兵達は怯まない。
皆、団長ワイアルドへの恐怖に駆り立てられているのだった。しかもワイアルドは、
ガッツが剣を振り下ろそうとしたところを、その手を素手で掴み止めてしまう。
ピピンの加勢でひとまず逃れたが、これは尋常ではない。その時ガッツはワイアルドに、
ゾッドや髑髏の騎士と同じ、異様な殺気を感じていた。



10 名前:ベルセルク[sage] 投稿日:04/08/18 16:30 ID:???
とりあえず戦いを切り上げ、先に行かせた仲間を追いかける。その先の橋には、
あらかじめ橋を爆破する仕掛けがしてあるのだった。
仕掛けが作動、ワイアルドはその前に渡りきったが、黒犬騎士団のかなりの人数は
吹き飛ばされ、谷底に落ちた。しかしワイアルドは「この先も同じような罠があるだろう」
と慎重論を唱える部下の頭を潰し、構わず突き進ませる。
逃げるガッツはゾッドや髑髏の騎士の言葉を思い出していた。逃れられぬ死が訪れるという。

山道には事前にいくつもの罠を仕掛けてあったが、ワイアルドは落石を拳で割り、
炎を払いのけて構わず突き進んでくる。だが何とか、コルカス達待機組のところへ辿り着いた。
黒犬騎士団の残りを前面激突。ガッツは再びワイアルドと対決する。
ワイアルドは何と太い木の棒1本でガッツの剣を捌き、互角に打ち合うのだった。
そんな中顔面に一刀を入れるガッツだが、歯でくわえて止められてしまう。
そのままガッツの馬を殴り殺すワイアルド。ガッツも両足で蹴りを入れて何とか逃れ、
両者とも地に足で立った。更に激しく打ち合う2人。
隠れて様子を見ながら、グリフィスは剣を握ろうとするが、腱の切れた手は動かなかった。



11 名前:ベルセルク[sage] 投稿日:04/08/18 16:30 ID:???
やがて黒犬騎士団は総崩れで蹴散らされる。それを見たワイアルドは木をへし折り、
振り回して敗走する味方をなぎ払ってしまう。そして、ワイアルドは巨大な怪物へと姿を変えた。
巨大な類人猿のような姿で、その頭に当たる部分に人間の姿だった時の上半身がある。
その人間部分の腹の辺りと猿部分の両肩には巨大な目、その下には胸の幅いっぱいの口。
引っこ抜いた木でガッツを吹っ飛ばしたワイアルドは、キャスカに目を付ける。
皆が矢で援護するが、ゾッドの時と同じく効き目はなく、皆蹴散らされ、食われてしまう。
倒れているガッツを起こそうとしているキャスカを鷲掴みにしたワイアルドは服を剥ぎ、
胸の大口から長い舌を出す。(これが男性器にもなるらしい)イボだらけの異形のモノが
キャスカの股間に挿入されかけた時、起き上がったガッツの剣がそれを貫き、切り落とした。
キャスカを助け出すとガッツは、「こいつとはサシで勝負をつける」と立ち向かう。

ワイアルドの手足をかいくぐり、ガッツの剣が大猿の身体を切り裂く。倒れたところを
腹に剣を突き立て、裂くガッツ。だがワイアルドは倒せない。ガッツは捕まって
十数メートルも投げられ、更に巨体からの猛攻を喰らう。
切ったところもすぐに塞がってしまうようだった。しかしそんな中、人間部分の腹の
巨大な目を潰した攻撃は効いたようだった。その後の手の傷は塞がっていく。
ようやく、変身前の形と留めている部分が弱点だと気付くガッツ。しかしガッツは
剣にすがって立ち上がるのがやっとの状態だ。剣にもヒビが入り始めた。
ガッツは森の中で一端姿を隠し、見つけた敵の死体を木の影に貼り付けて囮にする。
ワイアルドがそれに攻撃したところを樹上から・・・だが、ワイアルドもそれを読んで
反撃の拳を入れる。砕ける鎧・・・の中は木の身代わりだった。ガッツは身代わりの後から
飛びかかる。その剣はワイアルドの掌に突き刺さって折れたが、ガッツは折れた残りを
ワイアルドの首に突き立てた。ワイアルドの巨大な手がガッツを叩くが、ガッツは離れず、
ワイアルドの首を絞め、ナイフを片目に突き刺した。ついに、血を噴いて倒れるワイアルド。



12 名前:ベルセルク[sage] 投稿日:04/08/18 16:31 ID:???
ガッツの手当てをするキャスカと、傍らでグリフィスの治療をするジュドー。
その後ジュドーは、キャスカにグリフィスはもう立ち上がれないだろうと告げる。
とにかく国境を越える、と命令を出すキャスカ。だが、その後はどうする?
そんな中、まだ死んでいなかったワイアルドが再び起き上がり、襲来する。
「死んでしまったらあの渦の中で永遠に・・・」と、死を激しく恐れるワイアルドは
グリフィスを掴み上げ、「真紅のベヘリットで4人のゴッド・ハンドを呼び出せ」と迫る。

やがて、自分を包囲する鷹の団の者達にとってのグリフィスの存在の大きさに気付いた
ワイアルドは、嘲笑いながらグリフィスの切り刻まれた身体と、再起不能であることをを晒す。
だが同時に、グリフィスがベヘリットを持っていないことに気付いてしまう。
動揺するワイアルド。そこへ突如として、不死のゾッドが飛来した。
ワイアルドに角を突き刺し、頭に乗せるゾッド。「望むままを行う、それがオレ達使徒の
唯一の戒律のはず。こいつを殺したとしても文句を言われる筋合いはない。
たとえこいつが5人目だとしても」と言うワイアルド。それに対しゾッドは返す。
「そうだ。オレがここで貴様を引き裂いたとしても、それもまたオレの自由」
慌てるワイアルドだが、ゾッドは構わずブリッジをかけ、その身体を引き裂いてしまう。
そしてゾッドはグリフィスに「あれは必ずお前の手の戻る」と言うと、再び飛び去ろうとする。
「待て、聞きたいことがある!! 蝕って何なんだ!?」と叫ぶガッツ。
ゾッドは「まもなくわかる・・・・・・すぐに!!!」と言い、去った。
一方、横たわるワイアルドの腹から、人の形の崩れたようなものの群が蠢き出す。
それはワイアルドの身体を掴み、内部へ引きずり込んでいく。
その向こうに見えたのは――地獄の渦。巨大な怪物の身体は消え、後に残ったのは、
腹が裂け首に折れた剣の突き刺さった、小さな老人の死体だった。


215 名前:ベルセルク 投稿日:04/09/18 11:39:02 ID:???
国境近辺まで辿り着いた鷹の団一行。だが、グリフィスが再起不能であるという事実が
重くのしかかる。静かに終わりが告げられようとしていた。
ガッツと話す中で、残った連中を誘って盗賊でもやる、と言うジュドー。
彼はガッツが残ることは断り、更に「今度こそキャスカを連れて行け」と言う。
それは、キャスカを心配しての言葉でもあった。
そこへ集まる切り込み隊の隊員達。彼らはガッツを慕い、行く時は一緒に連れて行ってくれ、
と言う。「オレの居場所・・・ほんとはあったのかもしれないな」と改めて感じるガッツ。
けれど、グリフィスが無力に苦しみ、小さくなって震えているのを間近で感じてしまった
キャスカは「今のグリフィスを置いては行けない」と言い出す。
そしてガッツには「お前は自分の戦をするんだろ?」「お前がグリフィスの対等の者なら
行かなくちゃ」と送り出そうとするキャスカ。それを馬車の中から聞いていたグリフィスは、
駆り立てられるように馬車を走らせようとする。追うガッツ。仲間を呼びに行くキャスカ。
馬車は岩にぶつかり、グリフィスは投げ出される。水辺で起き上がると、右腕は折れていた。
自分の無力さを嘲笑い、側の尖った木に喉を突き当てるガッツ。しかしそれも首の横を
傷付け、血を流させただけだった。嗚咽するグリフィスの手に触れたもの、
それは城の地下道から流れ着いた、あの真紅のベヘリットだった。

グリフィスのところへ向かった鷹の団の一同は、行く手の太陽が日蝕で欠けていくのを見る。
更にグリフィスの向こう、湖の中や周辺の丘に、いつの間にか無数の人の姿があることも。
それは皆裸で、何か異様な雰囲気があった。ガッツはそれが「やばいもんだ」と感じる。
それでもとにかく、グリフィスに駆け寄るガッツ。しかしグリフィスはこれ以上ガッツに
手を差し伸べられることを拒絶していた。だが言葉に出すこともできず、ガッツの手が肩に
かけられた時――首から流れ落ちた血に触れて、ベヘリットが始動した。景色が変わる。



216 名前:ベルセルク 投稿日:04/09/18 11:39:39 ID:???
怪我人組で唯一生き残ったリッケルトは、行き会った旅芸人の一座に同行し、やはり
国境に到達していた。去り際に団長から「一座秘伝の薬」を渡されるリッケルト。
(ちなみにその薬とは例のエルフの粉で、この一座にいる妖精こそが後にガッツの
押しかけ相棒となるパック。ジュドーがかつていた一座も、多分ここと思われる)

辺り一面が“顔”だった。空には子供から老人、骨までの顔が流れ、地面も顔でできている。
更に顔が集まって顔の形の丘を作り、それが地平線まで延々と続いていた。
ガッツはグリフィスが持っていなかったはずのベヘリットを持っていること、
しかもそれは形が変わって目鼻口はちゃんと顔の形に並び、目を見開いて血の涙を
流していることに気付いていた。まさかこれが・・・と感付くガッツ。
キャスカはこんな状況下でも「わからないことは考えるな」と団員に喝を入れ、
陣形を崩さないように指示を出していた。
さっき集まっていた異様な裸の連中も、この世界に来ていた。その連中が一斉に
「216年に一度の宴の時、蝕が来た。4人の守護天使の降臨だ」と喝采する。
顔の形の丘の1つが女の身体を伴って起き上がり、やがて人間大に縮小する。
空の顔の1つが降りてくる。地面の顔が起き上がる。更に日蝕の黒い太陽が頭となって、
下に体が現れ、太陽から分離して降り立つ。4人のゴッド・ハンドが現れたのだ。
彼らはグリフィスを「因果律により選ばれし御子、鷹」「我らが眷属、渇望の福王」と呼ぶ。

「グリフィスは人間だ。てめえらバケもんと一緒にするな」と言うガッツに、
ゴッド・ハンドは説明する。眷属となる資格があるからこそ、ベヘリットを手にし、
それを使って我らを呼び出すことができた。ここにいる使徒達も皆そうだった、と。
そしてグリフィスの持つのはベヘリットの中でも、ゴッド・ハンドに転生することの
できる者だけが持つ真紅のベヘリット、覇王の卵。そして鷹の団の皆は、そのための生贄だと。
そう、この異様な裸の連中は、全員がゾッドやワイアルドと同じ“使徒”なのだ。
そしてそれらは一斉に、怪物の姿へと変身した。



217 名前:ベルセルク 投稿日:04/09/18 11:40:12 ID:???
“降魔の儀”の開始がゴッド・ハンドにより告げられると、顔でできた地面が盛り上がり、
腕の形の“祭壇”になった。掌にグリフィスを乗せるように。
グリフィスと一緒にいたガッツも落とされ、腕を滑り落ちる途中でナイフを突き立てて止まる。
ゴッド・ハンドはグリフィスにあるイメージ映像を見せる。
路地裏からいつも見上げる城へ行こうとして駆ける少年グリフィス。けれど気が付けば、
通ってきた道は全て死体でできていた。皆、自分が城に行きたいと言ったからついて来て、
そして死んでいった。その死体を積み上げた道をグリフィスは歩いてきた。
そして、もっと死体を積み上げねば、城には届かない。
あきらめたら、自分も死体の1つになってしまうだろう。

イメージ映像は終わり、ゴッド・ハンドは現実を告げる。今、路地裏の道は途切れた。
そして、仲間達、鷹の団の皆――「彼らはあなたを許すでしょう。そしてあなたは生きていける。
傷ついた身を彼らに委ねて。すべてを過去にかえて。夢の残骸に埋もれて」
「だがそれでも思い果てぬなら、お前に残されたすべてを、一言心の中で唱えよ“捧げる”と。
さすれば頂より天に飛び立つ漆黒に翼を授からん」
そう言って天使長ボイドは、手に生贄の烙印を出現させた。
「・・・げる」グリフィスがそれを受け入れると、祭壇は指を閉じてグリフィスを握りこみ、
ボイドの手の中の烙印は無数の光の筋となって飛び散り、鷹の団の皆の身体に刻み込まれた。
キャスカの胸に、コルカスの頭に、ピピンの腕に、ジュドーの手に、そしてガッツの首に。
それと同時に、使徒達が襲いかかって来た。団員が殺戮され、食われていく。
ガッツは最初、グリフィスを「助けようと」祭壇にナイフを突き立てるが、やがて
グリフィスが望んだことだと思い知り、やって来た使徒を迎え撃ちに出る。



218 名前:ベルセルク 投稿日:04/09/18 11:40:41 ID:???
その頃リッケルトは、巨大な竜巻のようなものを目にしていた。何が起こっているのか、
皆はどうしたのか、駆け寄ってみるとその前で、ゾッドとあの髑髏の騎士が戦っていた。
リッケルトは詳しいことなど知る由もなかったが、ゾッドは「らんちき騒ぎなどに興味はない。
求めるものは強者のみ」と言い、自ら「古き宿敵(とも)」と呼ぶ髑髏の騎士との戦いを選んだようだった。

コルカスは眼前の事態を信じられないまま食い殺された。
ピピンが身を挺して使徒を食い止め、ジュドーはキャスカを連れて馬で逃げようとする。
今はキャスカが鷹の団の大将だから、生き延びるんだ。だが逃げようにもこの空間は
どこまでも続いている。結局使徒に追いつかれ、ジュドーもキャスカをかばって死んだ。
キャスカへの想いを口に出すことなく・・・
迫る無数の使徒は、生贄の紅一点であるキャスカを陵辱しようとする。
ガッツは戦った。ナイフで手近な使徒の長い牙を折り、それを武器にして。
戦って、祭壇から下に滑り降りると、一面の血の海に食い散らかされた死体が散らばっていた。
ピピンも内臓を食われた空の死体になっている。更に仲間の死体を持って、あらゆる方向から
迫る使徒達。その中には裸のキャスカを持ち上げ、陵辱する使徒の姿もあった。
ガッツは使徒達を蹴散らし駆け寄ろうとするが、1体に左腕を噛まれて止められる。
そしてその時、ゴッド・ハンドに転生したグリフィスが出現した。

ゴッド・ハンドの名はボイド・スラン(紅一点)・ユービック
(グリフィスにイメージ映像を見せた)・コンラッド、そしてグリフィスの転生した5人目、
フェムト。フェムトは舞い降り、ガッツを見下ろすと、キャスカを立ったまま犯した。
激しく交わる2人にガッツは駆け寄ろうとするが、腕に噛み付いている使徒のマツカサのような
鱗は硬く、剣(死んだ仲間――切り込み隊の部下のもの)も折れてしまう。
それでも折れた剣を自分の左腕に突き立て、切断して立ち向かおうとするが、
何体かの使徒に押さえ込まれる。なおも抵抗したために爪が突き刺さり、右目は潰れた。
最後に、放り出されて崩れるキャスカの姿を映して。



219 名前:ベルセルク 投稿日:04/09/18 11:41:24 ID:???
その時、日蝕の黒い太陽が割れて、馬に乗った髑髏の騎士が飛び込んできた。
髑髏の騎士は一度ボイドに斬り付けるが、空間を曲げて攻撃を返されると、そのまま祭壇を
駆け下りる。行く手の使徒を次々と斬り捨て、フェムトの攻撃もかわすと
ガッツとキャスカを拾い上げ、空中を駆けて再び太陽から飛び出していく。
これはゴッド・ハンドにも予想外だったよう(「時の接合点では予測できぬことが起こる」らしい)
だが、彼らは面白がる程度で余裕な様子。
この程度で流れはゆらぎはしないという確信があるようだ。

切断された腕を拾ってくっつけるゾッド。物陰から見ていたリッケルトは
ゾッドと互角以上に戦った髑髏の騎士にただ驚いていたが、そこに再び竜巻から
髑髏の騎士が飛び出し、リッケルトの前に降り立つ。
リッケルトの持つ妖精の粉を目にした髑髏の騎士は、ガッツとキャスカの手当てをさせる。
ゾッドがなおも髑髏の騎士に挑もうとするが、ガッツの姿を見ると生き延びたことに
感心し、一端勝負を預ける。一通りの手当てが済むと、髑髏の騎士は馬にリッケルト、
ガッツ、キャスカを乗せ、再び走り出す。



436 名前:ベルセルク 投稿日:04/10/26 18:30:54 ID:???
4日の眠りの後ガッツが目覚めたのは、この1年世話になっていた鍛冶屋、
ゴドーの鉱洞だった。起きたガッツを覗き込むのは、リッケルトとゴドーの幼い娘エリカ。
だが、もう一人命を取り留めたキャスカは記憶を失い、言葉も喋れない程に気が狂って、
ガッツ達にも怯えて暴れるようになっていた。あまりの現実に飛び出すガッツ。
当てもなく走り、これまでのことを回想している内に日が暮れる。
首筋の烙印に痛みを感じるガッツ。闇夜には無数の目が光、悪霊が押し寄せていた。
そこに髑髏の騎士が現れる。曰く、ガッツは闇の者への生贄に捧げられた。
その烙印が悪霊を呼び寄せるが、一方で烙印のためにガッツは異界との狭間に立つことになり、
悪霊も見えるのだと言う。
だがガッツは、髑髏の騎士から剣を受け取ると悪霊に果敢に斬りかかる。
ふと、悪霊が一斉に消える。もう一人の烙印の者、キャスカのところに向かったようだ。
髑髏の騎士はガッツの要望でガッツを馬に乗せ、鉱山へと向かう。

道中。髑髏の騎士は「やつら人外の者どもに仇なす者」とだけ名乗る。
あの鉱洞に2人を運んだのは、かつて妖精が住んでいたところで、大地の気により
闇の者から隠れるのに適した場所で、且つそういった場所の中では最寄りだったということで、
ガッツに縁があったのは偶然のようだ。ガッツとキャスカを鉱洞から出さないよう
リッケルト達に言ったのも彼だった。
またガッツが命を取り留めたのもやはりリッケルトが偶然所持していた妖精の鱗粉によるもの。
妖精と縁があるのかも知れんな、と言う髑髏の騎士。



437 名前:ベルセルク 投稿日:04/10/26 18:31:35 ID:???
丘の上のキャスカには悪霊がまとわりついていたが、キャスカに危害を加えてはいなかった。
ガッツが駆け寄ると、キャスカは腹を押さえてうずくまった。その股間から、異形のモノが。
ゴッドハンド・フェムトに犯されたことによって魔の取りついた異形の胎児。
それなから長きに渡って、ガッツを苦しめるものだった。
ガッツはすぐに踏み潰そうとし、髑髏の騎士も殺すよう勧めるが、キャスカは我が子を
抱え込んで守ろうとした。異形の子は見る間にそのままの形で大きくなり、キャスカに抱かれて
胸の烙印から流れる血を舐めていた。ガッツは取り上げようとするが、キャスカは必死で
守ろうと縋り付く。ガッツも殺せないでいると、朝日が昇り、異形の胎児は消えた。
髑髏の騎士は言う。「死んだのではない。光に追われ幽界の側でずれた」のだと。
更にそれがガッツとキャスカの子(それにグリフィス――フェムトの魔が取りついたもの)
であることを指摘し、「いずれまたお前達の前に姿を現す。子は親を慕うものだ。
魔は魔なりのやり方でな」と言う。そして、髑髏の騎士もどこへともなく姿を消した。

エリカにゴドーの作った武器の倉庫を案内されるリッケルト。かつて名工を呼ばれたゴドーの
多彩な作品を目にする。その中には、小柄なリッケルトの身の丈よりも遥かに大きな剣もあった。
その名も「ドラゴン殺し」ドラゴンを撃ち殺せるような剣を注文されてのものだと言う。
ただ巨大すぎて、扱える者がいなかった。
(ゴドーはそれで吊るし首になりかけ、城下を逃げ出してきたのだと言う)



438 名前:ベルセルク 投稿日:04/10/26 18:32:01 ID:???
回復したガッツは旅立ちを決める。リッケルトは何も話されていなかったが、ある程度の
察しはついていた。そしてキャスカは「安全のため」鉱洞に監禁されるのだった。
ゴドーの作品でガッツの装備を仕立てるリッケルト。
左手を補う義手は、磁石入りで剣を握ることもできる。更に仕込みが・・・
ゴドーから剣を受け取ったところで、ガッツは烙印に反応を感じる。
使徒の1体が蝕から、魔の残り香を追ってきたのだった。
戦うガッツ。だが業物の剣も、人以外のものを斬るようには造られていなかった。
剣は折れ、ガッツは切り裂いた腹から飛び出した内臓に絡めとられ、投げ飛ばされる。
その時リッケルトの言葉に従い引き金を引くと、仕込まれた大砲が発射、使徒の頭を貫いた。
更に、ガッツの飛ばされた場所は倉庫、そこで傍らにあったものでガッツは使徒を切り裂き、
止めを刺す。それは今まで扱えるもののなかった“ドラゴン殺し”だった。
闇に紛れるため漆黒の鎧を纏い、まさしく鉄塊のような剣を持って、黒い剣士は1人旅立った。

(これにて話は一区切り)



81 名前:ベルセルク 投稿日:04/12/07 17:39:34 ID:???
ここで法王庁の軍隊「聖鉄鎖騎士団」が登場する。主要メンバーを紹介しておくと、

団長ファルネーゼ・・・聖鉄鎖騎士団の団長は乙女が務める慣習で、それなりに美少女。
副長アザン・・・真面目で堅苦しいオッサン。
紋章官セルピコ・・・普段は軽いノリで、やる気なさげだが・・・

彼らは黙示録に従い探索を行っていた。そして預言書通り、蝕の跡――
血で染まり食い散らかされた死体の残骸が漂う“赤き湖”を発見した。
黙示録にはこうある。
「五度太陽が死せる時、新しき旧き名の都の西に赤き湖が現れる。
それはすなわち五番目の御使いが舞い降りし証し。
御使いは闇の鷹なり。罪深き黒き羊達の主にして盲目の白き羊達の主。
世界に暗黒の時代を呼ぶ者なり」



82 名前:ベルセルク 投稿日:04/12/07 17:40:00 ID:???
あれから2年。ガッツは旅を続けていた。(その途中でパックとの出会い等もあった)
ある日森で遭遇したのは盗賊の一団と、それに攫われた少女ジル。盗賊と諍いになるが、
そこに邪教徒が人を打ち付けたという因縁ある木があり、その悪霊がガッツの生贄に反応、
木が怪物に変身する。逃げ出す盗賊達、いつものように戦うガッツ。
助けられたジルだが、なぜかパックを見て悲鳴を上げる。
一方逃げた盗賊達は霧の深い谷に踏み込み、そこで妖精のようなものに遭遇していた。

何だかんだでジルを村(近くらしい)まで送り届けることになったガッツ。
村はひどく寂れていた。家に帰ると、飲んだくれの父親がジルを虐待する。
制裁とばかりに栗を投げつけるパックだが、その姿を見るとジルの父親も仰天し、
村中が騒動になる。エルフをひどく恐れ、憎んでいるようだった。
村人に囲まれるガッツだが、とにかく人を斬りはしないで逃げる。
ジルは謝り、壊れた風車小屋に隠れていて、後で食べ物を届ける、と言う。
夜には悪霊に襲われるガッツは、来るなら明け方に来い、と注意する。

夜、父親の飲んだくれ仲間がジルを慰み者にしようとする。ジルは怯えて部屋に籠もっていた。



83 名前:ベルセルク 投稿日:04/12/07 17:40:20 ID:???
明け方、食べ物を持って風車小屋を訪ねるジル。そこではガッツの周りに漂う悪霊が、
朝日に照らされて消えるところだった。ガッツは例によってそれと一晩戦い続け、
あちこちに傷を負って血を流し、ようやく眠ったところだった。
妖精を連れて自分の知らない世界から来たガッツに、憧憬を抱くジル。
夢魔に襲われてガッツが目を覚ますと、傍らでジルが眠り込んでいた。
その身体のあちこちには、虐待によるアザが。ガッツは妖精のことを聞く。
ジルによると、東に山を3つ越えたところに、1年中霧の漂っている「霧の谷」があり、
そこにはエルフが住んでいるという言い伝えがあると言う。だが数年前から、「エルフ」が
村を襲って作物を喰い荒らし、家畜を殺し、人をも殺し、子供達を攫っているのだと言う。
エルフがそんなことをするわけがない、と言うパックだが、その姿は小さな人型で
虫の羽のある、パックと同じような「まさしくエルフ」だと言う。
けれどジルも「どこか(エルフとは)違うと思う」と言う。
そこで烙印に反応を感じるガッツ。何かが大軍で飛来していた。

※この作中における「エルフ」とはトールキンの創作した人間大のものではなく、虫の羽のある小さな妖精。



84 名前:ベルセルク 投稿日:04/12/07 17:40:44 ID:???
列をなして空を飛んでいく大群のエルフのようなもの。しかしガッツは烙印からはっきり
感じ取っていた。あれは、エルフなどではない。
それらは家畜を食い荒らしてあっという間に骨ばかりにし、家に押し入って人をも喰らう。
再び村にやって来たガッツはドラゴン殺しの一振りでエルフのようなものを何匹か
叩き潰すと、行き逢った両親を食い殺された少年トマスを囮にし、大軍をおびき寄せる。
ボロ小屋に逃げ込むと、追い詰めたと思ったか、エルフもどき達はハチの怪物に姿を変える。
だがガッツは小屋の壁と柱を切り崩すと、火薬の瓶を投げ大砲で撃って自身は小屋を飛び出し、
まとめてエルフもどきを焼き尽くすのだった。
そこにボス格らしい、人間大の少女の姿のエルフもどきが現れる。

その“エルフの女王”と交戦するガッツ。だが相手は高速で飛んでガッツの剣もかわし、
腕に(頭にある、蛾の口器のような部分で)一刺しを与えていく。
そこでパックが戦いを止めに入る。「思念を感じる。あれは人間の子供だ」と言うのだ。
しかし“エルフの女王”はパックを「仲間はずれの“ピーカフ”」と呼び、襲い掛かる。
迎え撃とうとするガッツだが、身体の自由が効かなくなる。相手の鱗粉によるもののようだ。
だがジルが「ロシーヌでしょ!?」と叫んで止めに入ると、相手はエルフもどきを連れて去った。

ジルはガッツに肩を貸し、助けようとするが、村人達はトマスを囮にしたことを責め立てる。
しかも折悪しくその時、死んだエルフもどき達が人間の子供の姿に戻ったのだった。
子供の焼死体の山を見て怯える村人達。ガッツはジルの首にナイフを突き付け、
人質に取って村を出る。酒乱のジルの父親は恐れて物陰から様子を見ているだけだった。



85 名前:ベルセルク 投稿日:04/12/07 17:41:09 ID:???
村を離れてから「あの大きなエルフは昔行方不明になった私の友達かも知れないから」と言って
ガッツについて行こうとするジルだが、ガッツは突き放す。
夜になると、キャスカの産んだ異形の子が、さっき死んだ子供達の霊を連れてガッツの前に現れる。
一方ジルは既に「エルフの女王」に会いに行く決心を固めていた。
だが悪霊を斬りながら夜を過ごすガッツに再び行き会ってしまい、ガッツはジルをかばって
崖下に転落、そこで朝を迎える。ふとガッツはさっき聞いた「ピーカフ」のことを訊ねる。
ジルはそれに答えて、こんなおとぎ話を話す。

昔ピーカフという、赤い目を尖った子供がいて、そのためにいじめられていました。
両親が本当の親じゃないと思ったピーカフは、ある日妖精の住むという森に向かいました。
そして同じように赤い目と尖った耳を持つ妖精達に出会いました。けれど妖精は
「お前は私達の仲間じゃない。風に乗る羽がないじゃないか」というのです。
妖精の1人が言うには、昔人間の男女が病気で死にかけた赤ん坊を助けてもらおうとここに来た、
赤ん坊は妖精の魔法で助かったけれども、半分妖精達と同じような姿になってしまった、と。
ピーカフは慌てて村に帰ったけれど、その間に村では100年もの歳月が経っていました。
ピーカフは1人丘の上で赤い目を腫らして泣き続けました。

話し終えた後ジルは言う、ロシーヌ姉ちゃんはこの話が好きだった、
「私もピーカフと同じなんだ」と言ってた、と。



86 名前:ベルセルク 投稿日:04/12/07 17:43:31 ID:???
更にジルが語るにはロシーヌは4つ年上、本当のお姉さんみたいに一緒に遊んだと言う。
森や川で遊び、生き物を捕まえたりするのが好きだったと。そんな中でも大切に持っていた
宝物、それは顔のようなもののある卵型の石だったとも。
けれどロシーヌの父は娘が本当に自分の子か疑い、虐待している様子もあった。
自分をピーカフになぞらえ、妖精の国に本当の両親がいると夢想していたロシーヌは、
ある日霧の谷へ行くと言って消え、そのまま行方不明になった。
数日後、両親も姿を消した。宝物の中から、あの奇妙な石もなくなっていた。

パックにベヘリットを見せられたジルは、確かにロシーヌの石と同じだ、と言う。
ガッツは推測する。ロシーヌは両親を生贄に捧げたのだと。
そして「これはガキのおとぎ話じゃねえ」と再び突き放し去るガッツ。
だが1人(正確にはパックもいたが)になったジルの前に、再びロシーヌが飛来した。



174 名前:ベルセルク[sage] 投稿日:05/02/01 16:33:39 ID:???
「昔言った通りこれが本当の私、エルフの女王様」と言い、ジルを霧の谷に来るよう誘う
ロシーヌ。だがジルを抱えて飛び立とうとした途端、魔を感じて駆け戻って来た
ガッツが斬りかかった。結局間一髪でかわされ羽根の端を切るにとどまったが、ロシーヌは怒り
反撃しようとする。しかしジルが「やめて」と言うとそのまま飛び去った。
ジルまで一緒に斬ろうとしたことに腹を立て、飛び去るパック。だがガッツは自分が
手加減してしまっていたことを感じ、戸惑っていた。

空から見下ろす景色をジルに見せるロシーヌ。そして「ジルも私達の仲間になれば飛べるよ」
と言う。そして「あの黒い剣士、霧の谷に辿り着けるかな」と言うロシーヌ。
霧の谷は決して子供を傷つけたりせず守ってくれる“本当の大人達”森の守護者(ガーディアン)
によって守られているのだと言う。

実際に霧の谷に踏み込んだガッツは、人間の死体が集まった塊を目にしていた。
そしてその中から出て来たのは、いつぞやのジルを攫おうとしていた盗賊達。
彼らは四つ足で這うように走り寄り、ボウガンで撃たれてもビクともせず、虫の怪物に変身した。
それを斬り捨てるガッツ。だが更に大量の虫の怪物が現れる。



175 名前:ベルセルク[sage] 投稿日:05/02/01 16:34:00 ID:???
大量の子供達の焼死体を埋葬する村。そこに訪れたのは、法王庁の聖鉄鎖騎士団だった。
何があったのか聞かれ、妖精と黒い剣士のことを答える村の司祭。それを聞いた
団長ファルネーゼは、我々はその黒い剣士を追っている、という。
近年よく聞かれる魑魅魍魎の話、その幾つかに黒い剣士の目撃報告が共通して存在するので、
とにかく正体を突き止めようとしているのだと言う。
それを聞いていたジルの父親は、手柄欲しさに案内を名乗り出る。

大量の虫を斬ったガッツの前に、カブトムシをカマキリに変身する2人組が現れる。
カマキリのスピードとカブトムシの外殻、パワー。元は騎士というだけあって別格の強さの2人。
しかしガッツは大砲と剣を駆使してそれも片付ける。大量に出血して膝をつくが、
上手いことにカバンの中に薬になるパックの鱗粉が残っていた。

一方でパックは、たまたまながら霧の谷に到達していた。その奥に広がっていたのは、
秋だというのに花の咲き乱れる、一見のどかな湿原。そこではあの村を襲ったエルフもどき達が
遊んでいた。思わず釣られて紛れ込んでしまうパック。だが彼らがボールのように遊びに
使っていたのは、人間の目玉だった。固まるパック。
だがそこで「女王が戻った」との知らせ。エルフもどき達を追ってパックも行くと、
そこには確かに大木の上でジルを歓迎するロシーヌがいた。
ジルに「逃げよう」と言うパック。だが大人達に虐待されていたジルは、ロシーヌに
仲間になれと誘われて迷っていた。「あの子達より楽しそうなことが私には見つからないの」
側で歓声が上がる。エルフもどき――子供達が虫の角や羽、植物で武装したり、
虫に騎乗したりして、戦争ごっこをしているようだった。



176 名前:ベルセルク[sage] 投稿日:05/02/01 16:34:53 ID:???
だが彼らは本当に相手を刺し、殺し合っていた。そして串刺しにした死体をパック達に
渡そうとして来た。悲鳴を上げはらいのけるジル。落ちた死体が、人間の子供に戻る。
他の死んだ連中も、人間の大きさに戻って行く。更にエルフもどき達が
贈り物を受け取らないから、「仲間違う?」と言い出し、変身し始めた。逃げ出すジルとパック。

ジルとパックは木から丸いものが無数にぶら下がっているところに通りかかる。
その丸いものから羽化するエルフもどき。人間の子供達をエルフもどきに変えているのだった。
エルフもどきになった子供達が殺し合っていたのは人間ごっこ、エルフになれば怖くなくなる、
人間の村では嫌なことばかりだったはず、ここには楽しいことが全部ある、と
ジルを誘うロシーヌ。ロシーヌの作り出す繭に捕われかけるジルだが、パックが呼び止める。
ロシーヌはパックを攻撃しようとして近くの繭を切ってしまい、中からエルフもどきに
なりかけた子供の、溶け崩れた体が。我に返り悲鳴を上げるジル。
そこでふと、炎が迫っているのに気付く一同。松明を持ったガッツが火を放っていた。
燃える木を切り倒し無数に飛んでくるエルフもどきを火に包むガッツ。
ジルの目には一瞬、ガッツの方が恐ろしい怪物のように映っていた。

一方その頃ジルの父親の案内で霧の谷にやって来た聖鉄鎖騎士団は、
死んで虫の怪物から人間の姿に戻った「守護者」達の無残な死体の山を目にしていた。



177 名前:ベルセルク[sage] 投稿日:05/02/01 16:48:50 ID:???
エルフもどきに全身に喰らい付かれても、炎に飛び込んで焼き、繭を切り裂いて
体液と内臓を浴び消火して戦うガッツ。木々が邪魔をしてロシーヌは速く飛べない上、
毒の鱗粉も炎によって舞い上げられてしまう。ロシーヌの触角を1本斬り、
仕留めかけるガッツだが、また間一髪かわされる。いや、外した。
自分の妖精の国を焼き尽くされ怒るロシーヌは、巨大な蛾の怪物への変身した。
突撃してその口器で貫こうとするのをガッツは何とかドラゴン殺しで防いだものの、
その速度は超音速、ほとんど見ることもできず通り過ぎた後に音が聞こえ、
体を引きちぎられそうな衝撃波が来る。
だがロシーヌも3回目はより正確に狙おうと思って速度を落としてきた、そこをガッツは
自分の腕を貫かせ、鋼鉄の義手で頭は守ってくっ付いて行く。
そのまま全速力で飛んでガッツを引き裂こうとするロシーヌだが、ガッツは義手の大砲で
ロシーヌの腹を撃ち抜く。空から落下する2人。
だがロシーヌは生きている。頭部の人間の少女の姿を留めた部分を撃ち抜けば殺せたであろうに、
自分の甘さに怒りながら、動かない手に剣を括り付けるガッツ。

炎に囲まれて絶望するジル。だが燃える木が倒れてきた時、ロシーヌがかばう。その時、
ガッツの剣がロシーヌの体を貫いた。ジルを助けるのを見越して、炎の中に潜んだのだった。
再び空への戦いの場は移るが、ガッツは蛾の口器に頬を貫かれながらも歯で噛み止め、
ロシーヌの体を完全に切り裂いたのだった。

ロシーヌは思い返していた。霧の谷で何日も待ち続けても、妖精は現れなかった。
そこに捜しに来た両親。殴りつける父。「霧の谷にこんなのがあっちゃいけない」絶望、
殴られて切れた口から落ちた血がベヘリットに付き、そして・・・



178 名前:ベルセルク[sage] 投稿日:05/02/01 16:49:24 ID:???
落下したロシーヌところに駆けつけるジル。「ほんとうは、エルフなんていなかったんだ」
と言うロシーヌを、“本物のエルフ”パックが否定する。
「なぜかいなくなったけれど、ここは昔本当に妖精郷だった」と語るパック。
静かに息を引き取ろうとするロシーヌだが、そこに止めを刺しにガッツが現れる。

制止するジルをはねのけ剣を振り下ろそうとするガッツだが、その脇腹を矢が貫く。
撃ったのはジルの父親だった。満身創痍で聖鉄鎖騎士団に追い立てられ、
やむを得ず逃げるガッツ。一方ジルの父親は手柄欲しさに来たのに「そこで子供達を
見ていてやってくだされ」と止められ地団駄を踏む。
ロシーヌはまだ力があったのか急に立ち上がると、帰り着くことのない家路を飛び去った――

父を振り切りガッツを追うジル。騎士団に追われ岩陰に隠れているガッツを見つけると、
(パックが捜し出したようだ)「ここじゃないどこか遠くへ私を連れてって」と懇願する。
だがガッツは自分の周りにまとわりつく闇、悪霊達を見せ付ける。
「逃げ出した先に楽園なんてありゃしねえのさ」
ガッツが闇の中へ消えた後、夜が明け霧の晴れた空を見上げて、ジルは決意する。
「私はやっぱり剣士さんみたいに激しくはできないと思うし、ロシーヌみたいに逃げ出す
勇気も無いのだと思う。だけどせめて、泣いて叫んで噛み付いてみようと思う。
何かがかえられるかも・・・」
それを見届けたパックは「やっぱほっとけないじゃん」と再びガッツを追いかけて行った。



42 名前:ベルセルク[sage] 投稿日:2005/03/30(水) 15:08:01 ID:???
すっかり焼け野原となった霧の谷に、髑髏の騎士が通る。
その跡から見えるガッツの戦いに思いを馳せた後、彼はロシーヌの使ったベヘリットを探し出し飲み込んだ。

ロシーヌ戦の傷は深く、満身創痍で剣に寄りかかって森の中を歩くガッツ。
辺りから悪霊が囁きかける。パックが発見した時、ガッツは倒れて悪霊にまとわり付かれていた。
悪霊をイガ栗で撃退するパック(あまり真面目にやっているようには見えない)
呆れて笑うガッツ。そんなところを遂に聖鉄鎖騎士団が発見、取り囲む。
剣を右手に括り付けているだけでまともに振るのも困難な重症でガッツは苦戦するが、
相手もほとんどが実戦経験のない貴族の子息のため(聖鉄鎖騎士団はそういうものだった)、
上手く避けて回って翻弄する。そして全力での一振りで、5人を斬り殺す。
不慣れな兵士に任せても被害が増すばかりと出てきたのは副長“鉄棍鬼アザン”だった。
ガッツもその名は幼い頃に聞いたことがあった。またの名を橋の騎士、橋の上で
怪我で立ち往生している老人をかばい、軍隊と道を譲るかで争ったという逸話の持ち主として。
(「老人を担いでいけばいい」という意見に対して彼が言うには「通すべきスジがある」のだそうだ)
だが腕は確か、その怪力と正確で速い攻撃に苦戦するガッツ。

何よりこの怪我と消耗ではアザンを斬ったところで残った連中に捕まるのは目に見えている。
そう考えたガッツは頭のファルネーゼを狙うが、傷に触れてよろめいたところを
ファルネーゼが必死で突き出した剣に当たり倒れてしまう。
殺された仲間の仇を討とうと襲い掛かる騎士団の連中だが、「剣を帯びる者は自らも
剣によって倒されることを覚悟せねばならぬ。騎士の戦いを愚弄するな」とアザンが止める。



43 名前:ベルセルク[sage] 投稿日:2005/03/30(水) 15:08:22 ID:???
武装を剥がされた上拘束されて尋問されるガッツ。その武装の山に加え、異教の神器ともとれる
ベヘリット。不審に見られるには十分だった。
だが「中身のない神さまを語る奴に言っても分かりゃしねえ」と取り合わず、挑発するガッツ。
更に「無理してるなあんた。神だの団長だの振りかざしたところで人望ってやつあついてきや
しないぜ。あんたはあんたの崇めてる置き物の神さまと同じ、中身すっからかんだ」と
言ったのが痛いところをついたのだろう、激しく鞭で打ち据えられる。
結局拘束されたまま、寒い中外の檻に放り込まれるガッツ。
だがそこへ檻の鍵を盗んでパックが現れる。パックに頭を下げさせられたりしつつも
無事脱出するガッツ。だが夜の悪霊はパックでも撃退できた昼のものとは段違いだ。
武装を取り返しに行って、自らを鞭で打ち据え神に懺悔するファルネーゼに遭遇するガッツ。
パックの能力もあってもまだ十分回復していないこともあり、ファルネーゼを人質に
逃げることに。ついでに馬の尻に火をつけ撹乱させ、自分も奪った馬に乗って。
混乱する中で真っ先に追いかけたのは、普段やる気なさげな紋章官セルピコだった。
だが彼はその中で見たこともないもの――悪霊の群が通り過ぎるのを見た。

一方パックは、ファルネーゼが自分を認識できないことに気付いていた。
何故か坊さんにはこういう、エルフを認識できない者が多いと言うパック。
旅芸人一座の占い婆さんに聞いた話では「堅い世界を持つ者には妖精は見つけられない」とか。



44 名前:ベルセルク[sage] 投稿日:2005/03/30(水) 15:09:18 ID:???
悪霊の群を斬り捨てるガッツ。だが馬上で大剣を振り回したため馬が持たずに転倒する。
そんな中でとりあえずファルネーゼを助け、なぜ自分を狙うのか問うガッツだが、
悪霊に驚きファルネーゼは怯えつつも「背教者に話すことなどない」と逃げようとする。
しかしそこに野犬の群が出現、更に悪霊が取り憑き人面犬の集団と化してしまう。
「こんなものがいるはずねぇか? だから奇跡ってんだろ。オレはもう奇跡は間に合ってる」と
言い、いつものように斬り続けるガッツ。一時は逃げようとしたりしたファルネーゼも、
夜が白み始める頃にはただ呆然と見ているだけだった。そして痛感していた。
ただ逃げ惑い震えて縮こまっていただけ、神の御名すら唱えることのできなかった自分、
いやただ無力なだけでなく、ガッツを尋問と称して鞭打ち、自省と称して自分を鞭打つ時に
快楽を感じていた、暗い欲望しかない自分を。
そこに悪霊がつけ込む。

戦い終えて息をついているガッツに、取り憑かれたファルネーゼが全裸になってのしかかる。
動揺する間に首を絞められそうになるが、殴って正気を取り戻させる前に朝日が昇り、
照らし出されて悪霊は消えていった。
しかし正気に戻ったファルネーゼは、自分の姿に泣き叫ぶのだった。
そこにセルピコが迎えに現れる。「私の名誉のためにあの男を殺しなさい」と泣きながら
セルピコに命ずるファルネーゼだが、セルピコは「捕まえるのが任務だし、ぼくには無理です」
と言う、泣いて走り去るファルネーゼ。
だがそこで、様子見ながら剣を交わす両者。セルピコは実はかなりの実力のようだった。
とりあえずその場は剣を収めて去るセルピコ。ファルネーゼは去りながら、
「あの男を殺して口を封じなきゃ」と考え続けていた。



413 名前:ベルセルク[sage] 投稿日:2005/05/18(水) 15:34:46 ID:???
疫病が蔓延し、災害に見舞われ、軍隊に蹂躙され、世界は闇に包まれる。
そんな中、光の鷹が舞い降りる。人々がそれが“求めしもの”であると直感した。
そんな夢を、ミッドランドの多くの人々が見た。

ミッドランドのラバン将軍は、荒れた山を見回っていて、流れ着いた死体から
疫病で滅びた町を見付ける。その町は疫病で死んだ死体の山と、それを食う鼠ばかりだった。
それは既に、国中の至るところで目にしてきた光景だった。疫病、飢饉、野盗の群れ。
そんな中、王は国を再建するどころか国軍の七割以上をグリフィスの探索に向けていた。
二年に渡って、狂人のような目で。
ラバンも夢を見て、想うところはあった。彼に限らずミッドランド国民にとって、
鷹を象徴するものは1つ。そこに救いがあるとすれば・・・
そんなことを考えている時、知らせが来た。国王が病に倒れたと言う。

一方ラバンが去り、誰もいなくなった病に滅びた町の奥で・・・鼠が集まり形をなして、
ゴッドハンド・コンラッドが降臨する。それは病魔を撒き散らし、去って行った。



414 名前:ベルセルク[sage] 投稿日:2005/05/18(水) 15:35:12 ID:???
王が倒れたとなれば後継者はシャルロット、その時摂政に任命されるのは誰か、と・・・
なおフォス大臣は、すっかり隠遁を決め込んだようになっていた。

国王は狂気に取り憑かれたまま息を引き取った。
その頃、象を連れた異国の軍隊がミッドランドに迫っていた。

「不死のゾッド」は、その時も傭兵として戦場にいた。だが所詮、人間が束になっても
相手にならない。死骸の山に腰掛けてゾッドは振り返る。使徒と戦ったことも何度かあったが、
なぜかそれでは満たされない。やはり、髑髏の騎士しかいないのか。
そこでふとあの烙印の剣士、ガッツのことも思い出す。
そこに、金色の鳥が舞い降りた。鳥は語りかける。「これはまどろみの中、夢と現の溶け合う領域」
ゾッドは相手の正体に勘付き戸惑うが、やがて自分の求めたものはただ1つ、絶対の強者のみ
ということを思い出し、挑みかかる。だが変身したゾッドの攻撃はすり抜けるようにかわされ、
角が切れ落ち、頭が見事に切断される。
そこでゾッドは目覚めた。夢か? だが足元には自分の角が落ち、額から血が滴っていた。
そして、お告げのようなものが聞こえる。「火の柱の立つ盲目の羊達の集いし聖地に天堕ちる刻、
求めしものは来たる」

ガッツの旅をする先も、どこも疫病に見舞われ何も残らず、死霊や夢魔がうろついていた。
「昔妖精を祭っていた遺跡のある丘なら夢魔も近付かない」とパックに言われ休息を取る
ガッツだが、夢を見る。キャスカが磔、火刑にされる夢を。
目を覚ますとあのキャスカの産んだ胎児の怪物が目の前にいて、
「アブナイ、急ゲ・・・」と警告してくるのだった。そして、こうも。
「火ノ柱ノ立ツ盲目ノ羊達ノ集イシ聖地ニ天堕チル刻・・・」