女王様ナナカ

Last-modified: 2008-12-03 (水) 11:05:56

女王様ナナカ/原作 大槻ケンヂ 漫画 西炯子

633 :女王様ナナカ:2008/11/27(木) 23:05:16 ID:???
女王様ナナカ
徳間書店リュウコミックス 全1巻
原作は大槻ケンヂ、漫画は西炯子
1993年7月と1994年2月に少女コミック特別増刊号に掲載され、
月刊COMICリュウ2007年9~10月号に最終話『ナナカふたたび』が掲載され、単行本化。
14年の間にすごく絵柄が変わっている。
内容は、SM女王様のナナカがプレイを通じて他人を救う、というか生まれ変わらせてあげる、というような話。

●エピソード1 女王様ナナカ

鬼城ナナカは幼少時、子供向け番組の中でボンデージ姿の敵女性キャラがヒーローをいたぶるシーンに性的な興奮を覚える。
長じて女子高に入学したナナカは、自分を呼び出した上級生に往復ビンタをくれてやり、
一躍「美人で勝ち気な新入生」として高校の有名人になる。
そんなナナカも美術教師に恋をし、将来は彼のような美術教師になりたいと願う。
2人の関係はやがて学校側に知れ、美術教師はナナカに言う。
「2人で逃げよう。それが出来なければ、死のう」
駆け落ちの日、待ち合わせの駅に美術教師は来なかった。
待ちぼうけをくらったナナカは駅のトイレで手首を切り、救急車で保護される。
25歳のナナカは、人気のS女王様になっていた。
常連奴隷のヤクザ・吉成に専属契約を持ちかけられているが、永らく断っている。
「ナナカちゃんは素晴らしい女王様だよ。これで足にキスさえさせてくれればなあ…」
ナナカは素足に触られると「黒板を釘で引っ掻く音を聞かされているような不快感」を覚え、
SMプレイの常道である奴隷の足キスを請ける事が出来ない。
ある日、ホテルの一室で吉成とのプレイを終えたナナカが休んでいると、若い男がやって来る。
21歳だと言い張る高校生・直也は、女性美術教師と駆け落ち予定であったが、厳しい父親に邪魔され、
待ち合わせ場所に行けなかったのだ。
「恥ずかしい死に方をして、父の顔に泥を塗ってやりたい。俺を殺してくれ」
昔の自分を思い出したナナカは、直也に激しいプレイを施し、彼は気絶してしまう。
目を覚まし「なかなか死ねないもんだな」と呟く直也に、ナナカは
「あんたを殺したら、あたしは殺人犯。それについてはどう考える?」と問う。



634 :女王様ナナカ:2008/11/27(木) 23:10:30 ID:???
「そこまで考えてなかった」と言う直也を後ろ手に縛り、ナナカは彼の手帳を抜き取る。
ナナカは直也の駆け落ち相手である亜希子に電話をかけ、話をさせる。
「亜希子を高みに引き上げてやれるのは、あんただけよ」
それはかつて、ナナカが美術教師に言われたことだった。
違うのは「死だけが」という言葉が前についていたこと。
生きて、2人で愛の高みへと駆け上ってほしいとナナカは願った。
ナナカは素足へのキスを交換条件に吉成に見張りを頼み、2人を駆け落ちさせる。
そしていつものように、吉成との待ち合わせ。
「しかし聞けば高校生のガキと女先生だって言うじゃないの。逃げたはいいが、うまくやっていけるのかねえ?」
ナナカは意味ありげに微笑み「さあね」と言うだけだった。
その後、吉成への約束を果たそうとしたナナカだが、足を掴まれただけで悲鳴をあげてしまうのだった。

●エピソード2 ナスターシャ

中学・高校とナナカと同級生だった松子は、デブでグズで不細工。
駆け出しの絵本作家の彼女は、いつもスケッチブックを持ち歩いており、『ナスターシャ』という童話を製作中である。
ナスターシャという美女が、美しすぎるが故に誰からも愛されず絶望の旅に出かけ、自分だけの隠れ家を見つける。
だが、彼女の美しさを妬んだ魔女に氷の世界に連れ去られる。
彼女は旅人に助け出され、彼と森の奥で人知れず幸せに暮らしていく…という内容だ。
ある日、松子は電車でチンピラに絡まれているところをナナカに助けられ、久しぶりに会った2人は喫茶店へ。
そこで『ナスターシャ』のラフを見たナナカは現実逃避だと批判する。
「17の頃、あたしもあんたも、この世から逃げようとして失敗したじゃないか」
高校時代、松子はナナカの恋人だった例の美術教師に恋い焦がれていた。
想いは一方的なものだったが純粋で、ナナカと彼との付き合いを知った松子は自殺未遂をやらかした。
だが、それはクラスメートの嘲笑を招き、ナナカとの差を思い知らされる結果となった。
苦い思い出に席を立とうとする松子に、ナナカは自分の連絡先を渡す。



635 :女王様ナナカ:2008/11/27(木) 23:12:08 ID:???
その足で編集者の平野との打ち合わせに向かう松子。
ハンサムな平野は、現在の松子の秘かな想い人である。
ラフを見た彼は『ナスターシャ』を絶賛し「打ち合わせを兼ねてデートしよう」と夜の食事に松子を誘う。
平野に旅人のイメージを重ね、有頂天になる松子。
本格的に『ナスターシャ』を製作中の松子に「こないだは言い過ぎた」とナナカは電話をかける。
「松子は、まだ夢を捨ててないんだよね」「うん…」
「えらく傷つく事になるかもしれないよ?」
「大丈夫!」力強く拳を作り、松子は頷く。
平野との食事の日、おめかしをして出かける松子。
平野との会話は楽しく、酔った彼は松子を名前で呼び、松子の胸は高鳴る。
店を出た平野は「君の本は絶対売れる!ヒット飛ばそうな!」と松子の肩を抱く。
妄想の中で、松子は平野扮する旅人に抱き上げられていた。
帰りのタクシー。
泥酔した平野は何度も「お前の本は売れる」と譫言のように繰り返す。
幸せ気分の松子だったが、続く平野の言葉が心を刺す。
「なんてったって、お前の物語は負け犬の物語だからな」
「え…?」
「辛い事、嫌な事から逃げて、現実を拒絶して生きたい。一生自分のカラの中で暮らしたい、という話だ」
「そんな…あたしはただ、女の子の一つの理想を…」
「何言ってやがる!あんなもん、ハーレクインみてーなもんだ!もてない女が心の穴に詰め込むジャンクフードだ!」
ショックを受ける松子にかまわず、平野は続ける。
「売ってやるぞ!純文学の部署から外された俺には、売れる本出すしかねーんだ!
もてねー女を慰める本だろうと何だろうと…」
途中から松子は心を閉ざし『ナスターシャ』の一節をブツブツと口ずさんでいた。
「ナスターシャは美しすぎて誰からも愛されませんでした…美しすぎて…」
やがて松子の住む最寄り駅にタクシーが到着。
「んじゃあ、松子、気ぃつけてな」
だが、松子は降りようとしない。
「あの、あたし、平野さんちに…」
「へ?おれんちに来たいの?これから?なんで?」
「好きだから…」
一世一代の告白を平野に笑い飛ばされ、降り出した雨の中、松子は惨めな気分でナナカを訪ねる。



636 :女王様ナナカ:2008/11/27(木) 23:15:36 ID:???
「言わんこっちゃない、とは言わないけどさ…」
松子にTシャツとタオルを貸し、コーヒーを淹れてやりながらナナカは言う。
「夢は絵本の中だけにしときな。あんたもあたしも、夢追っかけて一度失敗してるんだからさ」
松子はコーヒーカップを叩き割り、激昂する。
「いいじゃない、あたしが夢を追っかけたって!鬼城さんは途中までだけど夢を叶えた事があるじゃない!
先生とできてたじゃない!あたしなんか、いっつもいっつも……!
知ってたわよ…夢は夢だって…あたし、逃げてるだけだって解ってた。でも…でも、一度くらい…」
黙って聞いていたナナカは仕事着に着替え、手慣れた様子で呆気にとられている松子を縛り上げる。
「あんたの自殺未遂、ずっと責任感じてたんだ…これからあんたはナスターシャ、あたしは悪い魔女だ」
「そんないきなり…」
「うるさいっ!お前はなんでそんなに美しいんだいっ!」
混乱する松子にナナカの鞭が一閃する。
「お黙り!あたしは、この体を使って旅人を誘惑した。それしか無かったからだ。
あたしに比べて、あんたは何と心の綺麗な事か。お前が妬ましい!なんでそんなに美しいんだいっ!」
ナナカに鞭打たれながら、松子は次第に心の澱が浄化されていくような気がした。
プレイの最後にナナカは言う。
「最後にキツい一発をくれてやろう。そうすれば、お前はもう秘密の隠れ家には帰れない。いいね?」
「はい…でも、優しくしてね…」
その後出版された絵本の中のナスターシャは、秘密の隠れ家を追われたが、かけがえのない友を見つけ、
荒野で強く生き抜く決意をしていた。
絵本を閉じたナナカは吉成に「今日は魔女になりたい」と言う。
「いいねぇ魔女!ナナカちゃん、ピッタリよ!」
魔女ナナカに犬に変えられた(という設定)吉成は、恍惚の鳴き声をあげるのであった。