月に叢雲花に風

Last-modified: 2008-09-22 (月) 11:46:05

月に叢雲花に風/津寺 里可子

293 :月に叢雲花に風1:2008/07/09(水) 00:09:08 ID:???
『月に叢雲花に風』 津寺里可子 全15巻

女子高生の天竜若菜は、明るくてかわいくて優しい、どこにでもいる普通の女の子。
ある日ふとしたことから、代々天竜家の跡継ぎを守護してきたという妖怪、
雨男「叢雲」の姿が見えるようになる。
基本的には、若菜と彼女を取り巻く妖怪たちの、コメディあり、せつなさありの日常を描く一話完結物です。
おおまかな流れでは若菜の恋と、叢雲とその天敵の戦いが展開します。



294 :月に叢雲花に風2:2008/07/09(水) 00:10:27 ID:???
~1巻~
第1話『月に叢雲花に風』
若菜は、ボーイフレンドの矢部と初めてキスをした日から、妖怪雨男・叢雲の姿が見えるようになる。
天竜家の子孫を代々護ってきた叢雲は、若菜が生まれた時からずっと傍で見守ってきたと言う。
若菜以外の人間には見えず、いつも後ろをついてくる叢雲。矢部を快く思っていないような叢雲に
度々デートを邪魔され、若菜は反発する。ある日トラックに轢かれそうになった若菜を、叢雲はその身を
挺してかばう。若菜は感謝と共に彼の守護を受け入れ、不思議な日常が始まる。


第2話『鬼燐』
人間に育てられた雄狐のかすがと、人間に家族を殺された雌狐のもえぎ。
許婚同士の二人のいざこざに若菜が巻き込まれる。
かすがともえぎは和解し結婚。狐の小さな群れは山奥へ移住する。
去る前に、群れの老狐が若菜に「叢雲は龍だ」と教えるが、雨男だと言う叢雲の言葉を疑わない若菜。


第3話『おともだち』
変死者が続発する交差点。そこを通った若菜は、着物姿の子供・すずを見つける。
昔庄屋で子守をしていたすずは、濡れ衣をかけられ庄屋を追い出され、今の交差点のある場所で死んだ。
一人ぼっちのさみしさから、そこを通る通行人を次々と取り殺していたのだ。
若菜の優しさにふれ、すずは雨の中に溶けて消える。


第4話『神鳥』
龍である叢雲は昔、龍を喰らう鳥の神・ガルーダに力の源である珠を奪われ、
日本に逃れ雨男に身をやつした。
その仇敵ガルーダが、叢雲のもとに現れる。目的は己が食べつくして絶滅寸前の龍を繁殖させる為に、
雌龍を探し、雄龍である叢雲を手に入れること。人間に化けて若菜に近づき利用しようとするが、
若菜の反撃に合い、神である自分は人間を傷つけるわけにはいかないと、いったん退く。
若菜を危険に巻き込みたくない叢雲は、自分の本性やガルーダとの関係を若菜に話せないと苦悩する。
若菜もまた、矢部に「俺と妖怪どっちが大切?」と聞かれたことや、デート中だった矢部を振り切って
ガルーダに襲われていた叢雲を助けに走ったことなどから、叢雲と矢部の間で揺れることになる。



295 :月に叢雲花に風3:2008/07/09(水) 00:13:19 ID:???
第5話『誕生日』
クリスマス。若菜は家の前で小猿を拾う。深夜、その猿が巨大化して若菜を襲う。
猿の妖怪と人間の間に生まれた血塊。彼は自らを世に送り出した妖怪と人間のどちらをも激しく憎悪する。
だが、若菜と叢雲の言葉に心を動かされた血塊は、優しかった母を思い出し、人間の姿を取り戻した後
静かに消えてゆく。


~2巻~
第6話『異形の恋』
若菜のことを「若菜姫」と呼ぶ蜘蛛男・不破が現れる。
不破は昔の芝居の大道具であったハリボテの蜘蛛で、芝居の登場人物である「若菜姫」に恋をしていた。
何度公演を繰り返しても、筋書きの中で人間と結ばれていた「若菜姫」。
異形の者と人間とは相見えない、と語る叢雲。実らぬ恋情を若菜にぶつけようとする不破だが、
若菜との会話により幻の恋に別れを告げ、以降は若菜本人を「姫」と呼んで慕うようになる。


第7話『アリア』
寒い冬の日。見知らぬ美女に会っている叢雲。若菜は無意識のうちに嫉妬するが、
その美女は、以前叢雲が菌につかれていたところを救って土の中に戻した蝉の精だった。
歌いたいと願い続け、結局外に出ることが叶わなかった彼女は、真冬の朝、
たった一度の舞台を歌い上げて消える。


第8話『日々是好日』
矢部の幼馴染・武井は、幼い頃天狗と取引をして、自分の為にのみ使える神通力を得ていた。
己の力を過信する武井は、いじめられっこだった昔矢部に助けられた借りを返そうとして、
叢雲に戦いを挑む。
結果は惨敗で、武井はその戦いの最中巻き込まれた若菜を助けるために力を使い、神通力を失う。
追ってきた矢部の前に初めて見えるように姿を現す叢雲。矢部は叢雲に、
「若菜はあんたにはわたさない」と宣言する。
一方反省した武井は、若菜に謝罪の手紙を書く中で、叢雲と龍との関連に気づく。



296 :月に叢雲花に風4:2008/07/09(水) 00:15:50 ID:???
第9話『夜啼き』
人間に殺された鳥の妖怪が、人間を次々と襲う事件が起きた。
その鳥たちのまとめ役は、若菜が子供の頃助けた九官鳥・くろだった。
若菜に再会したくろは、若菜に愛を告げ、天国へ飛び立って行く。
その騒動の中、叢雲の旧友である日本の鳥族の束ね・鳥総(とぶさ)の暁が訪ねてくる。
暁は、同じ種でありながら逆らい続けた鳥族の王・ガルーダに、時が来るまで叢雲を見張るよう
命ぜられていた。自身や日本の鳥族の命を盾に取られ、友である叢雲を裏切ることに暁は苦悩する。


~3巻~
第10話『終の栖』
ペンションを経営する田舎の祖父を訪れた若菜は、そこで香港の女優、チェン・リーと出会う。
彼女は南海龍王の娘だった。はるか昔、成人したら迎えられるはずだった、父王と二人の腹違いの兄たちが
住む宮殿がガルーダによって壊滅。
一緒に大陸の湖で暮らしていた母も、鳴蛇という妖怪に追われ天に昇ったところをガルーダに殺された。
ペンションの近くの湖に住み着いていた、母の仇である鳴蛇を倒したリーは、まだ見ぬ兄二人の生存を信じ、
探し続けるという。叢雲はリーが自分の妹であると知りながら、何も告げないのだった。


第11話『僕は僕を忘れない』
行方不明だった天竜の祖父が夜に家の前に現れて消えた、と暁から教えられた若菜は、
長野の祖父の家へ向かう。
そこには、青年の姿をした祖父がいた。しばらくするうちに、少年、幼児へとどんどん退行していく祖父。
戦時中に餓死寸前だった祖父に、日本兵の姿をとった叢雲が己の肉を与えたため、死期を前にした祖父に
不思議な力が働いていたのだ。戦争の悲惨な体験によって失っていた戦前の記憶を、叢雲に再会したことで
取り戻した祖父は、老人の姿に戻り、「戦友」に感謝を告げた。



297 :月に叢雲花に風5:2008/07/09(水) 00:17:25 ID:???
第12話『失楽園』
人間が破壊した自然を元に戻すために、人に苗を突き刺し、その人間性のままの植物に変えて回る芭蕉の精。
若菜は彼によって、桜の木にされてしまう。昔芭蕉に思いを寄せられたが、振ったために植物に変えられた
遊女葛城が極楽鳥の精として蘇り、「木になった者が一番愛している者の血をかければ元に戻る」と矢部に
助言する。自信のない矢部は叢雲に助力を求め、二人同時に桜の木に血をかける。若菜は元に戻り、芭蕉と
葛城も思いを確かめ合う。木になっていた間の記憶がない若菜は、矢部と叢雲の険悪な空気に首を傾げる。


第13話『月の爪』
若菜は小学校時代の友人・少夜から久しぶりに連絡をもらう。オフィスビル最上階の広くて殺風景な部屋で
暮らす少夜。小さい頃から幽霊や妖怪が見え、周りから疎まれていた彼女は、若菜の後ろにいつも居る叢雲に
思いを寄せていた。少夜が小さい頃話しかけていたのは、自分ではなく叢雲だったと気づく若菜。
会社社長で忙しく自分に物を与えるだけの父に反発し、父の再婚相手の弟に幼い頃から関係を強要されても
孤独感からそれを断ち切れないでいる屈折した少夜。だが、屈託なく友人として接してくる若菜や、オフィス
ビルの敷地にある岩につく一つ目の巨人・一丸の物言わぬ優しさに触れ、少夜は心を開く。


~4巻~
第14話『天使』
ある日叢雲の元に、ガルーダ付きの天上の楽師・プラティーシャが現れる。彼は、自分の命は叢雲の命運に
かかっているという。彼ははるか昔、ガルーダによって戯れに叢雲の龍の珠をその身に埋め込まれていた。
その際に目も潰された。迷子の天女・シシュを拾い、その子を育てながら静かに暮らしていた楽師だったが、
ガルーダが叢雲を見つけたと聞いて、逃げるよう忠告に降り立ったのだ。
そんな中、流れの天女から、シシュがガルーダに征伐されたと聞く。
止めるシシュを振り切って地上に来たこと、年頃になった養い子の自分に寄せる
思いに応えられなかったこと。楽師は自責の念とガルーダに対する憎悪を募らせ、
若菜を守るために逃げないと言う叢雲と共に、地上でその時を待つことを決意する。



298 :月に叢雲花に風6:2008/07/09(水) 00:18:55 ID:???
第15話『遠の眠り』
叢雲の知り合いの妖怪・逆髪が営む骨董品屋で、若菜は可愛い着物を手に入れる。
その着物から手だけが現れ、何かを伝えようとしていると感じた若菜は、着物をはおり、
自分にとりつかせる。手の主は、歌舞伎役者で女形の吉三郎。恋人だった武家の男に、
男らしくなっていく容姿を厭われて捨てられ、相手の名前を彫った腕を切り落とされ命を落としたという。
いつまでもきれいな女でいたかったと嘆く吉三郎は、若菜の先祖と一緒に吉三郎の舞台を見たことがある
叢雲に、美しい姫姿をずっと覚えていると告げられ成仏した。


第16話『暁と闇』
叢雲が見えるようになってから、矢部との仲がうまくいかない若菜。矢部のことに関しては、叢雲とも
ギクシャクしてしまう。最近ずっと矢部とのデートを駄目にしていて謝りたいと思っていた若菜は、ある夜
楽師が持つ龍の珠の、願いを叶える力によって矢部の部屋に瞬間移動してしまう。薄い夜着一枚の若菜に
心揺れる矢部だったが、若菜が叢雲を振り切って自分の元に来たわけではないと、衝動を押さえ込み、何も
せずに若菜を家まで送る。「ずっと気づかないでいてほしい。後ろにいるのが妖怪でも、男だってことに」
と矢部は願う。


第17話『ふたつの顔』
河童・ひかげと、彼と手の皮一枚でつながった美女・ひなた。ひかげはその昔、川辺の屋敷に住む姫であった
ひなたを好きになり、彼女を殺して、手を肉で繋げることによってひなたを蘇生させ、喧嘩をしながらも
二人で一緒に仲良く暮らしてきた。彼らと知り合った若菜は、座敷童のような彼らの、家探しに協力する。
品の良い老女が一人で住む古い家に落ち着いた二人。だが、優しい老女を愛し、人間に執着を見せるひなたに
焦りを覚えたひかげは、家に火をかけ、ここを出ようと誘う。ひなたは繋がった手を切り落として老女を助け
出すが、ひかげと繋がりが解けた以上もう生きられない。二人は一緒に火の中に戻っていった。



299 :月に叢雲花に風7:2008/07/09(水) 00:20:24 ID:???
~5巻~
第18話『姫と私』
ある朝目覚めると男になっていた若菜。犯人はフェラーリに乗って突然現れたド派手な男。彼は叢雲の兄と
名乗り、乙姫の話し相手をすれば元に戻すと言って、若菜たちを竜宮城に連れて行く。叢雲と二人になった
兄・瑞慶は、父王の名を継ぎ王国を再建するため、叢雲に協力を求める。
叢雲はそれを拒み、二人は戦い出す。
そこに現れた若菜を見て、兄は若菜を女に戻すことを条件に、叢雲を取り込もうとする。事情はわからない
ながらも、力ずくで意思を通そうとする兄に若菜は反発し、「女の子にもどらなくていい!」と叫ぶ。
決意して言ったものの、叢雲とともに放り出された浜辺で後悔に涙を流す若菜。結局、再び現れた兄は若菜を
元に戻し、叢雲に「あきらめないからな」と告げ去っていく。


第19話『薬』
神を超える力を欲し、神々の霊酒アムリタを盗んだ罪で地の底へ堕とされたアスラ。彼は薬にも秀でた楽師を
捕らえ、不死の霊薬を作らせようとする。
叢雲を監視するために、秘密裏に自分の片目を楽師に預けていた暁は、その危機を知り駆けつける。
楽師が囚われた場所で酒造りをしている狢から助けを求められた若菜、叢雲、兄、不破も
楽師を助けようとするが、若菜と狢を盾に取られ、成り行きを静観することになる。
できあがった霊薬を、致死量と知りながら飲むアスラ。元は楽師と同族であったアスラは、
ガルーダに囲われる楽師を愛していて、神を倒すためにアムリタを盗んだのだと告白する。
一緒に自由になろうと告げ、楽師が薬を飲むのを見届けて、アスラは消えていく。
しかし、身のうちに龍の珠を持つかぎり、楽師は死ねないのだった。


第20話『月射病』
ある夜現れて若菜を襲い、叢雲に纏わり付く首だけの女。彼女は、最近若菜が知り合った近所の地味なOL・
須磨子だった。月に憑かれた須磨子は、夜になると不満や欲求の固まりである首だけの姿となって、内向的な
昼間の自分に代わって、好きになった男性やその恋人を殺していたのだ。若菜の説得により、本来の須磨子
である胴体がやって来て自ら首を切り離す。首は月に吸い込まれていき、元に戻った須磨子は、自分の犯した
殺人が夢ではなかったと知り、警察に自首する。



300 :月に叢雲花に風の登場人物1:2008/07/09(水) 00:24:47 ID:???
<主人公>
天竜若菜…普通の女子高生。明るい。優しい。可愛い。ちょっぴりドジ。
     サラサラストレートヘア。制服はセーラー服。


<若菜の周りの妖怪たち>
叢雲………妖怪雨男。先祖代々天竜家の跡継ぎを守護してきたが、女の子の跡継ぎは若菜が初めて。
     長髪黒髪で着物を着ている。いつも傘を持っている。
     初期数話はお茶目な性格だったが、だんだん無愛想な堅物に。
     実は龍で南海龍王の第二子。

叢雲の兄…しょちゅう現れては、若菜を男に変えたり、困った悪戯をしていく叢雲の兄。
     金髪縦ロールで派手な服装。カメが変化したフェラーリに乗っている。
     普段は明るくてチャラチャラした感じだが、実際は高慢で計算高い性格。
     千年前に父王がガルーダに敗れてからは、イギリスに逃れ生き延びてきた。    
     南海龍王の第一子。名前は瑞慶。

チェン・リー …香港で女優をしている。日本にもファンが多い。
     迫力のある黒髪の美女。普段は宝珠に力を封じて、人間のフリをしている。
     会ったことのない二人の兄を探している。
     南海龍王の第三子。

不破………蜘蛛男。元は芝居の大道具として作られたハリボテの蜘蛛。
     短髪で黒いサングラス&黒のスーツ。
     若菜を「姫」と呼び慕っている。普段は矢部の家に居候している。

鳥総の暁…日本の鳥族の束ね役。叢雲の旧友。翼の生えた、ワイルドな外見。
     ガルーダに脅され、自分の片目を楽師に預け、叢雲を監視している。
     月夜野の狢が作る酒をいつも飲んでいる。



301 :月に叢雲花に風の登場人物2:2008/07/09(水) 00:25:54 ID:???
楽師………ガルーダ付きの楽師。ガンダルヴァ族。名前はプラティーシャ。
     翼の生えた、天使のような美しい男性。優しくて穏やかな性格。
     ガルーダによって叢雲の龍の珠を身体に埋め込まれ、目を潰された。

ガルーダ…鳥族の王。天上在住。
     龍族の奴隷にされていた母親の恨みから、神々に頼んで龍を食物とする身体にしてもらった。
     龍に対しては残虐だが、人間は傷つけない。


<若菜の周りの人間たち>
矢部………若菜の彼氏。サッカー部所属。爽やかスポーツマン。

武井………矢部の幼馴染。鋭いところがある。美少年。
     矢部を気にかけ、若菜との仲を取り持とうとする。

少夜子……若菜の友達。初登場時はいろいろあったが、以降は若菜の親友として出てくる。
     父親とも和解しつつある。普段はメンズの服を愛用。



307 :月に叢雲花に風8:2008/07/12(土) 17:44:55 ID:???
第21話『妖つ影』
若菜の元に現れた不思議な影。それは少年に姿を変え、プルマディと名乗った。
龍に教えを乞うため、バリ島から師の呪術で魂だけやって来たという。暁と、龍の珠を持つ楽師は警戒する。天真爛漫なプルマディと仲良くなる若菜。
その会話の中で若菜は、以前会ったガルーダが龍を食べるということを初めて知る。龍の珠を持た
ない叢雲から気をそらせるため、兄が龍の姿を現す。それにつられ、プルマディの師がやって来るが、彼は
汚れた邪術を使い、自分の野望の為に龍を捕らえてガルーダに捧げようとしていた。自分自身はすでに師に
殺され、剥がれた皮を影絵の人形に加工する妖術によって存在していたと知るプルマディ。
彼は師を術で燃やし、自らの影絵人形も火にくべる。そして若菜に好意を告げ消えていった。


~6巻~
第22話『蜘蛛の糸』
病院の廃病棟に住み着く、幼い少女の姿をした蜘蛛の妖怪に不破が捕らえられる。
死んだ人間から抜け出た魂の化身である白い蝶を食べ続けた少女は、それらが卵になって
もうすぐ自分から生まれてくるのだと語る。
少女は、不破を助けに来た若菜を、子供に与える養分にするのだと言って襲おうとする。寂しい少女に
同情しかけていた不破だったが、その姿を見て胎を決め、少女を撃退する。
自分が食べた無数の魂が、天から黄金の糸となって降り注ぐなか、少女は静かに息を引き取った。


第23話『黒い水』
夏祭りに来た若菜。少夜子と別れ、一人になった若菜は、神社の息子で気の触れた金魚マニアに拉致される。
黒い水の中で変種の人間を作るという彼の妄想の下、若菜は神社の地下の真っ暗な洞窟に閉じ込められる。
出口を求め彷徨い歩くうちに、若菜は少夜子に言われた言葉を思い出す。
天竜家の跡継ぎを守護する叢雲とは、若菜が子供を生んだ時点で関係が切れる。それでもいいのかと。
歩き疲れた若菜はその場で眠ってしまう。
助けに来た叢雲は眠る若菜に呆れるが、寝言で自分の名を呼ばれ苦悩する。目覚めた若菜は叢雲にすがり、
どうしていつも助けてくれるの、いつまであたしといられるの、と詰問する。叢雲は何も言わずに若菜の唇に
指で触れた。若菜の中で、言葉にならない何かが、はっきりと形になろうとしていた。



308 :月に叢雲花に風9:2008/07/12(土) 17:46:19 ID:???
第24話『花の亡骸』
楽師がシシュの形見の羽衣を手にしているところに若菜が訪れ、恋の相談を持ちかけてくる。
娘と若菜を重ねる楽師。楽師は若菜に羽衣を着せ掛ける。そこにシシュに思いを寄せていた、
天人のユーディアスが現れる。
ユーディアスは楽師の複雑な事情を知らず、楽師のことを「寵愛を受けておきながらガルーダ様を裏切り、
シシュの一途な気持ちを踏みにじり地上に逃げ出した卑怯者」と憎悪をむき出しにし攻撃する。
その時、羽衣を纏った若菜にシシュの魂が乗り移り、ユーディアスを説得する。
そして、これがあると楽師様が苦しむから、というシシュの懇願を受け入れ、
ユーディアスはシシュの羽衣と共に天へ帰っていく。ユーディアスの攻撃を
甘んじて受けていた楽師は、ボロボロになりながら、亡くなった娘への後悔の涙を流す。


第25話『月夜雨夜』
自分の話をして相手の話を聞く。そのうち相手を好きになり、相手に成り代わりたくなって、
相手の顔を剥いで自分の顔に付け替える。獺の太郎丸は顔のない妖怪だった。
好きな相手の顔を得ても、殺してしまっては返事は返ってこない。若菜を好きになった太郎丸は、
若菜の顔ではなく、叢雲の顔を得て若菜と暮らそうと画策する。
叢雲と対決した太郎丸だが、叢雲の呼んだ雷に打たれ、何もない真っ黒な顔で何処かへ去っていく。


~7巻~
第26話『百年の孤独』
オフィス街のビルの上、街に侵入する邪気を防ぐために守護神としておかれた女戦士の像・金剛。
彼女は、長い間守ってきたにも関らず自分を顧みようともしない人間たちに復讐しようとしていた。
だが、若菜の優しさや金剛の寂しさを見抜く一丸(13話)の思いやり、若菜の父を守護して
オフィス街に通っていた頃ただ一人金剛に気付いていた叢雲の言葉などから、
彼女はまた石像に戻って街の守護を務めることを決心する。
そして、若菜はそのビルの前を通るたび、金剛に手を振り声をかけるのだった。


309 :月に叢雲花に風10:2008/07/12(土) 17:47:30 ID:???
第27話『左側の夢』
矢部とデートの日。若菜は兄の悪戯でまた男になってしまう。生まれた子供を見せに来た狐のかすがが若菜に
化けて代わりを務めてくれるということで、「若菜の従兄弟の橋蔵」として若菜も遊園地に同行する。
矢部はそこでかすがから事情を聞くが、そのことは言わずに、「橋蔵」に恋敵叢雲のことを語る。
「奴は若菜に近づく男が気に入らない。何故なら奴は若菜のことが―」言いかける矢部を不破が遮る。
俺の左側はお前の為に空けてあると若菜に伝えてほしい、と「橋蔵」に告げて矢部は帰っていく。
付き合う前に矢部の左側を夢見ていた自分とはもう違うことを感じる若菜。
叢雲の好きになった女性は左側にいてくれた? と尋ねる若菜に、
叢雲は「好きな女はいつも正面だ」と返す。


第28話『眠れる怪物』
最近龍について気になる若菜。ある日骨董屋・逆髪の店で、昔刑死した罪人・貞八から剥がされた、
龍の刺青が彫られた皮を見せられ、それに取り憑かれてしまう。身体に龍の刺青を浮き上がらせ、
貞八の霊の元に導かれる若菜。強い奴を倒して龍になると豪語する貞八を、叢雲は龍の姿に変化して倒した。本当は雨男じゃなくて龍だったの? と叢雲に詰め寄る若菜。
だが、楽師の力を借りれば何にでも変化できると説明され納得する。
実際は楽師はほとんど力を貸しておらず、叢雲の龍の本能が長い時を経て、奪われた珠の代わりに
新しい力を徐々にため込んでいると気付く楽師。


第29話『夕星』
ある夜現れた翼の生えた少年・夕星(ゆうずつ)。彼は、子供の居ない梟が死ぬまで抱いていた
土の塊から生まれた妖怪だった。周りの精気を吸い取って、預けられた先の巣穴を全滅させてしまう
夕星の面倒を暁がみていた。
暁を自分の一番星と呼び執着する夕星は、暁が好きな酒を造る狢、暁が会いに来る叢雲など、
暁の周囲に居る者全てを消そうとする。だが、昔は仲間の鳥の命を奪っていた暁が、頭領になってからは
大地の気を吸い込んだ酒だけで生き、仲間の命を奪うのを止めたこと、自分はそんな暁の命を吸い取って
生きてきたこと、自分の中で大事だったのは暁ではなく自分自身だったことを叢雲に教えられる夕星。
彼は誰の力も借りないで生きられるよう、いつか自分が暁の中で一番輝く星になれるよう、
成長を誓って飛び立っていく。



310 :月に叢雲花に風11:2008/07/12(土) 17:48:33 ID:???
~8巻~
第30話『思い出せよ花の色』
若菜が出会った、桜の木でできた箪笥を担いだ老人。昔老人の家に生えていたその桜の木には桜児という
精がいて、彼は桜児を愛し、守ると誓っていた。だが現実の女性と恋をし結婚して子供をもうけた彼は、
精を見る力を失い、金に目がくらんで土地も売却した。老い先短い老人になってから、
箪笥にされてしまった桜と再会した彼は、悔やみ自分を責める。雨に守られている、と言う若菜に、
「その手を離してはいけない。私のように後悔で一生を終わらせてはいけない」と諭す。
やがて力尽き生命終えた老人を、箪笥から現れた桜児が引き出しに引きずり込み、同化していくのだった。
その顛末を見届けた若菜は、とうとう叢雲に好きだと告げる。何も言わずに立ち去る叢雲。
楽師は「答えてあげてください。言葉ではなくとも…」と叢雲に訴えるが、
「触れたらそれだけではすまなくなる」と叢雲は苦悩する。


第31話『射干玉の月』
写真集の撮影で来日したチェン・リーと再会した若菜。恋でもしているのかと問うリーに若菜は
「好きって言っても何も変わらない。真っ黒な月みたいに、反対側は光っているんだろうけど、
あたしからは見えないの」と答える。叢雲のことだと気付くリー。実の兄であると知らずに、叢雲に惹かれているリーは、複雑な心境になる。また若菜も、リーと叢雲が二人でいると、
入り込めない何かを感じるのだった。


第32話『火花』
ある夜やってきて、叢雲を外に連れ出すリー。それを見た若菜はショックを受ける。
連れて行かれた先で、自分が生き別れの兄であるとリーに明かす叢雲。突然恋を断ち切られ
リーは動揺するが、それでも兄との再会を感謝する。一方、帰ってきた「叢雲」に若菜は散歩に誘われ、
いきなりキスされる。だが、それは叢雲に化けた叢雲の兄だった。自分と来れば、
苦しみも悲しみもない毎日を送れると掻き口説く兄に、つらくても痛くてもそれが生きているということ、
自分の幸せだから、と撥ね退ける若菜。最初は弟を取り込むために近づいたはずなのに、
いつのまにか若菜本人に惹かれていると自覚する兄。やがて帰ってきた本物の叢雲から、
リーとは兄妹だと教えられる若菜。「叢雲は龍だってこと――?」若菜は呆然とする。



311 :月に叢雲花に風12:2008/07/12(土) 17:50:57 ID:???
第33話『雨』
叢雲が龍だと知っても実感が湧かない若菜。叢雲は現れた兄に、女優のリーが自分たちの妹だと教える。
そんなある日、若菜は街で叢雲の雨の気に惹かれる記憶喪失の少年に出会う。普通の人間には見えないはずの
叢雲や不破の姿が見え、己の中に「へみ(蛇)」がいると言う少年。街中で彼を見つけ、殺そうとしてきた女性・彩子の話から、彼は一年ごとに、憑かれている蛇の脱皮によって記憶を失うのだとわかる。
恋人として何年一緒に暮らしても、毎年一度自分のことを忘れ去る少年を憎む彩子だが、
自分が殺さなくても毎年彼は死ぬから、と恨みを呟いて去っていく。昔の座を欲する零落した蛇神に憑かれ、人間でなくなった人間。自らの真実を知り絶望する少年。


~9巻~
第34話『儚きもの』
蛇に憑かれた少年は、起居する公園の名をとって自らの名を入谷と決めた。
彼は自分がどうして蛇に憑かれたか知りたいと願う。街中で矢部と武井に遭遇するが、
入谷にはっきりと自分を彼氏だと紹介しない若菜や、人間の男なのに叢雲が若菜の傍から排除しない入谷に、矢部は苛立ち、武井は二人の仲を心配する。そんな折、小夜子に招かれた山の別荘近くの爬虫類センターで、入谷に無数の蛇が近づいてくる。自分は人間なのか、それとも蛇そのものなのかと悩む入谷。入谷の身体から大蛇が現れ、蛇たちを次々と飲み込んでいく。神のくせに人を苦しめるなんてと糾弾する若菜に、蛇神は人の苦しみが己の快楽、自分を倒せば入谷も死ぬと言って再び入谷の中に戻る。憑いている蛇は悪いものであっても、自分自身は人間であったと少し安堵する入谷。若菜は矢部、武井に事情を話し、入谷は自分が
たとえ記憶をなくしても、何度でも友達になってくれるであろう友達を得る。



312 :月に叢雲花に風13:2008/07/12(土) 17:52:36 ID:???
第35話『夜天光』
叢雲がリーと会っていた夜、外で、いるはずのない自分と若菜の姿を見かけた者がいる、
と叢雲が若菜に言った。兄との一件を知ったらますます兄弟仲が悪くなる、
それを目撃したという絵筆の妖怪がどこまで話したか知りたい、と若菜は会いに行く。
画家の魂を持ちのっぺらぼうの彼は、人間嫌いでそっけないが、若菜を心配して
ついて来ていた楽師を描かせてくれるなら、と若菜の話を聞いてくれる。
顔のない人が見えない人を描いている不思議な光景に心を打たれる若菜。
「外への眼を閉じて、自分の内側にある真実の眼で見るんだ」と諭す絵描き。
知られたくなかったのは、兄弟仲がどうこうではなく、他の男性に愛を告げられキスされたことを叢雲がどう
思うか怖かったからだ、と気付く若菜。あの日見たのは雨男の旦那と君だ、としか叢雲には言っていないという絵描き。真実が見えるはずの彼の優しい嘘に若菜は感謝する。叢雲に真実を話そうとする若菜だが、叢雲は
それが兄であったと知っているようだった。


第36話『天の獄』
ある日、ガルーダが若菜の元にやってきた。叢雲の目をあざむき、二人きりになった彼は、若菜に龍について
語る。子を産む龍、雌の龍を探していると聞いて、リーのことが頭をよぎる若菜。しかし、リーの存在を知ら
ないガルーダは、若菜に一本角の龍(叢雲)の子供を産んでもらいたいと告げる。人間が孕もうが龍の子は
龍として産まれる、叢雲の命が惜しくば、叢雲の子を産んでその子供を自分に差し出せと。ガルーダに気付いた叢雲が攻撃をしかけ、ガルーダは「お前は既に囚われているのだと肝に銘じよ」と告げ天に退いていく。
負傷した叢雲の傍で、捕食されるものとしての叢雲を思い、助けたくても恋人でもない自分が子供なんて
作れない、と苦しむ若菜は、叢雲には何も話せないのだった。



313 :月に叢雲花に風14:2008/07/12(土) 17:55:24 ID:???
第37話『一角獣』
突然、兄の悪戯で全ての人間が叢雲に見えてしまうようになった若菜。矢部や入谷も叢雲に見えて困惑しているところに、兄がやってきて若菜をヨーロッパの古城に連れ去る。その城は、龍の王国が滅びてから西欧を転々としていた時に所有していたものの一つだという。城の壁にかけられていた一角獣の角の効力で、若菜は元に戻る。一角獣の横にかけられている美しい乙女の肖像。昔この地の領主が乙女に恋をして、一角獣と森の奥でひっそりと暮らしていた乙女の目の前でその獣を惨殺した。悲しんだ乙女は自ら死を選び、領主は後悔したという昔話。若菜を迎えに来た叢雲に、自分は龍を悪魔とみなす西洋に逃れ龍を罵る言葉を日々聞いてきたが、人間は一角獣を聖獣扱いする、同じ一本角のお前とこの獣が重なって見える、と兄は語る。若菜たちが帰った後、肖像画の乙女に向かって「また同じことをしてしまいそうだ」と話しかける兄。領主とは、兄自身のことだった。


~10巻~
第38話『幻の影』
ある日影を失った武井。そのままでは数日中に死んでしまうと叢雲から聞かされ心配する若菜。
彼の影を奪ったのは、幼い武井に神通力を授けた天狗・豪山だった。3年の間豪山と暮らし、
力を得る代わりに身体を与えていた武井だが、二人の間には取引以外の絆があった。
余命幾許もない豪山は、影を返す代わりにまた山に帰って来いと言う。だが衰弱しながらも武井は、
「普通に生きることが一番大事だ。影はやるから人間らしくここで死なせろ」と豪山を拒絶する。
豪山は武井に影を返し、自然と共に朽ち果てるために一人山へ帰っていく。
相手を愛するが故に別れを選んだ二人を見て、いつか別れる時が来るのなら後悔したくないと、
若菜は叢雲にキスをする。



314 :月に叢雲花に風15:2008/07/12(土) 17:56:19 ID:???
第39話『雨間』
何もなかったかのように振舞う叢雲に合わせ、無理をする若菜。その状況に楽師は、
育てた娘の愛に答えてやれなかった自分を重ね合わせ、また若菜には誰にも話したがらない時が
二度あることを憂慮している。最近評判の、雨の日にだけ現れる美貌の占い師・霖。
彼を男だと思っていた若菜だが、ある夜現れて叢雲に言い寄る霖は女になっていた。
彼女は妖怪で、愛する相手に会った時性別が変化するのだと言う。面白くない若菜に、
霖は人間の彼氏がいるくせに嫉妬するなんて、と揶揄する。二つの世界があることは不幸だ、
どちらを選んでも後悔することになる、と若菜に語る彼女。楽になりなさいと、
霖は若菜をビルの屋上におびき寄せ突然男に戻り、若菜を転落させようとする。
霖の迷いや苦しみを感じ取った若菜は、叢雲に阻まれ逆に落ちそうになった霖を助ける。
迷うことはあるけど、その時見える道に行くの、と語る若菜に、
霖は本来の姿カタツムリに戻って静かに去っていく。


第40話『無力の力』
楽師が隠し持つ暁の目玉。そのことに半ば気付き、楽師を挑発する叢雲の兄。
暁は、お前はその体に俺と叢雲を乗せているのだから気を付けろ、と楽師に忠告する。
若菜が持っていた電池がなければ喋らない人形、自分もそれと同じで珠がなければ生きられない。
昼間公園で見た檻の中で鶏に虐められていた目の見えない兎、自分もそれと同じで、
いつ身に埋め込まれた珠の持ち主がガルーダに捕らえられるかわからない檻の中で死を待つ身だった。
夜半、楽師は公園に兎を助けに行く。そこに、楽師の持つ龍の珠の気に惹かれる入谷がやって来た。
龍になって力を得ようとする蛇神が入谷から現れ、楽師を襲う。
追ってきた叢雲によって蛇神は入谷の中に退却させられる。叢雲は自分の龍の珠は、
今は楽師自身の能力となって新しく生きていると語る。



315 :マロン名無しさん:2008/07/13(日) 17:00:51 ID:???
若菜は叢雲に恋をしていると自覚したのに矢部とまだつきあってるの?



317 :マロン名無しさん:2008/07/15(火) 20:57:29 ID:???
そう



344 :月に叢雲花に風16:2008/07/29(火) 01:49:46 ID:???
~11巻~
第41話『花と龍』
夏の終わり。叢雲の兄のじいや・慈侍に連れられ、若菜と叢雲は南の海底の宮殿を訪問する。そこには、
ガルーダによって力を奪われ、怪物のような姿と化したかつての王国の左府・仁供がいた。
動くこともできず、最近とみに弱っていく仁供を元気づける為に慈侍は二人を連れてきた。
仁供が気にしていた「兄王子が見つけた地上の気に入りの花」若菜と、仁供のつらい気持ちがわかる、
同じく力を食われた龍である叢雲を。兄について話す叢雲と慈侍。
昔、弟よりも上に立たねば気がすまぬ兄に何を取り上げられても貴方は黙って耐えていた、と
語る慈侍に、「今は違う。天竜という木に咲く花を手折る者は命なきものと思え」と言う叢雲。
地上の島に戻り、花が好きだと言った仁供に届けて欲しいとハイビスカスを摘む若菜を見て、
散らぬ「花」があればよいのに、と呟く慈侍。花は散ったら終わりじゃない、生きているから
葉や実をつけて毎年次の花を咲かすの、と若菜は言う。


第42話『魔風恋風』
自分の不快な感情のままに人を傷つけてまわる鎌鼬・はやて。彼は叢雲の兄の入れ知恵によって、若菜の姿に
化けて人を襲おうとする。はやてを止めるために街へ向かう叢雲。部屋に一人になった若菜のところへ、兄が
やって来る。口説く兄を、「好きな人がいるから」と拒絶する若菜。兄は「逃げたければ逃げたまえ。私は
どこまでも君を追うよ」と宣言する。


第43話『さもあらばあれ』
江戸時代、名を上げることを夢見て故郷を飛び出した甚六。しかし江戸に着く前に行き倒れ、
茸となって胞子を飛ばしながら東京と名を変えた江戸にたどり着いた。
やっぱり自分は何もできない男だったと絶望していた甚六だったが、若菜や叢雲の言葉によって
希望を取り戻し、新しい場所へ旅立っていく。



345 :月に叢雲花に風17:2008/07/29(火) 01:51:15 ID:???
第44話『鳴き龍』
叢雲が地下鉄に乗っていた男に襲われ、腕を切り落とされる。若菜は、自分が返事をしないために
ガルーダが叢雲を殺しに来たのではないかと思って恐怖する。
だがその男は西洋から叢雲の兄を追って来た龍殺しだった。
なんとか、兄はここには居ないと納得させたが、次の日叢雲の腕を捜しに行く時もついて来る龍殺し。
叢雲の腕は、地下鉄に乗り合わせた、主を失った竜宮童子・大福が預かってくれていた。
龍殺しは主を恋しがる大福を嘲弄する。泣き出した大福の、物を破壊する竜宮童子の力で
龍殺しは撃退される。混乱の最中現れる兄。龍の宝に執着する龍殺しに、
「私の宝は一輪の薔薇だ」と告げる。


~12巻~
第45話『人形姫』
それぞれ別の場所で合わせ鏡にすると、そこに道が通じる不思議な対の鏡。兄が持って来たその鏡で、
若菜は以前とは別の西洋城に連れ去られる。そこで聴覚視覚はそのままに、喋れず動けない
人形のような状態にされてしまった若菜。もとに戻るには王子のキスが必要だという。
迎えに来た叢雲と一戦交えて兄は去っていく。城から出ようとすると茨に阻まれ、城で一夜を明かした叢雲と若菜。翌日やって来た楽師は、自然の流れに任せてはと叢雲に助言して帰っていく。
龍王の王子である叢雲にキスされれば戻るかもしれない、と焦れる若菜。
この状態の若菜を見て両親が病院に入れるだろうことも覚悟して、叢雲は彼女を家に連れ帰ろうとするが、
その前に「流れに逆らわないとするなら今は誘われるのも自然だ」と若菜にキスをする。若菜は元に戻った。

第46話『ホントウノコトダケ』
夜に帰らなかった若菜を探すために、若菜の母が友人たちに電話をかけていた。
矢部はまた若菜が妖怪がらみの事件に巻き込まれていたと知り、一睡もできなかった。
矢部の不安定な状態を気づかって、せめて受験が終わるまでのあと半年、矢部に本当の気持ちは
話さないで欲しいと若菜に釘をさす武井。若菜はそれでも矢部に話をしようと決意するが、
武井の牽制もあって結局伝えられない。夜、矢部は叢雲を呼び出し、二人は火花を散らす。



346 :月に叢雲花に風18:2008/07/29(火) 01:52:54 ID:???
第47話『銹びた月』
落としてしまった自分たちの卵を探すため、地上に降り立った天人カップル。若菜は彼らに協力するうち、
楽師がガルーダに目を潰されたこと、育てた娘を殺されたことを知る。辛い思いを抱えながら優しく穏やかで
あり続ける楽師を思い、若菜は涙する。卵を探し一人でいた楽師のもとにガルーダが現れる。ガルーダは
「おまえはどこにいても苦しみの呪縛からは逃れられない」と楽師に告げ天に帰っていく。


第48話『名前なき名の君』
若菜が逆髪の店で手に入れた香。焚くと煙の中に女性が現れる。彼女は薫物師・与兵衛の妻で、
服用すると体内から香を生じるようになる体身香を飲み、香る体を持っていた。
ままならぬ事情で駆け落ちした二人だが、自分の香る体が障害になると悟り彼女は自害した。
この香は、彼女自身の血で与兵衛が作ったものだという。「犠牲でも献身でもない。
彼の最高の香になっていつまでも愛する人のものでいたかっただけ」と言う香の精。彼女は
幼馴染だった与兵衛ととんぼの飛ぶ野原で遊んだ愛しい思い出を若菜に語る。叢雲は彼女に頼まれ
「秋津(とんぼ)」と銘を付ける。やがて香は尽き、秋津は先に逝った連れ合いめがけて
飛び立っていくのだった。

~13巻~
第49話『真珠楼』
兄から、ガルーダが手出しできない龍がいることを聞く若菜。ガルーダの仕える神・ヴィシュヌが龍に情けを
かけて与えた真珠。それを持つ龍はガルーダが接近すると危険を感知し、またガルーダは出会ってもその龍を
殺すことができないという。叢雲がそれを持てば、自分も苦しみから逃れられるかもしれない。若菜はその
真珠を探しに海底の真珠が集まる空間・真珠楼を訪ねる。結局真珠は見つからなかったが、異物を包み込み宝石に変える貝のように、自分の苦しみは自分の力で包み込もうと決心する若菜。ヴィシュヌの真珠は実は兄が
持っていた。若菜はそれを知らないが、ガルーダが現れる時はいつもいない兄に叢雲は気付いている。



347 :月に叢雲花に風19:2008/07/29(火) 01:54:48 ID:???
第50話『見ぬ間の桜』
若菜の家に来て、両親に勝手に交際宣言をしてしまう矢部。どうして急に、と怒る若菜に矢部は、
本気だからと返す。嘘はもうつけないと思った若菜は、叢雲に頼んで矢部と二人きりにしてもらい
別れを切り出すが、そこにガルーダの手下が現れる。叢雲が龍だということ、ガルーダが若菜に言ったこと、一連の事情を知ってしまう矢部。龍に変化した叢雲と空で戦い始めるガルーダの手下たち。
戻ってきた龍の叢雲に寄り添う若菜を見て、矢部は諦めないと決意する。矢部は「俺はこれから爆弾になる」と若菜に耳打ちし、叢雲にも聞こえるように「今まで通り普通に付き合おう」と言う。
ここで頷かなければ、矢部は若菜が秘密にしている事情を叢雲に話してしまう。
若菜は苦悩のうちに矢部の手を取るのだった。


第51話『薔薇のない棘』
矢部の彼女として明るく振舞う若菜。無理をしているような若菜を叢雲は心配するが、
若菜は彼に事情を話せない。そんな折、また若菜は対の鏡によって45話の城に連れ去られる。
そこで兄から聞く龍の子供の話。相手が自分より強い龍以外なら、相手が動物であれ人間であれ、
龍の一番初めの子供は自分のコピーとして生まれる。このことは神と呼ばれるものしか知らないと
聞いた若菜は、ガルーダは知っていて自分にあの話を持ちかけたと気づく。誰とでも子を生せる龍だが、
自分の分身を預けるなら愛する女性でないと嫌だと語る兄。今までそんな女性は一角獣の乙女と若菜の二人。自分が追いつめて殺した乙女の亡骸を埋めた城の薔薇園で、兄は若菜を抱こうとするが、
果敢に抵抗する若菜を見て、「強くなれ。私の一番望むものに育て」と退く。



348 :月に叢雲花に風20:2008/07/29(火) 01:56:02 ID:???
第52話『温室』
矢部に思いを寄せる下級生・寿美うらら。彼女の祖母はオサキ使いで、オサキ狐・蒐は
うららの小さい頃から彼女の望みを叶える為に動いてきた。望めば何でも「神様」が叶えてくれる。
蒐の存在を知らず無邪気に我侭に育ったうららは矢部に振られ、若菜がいなくなればいいと願う。
若菜を襲った蒐を叢雲が撃退し、うららの祖母の元へ連れて行く。祖母は敗れた蒐を生かして返してくれた
叢雲に感謝して謝罪し、精神的に幼い蒐とうららを一人前に育てることを誓う。
うららもまた「神様」に若菜の消滅を願ったことを反省し、翌日無事に登校してきた若菜に会い安堵する。
蒐は、これからはうららと祖母を支えられる良い力を持ちたいと若菜たちに語った。


~14巻~
第53話『夢見るころはいつも』
若菜や叢雲の所には現れても自分には会いに来てくれない一番上の兄を求めて、リーが若菜の家を訪れる。
父の顔も見たことがないリーは、父王にそっくりな長兄には二重の意味で会いたいはずだと、
若菜は兄をリーに会わせる為に奮闘する。ようやく顔を合わせた兄妹。若菜と出会ってから母の仇も討てた、兄とも会えた、あとは永遠に叶わない夢だけが残ってしまったと語るリー。昔湖で母と二人暮らしていた頃、一度だけ地上に出た時に出会った初恋の人。必ず迎えに参りますと言ってくれた彼だったが、
人間が生きていられる筈もない遠い昔のこと。リーは思い出を懐かしむが、実はその男とはガルーダだった。昔、目こぼしした、己が龍であることも知らなかった娘。ガルーダは未だに彼女を探し続けていた。


第54話『赤い実』
死んだ腹話術師のジョージを操る腹話術人形のケン太。彼らに出会った若菜は、
9年前に若菜がお嫁に行きたいと駄々をこねて家を飛び出した時に会っていると教えられる。
当時ジョージが撮ったビデオも見せられるが、若菜は全く思い出せない。
お嫁に行きたいと言っていた若菜の為にジョージが作ったというウェディングドレス。
幼児用のそれはもちろん今の若菜は着ることができない。ジョージが生きて笑っていて、僕の好きな小さな
「わあちゃん」のいるこの画面の中に入りたい、と激昂するケン太に、着られなくてごめん、変わっちゃって
ごめん、と若菜は泣く。



349 :月に叢雲花に風21:2008/07/29(火) 01:57:19 ID:???
第55話『空に咲く』
無理をしながら矢部とデートする若菜。若菜が席を外した時、どういう理由で彼女を束縛しているのかと
矢部に詰め寄る叢雲。兄は矢部に「君は昔の私と同じ一角獣を殺したい狩人だ。
それは好きな女を追いつめる愛し方だ」と諭す。一方空でガルーダの手下たちと出くわした暁は、
ガルーダが叢雲と若菜の子供を作らせようとしていることを知りながら邪魔をする人間・矢部を消せと
命じられる。暁はそれを撥ね付け、奴が最も欲しがっている雌の龍を俺が知っていると伝えろ、と
手下たちを追い払う。その夜ガルーダの手下に襲われる矢部。助けに来た叢雲は矢部に
「以前若菜と共にさらわれた時、あいつらに何を言われた?」と問うが矢部は口を閉ざしたまま。
やって来たガルーダと相対した暁は、叢雲の命と雌の龍を交換だと持ちかけるが、
ガルーダはそれを聞き入れず、交渉は決裂する。


第56話『月の傘』
矢部がガルーダの手下に狙われたことを不破から聞く若菜。矢部のもとに行こうとした若菜を叢雲がとめる。
私はお前を救えないのかと問う叢雲。話してしまったら叢雲が自分から遠ざかってしまいそうで何も言えない
若菜。そこへ、鳥たちの様子が変だといって、成長した夕星が暁を訪ねて来る。暁を捜しに空へ昇る楽師。
雌龍の居所を吐かない暁は空中で檻に捕らわれていた。
暁を地上に、若菜たちの側へ連れ戻したいと思い、檻の横で待つ楽師。ガルーダが現れると、
楽師は暁の解放を条件にリーの素性と居場所を教えた。ガルーダは暁を檻から出すが、
今度は身中の龍の珠を抜き取ろうと楽師に襲い掛かる。それを庇う暁。自分の記憶、生きてきた
全てを楽師に預けていた片目に託したから、それを夕星に渡して欲しいと楽師に頼み、暁は死んだ。
龍の珠の力でガルーダを辛くも退かせ地上に戻った楽師は、夕星に暁の眼を渡す。
夕星は叢雲に、暁の最期のメッセージを伝える。
裏切りを詫び、「またお前と月を肴にして酒が飲みたい」と。



351 :月に叢雲花に風22:2008/07/29(火) 01:59:21 ID:???
~15巻~
第57話『絆の傷』
リーの居所がガルーダに知られたと楽師から聞いた若菜は、香港にいるリーを心配し、
いつでも逃げられるよう、預けておいた対の鏡の片方を、常に合わせ鏡にしておくよう電話で忠告する。
しかしその道を使って兄がリーの龍の珠を日本へ持ってきてしまう。龍の珠がないリーは人間と同じで、
もしガルーダが来ても太刀打ちできない。心配した若菜は叢雲と兄と共に、香港へと向かう。
パーティーに出席していたリーを見つけると、彼女は会場で初恋の人に再会したと若菜に語る。
その男がガルーダであったことも。若菜はリーに日本へ逃げようと誘うが三人を日本へ帰した後、
リーは鏡の道を閉じて一人ガルーダのもとに残る。なぜ昔会った時に殺さなかったの、
と尋ねるリーに、何度でもその真っ直ぐな瞳に出会いたかったからと返すガルーダ。
私を憎んでいるのでしょうと問うガルーダに、今の私は貴方の腕に抱かれたいと願うただの女、
と告げるリー。抱擁を交わす二人。


第58話『日に月に』
天界でガルーダに大事に扱われつつも、彼の龍に対する深い憎しみを感じるリー。龍を殖やすと言うが、貴方
以外の男性に抱かれるくらいなら死を選ぶと宣言する。リーに龍の力を取り戻させる為に、下界の鳥に埋めた
龍の珠を取ってくると言って出かけていくガルーダ。一方若菜のもとに夕星が現れ、若菜は暁の死を知る。
ガルーダと刺し違えても暁の仇を取りたいと願う夕星に、叢雲は復讐に生きることの愚かさを説く。龍を殺し
続けた為に己の首を絞める結果を招いたガルーダの哀れさ。そして一族を殺され絶望していた叢雲に
「辛い時こそ苦しい方を選べ。勇気があるなら生きろ」と言ってくれた、
守るべき愛すべき者をくれた若菜の先祖の話。
夕星は暁の思いと共に生きることを誓う。矢部と下校中の若菜。
龍の珠を狙ってガルーダが楽師に襲い掛かる。
龍の姿に変化した叢雲は、その手の中に若菜を守って、ガルーダと戦いながら天へ昇っていく。


353 :月に叢雲花に風23:2008/07/29(火) 02:01:10 ID:???
第59話『花も嵐も(前編)』
天界で叢雲とガルーダが戦う中、ヴィシュヌが現れる。ヴィシュヌがガルーダを止めている間に、
叢雲は若菜を連れてその場を逃れる。ヴィシュヌは龍族とも関わりが深い神。
「友好を結んでもお前は心のどこかで私を敵視しているだろう?」とガルーダに言うヴィシュヌ。
だがガルーダは彼に恭順する姿勢を崩さない。一方地上では若菜の不在を家族にばれないように
奔走する不破と矢部や、夕星に止められつつも叢雲と若菜を追って飛び立つ楽師の姿があった。
リーのもとへは彼女の龍の珠を返しに兄が訪れ、幸せならばいい、と言い置いて去っていく。
やがて帰ってきたガルーダは、龍の力を取り戻したリーに、己の生い立ち、
龍族に虐げられた母の恨みを語る。復讐に凝り固まっていたガルーダの心を、生涯お側に置いてほしい、
と真摯に告げてくるリーの愛が解きほぐしてゆく。南の無人島に降り立った叢雲と若菜。
若菜はずっと苦しんできた、ガルーダに言われた言葉を叢雲に打ち明ける。
二人はお互いの思いを解き放ち、ついに結ばれる。



354 :月に叢雲花に風24:2008/07/29(火) 02:02:28 ID:???
第60話『花も嵐も(後編)』
南の島で束の間の蜜月を味わう叢雲と若菜。やがて兄と楽師が迎えに訪れる。
ヴィシュヌもやって来て、彼から思いを通わし合うガルーダとリーの様子を聞いた若菜は安心する。
そしてヴィシュヌの真珠について明かされる事実。一粒の為にお互い争い殺しあった龍族。
兄は真珠を手に入れる為にガルーダを手引きし、父王を殺させた。
しかしそれは全て、龍を減らすことで、龍を喰らってを力を得るガルーダの神力を削ぐという
ヴィシュヌの謀略だった。そこにガルーダが現れるが、彼は「自分は何も聞かなかった」と
今までどおりヴィシュヌに与する。兄は叢雲に持っていた真珠を渡し、若菜と楽師を連れて逃げろと
告げてヴィシュヌ・ガルーダ両神と戦い始める。叢雲は若菜に真珠を飲み込ませ、兄のフェラーリに乗せ
海に押しやる。ここに残る、皆と一緒に帰ると泣く若菜。楽師は「いつか真珠を手に産まれてくるであろう、貴女の中に宿った命を守らねばならない」と彼女を諭し、叢雲と共に戦いに戻る。家に帰りついた若菜は、
留守を預かってくれていた矢部と不破に全ての出来事を話す。
叢雲や楽師や兄が戦っている間、自分にできること、目の前の日常の中で精一杯頑張ろうと決意する若菜。
春、大学生になった若菜。別々の学校へ進んだ友人たちと久々に会う。矢部とうららは友達以上恋人未満。
入谷はやはり記憶を失ったが、武井や小夜子が側にいる。蜘蛛の糸で空を翔る不破の下方を、
フェラーリが走り抜ける。
道を歩く若菜の背後で葉擦れの音がする。
「誰もいなくてがっかりするのはもう慣れちゃった。でも、振り返ってみようかな」若菜のモノローグ。
前を向く若菜の後ろ、最終ページ右隅に描かれた着物の足。


<終わり>