轟世剣ダイ・ソード

Last-modified: 2008-11-12 (水) 10:02:53

轟世剣ダイ・ソード/長谷川 裕一

12 名前:轟世剣ダイ・ソード 1 投稿日:04/11/28 10:11:48 ID:???
某年1月25日、ごく平凡な中学校「九江州(くえす)中」の校舎は、そこにいた人間もろとも異世界へ飛ばされた。
校舎を貫通した巨大な剣によって、職員室に集まっていた教師は全滅。550人の生徒だけが取り残される。
そして、混乱の直中にあった生徒たちに、謎の怪物軍団が襲いかかった。
生徒の一人、1年の百地王太(ももち おうた)は、校庭で気絶していた異世界人とおぼしき少女を救う。
彼女から伝わってきた「心で剣を抜いて」という“声”に従い、巨大な剣に「剣を抜くイメージ」を重ねると
剣は突如として人間の形に変形。校舎を襲っていた怪物たちを蹴散らした。
「剣」は、自らを「ダイソード」と名乗り、王太と「7回の召喚に応じる」契約を結ぶ。
かつて、この異世界──“泡の中央界”──を支配する神に所有される武器でありながら、神に挑んで破れ
300年に一度、人間の下僕として7度の召喚に応える呪いに縛られた「神の剣」。
異世界人の少女、ユーリナは、故郷の魔導都市を襲う「北国」から都市を守るべく、彼女にとっての異世界である
地球を経由してダイソードに近づこうと図り、そして、侵入者封じの結界に九江州中もろとも捕まってしまったのだ。
ふたたび時空移動を行うには、魔導都市の賢者たちを頼る他ない。生徒会長の千導今夜(せんどう こよい)は
生徒たちを団結させ、魔導都市へ向かう計画を立てた。
異世界の物質として大地と反発するのか、地上数メートルで浮かんでいる校舎を「陸の船」として
校舎ごと魔導都市へ向かうというのがその計画。だが、現在地点は敵国である北国の領土の中であり
まず、敵国の領土を突破しなければならない。
後者が引っかかっている廃城の瓦礫を、火薬で爆破して取り除き、校舎を動かす用意が行われるが
作業が終わる前に、北国の第二次攻撃部隊が到着してしまった。
ダイソードを召喚し、敵の攻撃を退ける王太。だが、そこに油の雨が空から降り注いだ。
校舎に延焼する危険を恐れ、ダイソードの火炎魔法を使えない王太の前に、敵の切り札が出現する。
巨大スライム「ブロム」と、巨大な斧──北国が発掘した秘密兵器、ダイソードを含め8つあったという
神の武器のひとつ──“斧”のガバリオーグであった。



13 名前:轟世剣ダイ・ソード 2 投稿日:04/11/28 10:12:22 ID:???
ダイソードとガバリオーグの戦いが始まった。だが、戦局はダイソードが圧倒的に不利。
油の雨とブロムで、ダイソードの長所である魔力と機動力を封じ、自分の得意分野である力の勝負に持ちこんだ
ガバリオーグに対し、戦いの経験が無い王太はただただ翻弄されるのみ。
そのとき、3年生の剣道部長、一峰が校舎から飛び出し、用意してあった火薬に火種を投じた。
瓦礫が爆破され、その勢いで滑り出した校舎がガバリオーグに激突する。
この思わぬ援護に力付けられた王太は、「おまえの今もっている力で戦え」というダイソードのアドバイスによって
得意のサッカーを応用した蹴り技を披露。ブロムを倒し、ガバリオーグを圧倒する。
何度目かの蹴りがガバリオーグの顔面にヒットし、相手のコクピットが剥き出しになったとき
王太がそこに見たのは、すでにミイラ化し崩れた死体だった。北国の王に操縦されているはずのガバリオーグは
自らの意志で動き戦っていたのである。
思わぬ反撃にてこずったガバリオーグは撤退し、九江州中は無事に移動を開始した。
山の斜面に沿って滑り、川辺へ出た九江州中は、ここで食料を調達すると同時に、布を縫い合わせて
校舎に帆をかけて移動する計画を立てた。大きな帆を立てるためのマストを立てるのに失敗を繰り返したあげく
「臨時の措置」として、校庭に突き立ったままのダイソードに帆をかけることに成功。校舎は風に乗って動き出した。
だがそのころ、北国首都に帰還したガバリオーグは、打倒ダイソードのための新たな作戦を立てていた。
すでに北国には、幾つもの「神の武器」が集められ、とうに死んでいる北国王の意志を騙って国政を牛耳り
自分たちが新たな神となる野望のために暗躍を始めていたのだった…。
【召喚消費1回(VSガバリオーグ) 残り召喚回数6(最初の一回は契約時のサービスとしてノーカウント)】



14 名前:轟世剣ダイ・ソード担当 投稿日:04/11/28 10:20:14 ID:???
「ダイ・ソード」開始致しました。
注記。ダイソードとガバリオーグは、本来は
ダ・イスォウド(この世界の言葉で『主たる者の力』の意)とガ・バリュオーグ(同じく『狩り取る者』の意)
と表記されるのですが、本編中ではほとんどダイソード、ガバリオーグで統一されているため
本文中では解説無しで表記を統一しています。ご了承下さい。
しかし、8体の巨大ロボが、それぞれ3つの変形パターン(武器型、人型、獣型)を持つこの作品
文章のみで説明するのは、(今まで解説した長谷川作品と比較して)かなりやりにくいかも…。



24 名前:轟世剣ダイ・ソード 3 投稿日:04/11/29 10:00:30 ID:???
川沿いに下った九江州中は、河口にある「海辺国」にたどり着いた。ここは北国の属領だが
今後を考えれば、なんとしてもここで物資の補給をしておきたい。
千導会長は、校内の備品を異世界のお宝として売りつけようとするが、海辺国の王ジオナスは
さらりとその申し出をかわし「北の洞窟の怪物を倒せたら、同盟してやってもいい」と言う。
一方、学校では、実戦格闘技部キャプテン(要するに『番長』)の十勝が、校内のタカ派を束ね
ダイソードによる武力侵攻を主張。千導会長の退陣とダイソードの引渡しを訴えていた。
ジオナス王の依頼が、こちらの誠意を見るための狂言と読んだ千導会長は、二つの懸案を同時に解決すべく
自分と王太、そして生徒の中で一番魔法の上達した2年女子の二葉による「現生徒会チーム」と
十勝と子分たちのチームで同時に洞窟に挑む勝負を提示した。
このとき千導会長は、生徒会側のダイソードに対する十勝の掛け対象として「学校にこっそり持ちこんだエロ本」
を要求した。この妙な要求の真意は、後に明らかとなる。
洞窟はダイソードが入れない大きさのため、王太はダイソードとの契約の証である長剣だけを持ち
他のメンバーと洞窟に入った。洞窟内に住む生き物をなんとか片付け、一行は洞窟の奥の地底湖に着く。
だがそこにいたのは、二機の“神の武器”、すなわち“矛”のド・ライアムと“盾”のヨゴであった。
この依頼は、ダイソードのソウルマスター(乗り手)をダイソードと分断する罠だったのである。
陰湿な性格のド・ライアムに弄られ、一行は小さな横穴に追い詰められた。
千導会長は、一か八かの脱出計画として、一人が囮になる計画を示した。王太の持つ「ダイソードの剣」なら
神の武器と同じ材質だから、ド・ライアムに傷をつけることも出来る。これでド・ライアムを打ち
その隙に他の人間は脱出する…この危険な囮役を、王太は自ら買って出た。
油断していたド・ライアムは、飛び出した王太の一撃を目に食らって怯む。その隙に
他のメンバーたちは横穴を飛び出した。だが、王太はド・ライアムに振り落とされ、湖に落ちてしまう。
朦朧とする意識の中で、王太は誰かが呼ぶ声を聞く。「心でなら…どんな大きいものも…遠くのものもつかめる…」
そう王太が悟ったとき、洞窟の中に、爆音と共にダイソードが出現した。



25 名前:轟世剣ダイ・ソード 4 投稿日:04/11/29 10:01:02 ID:???
ダイソードに乗りこみ、他のメンバーを救い上げた王太は、自分がダイソードを「操縦している」と言うより
ダイソードと感覚を共有しているのに気付く。
今まで「魔法」に対して自分の常識が枷となり、力を縛っていたのに対し死の危険を乗り越えたことで、
王太の心は解放され、ダイソードとのシンクロ率も上がったのだ。
ド・ライアムと、加勢に入ったヨゴの二体を相手に、ダイソードは先の戦いで(王太の力量不足のために)
使えなかった高度な攻撃魔法を披露し、互角の戦いを繰り広げる。
洞窟は吹き飛び、3体の“神の武器”の戦いは、海辺へと戦場を移した。
“盾”であるヨゴの影に隠れ、こちらの隙だけを狙ってくるド・ライアムを攻めあぐねる王太だが
ダイソードは「“神の武器”は変形パターンによって能力値も変化する。
二者三態、9のフォーメーションの隙を突け」とアドバイス。
王太は、武器型になって突っ込んできたド・ライアムを受けとめ、その穂先を
ヨゴが獣型に変形(攻撃力が上がるが、本来の長所である防御力が落ちる)したところへ突き立てた。
そのころ港では、海辺国の兵士が戦船を出していた。九江州中の生徒たちが、あのエロ本のヌード写真
──この世界の人間には脅威的なリアリティを持つ──で兵士を買収したのである。
それを見ていたジオナス王が何やら合図すると、隠れていた兵士たちが飛び出し、ド・ライアムを抑え込んだ。
したたかなジオナス王は、北国に恭順すると見せかけ、ちゃっかりと九江州中に寝返る用意をしていたのだった。
思わぬ伏兵の数々に阻まれたド・ライアムは、ダイソードに両断され、完全に破壊される。
一方、自己修復の魔法が使えるヨゴは再び立ち上がるが、もともと温厚な彼はダイソードに負けたことで
“納得した。ぬしの方がよほど強い。わしはぬしに従おう”とダイソードに恭順。九江州中の傘下に入る。
「迷宮に潜って出てくると、強力な武器が手に入る。まるっきりロールプレイングみたいだね」
“? オウタよ、おまえの言うことはときどき分からぬ”
かくして、海辺国との同盟は成り、学内紛争も十勝が自発的に退いて終息した。
専用マスト付きの帆と、量産型の人型兵器「ナマクラ」数機、そして航海士や魔法教師などの出向人員を加え
九江州中は、次なる目的地へ向けて海へと乗り出した。

【召喚消費2回(海辺国入国時のデモンストレーション/VSド・ライアム&ヨゴ)
 残り召喚回数4】



26 名前:轟世剣ダイ・ソード担当 投稿日:04/11/29 10:01:43 ID:???
補足。8体の“神の武器”は、それぞれが「武器型(長所が最大限に伸び、不得意分野が大幅に低くなる)」
「獣型(短所が増強される代わり、長所が低下する)」「人型(バランス重視の中間的形態)」
の3種形態を使い分けます。
防御力最強の“盾”が「武器型」で防御専念してしまえば、“剣”で斬ることは困難ですが
「獣型(ヨゴの獣型は『大ガニ』)」の時なら、攻撃力増加の代償に防御力が低下し、攻撃が通りやすくなります。
今回の戦いでは、勝ちを焦ったド・ライアムとヨゴが、攻撃力を最大化して突撃してきたところに
カウンターを入れることで相手の防御を突破し、勝利を得たと言えます。



41 名前:轟世剣ダイ・ソード 5 投稿日:04/12/04 01:49:50 ID:???
大幅に戦力を増強した九江州中が次に向かったのは、海辺国の西に位置する“熱き島”アナ島。
ペンギンそっくりの亜人種「ボビー族」が住むこの島に居を構える工匠ガブ・マオリに教えを請うのが目的だ。
島を訪れた九江州中一行の前に、マオリ翁が自作の人型メカ「シャイニィ」に乗って姿を現す。
彼は、孫娘のツボカとともにこの島に逗留しながら、“神の武器”の研究をしている機械工だったのだ。
千導会長が求めていたのは、魔導都市への海路の途中にある「黒き嵐」の突破方法。
だが、マオリ翁は「黒き嵐」が、海流に沿って動く食人蚊の蚊柱であると語り、気候の変化を待つしかないと言う。
途方にくれる九江州中の生徒たちを、島に住むボビー族が襲撃してきた。
マオリ翁いわく、北国は配下の国や種族に、乙女の生贄を差し出すよう要求しており、その期日が近付いている。
生贄のノルマが厳しく、女性が減り過ぎてしまったボビー族は、よそ者の女を捕まえて生贄に当てようとしているのだ。
追われて逃げ惑う王太たち。そのとき、熱帯気候のこの島に、いきなり雪が降り始めた。
吹雪の中から現れたのは、マントを翻した新たな“神の武器”。北国からの使者だ。
王太はダイソードで応戦しようとするが、ダイソードはそれを止め、戦わないように警告する。
島に現れたのは“刀”のサン・ジュオウ。神代の戦いにおいて、唯一ダイソードが勝てなかった相手。
「今のおまえでは絶対に勝てない」と、ダイソードは逃げるよう指示するが、それでは学園が潰されてしまう。
王太はあえてダイソードの警告を無視し、ユーリナが操縦するヨゴと共に出撃した。
だが、サン・ジュオウの強さは王太の予想をはるかに越えていた。力、速度、そして魔力の全てにおいて
サン・ジュオウはダイソードを上回る。敵を殺すこと以外、一切の感情を否定しているサン・ジュオウの氷の魂が
ダイソードと王太の炎のごとき魂を凌駕しているのだ。
重傷を負い、意識もうろうとなった王太の前に、ヨゴに乗りこんでいたはずのユーリナがこつ然と姿を現した。
彼女は不思議な力で王太の傷を癒すが、もはやダイソードに反撃の機会は残っておらず
王太の目の前で、サン・ジュオウはダイソードのコクピットをえぐり、ユーリナを掴み出してしまう。



42 名前:轟世剣ダイ・ソード 6 投稿日:04/12/04 01:51:01 ID:???
戦いは、ダイソードと王太の完敗だった。ツボカがシャイニィを使って、海の巨獣を島内に引き込み
サン・ジュオウをかく乱しようとするが、その騒ぎで海水がボビーの坑道に流れ込んで水蒸気爆発を起こし
島全体が崩壊を始める。火山が爆発し、海が渦を巻く天変地異の中で、皆を救ったのはダイソードだった。
彼が全魔力を放出して火山の噴火を抑え込んだのである。一同は、改めて“神の武器”の底知れぬ力に震撼する。
だが九江州中の被害は甚大だった。ダイソードとサン・ジュオウの戦いの一方で
別の敵が校舎を襲撃、校内の女生徒の大半(と、巻き添えを食ったごく一部の男子生徒)をさらっていったのだ。
さらわれた被害者の中には、サン・ジュオウに直接連れ去られたユーリナも含まれていた。
しかし、意外な利益もあった。アナ島の噴火で気流が変わり「黒い嵐」が途切れたのである。
ここで九江州中は決断を迫られる。残った生徒だけで魔導都市を目指し、確実な帰還の道を探すのか
それとも、危険を承知で北国に戻り、攫われた女生徒たちを救出すべきなのか。
千導会長は、残った生徒たちを体育館に集めて決を採る。結果は…ほぼ全員一致で、北国への転進。
マオリ翁とボビー族の協力を得て、地熱を利用した熱気球を造り、九江州中は北国への道を進み始めた。

一方、さらわれた生徒たちは、生贄の補充要員として北国首都に監禁されることになった。
生贄を集めるガバリオーグたちの目的は、この世界を去った“神”から、世界の支配権を受け継ぐ儀式を行い
自分たちが新たな神となること。だが、儀式の完成に腐心するガバリオーグたちに対し、サン・ジュオウは
あくまでダイソードとの完全決着にこだわる姿勢を見せる。
そのころ、ユーリナは他の生贄とは別に、サン・ジュオウの私室に軟禁され、多少の外出すら黙認されていた。
それは、どうやら彼女の不可思議な体質と関係があるらしいのだが…?
【召喚消費1回(VSサン・ジュオウ)  残り召喚回数3】



43 名前:轟世剣ダイ・ソード担当 投稿日:04/12/04 01:58:12 ID:???
ライバルキャラ、サン・ジュオウ登場。召喚回数は半分切ってしまいましたが
ストーリー的にはまだ、全編の3割強というところです。
ちなみに、ガブ・マオリはボビーの同族なので見た目はペンギンそっくりなのですが
彼の奥さんは人間だったそうで、孫のツボカはクォーター・ボビーで外見は人間そのまま
(ただし、ペンギンに変身することが可能)です。…DNAとかは深く考えないように。



49 名前:轟世剣ダイ・ソード 7 投稿日:04/12/05 02:49:24 ID:???
北国を目指す九江州中は、警戒の厳しい海岸線からの上陸を避け
東側にある強風続きの大峡谷「巨人のいびき」を通過するルートを選択した。
だが、難所に差し掛かった九江州中を、新たな“神の武器”、“篭手”のコ・ズー操る召喚獣が襲う。
ヨゴやシャイニィが出撃する中、王太は動かない…いや、動けないでいた。先の戦いにおいて
初の大敗を喫し、さらに学友たちを巻き添えにしかけたことがトラウマになって戦えずにいるのだ。
そんな王太に、激務がたたって病の床についていた千導会長は、自分の胸の内を明かす。
自分も、学校の代表として気負っていた面があったこと、自分の弱さを見とめて、かえって安心したこと。
弱いことは悪いことではない、その範囲の中でやれるだけやればいいという会長の言葉に、王太は力付けられる。
「おれは誰かにそう言ってほしかった。自分のもろさをみとめて…甘えさせてほしかった。
 でも、あなたがそう言ってくれたから…おれはもう負けません!」
意を決してダイソードに乗りこんだ王太に、それまで沈黙を守っていたダイソードが声をかけてくる。
ダイソードは、王太が自力でスランプを乗り越えることを期待し、あえて何も言わず待っていたのだった。
何体もの召喚獣に紛れて、コ・ズーが接近してくる。魔法戦に特化した分、身体能力に劣るコ・ズーは
策を弄し、ダイソードの動きを封じようとする。だが、生徒たちのチームワークによって、辛くもそれは阻まれた。
王太が念じると、ダイソードは宙に舞い上がり、今まで見たことのない変形パターンを見せる。
人間には制御できないとされ、これまで封じられていた第3の型…「飛竜」モードが発動したのだ。
空を舞い、魔力のブレスで攻撃するダイソードに押されたコ・ズーは、召喚獣を盾に逃走を図ったが
ダイソードの渾身の一撃は、召喚獣もろともコ・ズーを貫き、粉砕した。
勝利を得た王太は、残り少ない召喚回数を大事にしたいと考え、このままダイソードを降りずに
進むことを決め、歩き出す。だが、彼は二つのことを見逃していた。
一つは、左右一対で一機であるコ・ズーの右半身が、壊れ切らずに生き延びていたこと、そして
新たな刺客、“刺鉄球(モーニングスター)”のブロンブルが、すでに九江州中の追跡を開始していたことである。



50 名前:轟世剣ダイ・ソード 8 投稿日:04/12/05 02:50:04 ID:???
「巨人のいびき」を抜けた九江州中は、その先にある巨大な洞窟「カラの神殿」へと進む。
マオリ翁いわく、この神殿には、“神の武器”の一機、“聖杯”のタ・カラが眠っているのだと言う。
かつてこの地を訪れたマオリ翁は、この地で得たデータを元にシャイニィを完成させたのだ。
気分転換に、ダイソードのコクピットを見学に来た千導会長と共に、王太は洞窟へ踏みこむ。
王太は、“聖杯”について知っていることはないかダイソードに問うが、なぜかダイソードはその問いをはぐらかす。
らしからぬダイソードの態度に疑問を感じつつも、王太は洞窟を進み、その最奥部…神殿にたどり着いた。
そこには、眠ったように動かぬ“聖杯”タ・カラの機体が、巨大な石像の美女に守られるように安置されていた。
だが、その石像を見た王太は驚愕する。石像の美女は、あまりにもユーリナに似過ぎていた。
「ダイソード…あんた、気が付いていたんだな?どういうことだ?答えてくれ!」
そのとき、地下洞窟を地震が襲う。ダイソードは、それを“刺鉄球”のブロンブルの攻撃と看破した。
地震による混乱の隙を突いて、ダイソードのコクピットを目掛け飛んで来る小さな鉄球…
広域破壊活動に特化しているため、“神の武器”同士の戦いには弱いブロンブルの切り札「自己縮小魔法」。
辛うじて鉄球を受けとめたダイソードの手の中で、鉄球は巨大な“神の武器”の姿に戻る。
「相手の体内に飛び込んでから元に戻り、内側から敵を砕く」という必勝パターンを潰されたブロンブルは
「地震魔法」に力を込め、洞窟を崩して九江州中を生き埋めにしようとし始めた。
校舎を守るため、ダイソードは洞窟の壁を破って外に飛び出し、ブロンブルもろとも崖を落ちていった。
気が付いたとき、王太のそばにはブロンブルも、そしてダイソードの姿もなく、ただ同乗していた
千導会長だけが気を失って倒れていた。
仲間と再会できるのか、そして、ユーリナは本当に“聖杯”…神代からのダイソードの敵のひとりなのか。
不安を抱えつつも、王太と千導会長は北国首都へ向け、ゆっくりと足を踏み出した。
【召喚消費1回(VSコ・ズー、VSブロンブル)  残り召喚回数2】



51 名前:轟世剣ダイ・ソード担当 投稿日:04/12/05 02:56:32 ID:???
今回までのぶんで「コミックコンプ」掲載分は終了。
1994年10月号でコミックコンプが終了したため「ダイ・ソード」は中断され
3ヶ月後に少年キャプテン誌上で「轟世剣ダイ・ソード」として再開されました。



100 名前:轟世剣ダイ・ソード 9 投稿日:04/12/09 22:59:07 ID:???
辺境の小さな隠れ里に、川の上流から流れ着いた巨大な剣。伝説の“神の武器”だというそれを巡って
里は大きく揺れ動き、ついに裏切り者が里の情報を北国の侵略軍に売り渡す。
だが、どこからともなく現れた少年が剣をかざすと、巨大な剣は巨人に姿を変え、北国軍を蹴散らした。
言うまでもなく、巨大な剣は我らがダイソード、そして少年は、千導会長と共に北国首都を目指す王太である。
里を守る盲目の神官シズクは、救援の返礼として、この里が“聖杯”タ・カラを奉る里であることを明かした。
伝承によれば、カラは慈悲深い心を持ち、人々を慈しみ守ったという。
だが、王太は疑問を持つ。カラがそのような存在なら、神代においてダイソードが“神”の非道に怒りを発したとき
なぜカラは、他の“神の武器”とともにダイソードに敵対する道を選んだのか。
その疑問に答える知識はシズクにも無い。神殿の秘儀として、代々の神官の体に文様として記される
“歴史の記録”の解読法を知るのは、20年以上前に北国に拉致された大賢者デクショしかいないのだ。
ただ、カラの残した伝承は、一度はこの世界を去った“神”の再臨と、それに続く災いを予言している。
仲間との合流に加え、“記録”を解読し災いに備えるという新たな目的を得た王太と千導会長は
ダイソードを里に残し(召喚さえすれば距離に関係無く呼べるから)神官シズクと、
その侍女クルリの二人を加え北国首都への旅を再開した。
だが、荒廃した北国領の旅は予想以上に過酷だった。ダイソードの残り召喚回数はたったの一回。
決戦のときまで、この最後の切り札を使うわけにはいかないのだ。
サバイバル能力については大いに不安の残るこのパーティ、野生のモンスターに追われて大ピンチ。
危ないところを、亜人種「ニンジャ族(人間の倍はある巨体と、カタツムリのように突き出た眼球を持つ戦闘種族)」
の男、ウサゾに救われる。彼らは、北国に対抗するレジスタンスであった。
ウサゾの案内を受けて、王太たちはとうとう北国首都へと到達した。



101 名前:轟世剣ダイ・ソード 10 投稿日:04/12/09 22:59:44 ID:???
北国首都を眺望する高台に出た王太たちが見たのは、海から攻め寄せる海辺国ら周辺諸国の同盟軍。
海辺国のジオナス王が、虐げられてきた小国をまとめ上げて北国に反旗を翻したのだ。
だが、彼らの前にはガバリオーグ、サン・ジュオウ、ブロンブルの三機が立ちはだかる。
無造作とも思える“神の武器”の攻撃の前に、同盟軍は一方的にダメージを受けるばかり。
同盟軍を助けたいという思いと、切り札であるダイソードをうかつに使うことは出来ないという計算の板ばさみで悩む
王太の前に、右半身だけが生き残ったコ・ズーが立ちはだかる。
不完全体とは言え“神の武器”に生身でかなうはずも無く、王太はダイソードとの“契約の剣”を奪われてしまった。
動きのとれない王太たちをコ・ズーがなぶり殺しにしようとしたとき、突如轟音と共に巨大な何かが
コ・ズーに激突する。ようやくたどり着いた九江州中が、王太たちの援護に入ったのだ。
シズクを人質にして逃げようとするコ・ズー。王太はそれを見て、ユーリナをさらわれた時の苦い記憶を思い出す。
そのとき、王太を中心に巨大な炎の嵐が巻き起こった。王太の執念が、魔法を発動させたのだ。
もとより、ダイソードと契約できた王太に魔法の資質が無いわけはない。だが、この世界で最初に得た魔法が
「ダイソード召喚」というあまりに大き過ぎる力だったために、彼は無意識に魔法を避けていたのだ。
だが、仲間を守りたいという強い意思が、自己に対する不安を上回った今、王太の力は爆発的に上昇した。
思わぬ王太の抵抗と、九江州中から出撃してきたヨゴ、シャイニィの二機に追い詰められるコ・ズー。
体が半分になった彼は、呪文のデータも頭の中で半分になっているため、呪文が読み出せないのだ!
人質を奪回され慌てたコ・ズーは、ブロンブルから習ったばかりの「自己縮小魔法」で逃げを打つも
今度は地上で待ち構えていた十勝たち不良グループに袋叩きにされる。
そこへ飛び込んで来たのは、山向こうの海岸で戦っていたはずのブロンブル。コ・ズーを抱え上げたブロンブルは
「愛しいコ・ズーの仇はわしがきっと取るぞ!」と爆弾発言を残して去っていった。
無事合流を果たしたものの、契約の剣は北国側に奪われてしまった。九江州中の次なる策やいかに?
【召喚消費1回(カラの隠れ里防衛戦)  残り召喚回数1】



102 名前:轟世剣ダイ・ソード担当 投稿日:04/12/09 23:04:05 ID:???
召喚回数は残り1回まで追い詰められてますが、実はページ総量で言えば
やっと半分折り返し、という当りだったりします。
ところで、“刺鉄球”のブロンブルですが、絵がないので分からなくて当然ですが
胸と尻が強調された土偶そっくりの外見デザインで、実は人格も女性格だったりします。



127 名前:轟世剣ダイ・ソード 11 投稿日:04/12/13 02:47:16 ID:???
決戦のときが近い。王太、千導会長、シズクを含む精鋭部隊は、旅芸人の一座に扮して北国王都に入る。
当然、すぐにスパイ容疑で捕えられ、魔法封じの施された牢に閉じ込められるが
電気製品や化学薬品が主武装の彼らには無意味。無線機を置いて牢内に拠点を築く。
一方、学校では、これまで集められた古文書の解析が進む。
ダイソードを除く7機の“神の武器”に収められた“鍵”と乙女の生贄によって築かれる“台座”を
合わせる儀式によって、新たな神となる権利が得られる…古文書はそう語る。
だが、その記述は、神の再臨を警告するカラの伝承と矛盾する。そこから導かれる一つの結論。
ガバリオーグたちの目論む「儀式」こそが、神の再臨を実現するものではないか。
ならば「儀式」の成就は、世界の破滅を意味する。
そのころ、さらわれたクラスメート、そして大賢者の所在を求めて王城の地下に潜った王太とシズクは
女生徒の巻き添えでさらわれていたクラスメートの金子に再会。
彼の説明で、神殿に安置されていた“聖杯”カラの機体がすでに王城に運び込まれ、魔力を引き出す研究が
進められていること、また女生徒たちが地下の一角に閉じ込められていることが分かる。
金子の案内により、女生徒たちにはすぐに会うことが出来た。別の部屋にいたユーリナも、王太が来たのに気付いて
姿を現すが、自分とカラの関連性を尋ねられたユーリナは、何も知らないと言った風情で困惑するばかり。
そのとき、とつぜん転移魔法が発動し、王太、ユーリナ、シズクの三人は地下牢の最深部に引き込まれる。
そこにいたのは、大きな棺に封印された大賢者デクショだった。この地にカラゆかりの二人の娘が
集まることになると予測していた大賢者は、あえて捕まったままここで彼女たちを待っていたのだ。
この世界に対して異邦人である王太に、世界の命運を背負う覚悟があるのか問うた上で、デクショは
シズクの“記録”の読み解き方を示す。指示通りにユーリナとシズクが向かい合うと、二人の体が共鳴し始め
二人と、間に立っていた王太は、記録された歴史を“見て”いる自分に気付く。
“記録”の正体は、カラの“記憶”そのもの。王太はこの“記憶”の中で、ダイソードの主観を通して
歴史を実体験することになる…。



128 名前:轟世剣ダイ・ソード 12 投稿日:04/12/13 02:47:48 ID:???
まだ“神”がこの世界に君臨していた時代。7機の“神の武器”は、地に破壊と混乱を撒く、ただそれだけのために
あるときは人間の町を襲い、またあるときは“武器”同士の戦いを繰り返していた。
“神”の命ずるまま、ただ淡々と破壊を繰り返していたダイソードは、ある日、一人の人間の戦士に出会った。
“冬の鳥”と名乗るその戦士に、わずかながら手傷を負わされたダイソードは、彼に興味を持つ。
彼の隠れ里に招かれたダイソードは、そこで思いがけず“聖杯”タ・カラと遭遇した。
治癒と復活の力を持つ故に、闘志ではなく慈悲心を抱いていたカラは、この里の人間たちを結界で守り
平和な暮らしを営めるように取り計らっていたのだ。
ダイソードは、自分に“勝った”冬の鳥の強さの秘訣を求め、たびたびこの地を訪れるうちに
今まで空しいだけと思っていた世界や人間の営みに、深い関心を抱くようになっていた。
だが、ある日隠れ里を訪れたダイソードが見たのは、焼き尽くされ、死に絶えた里の姿。
ド・ライアムとガバリオーグの姦策によって、里の裏切り者が内側から結界を砕いてしまった結果だった。
ダイソードの中で息絶え、炎に焼け崩れていく冬の鳥を見て、激しい怒りに襲われたダイソードは
ガバリオーグたちを殴り倒し、そのまま天に翔け昇って“神”を呼ぶ。
彼の呼び声に応え、“神”…“始めに立ちし者”が、その禍々しい姿を現した。
なぜ人間のささやかな生活をかき乱すのか、と問うダイソードに、全ては私が定めた世界なのだから
決定権は私にある、私以外の者が何かを築き上げることは許さない、と言いきる“神”。
その傲慢に怒り、“神”に刃を向けたダイソードの前に、他の“武器”たちが立ちはだかる。
最初にダイソードの前に立ったのは、意外にもカラであった。復活の力を本能レベルで持つ彼女は
“神”の意志に逆らって復活の力を止めることが出来ない。このままでは、“神の武器”は倒される端から復活し
永遠に戦いが続く。それを悟ったカラは、ダイソードの手で破壊されることを選んだのだった。
自らカラを手にかけ、狂乱のうちに戦いつづけるダイソード。気が付くと、すでに他の“武器”は全て倒れていた。
それを見た“神”は、たった今完成した新たな“武器”を掲げる。…すなわち“刀”サン・ジュオウ。



129 名前:轟世剣ダイ・ソード 13 投稿日:04/12/13 02:48:20 ID:???
“神”とダイソードの間に立ちはだかるサン・ジュオウ。だが、ダイソードを驚かせたのは
サン・ジュオウの内にある魂が“冬の鳥”のものであったこと。村の壊滅がダイソードの手引きによるものと
誤解したまま死んだ彼を、“神”は冷酷なる復讐の剣士として拾い上げたのだ。
カラという犠牲を払ったが故に、止まることも出来ずサン・ジュオウと戦うダイソード。だが、一瞬の交錯の後
敗れたのはダイソードだった。その体をサン・ジュオウの刃に貫かれながら、それでもダイソードは戦おうとする。
ダイソード最後の一撃で、サン・ジュオウも“神”の体も吹き飛んだが、“神”は滅んではいなかった。
“神”はこの世界をしばし離れると宣言し、ダイソードに「300年ごとに人間の下僕となる」呪いを課す。
人間のために戦ったダイソードに、人間のおろかさを見せつけるための手段として。
一方、破壊された他の“神の武器”は、あちこちの大地に埋められ、自然回復を待つことになった。
元より復活をつかさどるカラは、そのなかでも最も早く回復したが、自分の力を戦いに利用されることを嫌い
自分を三つに分割した。すなわち「体」と、人間の素朴な生き方に憧れる「心」の化身、純精神体の「ユーリナ」
そして、神の再臨を警告する「記憶」の化身、記憶を記す土台として肉体を持つ「シズク」。
彼女たちは、カラとしての記憶を封じられながらも、“記憶”の読み解かれるときを待ちつづけていたのだ…

王太たちは、大賢者デクショによって皆の待つ牢へと戻された。
夜明けが…開戦のときが来る。「儀式」の時間が近付いている今、遅延は許されない。
王太は北国王城の奥に安置された、ダイソードの契約の剣の元へ向かう。そこにはガバリオーグが待ち構えていた。
王太が剣を手にする前に叩き潰そうとするガバリオーグ。だがその目論見は外れていた。
完全無欠と思っていたダイソードが、どれほどの苦しみを乞えて今に至ったのか、それを理解した今は
王太はただ念じるだけで、ダイソードを呼ぶことが出来た。ガバリオーグの待ち伏せを知った上でここに来たのは
ただ、敵陣のど真ん中にダイソードを召喚するため。ついに、決戦のときが来た!
【召喚消費1回(最終決戦開始)  残り召喚回数…ゼロ!】



130 名前:轟世剣ダイ・ソード担当 投稿日:04/12/13 02:55:39 ID:???
多数の伏線が回収された過去編。北国との決戦開始も含めて
これで全編の七割強といったところです。
ちなみにクラスメートの金子(粗筋では触れてませんでしたが、これまでもちょくちょく出てました)は
「クロノアイズ」にも同じ顔と名前で出演しています。
「ダイソード」と「クロノアイズ」の金子が同一人物…というネタをふくらませたのが
長谷川先生の同人誌「大外伝」です。



150 名前:轟世剣ダイ・ソード 14 投稿日:04/12/18 12:39:58 ID:???
北国王城に降り立ったダイソードの前に、奇怪な蔦が姿を現した。地下牢の生贄を巻き込んだそれは
絡み合い、巨大な肉の柱となる。「儀式」の要、「血肉の台座」。ガバリオーグは台座の完成を誇るが
ユーリナ=カラはその本質を看破する。あれこそ再臨する“神”の依代、神の肉体なのだ。
儀式を阻止せんとするダイソードを遮るガバリオーグ、ブロンブル、そしてコ・ズー。ただサン・ジュオウ1機は
ダイソードと一対一の決闘を望み──ダイソードが三機を片付けて自分と決闘するのは決定事項だと言わんばかりに
──座したまま動かない。
だが、ガバリオーグたちも切り札を得ていた。“聖杯”の機体から直接引き出された復活の力によって
彼らの体は傷付く端から修復されてしまう。このまま持久戦に持ちこみ、人間である王太の消耗を待つ構えだ。
ここに至り、ユーリナとシズクはカラを目覚めさせることにした。そうしなければ復活の力は止められない。
それが、「ユーリナ」「シズク」個々の人格の消滅を意味することを承知で、二人は融合し、カラに還る。
その際、シズクはあるものを千導会長に託した。彼女に与えられていた肉体の正体…「カラの鍵」。
「鍵」が“神”の信奉者の手に渡るのを防ぐため、また“記憶”を記すための素体として、
カラは鍵を巫女の肉体に変え隠していたのだ。
ガバリオーグたちの真意が、ダイソードを責めることで鍵を持つカラをおびき出すことにあると気付き
彼女は、鍵を千導会長に託したのである。
かくして“聖杯”タ・カラは立ち上がった。神代とは違い、ダイソードと共に在り戦うために。
その姿に対抗心を燃やしたコ・ズーが、その場でブロンブルに自分の想いを告白。バカップルぶりを見せ付ける。
リーダーのはずのガバリオーグの影は今やめちゃくちゃ薄いのだがそれはどうでもよくて。
コ・ズーが最大魔力解放の呪文を唱え、状況に気付いたヨゴは九江州中を守る全力防御の姿勢に入る。
そして、比喩抜きで天地を揺るがす爆発の中、2機と3機のシルエットが交錯する。──一瞬の沈黙。
そして次の瞬間、ダイソードが立ちあがって大きく胸を張ると同時に、ガバリオーグたち3機は粉みじんに吹き飛んだ。
ダイソードの勝利。…だが、それを見たサン・ジュオウがゆっくりと立ちあがる。



151 名前:轟世剣ダイ・ソード 15 投稿日:04/12/18 12:40:30 ID:???
北国の半分が消し飛ぶほどの爪痕を残しつつ、戦いはまだ終わらない。
サン・ジュオウはガバリオーグの残した鍵を取ると、カラの鍵と共に隠れていた千導会長を引きずり出し
彼女を人質に取ると、7つ揃った鍵を起動させる。宙に放たれた鍵が台座の頂に達したとき、“神”が降臨するのだ。
世界の破滅すら、サン・ジュオウには復讐の手段でしかない。
あるときは武器に、あるときは2頭の龍に、変形しながらぶつかり合うダイソードとサン・ジュオウ。
その激しさは先刻の爆発に勝るとも劣らない。だが、復讐というモチベーションを持つサン・ジュオウがやはり押している。
そして、組み合いの中で人質の千導会長を突き付けられ、一瞬動きの止まったダイ・ソードに
サン・ジュオウの居合が炸裂し、その一撃はコクピットの王太に達してしまう。皆が見守る中で
地に伏したダイソードの体がゆっくりと「鎖に縛られた剣」の姿に戻っていく。乗り手たる王太が倒れたことで
7回目の…最後の召喚が終わってしまったのだ。
サン・ジュオウがダイソードを破壊して止めを刺そうとしたそのとき、九江州中が動き出した。
ささやかな装備、“神の武器”にとても勝てるとは思えぬ武器で、生徒たちがサン・ジュオウに向かっていく。
その頃、王太の元にカラの心の呼びかけが届いていた。カラは、自分の内にまだ分離している「ユーリナ」を切り離し
王太の治療に当たらせると宣言する。…だが、魂を再び半分に分ければ、“神”に逆らって力を止めることは出来ない。
また、神代のように、ダイソードに自分を討たせる業をもう一度背負わせるわけにもいかない。
ゆえに、カラ=シズクは、自らの意志と信念に従い、自爆して果てた。
自爆したカラの爆炎の中で、立ちあがる影がある。カラの支援と、復活した王太の意志の力を受けて
ふたたび立ったダイソード。意志の力が“神”の呪いを越え、ありえざる8度目の召喚を成し遂げたのだ。
呪いの激痛に耐えながらサン・ジュオウに向き合うダイソード。しかし、不利なはずのこの状況において
ダイソードはサン・ジュオウに拮抗し、王太は千導会長を取り戻す。愕然とするサン・ジュオウの体を
ダイソードの拳が、蹴りが、2度、3度と捉え、吹き飛ばされたサン・ジュオウは地に横たわる。
ついに、ダイソードはサン・ジュオウに勝利したのだ。



152 名前:轟世剣ダイ・ソード 16 投稿日:04/12/18 12:41:04 ID:???
敗北したサン・ジュオウは、かつて隠れ里を壊滅させた密告者が、ダイソードではないと知っていたことを告白する。
仲間内から裏切り者を出したという事実に耐えられず、部外者であるダイソードを憎むことで心の平穏を保とうとし
ついには神の走狗と化してしまった…それが、サン・ジュオウの弱さ。どたんばで一致団結した九江州中の姿が
サン・ジュオウの氷の心を打ち砕いたのである。
だが、戦うべき相手はまだ残っていた。“鍵”は今まさに“台座”に達しようとしている。
「償いに…言葉は用いぬ!」立ち上がったサン・ジュオウとダイソードの前で、“台座”は大きく膨れ上がり
世界の創造者にして破壊者を名乗る“神”…“始めに立ちし者”がついにその威容を現した。
出現するなり、まず世界全ての命を回収し、世界を自分好みに作り直すと宣言する“神”。
その体から発せられる稲妻に当たったものは、命を吸い取られて石と化していく。
ダイソードは、サン・ジュオウと共に“神”に立ち向かうが、未だ解けてはいない“神”の呪いがダイソードをさいなむ。
“王太よ…かつてサン・ジュオウが人であったように、私も人間だったことがあると思うか?”
「ああ、あんたは人間だ、人間だったはずだ。あんたはおれが知ってる誰よりも人間らしいもの!」
“そうか…ならばできるはずだ。
“神の武器”には無理でも、人間になら…与えられた戒めを解くことが、できる!!”
その言葉と共に、ダイソードは“神”の呪いの象徴、両手に穿たれた鎖をつかみ、おのれの腕もろとも引き抜いた。
だが、呪いを逃れたのと引き換えに、もはや自分に戦うだけの力が残っていないことも
ダイソードは気付いていた。その事実を王太に隠しながら、ダイソードは最後の攻撃を放つ。
“王太…全てをおまえに託す。どんなことがあっても、決してくじけるんじゃないぞ”
ダイソードとサン・ジュオウの最後の一太刀と、神の一撃が激突。その中で、すでに満身創痍となっていた
ダイソードは、頭部を粉々に砕かれ崩壊していった。
気がついたとき、王太たちは“神”によって荒野となった北国首都あとにいた。彼に残されたのは
大破して動かないダイソードとサン・ジュオウの機体。そして、ダイソードとの契約の剣は
中ほどからぽっきりと折れてしまっていた。



153 名前:轟世剣ダイ・ソード担当 投稿日:04/12/18 12:45:53 ID:???
ラスボス“始めに立ちし者”登場。ここ以降のストーリーは
当時、誌上連載を終了した後、最終巻書き下ろしというかたちで発表されました。



161 名前:轟世剣ダイ・ソード 17 投稿日:04/12/20 02:46:18 ID:???
友であり師でもあったダイソードを失い、子供のように泣き崩れる王太を叱咤したのは、大賢者デクショだった。
大賢者は戦いのどさくさで地下を脱出、さらにカラの魔力の余波を受け若返っていた。…若返り過ぎて幼女化していたが。
(ここで、デクショが女性であること、そして彼女がガブ・マオリ翁の妻であるという衝撃の事実が明かされる)
彼女のアドバイスにより、九江州中は南へ転進、本来の目的地だった魔導都市テルテ・ウイタスに向かう。
すでに旅を妨害するものも無く、一行は魔導都市にたどり着く。だが、都市の住人はみな石化していた。
“神”に先回りされかと心配するが、都市に残されていた伝言により、生贄にされぬよう自発的に石化したと分かる。
魔導都市の賢者たちは、“神”の再臨を予想しており、“神”の性質や対応策も研究されていた。
その対応策の一つが、ダイソードを分析し、量産する計画。…そう、都市の一角には、“神の武器”を複数体
搬入することも可能なほど巨大な鍛冶場が用意されていた。
名工マオリと賢者デクショ、ヨゴとシャイニィ、そして九江州中全生徒の力を合わせ、大破したダイソードを
サン・ジュオウの残骸を利用して修復する計画が立てられる。言わば、史上最大の刀鍛冶。
ユーリナが、カラ・レプリカであるシャイニィの機体を介して復活の力を使い、生徒たちが細部を修復する。
一方で、王太は小さな鍛冶場にひとり篭り、折れてしまった契約の剣を…その中で眠っているダイソードの魂を
再起させるための修復作業に挑む。それは、この世界に来てから彼がダイソードに導かれ、たどって来た
心の成長を見つめなおす作業でもあった。
決戦を前に、千導会長は「生徒全員をわざと“神”に取りこませる」作戦を立案する。これまでのデータから
彼女は、異世界人である自分たちの命は“神”にとって異物であり、吸収できないのではとの仮説を得ていた。
大量の異物を“神”に押し込めば“神”は消化不良を起こし、あわよくば弱点を剥き出しにするかもしれない。
そのとき、突如として大地が揺らぐ。“神”が、この魔導都市を目掛けて降臨してきたのだ。
だが、それはすなわち、“神”に抗しうる唯一の力──ダイソードの復活が成ったことを証明する
勝利の合図でもあった。



162 名前:轟世剣ダイ・ソード 18 投稿日:04/12/20 02:46:56 ID:???
大鍛冶場で、復活したダイソードと王太は向かい合っていた。もはや神の呪いも無く、完全体のダイソード。
だが、彼はその上で、王太に「共に戦ってほしい」と申し入れる。王太がそれを断るはずは無かった。
九江州中に乗ったダイソードが“神”に突撃する。左手には盾たるヨゴを、右手にはサン・ジュオウの残りパーツから
削り出された刀を持ち、“神”のけしかける、量産型“神の武器”の群れを蹴散らして進んでいく。
サン・ジュオウの刀の一撃に、思いがけずひるんだ“神”の胸元に、九江州中校舎が全校生徒と共に飛び込んだ。
異世界人の生命を吸収できず、もだえ苦しみながら、なおも“神”は暴れ狂う。
ダイソードは“神”の周囲を縦横に駆け巡り、何度も“神”に斬りつけるが、“神”がダメージを受ける様子は無い。
そのとき、王太の頭にふとあるイメージが浮かぶ。生贄による仮初の体を持ち、生命そのものを食らう“神”とは
それ自体が純粋な精神体なのだ。肉体のどこを斬るかは無意味であり、ただその精神に対して
こちらの心を…魂の一撃を叩きつけるしかない。王太は、魔法を使う要領で深い瞑想に入り“神”の姿を追う。
王太の心に、“神”の魂が“見え”た瞬間、ダイソードは攻撃の姿勢に入る。
巨大な剣の型になり、“神”に挑むダイソードと、“神”に向けて剣を振り下ろす
王太のイメージが完全に重なったとき“神”は真っ二つに両断され、悲鳴を上げる。
自らを至高の超越者と信じていた“神”が敗れたのだ。
自分が致命傷を受けたのが信じられない、という風情でなおも食い下がろうとする“神”を、ダイソードの右手が持つ
サン・ジュオウの刀が横薙ぎに薙ぎ払う。“神”は散り散りになり、後には九江州中生徒たちと、生贄として
取りこまれていた乙女たち、そして“神”がこれまで取りこんでいた命の光が放出されていく。
この世界は、永きに渡る“神”の支配から、完全に解放されたのだ。



163 名前:轟世剣ダイ・ソード 19 投稿日:04/12/20 02:48:00 ID:???
戦いの後、九江州中生徒たちは英雄として称えられ、元の世界への帰還も賢者たちによって確約される。
幾人かの生徒が、帰らずにこの世界に留まることを選ぶ中、王太にも一つの別れが訪れた。
ユーリナは、“神”が死んだ後、行き場を失ってさまよう命のために、この世界そのものと一体化し
命の導き手となることを選択したのだ。今、それが出来るのは“聖杯”の生き残りである自分しかいないから。
王太の腕の中で、ユーリナは一度だけ王太にキスし──そして、舞い散る花のように消え失せた。
一夜開けて、帰還の用意が始まる。王太は、最後にダイソードに会って、元の世界に帰還する自分の意思を伝えた。
「ここにいてもいいのかもしれない──とも思うんだ。
だけど、うまく言えないんだけど、今は前に進まなくちゃいけない、
 ここへ残るのは進むことじゃないんだって、そんな気がするんだ。じゃあな、ダイソード!」
“───王太よ、私はお前を誇りに思うぞ”

そして冒険の旅は終わり、学園は再びこの世界へ舞い下りた。消えてしまった者たち、砕けた校舎、
やがて明日から浴びせられるであろう幾多の質問に、答える彼らの物語は、誰一人として信じようとはしないだろう。
だが、その体に刻まれた傷に、胸にしまった思い出に──彼らの冒険は色あせることなく
生き続けてゆくことだろう────。


ちなみに、このあと王太はもう一度だけ、それもこちらの世界でダイソードに再会することになる。
だが、それはまた別の物語。またいつか語ることもあるだろう。



164 名前:轟世剣ダイ・ソード担当 投稿日:04/12/20 02:55:55 ID:???
「轟世剣ダイ・ソード」全46話、これにて完結。
角川のコミックコンプ誌で単行本2巻まで出た後、掲載誌休刊に伴い
徳間の少年キャプテン誌で仕切り直しで全7巻完結(最終巻は書き下ろし)。
いずれも絶版となり、長く入手困難となっていましたが、03年末から04年初頭にかけて
講談社漫画文庫より全4巻で復刊。入手は極めてe易となりました。
粗筋で興味を持ったらぜひ本作品を読んでいただきたい、とはいつも紹介のたびに言っていますが
この作品は特に「変形メカアクション」なので、文章では伝えられないものが多過ぎます。
ぜひ実際に読んでいただきたい。