鈴木先生

Last-modified: 2013-01-02 (水) 00:50:59

鈴木先生/武富 健治

52 名前:鈴木先生[sage] 投稿日:2007/05/28(月) 13:31:47 ID:???
第一話「げりみそ」前編


中学校教師の鈴木は受け持ちクラスの男子生徒、出水の問題行動に悩んでいた。
彼はこの数日給食中に「げりみそ」など汚い言葉を吐き続け、周りの生徒たちを不快にさせていた。
そのことで対面の席に座る女子生徒、中村は激昂、終いには泣き出す始末。
鈴木は出水を呼び出し理由を聞くが、「見ていれば分かる」「本当はわかってるくせに」と言うだけ。
3日間は静かに食事をとることを出水と約束し、その間に問題行動の理由を探ろうとする。


学者の親に礼儀正しく躾られ、その反動での行為なのか・・・
相談した前担任教師はそう言うが、鈴木には腑に落ちない。
考えてみれば問題行動が始まったのは中村が出水の対面の席になってからだ。
問題行動が起きる前の、席替え以前には女子生徒、小川が出水の対面に座っていた。
そこで鈴木は小川、中村、出水、3人の食事中の行動を比較することにする。



53 名前:鈴木先生[sage] 投稿日:2007/05/28(月) 13:33:18 ID:???
第ニ話「げりみそ」後編


鈴木は小川、出水と中村の違いに気付く。
小川を呼び出し心当たりを聞くと、鈴木の察した通り「左手を添えて食事をする」ことであった。
小川は言う。自分の知るマナーに関してはうるさく言う中村だから出水の怒りを買ったのではないかと。
鈴木は思い出す。
大学時代のガールフレンドに同様の事を注意し心が狭いと周囲から言われるようになった事、
今の彼女が食事中に左手を添えないことに何も言わないでいる事を。


鈴木は出水本人から、直接注意して心が狭いなどと言われる事が嫌だった、
本当に心が狭いだけなのかもしれないのに注意なんか出来なかったと問題行動の理由を聞き、
以後問題を起こさないことを約束する。


翌週呼び出した出水の両親にこの問題についてクラスで話し合いをすべきかを問うが
出水の父は一教育者として、討論が最良の選択ではないこと、教育は折に触れてなすべきことを語る。
鈴木は話し合いを止め、事情説明のみを行うことを選択する。


後日、一連の問題を相談していた彼女との食事中に鈴木は気付く。
彼女が自然に左手を添えて食事をするようになったことに。


鈴木はこの個人的な恩を折に触れて教室で返していこうと決意する。