- 「大改変以降、リーフは居心地が悪くなった。そして、知らない間にこの岸辺に来ていた」——反抗的なコルセア隊員、エロール・メイズ
- 「これはただの土じゃない。ケレスの一部が粉々になって粉末状になったものの上に立ってるんだ」——コルセア隊員、アンザーニ・ライル
- 「ずっと前はウルブズだった。大改変の後もウルブズだったが... 前とは違っていた。そして、女王のものになった。またウルブズになった。旗を失った。そして、スパイダーのものになった」——アヴロック
- 「アウォークンの領域はもう何年も縮小し続けている。入り組んだ岸辺は最初にアウォークンの手を離れた場所というだけだ」——スパイダー
- 「なくした物は入り組んだ岸辺に行き着くんだ」——スパイダー
「大改変以降、リーフは居心地が悪くなった。そして、知らない間にこの岸辺に来ていた」——反抗的なコルセア隊員、エロール・メイズ
I:
「アーラ、他には何がある?」
「はい、スパイダー」アーラはエリクスニー語で答える。「ミスラックスに、人間がタイ・タンと呼ぶ球体について聞きました。都市が浮かぶ水の星だと。カバル大戦以前は、人間が訪れることはほとんどなかった」
「つまらない話だな」
「タイ・タンにはまだ宝が残されています、スパイダー。それが手に入りそうなのです! ガーディアン・スロアンがそれを無人船に載せてテラに運んでいます。防衛手段はクローキングのみ。しかしクローキングではウェブを防げません。うまく配置さえすれば」
「なるほど」スパイダーは顎を掻いた。
「よくやった、アーラ。さっそく漁をしてこい」
「リョー…?」
スパイダーはわざとらしくため息をつく。
「船を捕えろと言ってるんだ」
「はい、スパイダー。捕まえます」
スパイダーの部屋を出たアーラは、苛ついた唸り声を上げた。「船を捕えろだ、アーラ。何故分からなかった…」
「これはただの土じゃない。ケレスの一部が粉々になって粉末状になったものの上に立ってるんだ」——コルセア隊員、アンザーニ・ライル
II:
スパイダーは玉座から身を乗り出し、アーラが持ってきた物を伺い見る。「何を絡め取ってきた?」
戦利品のほとんどは黄金時代の天文学器材だった。宇宙空間スキャナー、銀河内の環境都市、小惑星、スペースステーションの詳細な地図(銀河外のものもあった)。
大嵐後の先祖の旅の話を聞いて育ったアーラでも、この中のほとんどの場所について聞いたことがなかった。とても貴重なものばかりだ。
しかしスパイダーは興味を示さない。
「多分… 買い手がつくだろうな」と言いながらつまらなそうに手を振る。「アウォークンはこんなガラクタには用がない。地球のシティの連中なら食いつくかもな」スパイダーは歯を鳴らす。「残念だ、アーラ。実に残念だ」
「スパイダー…」
「船体のログの方はもう少しマシだろうな。持ってきてるな?」
「はい、スパイダー」アーラは頭を下げて失望を隠しながら、スパイダーにデータパッドを渡す。
スパイダーは目を3つ瞑りながらデータパッドをスクロールする。しかし一番下までスクロールすると、全ての目が開いた。「スロアンによると、グリーンダブ環境都市で盗みを働いてる謎の集団がいるらしいぞ」
アーラは少しむくれながら「私は新太平洋環境都市から盗んでるんですよ」と答える。
スパイダーは彼を無視する。
「アーラ、しばらくウェブはブリヴィに任せろ。盗賊の正体を調査してくれ」
「はい、スパイダー」
「ずっと前はウルブズだった。大改変の後もウルブズだったが... 前とは違っていた。そして、女王のものになった。またウルブズになった。旗を失った。そして、スパイダーのものになった」——アヴロック
III:
「来い、我が新しい友よ」とスパイダーが促す。
「話をしようじゃないか。そのローブは誇り高きデッドオービットのものだな。グリーンダブ環境都市から帰る途中で招かれてくれたんだろう?」
「お前がその腕で捕まえたんだろう!」
「ここに、お前の船の積荷目録がある」スパイダーは手に持ったデータパッドを揺らす。
「うっかりしていたな、盗人め」
「暗号化されたはずだ」
「もう違う」
スパイダーはジスレインを見つめる。彼の4つの目は1つずつ閉じたり開いたりしている。
彼は姿勢を正し、「すまない、初対面の相手にあまりにも失礼だったな。衛星タイタンへの旅路を急いでくれ、友よ。新太平洋環境都市で回収したアーミラリもやろう」
「回収?」
かつてペトラが立っていた部屋の角でアーラがいじけている。
スパイダーはニヤリと笑う。
「その代わりに、積荷の中に譲ってほしいものがある。大したものじゃない、新しい友情の記念品にしたいんだ。そうだな… 89番なんかどうだ?」
「目録は71番までだ」とジスレイン。
「嘘をついても無駄だ」
「本当だ。船を見てみろ。他のデッドオービットの目録を掠め取ったんだろう」
「ほう」
この人間には仕草の意味が分からないだろうとは思いつつも、スパイダーは口元を鳴らして苛立ちを表に出さないようにこらえる。「じゃあこの…」まるで何が書かれているか忘れたかのようにデータパッドに視線を落とす。「村の上に8つの月が出ている絵は、デッドオービットの仲間とともに地球にあるというのか?」
「私みたいな目に遭ってなければ、そうだ」
「そうか」
スパイダーはアーラに合図を出す。「彼女を送り出して来い。彼女も船も、無事にな」
「アウォークンの領域はもう何年も縮小し続けている。入り組んだ岸辺は最初にアウォークンの手を離れた場所というだけだ」——スパイダー
IV:
デッドオービットの中にいるスパイダーの工作員であるハウという名の男は、雇い主から直接連絡されることを極端に恐れているようだった。
スパイダーは本命のお宝を武器と弾薬の長いリストに埋もれさせていたが、ハウはそれを特定していた。
「ダブ15の積荷目録89番ですか?」
「ハッキリと言っただろう」
「ですがあれは… とても古いものです。黄金時代以前のものでしょう。リンデは、移動美術展の一部だったんじゃないかと言ってます」
「お前はとっくに知っていることしか言わんな」
「ですが… なぜそれが欲しいのです?」
この一言さえなければスパイダーはこの男を生かしておいたかもしれない。
気の毒なことだ。
「お前が知っておくべきことは、俺がそれにいくら払うかということだけだ」
「分かりました」ハウは疑わしげに言った。「100時間ください」
「40時間だ」
スパイダーは通信を切り、それを記録から消し去る作業を始めた。
「なくした物は入り組んだ岸辺に行き着くんだ」——スパイダー
V:
スパイダーが絵画から目を反らした頃には、ハウの身体は冷たくなっていた。
「美しい。実に美しい。トラベラーやら、そういったくだらんものに頼らずに作られたとは」
彼は下の腕でアーラに合図をした。残りの3本は絵を抱えている。
「片付けてくれ」
アーラは礼をすると、ハウの死体を引きずりながら部屋を出た。扉が激しく音を立てて閉まった。
スパイダーは立ち上がり、顔を自分の玉座に向けた。
彼は歌った。『茉莉花』、古代の地球の歌だ。最初の1節が終わると玉座は見えなくなり、下に向かう石の階段が現れた。
スパイダーは降りて行く。
下の部屋は涼しく、乾燥していた。壁に沿って棚が並んでいる。展示ケースの一つには金と銀、枝角、ベルベットで作られた王冠が収められている。その隣のケースは怪物と英雄が描かれた赤色粘土の陶器で溢れている。
スパイダーは美しく彩飾された本や巻物が詰まったケースを通り過ぎた。彼はほとんどが絵画で覆われている壁にたどり着いた。
2つの滝の上にある牛の頭蓋骨の絵と純情そうな微笑みを浮かべた人間の肖像画の間に獲物をかけた。
「星降る夜」だ。