皇帝の手先

Last-modified: 2021-05-13 (木) 22:02:49

1.

次に会う時は。

お前と再会する時のことをよく考える。お前がどんな姿をしているのか、何を言うのか。どんな出会いになるのか、いくつもパターンを考えている。お前が角を曲がり、高貴で堂々としたワシを見つける場面でな。ワシは最初、お前に気づかず、お前は躊躇う。これがお前が望んでいた戦いなのか?
もちろん、お前は好奇心を抑えられず、ワシと目が合う。どちらも無言で見つめ合う。事の重大さを分かっているからだ。これが帝国の最後になる可能性があるからだ。

2.

「シンドゥは外科医が手術をするように正確に飛ぶ。中でも『誇り高きエース』は最高だ。たった1人だけがワシの影となった」――カルス皇帝

カルス皇帝は仰々しく腕を上げた。「ワシの星よ、贈り物を授けよう」。舞台の幕開けだ。
ハンガーの扉がゆっくりと開くと、その後ろにある紫色の旗の列が、1つずつ次々と垂れ下がっていった。旗が1つずつピシッとその姿を露にしていく中、1体のサイオンが跪き、頭を深く下げた。
皇帝がジャルスの肩に手を回した。「さあ、見に行こうか」。2人は跪く戦士達の横を通り過ぎた。「お前のために名前を付けておいた」とカルスは優しく言った。「『神の意志』という名前だ」
ジャルスの胸は高鳴った。船は美しかった。太鼓が鳴り響いた。カバルが現れ、まるで壊れやすいものを扱うかのように慎重にアーマーを運び、それをジャルスの足元に1つずつ置いていった。
肩の荷が下りた。「これはお前のものだ。これを受け入れよ。そして、ワシのものになれ」。そして、カルスは去って行った。行列がその後に続いた。神の意志とジャルスだけがそこに残った。

3.

お前は、ワシがお前を取り囲んでいることに気づいていない。

お前がソル星系に行ったのは知っている。ワシがこうして手紙を書いているのは、ワシもまもなく到着するからだ。是非、再会したいものだ。
ワシの兵が、ワシの到着準備をするために一足先に旅立った。その星系に住む物達といい関係を築きたい。そう聞いて驚くかもしれないが、これはワシが学んだことの1つだ。自分より下等な生物への振る舞い方。ワシの帝国には、どんな生物にも居場所があると考えるようになった。終焉でさえも、共に迎えれば楽しいと思えるだろう。

4.

お前は見つけにくいやつだ。

お前は自分の動きを隠すために多大な努力をしている。お前をずっと追跡しているから分かるのだ。いやいや、お前に執着しているのではない。ただ何をしているのか知っておく必要があるのだ。ワシの計画に影響が出ないように。
だが、聞かせてほしい。お前はワシから隠れているのか? ワシに見られたくない理由でもあるのか? 別に怒っているのではない。だが、ワシはお前から隠れていないことは知っておいてほしい。ワシのやっていることを理解したいなら、見に来ればいい。