誇り高きエース

Last-modified: 2021-05-13 (木) 22:03:28

1.

「シンドゥはガス惑星の国境の外周を住処としていた。最初はワシの招待を拒んだが、他のものと同様、ワシと同じ見方をするようになった」――カルス皇帝

ジャルスの目がようやく開いた。大きくて輪郭のはっきりしないシルエットを見つめていた。その巨人が話し始めた。「よく戻ってきた」と、低く轟くような声で言った。ジャルスは素早く瞬きをした。部屋の様子が徐々にはっきり見えてきた。まるで神殿のように輝いていた。巨人が再び声を出した。
「我が子よ、恐れる必要はない。お前を助けてやったのだ。我が帝国へようこそ」。ジャルスの手足に感覚が戻ってきた。拘束されている。そして、この巨人も彼を真上から見下げている。彼はこの死神の顔をじっと見つめた。「恐れるな、我が未来の戦士よ」
ジャルスはゆっくり瞬きをした。他のパイロットはどうした? 彼の部隊は? 彼らは逃げたのか?
「お前はシンドゥ最後のスターパイロット。そして、ワシの『誇り高きエース』となるのだ」
彼に選択の余地はなかった。

2.

ワシは全てを失った。今は全てが手中にある。

お前がワシをリヴァイアサンに乗せた時、ワシには何もなかった。だが、今は違う。それを理解しているか? ワシは試された。そして、見事それを乗り切った。
お前はよく、逆境があったから今のお前があると言っていた。逆境が強くしてくれた、と。今なら、それを本当の意味で理解することができる。お前にワシが学んだことを見てほしい。逆境によって、ワシがどう変わったのかを見てほしい。

3.

お前は、ワシがお前を取り囲んでいることに気づいていない。

お前がソル星系に行ったのは知っている。ワシがこうして手紙を書いているのは、ワシもまもなく到着するからだ。是非、再会したいものだ。
ワシの兵が、ワシの到着準備をするために一足先に旅立った。その星系に住む物達といい関係を築きたい。そう聞いて驚くかもしれないが、これはワシが学んだことの1つだ。自分より下等な生物への振る舞い方。ワシの帝国には、どんな生物にも居場所があると考えるようになった。終焉でさえも、共に迎えれば楽しいと思えるだろう。

4.

「ワシはシンドゥに黄金の艦隊を与えた。影がワシの剣であるように、インターセプターがリヴァイアサンの盾となる」――カルス皇帝

「ジャルス、お前は間違っているぞ」
「お互いに同意できないという意見には同意いたします、陛下」
「その舌が単に繊細さを欠いているのだ。お前の世界の酒の味さえ分からないとは!」
「私はシンドゥです。これは私の舌に合うように作られています、陛下」
「だが、その味をしっかりと味わえていない。ワシには信じがたいことだ」
「今は何を口にしても味などしません、陛下」
「それはどうにかしないとな」
宇宙の静けさの中、近くで爆発が起こり、神の意志が震えた。ジャルスは目を細めた。「陛下、仕事に戻ります」
「では、お前のために酒を取っておこう」。コックピットのモニターが、カルスの顔からレーダーへと変わった。小さな赤い三角形が画面上で点滅し、警報が鋭い叫び声を上げた。ジャルスはバイザーを引き下ろすと、船のスラスターを全開にした。