79式

• ヴェトナム戦争当時、北軍支持で共闘していたソビエト連邦と中華人民共和国は、政治路線の違いや領土争いから次第に対立する様になったため、それまでソ連の技術供与によって成り立っていた中国の軍備の近代化には大きなブレーキがかかっていた。
• こうした中、人民解放軍兵器省傘下の研究所はベトナムでの戦訓をもとにしたコードネーム「ジャングルサブマシンガン」の開発を命じられたが、課された条件は非常に厳しく、開発者にも経験が少ない若手技術者が多かったために「ジャングルサブマシンガン」の開発は難航した。
  • 当時の中国には十分な加工技術を持つ工場が無いという悪条件も重なって、試作された銃はトラブルが多発し、政変もあった*2事から開発はたびたび中断されている。
• 1970年に人民解放軍の参謀は改めて偵察、通信、砲術、空挺、および公安要員向けの携帯用兵器の開発を要求し、これに対応すべく兵器研究所が設立され、ジャングルサブマシンガンは7.62mmライトサブマシンガン(軽型冲鋒槍)と名称を変更して研究が再開された。
  • トライアルでは排莢不良や薬室の強度不足などの問題が指摘され、5年の歳月をかけてようやく100丁の試作品が完成し、済南、瀋陽、蘭州、国明の各省で高温や泥水などの悪環境での試験が行われた。こうして研究所の軽火器委員会の承認を受け1979年式7.62mm軽型冲鋒槍として採用された。
• 動作機構はショートストロークガスピストン、ロータリーボルトというサブマシンガンとしては珍しいもので、外観はまったく異なるが63式と同じ構成である。
  • クローズドボルトで機関部後端に緩衝バッファを備え、毎分1100発まで可能な非常に高い連射速度と命中率を両立しているが、装弾数やコックオフの問題もあるためセミオートでの使用が基本となる。
  • 機関部はプレス成型で折り畳み式の銃床は回転式で機関部上面を覆う形となる。フルカバーのフロントサイトと、正方形のシールドで保護されたノッチ付きリアサイトは折り畳み時でも使用が可能でリアサイトは100mと200mのフリップ式となっている。ピストルグリップ内部には分解清掃用のパンチやブラシが収納されている。
  • セイフティ兼セレクターはレシーバーの右側面のみで56式(というかAK)に準じたデザインとなっているが、表記は56式が単(セミオート)と連(フルオート)なのに対してアラビア数字の1と2になっている。*3
• 量産初期は品質管理が十分ではなく、相変わらず装弾不良にも悩まされたたが、実戦投入された中越戦争では小型軽量ながらも高い連射速度と命中率で偵察部隊などで比較的好評だったようだ。
  • しかし、チャージングハンドルの破損や誤作動による暴発*4の報告も多く、またサブマシンガンでありながら削り出し加工によって製作された高コストな機関部を持つ事もあり、軍では79式に見切りをつけて安価な85式冲鋒槍で更新していった。
    • その後、軍を退いた79式は武装警察や公安部隊によって用いられることとなった。
• 軽量かつコンパクトで隠し持つのが容易な79式は、私服での活動時などに好まれたほか、経済自由化に伴い銀行の護衛などにも使用されている模様。
• 改良を重ねて動作不良を無くした79式は、中越戦争で示した性能を警察や治安部隊でも発揮し、セミオートカービンとして高い評価を得たが、外観の古さは否めなかった。
  • これを改善すべくバレルに直接固定されたSUER-FIREタクティカルライトとレーザーポインターなどを装備したカスタムモデルが広東省広州市で配備されると、このトレンドは各省に波及した。
  • こうして79式の近代化キットが続々と登場し、MP5と同様のハンドガードを取り付け、スコープマウントを追加したPEAK79や、79式全体が埋め込まれたシャーシにOKO8Wレッドドットサイトを取り付ける事が可能で銃身にピカティニーレイル互換のマウント4面を備えたTAPS79、TAPS79の中国特警仕様で伸縮式銃床のMASP79などがある*5。
  • またブリーフケース内に固定してレーザーサイトで照準し、外部から操作できるSP仕様もあるようだ。
• こうして結果的に20万丁以上が生産された79式だが、未だしばらく中国警察では主力サブマシンガンとして活躍し続ける事となっている。
  • というのも、軍では後継となった85式はシンプルブローバック方式を採用した*6事でセミオートでバーストする恐れがあり警察用には向かない事、最新鋭の05式軽型冲鋒槍はブルパップの95式をベースに開発した為に市街戦で重視される左撃ちが困難な事から、単純には79式の代替となりえないためである。
  • 79式自体、高コストながらも高い耐久性を誇る削り出し機関部で製造された事もあり、長年に渡って射撃回数を重ねても射撃精度が落ち辛く、まだまだ寿命を残しているというのもある。

【過去ログ】