F1

• かつて大英帝国の植民地であったオーストラリアでは武装類もイギリスのおさがりを使用していたが、ダンケルクで連合国が大敗を喫すると、イギリスは輸出どころか自国用の装備すら不足するありさまとなり、また赤道を超えて南下する大日本帝国はオーストラリアにとって差し迫った脅威であった。
  • こうして兵器の自給を余儀なくされたオーストラリアだったが、サブマシンガンの選定にあたっては複数の候補が存在していた。
    • イギリスから図面だけ送られてきたステンをもとに独自の改良*4を行ったオーステン、落ちこぼれの不良少年エヴリン・オーウェンが独学で設計・試作したオーウェン短機関銃、そして鹵獲したMP40と個人輸入したトンプソン短機関銃といった候補が挙がっていたが、その中からオーストラリア軍が採用したのは、なんとオーウェン短機関銃であった。
  • 奇抜な見た目と構造に反して、オーウェン短機関銃は反動が比較的マイルドで命中精度や動作の信頼性にも優れ、なにより非常に安価で生産性が高かった事から、当時のオーストラリアの国情に見合ったものであった。
• こうしてオーストラリア軍は戦後もオーウェン短機関銃を使用していたが、さすがに1950年代に入ると旧式化は否めず、新たな国産サブマシンガンの開発に乗り出すこととなった。こうして開発されたのがF1短機関銃である。
• オーステンがステンとトンプソン短機関銃とMP40のキメラであったのに対し、F1はイギリスのスターリング短機関銃とオーウェン短機関銃とFALのキメラと言える。
  • 機関部はスターリング短機関銃と同じシンプルブローバック・オープンボルトで、マガジンもスターリング短機関銃と共通だが、装着部位がオーウェン短機関銃と同じく薬室上面にある。
  • 排莢口もすぐ下にあり、装弾や排莢不良が起こりにくいメリットがあったが携帯性には難があり、加熱した薬莢が四肢に触れたりすぐ足元に落ちて踏み転倒したりといったこともあったという。
  • また、銃床からグリップ・トリガーグループにかけては、イギリス製のインチパターンFALであるL1A1のものを流用しており、丸ごと脱着や交換が可能である。
  • 銃剣もL1A1と共通のものが使用可能であったがやや不釣り合いで重く、また取付ラグが右側にあってバランスを崩しやすいため、専用のスパイク型が好まれた。
  • アイアンサイトも右側*5にオフセットされており、これもオーウェン短機関銃と共通だが、より頑丈で可動部の少ないものとなっている。なお、光学照準器の取り付けは一切考慮されていない。
  • 銃身は大きなパンチ穴の開いたバレルスリーブで覆われており、フラッシュハイダーは鳥籠型でジャングルなどでも絡まりにくいようになっている。
  • またほとんどの銃に迷彩塗装が施されておりマガジンも例外ではない。
• オーストラリア軍で長らくL1A1とペアで運用され、ヴェトナム戦争で実戦を経験したが、前線では不評でM16A1に置き換えられ、西側諸国でブルパップ型アサルトライフルに小銃と短機関銃を統合する流れが起きるとそれに倣ったが、L85A1の輸出が承認されなかったため*6FF88が採用されて、1990年頃には交代している。

【過去ログ】