G43

• 第一次大戦後ヴェルサイユ条約で兵器の開発に厳しい制限を課せられたドイツは臥薪嘗胆、様々な手段で再軍備の手筈を整えた。中でも機関銃は採用年度を誤魔化してまで*8力を注ぎ、機関短銃や新兵器の突撃銃などフルオート火器に関しては先進国となったが、歩兵銃はボルトアクションのGew98とその短縮版Kar98kが現役であった。しかしM1ガーランドやAVS-36の影響を受けた陸軍兵器局（HWaA）は第二次大戦開戦後の1940年、各社にセミオートライフルの開発を要請した。
• 中でも最終選考まで残ったのがそれ以前から自動小銃の研究を続けていたワルサー社とマウザー社で、より命中精度の高いワルサー案がGewehr41(通称Gew41)として採用された。
  しかしこの銃はボルトアセンブリがコンパクトな反面、非常に精密で細かい部品が多く、スプリングを完全に収縮させた状態でないとフィールドストリップができない上すぐ暴発する*9ため分解清掃は隊内でも優秀な一部の人間に任されるありさまで、また銃口のガスシステムが低温による霜や煤などの異物に弱くすぐ詰まって動作不良を起こすという致命的な欠点があった。これは極寒のシベリアでは致命的ですぐさま鹵獲したロシア製の銃を研究し、結局SVT-38のガスシステムをほぼそのままコピーして改良したのがGewehr43である。
• 本銃はショートストロークガスピストン・フラップロック方式で、ボルトアセンブリがむき出しで鋳造の薬室は外部が鋳型の跡が残ったままという非常に貧相な見栄えで粗悪品とか廉価版といわれることも多いが、少なくとも初期型は精度もよく動作不良もGew41より格段に減少している。また機関部左側面に光学照準器の取り付け用スロットが標準装備されていた。しかし戦局の悪化と工場への爆撃などもあって品質管理もままならず、特に捕虜収容所で強制労働によって製造させたものは品質が悪いどころか意図的に動作不良を起こすようにサボタージュされたものまであり、本銃の評価を著しく下げた。
• 1944年4月25日付けで制式名称がKarabiner43と変更されたが、基本的に刻印の変更だけで目立った改良は行われておらず、事実上の二線級火器への格下げといえる。最終的に46万挺あまりも生産されたものの、結果的にはGew98を代替するには至らなかった。その外観やドイツ製自動小銃ということからヒトラーズガーランドと呼ばれることもあるが機構は別物で、戦後のアメリカのアバディーン試験場での評価も「命中精度や整備性に問題はないが全体的な性能や耐久性は不十分であり、過度の動作不良や破損が発生した。調査の結果、射撃負荷が過大であることによって排莢不良が頻発することが示された。標準的な砂塵下での試験では手動により容易に操作できたが、自動装填射撃の信頼性は低かった」というものであった。試験個体がおそらく末期のものであることを差し引いても特に秀でた所のない凡作どまりであるが、開発期間や製造環境まで考慮すれば制式配備にこぎつけただけでも驚異的な技術力ということはできる。

ｰ第2次大戦中ドイツ軍はカールツァイス社が開発した精度の良い民生用4倍率スコープをZF39（39年型照準眼鏡）として採用したが、
一社のしかも民生用の生産ラインでは軍の需要を満たすには足りなかったため、他社のスコープなども大量に集められて使用されていた。
この中にはカールツァイスが10年ほど前に買収し、傘下に収めたヘンゾルト社なども含まれているが、
あくまでカールツァイス社製の4倍率スコープのみがZF39として扱われている。

• あまりにも数が不足したためドイツ軍は軍用として正式に光学照準器を製造・配備することを考えたが、ここでひとつドイツは欲張った。
  狙撃用のみの限定的な製造数では量産効果も乏しく、供給数が慢性的に不足するだろうという予測し、
  全歩兵の小銃に光学照準器を（あくまで段階的にだが将来的には）標準配備しようとしたのである。
  すべての歩兵が光学照準器を用いれば、弾薬の浪費も減り、補給も楽になるという目論見もあった。
  これは今日の歩兵用小銃が光学照準器を標準的に搭載しはじめていることを考えると非常に先進的な考え方だった。
  ただしそのためのスコープを狙撃用と共用しようというのはいささか無謀な試みであった。
  開発されたZF41（41年型照準眼鏡）は1.5倍率の光学スコープだったが、当時のドイツ軍歩兵の標準装備であるKar98kに装備するためやや無理をしていた。
  狙撃銃用のZF39は銃を構えた際に接眼レンズを射手の目に近づけるため、コの字型のスコープマウントで機関部をまたいで装着される。
  このため銃弾はクリップを使ってまとめて再装填ができないが、狙撃銃はそもそもそんなに速射をしないので問題にならないとされた。
  ところが標準的な歩兵用にクリップが使えないのは大問題であるから、機関部の上には何も置くことができない。
  したがってZF41は射手の目に対して異様なほど前に置かれる事になり（英語版Wikipediaより）、
  狙撃銃としては極めて不適当な性能となった。
  にも関わらずこのKar98kとZF41の組み合わせは製造数の多さもあってかなりの数が配備されている。
  （スコープの取り付けが想定されていない時代のKar98kに多様な民生品スコープを取り付けるのは非常に煩わしく、規格の揃っているZF41の取り付けは比較的容易だったのもある）
• さてこのようないささかグダグダした経緯のドイツ軍用狙撃スコープの問題点を解決するため、改めてZF4（正確にはGwZF4:4倍率小銃用照準眼鏡）が開発・製造されることになった。
  さらにG43ライフルにこれを標準的に装備可能なガイドレールを最初から設けて狙撃銃としても利用できるようにしたのである。
  この銃とスコープの組み合わせをヒトラーはいたく気に入り、量産体制も整わぬうちから増産を指示、44年には標準狙撃銃として本銃を策定するなど熱心に配備を進めた。
• しかしその熱心さと裏腹に、連日の爆撃による工場の破壊や熟練工員不足を補うため強制収容所の労働力を用いた工作精度の低下により、
  多くのG43は狙撃銃としては不適当な精度としてスコープを付けず戦場へ送られていった。

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