TEC-9

• ベースとなったのはインターダイナミック社が開発した、MP-9という軍用サブマシンガンである。
  • このMP-9はポリマーを多用しているものの、構造はオープンボルトとやや旧式な物であった。
• MP-9は軍に向けてセールスされたものの採用されなかったため、インターダイナミック社は販売方針を大幅に切り替える決断をする。MP-9をセミオートピストルに改造し、アメリカで民間向けのピストルとして発売したのである。
  • 新たにKG-9と名付けられたこのセミオートピストルは、オープンボルトという事もあって射撃精度が低く、動作の信頼性も低かったのだが、安価な上にベースがサブマシンガンである事から容易にフルオート射撃が可能な状態へ改造できたため、ギャングや麻薬組織などの犯罪者が好んで使用する銃となってしまった。*1
  • 違法改造されたKG-9による殺傷事件の多発を重く見たアメリカのATF*2がインターダイナミック社にKG-9の改修を勧告したため、インターダイナミック社は違法改造が出来ない様にKG-9をクローズドボルト化したモデルを開発した。この改修モデルがTEC-9である。
    • あまりに世間からの評判が悪かったせいか、同時期に社名もインターダイナミックからイントラテックに変更している。
  • しかし、その後も犯罪者が好んで使用するという状況はあまり変わらず、当局に規制される度に新たな改修が追加されたり、商品名がTEC-DC9に変更されたりと、連邦当局とのイタチごっこが続いている。
    • 最終的には銃乱射事件で使用された事で完全に法規制されてしまい、ついにTEC-DC9は製造自体が禁止となってしまう。
  • イントラテック社はより拳銃らしい姿に改修したAB-10を発売したものの販売は振るわず、業績不振に陥ったイントラテック社は倒産してしまった。
    • その最終モデルであるAB-10も、販売中に全米を震撼させたコロンバイン高校銃乱射事件でTEC-9が使用された事で、犯罪者の銃という不名誉なイメージから逃れられなかったのである。
  • この様な経緯から、アメリカではギャングが使う定番の銃というイメージが定着しており、フィクションの世界でも度々見かけられる。
• 皮肉なことに法規制によって市場から姿を消すと、それまで見向きもしなかったガンコレクターの間で注目が集まるようになった。どのジャンルのコレクターも考える事は同じである。
  　
• 日本ではKG-9のエアソフトガンが複数発売されており、特に電動ガンが登場する以前の時代を経験した古参サバゲーマーにとっては印象的な銃だといえる。
  • 最近では海外製のエアソフトガンも出回るようになって俄かに注目が集まっている。
• 1980年代前半、日本で第一次サバイバルゲームブームが起こった際にフィールドの主役となったのがマルゼン製KG-9（初代、1982年発売）である。
  この初代KG-9は国産エアガン史上初の6mmBB弾採用銃でもあり、エアソフトガン並びにサバイバルゲームの歴史を変えた一丁でもあった。
  • しかしながら一方で、人気銃ゆえ強力なスプリングと重量弾の組合せで狩猟用空気銃まがいの威力を出す改造のベース銃として選ばれる事も多く、
    実銃同様にアンダーグラウンドなイメージがつきまとっていたのは運命の皮肉と言うべきか。
    • 当時はまだ、BB弾による遠距離射撃を可能にする「ホップアップシステム」が一般的には実用化されておらず、有効射程を延ばすためには高パワーで重量弾を撃ち出すという危険な改造が一般的であった。
  • 初代KG-9で大成功を収めたマルゼンはその後もKG-9の改良とモデルチェンジを重ね、ポンプアクション式エアガン→セミオート式ガスガン→フルオート式ガスガン→フルオート＆ガスブローバックガン…と完成度を高めていった。
    • マルゼン以外でKG-9をモデルアップした国内メーカーは意外に少なく、マルコシ（セミオートガスガン）とヨネザワ（ポンプアクション式エアガン）のみ。
      マルゼン製初代KG-9がかつて時代の寵児になったとはいえ、やはり基本的にはマイナー銃ではあるのだ。

【過去ログ】