【ドラゴンクエスト4コママンガ劇場】

Last-modified: 2024-04-11 (木) 22:26:05

概要

1990年4月19日に【エニックス】(現【スクウェア・エニックス】)より刊行された、公式4コマアンソロジーコミック及びレーベル。
その元は、【知られざる伝説】(DQ3)巻末に見開き2ページだけ収録された4コママンガが好評だったことから、企画がスタートしたと言われている。
 
この本のヒットが後の【月刊少年ガンガン】創刊へと繋がった。
さらにはドラクエのみならず「スターオーシャン」、「ヴァルキリープロファイル」等のエニックス作品はもとより、「スーパーマリオ」「アークザラッド」「ワイルドアームズ」「テイルズ オブ」といった他社の人気シリーズ、さらには「Kanon」「To Heart」等のギャルゲーに至るまで、ゲームの4コママンガ本が続々刊行されるに至った。
 
執筆陣は有名無名問わず多種多様なラインナップとなっており、そのいずれにもドラクエモンスター(一部例外あり)の名を冠したキャッチコピーがつけられていた。
その中には『南国少年パプワくん』の柴田亜美、『魔法陣グルグル』の衛藤ヒロユキ、『BAMBOO BLADE』の五十嵐あぐり(当時は曽我あきお名義)など後に大ヒット作品を生み出した作家も。
当然彼らのように華々しく活躍し続けている者ばかりではなく、ヒットに恵まれず鳴かず飛ばずの者、残念ながら落ちぶれてしまったと言わざるを得ない者も中にはいるようだ。
ちなみに藤原カムイ、いがらしみきお、松沢夏樹など、当時の少年ガンガンで連載していた人気漫画家が特別に参加したことも。
 
しかし21世紀を迎えるとインターネットの普及によって作者及びファンサイトやネタスレが発展するなどの環境の変化が起こり、旧来のアナログ媒体である4コママンガ劇場は衰退を迎える。DQではDQ8の3巻、全体としては「テイルズ オブ シンフォニア」の3巻を最後にレーベル廃止となった。
 
その後復活は絶望視されていたが2009年12月、実質的な後継レーベルである「ガンガンコミックスアンソロジー」で、DQ9の4コマ劇場が発売され、1ページ目から夜麻みゆき往年のペロキャンネタが登場。古参ファンを喜ばせた。
なお、残念ながらこのコミックには初期のドラクエ4コマを支えた執筆陣はいない。だが夜麻みゆき、五十嵐あぐりなどが久々にドラクエ4コマに復帰したり、『WORKING!!』の高津カリノ、『ぱにぽに』の氷川へきる、『天体戦士サンレッド』のくぼたまことなど、異色の組み合わせが実現していたりするのが見所。

「ゲームのマンガ化」としての魅力

まだゲーム内での表現が文字中心、2Dのドット絵、仲間の台詞も少ない、という条件だったFC時代は、【モンスター】や主人公たちの振る舞い、【呪文】の効果、キャラの会話、サブキャラの容姿などを自由に想像しながらプレイできた。
このため、当時は作家ごとにオリジナリティーあるさまざまな絵でゲーム世界が表現されており、読者はマンガのネタだけでなく、こうした各作家のアレンジを楽しめたのも4コママンガ劇場の魅力だった(このことは小説版やゲームブック、マンガ版『幻の大地』『エデンの戦士たち』、古くは非公式の桜玉吉版DQ2、といった二次創作全般に言えることだった)。
特に【ピサロ】の容姿には作家ごとの様々なバリエーションが現れていた。
 
だがゲームハードが進化するにつれてグラフィックがリアルなものなっていき、それに加えてDQ5で呪文エフェクト、DQ6でモンスターアニメーション、DQ7で仲間同士の会話がゲーム内で見られるようになってしまい、必然的にそれに縛られて自由度が失われていった。【バブルスライム】がいい例で、噛み付くことで【毒】を与えるイメージが強かったが毒液を撒き散らすなどの攻撃が主流になっている。
それでもDQ7まではキャラの描写が依然として小さなドット絵で当然のようにマンガの方がリアルであり、戦闘中の味方キャラの表示も無かったため、各作家ごとの表現を楽しむ余地はまだあった。
 
が、DQ8ではとうとうフルポリゴンで主人公たちやNPCの細かいアクション、サブキャラの容姿の細部までもがゲーム内で表現されるようになり、逆転してマンガよりもゲーム画面の方がリアルになってしまった。こうなると画風以外は誰が描いても同じ表現になり、上述したようなゲームのマンガ化ならではの魅力を求めていたユーザーにとっては「ゲームだけでもう十分」となってしまう。
このようなことも4コママンガ劇場の衰退の一因と考えることができ、実際DQ7は8巻まで出たのに対しDQ8の4コマがわずか3巻で終わってしまったことからもそれが窺える(同じく公式小説やストーリーマンガ版もDQ8では登場していない)。

ネタの取り扱い

初期には「モンスターを食べる」「DQ3の主人公が【ロト】と呼ばれる(本来ならばゲーム版では名付けられない。詳細は【名前】参照)」などの際どいネタもあったが、ある程度巻数が進むとルールのようなものも制定されてきた。今のアンソロジーにも形を変え受け継がれている物が多いが、その一例を紹介。

  • キャラ崩壊・キャラの私物化禁止。
    勇者を悪者にしたり、あまりに乱暴な表現など原作のイメージが崩壊するようなネタはNG。やりたい放題になってしまえば最早ドラクエでネタを作る必要性が無くなってしまう。
  • ゲームをクリアしていない人のために謎解きや最後の敵のネタバレは禁止。
    どうしても登場させたい場合は、エ○○ー○のように伏字・シルエットで出す必要がある。なお竜王(第一形態)やハーゴン、バラモスは普通に登場し続けていた。また、3のアレフガルド以降は原則描写禁止だったようだが、【オルテガ】の最期については場所を曖昧にすることでネタにした作家がいる。
  • グロテスクな表現の禁止。
  • DQの世界に存在しないものを勝手に作らない。
    原作の世界観を大切にするため、そういったネタは基本的にNGとされていた。「DQのキャラで野球をする」などといったゲームに登場しない設定を作るのもダメ。
  • 現実世界でのゲームプレイネタは対象外。
    冒険の書が消えてしまったこと自体をネタにするなど、ゲーム内の世界観を使用しないネタはダメ。

だが大体12巻くらいでそれらのルールも半ば有名無実化し始め、中ボスクラスがネタに出てきたり、キャラ崩壊・キャラいじめネタも出てきたりするようになった。坂本太郎が【スライムナイト】用のロボットなどを描いてギリギリOKになっていたケースもあった。
大全集では、主人公達の仲間になっている時のピサロが(PS版の公式ガイドブックではシルエットに留めたり名前欄を「???」で覆ったりして隠しているにも関わらず)登場するネタも描かれるようになった。
 
【パルプンテ】による【メタル狩り】【さとりのしょ】無しで【賢者】に転職、【まほうのビキニ】(FC版)、【シンシア】【はねぼうし】など、例外として公式ガイドブックなどに記載されていないゲームネタ等も登場していたこともある。
 
当たり前だが、各時代の漫画家が遊べる機種の作品を基にしたネタが収録されている。
大胆なリメイクによってオリジナル版から要素が大幅に追加・変更・削除されている作品も存在するため、リメイク版しかプレイしたことがないプレイヤーには伝わらなくなってしまったネタも存在する。
「変更・削除」によって、「楽屋裏で漫画家達を苦しめている【復活の呪文】って何?」「DQ3の【みずでっぽう】って何?」「DQ3,4,5で見かける【預かり所】って何?なんで【ふくろ】【ゴールド銀行】を使わないの?」「DQ4になんで【いばらのむち】【ブーメラン】の使い手が登場するの?」「DQ5は主人公石像の価格が異なっているし、なんで【ちいさなメダル】が空を飛ぶの?」「DQ6の会話を思い出す機能って何?【シエーナ】ってどこ?【サンディ】【モコモン】って誰?」「DQMの仲間モンスターとの会話って何?」と悩まされた読者もいると思われる。
反対に、「DQ1,2の預かり所って何?」「DQ2のサマル【ベラヌール】離脱するイベントって何?」「DQ3の【盗賊】や会話を思い出す機能や【すごろく場】【精霊の泉】【モンスターメダル】って何?」「DQ3,5あたりに知らないアイテムがたくさん追加されているけど、これが【性格】を変える装飾品や、【名産品】ってやつ?」「DQ4の【戦歴】及び【称号】システムって何?」といった、オリジナル版をプレイしただけでは分からない、リメイク版によって「追加」されたネタも見かけられる。
違和感を覚えるネタを見つけたら、適宜調べてみるとよい。これは小説版含む各種ゲーム外メディア版にも同じことが言える。

ラスボスの取り扱い

ネタバレを避けるため、各シリーズの【ラスボス】の登場は禁止となっている(原則として公式ガイドブックに出ているモンスターのみ。番外編1巻95P)。
しかし、黎明期にはその規制も緩かったのか、姿こそ出てこないもののDQ3の作品に【ゾーマ】という単語が何度か出てきた。
ただし、一部のラスボスはその存在が本編中でも最初からないしはごく序盤の段階で知れるためか、登場OKとなっている。

ちなみにラスボスを登場させるのはほぼNGだが【エンディング】をネタにするのはOKのようであり、例えば無印5巻には「【トルネコ】息子に高い高いをするシーン」を利用したネタが存在する。
 

DQ1

GB版DQ1にてりゅうおうが初っ端から第二形態の姿を見せているので、規則的には第二形態のネタを描いていいことになっているようなもの…と思ったら、GB版に先駆けて描いてしまっているネタが存在する。当時のDQ1はすでに一度SFCでリメイクされているので、大目に見られたのだろうか?

  • 山崎渉がガンガン編第13巻(1998年初版なのでGB版発売より前)に竜王第二形態を描いちゃっていたりする(P20。外見は鬣があって翼が確認できないので普通のドラゴンっぽいが)。
  • 無印17巻(こちらも1998年初版)でも、神田達志が『背中にチャック』というネタで竜王第二形態をはっきりと描いている(P31。【主人公(DQ1)】との戦いで追い詰められた竜王が真の姿を見せるも、着ぐるみと勘違いされてしまうという内容)。

DQ4

前述の通りピサロ形態のデスピサロはガッツリ登場する。「普段は厳しいが【ロザリー】にだけは優しい」「ダメな部下(雑魚モンスター)に悩まされる」と、上司ポジションとしていじりがいがあるキャラであった。
さらに、PS版発売後には仲間として加入している状態のピサロも描かれるようになる。
ちなみにピサロが出演するDQ4ネタを描く際には、「側近として【だいまどう】(ネタバレOK)か【エビルプリースト】(NG)か判別不能のモンスターを出演させる」というモノクロならではのきわどいテクニックが流行していた。

モンスターズシリーズ

モンスターズ1のミレーユはラスボスであるにも関わらず規制が緩く、序盤の【ワルぼう】に誘拐されるシーンはもちろんのこと、マルタの国のモンスターマスターとして冒険するオリジナルのシーン、さらには終盤の【星降りの大会】にてテリーと再会するシーンもモンスターズ1の1巻から解禁されている。
さすがに【ドーク】【ギスヴァーグ】は規制されている。【マガルギ】と思われるネタは1つだけ存在するが、名前は明かされない。
 
モンスターズシリーズの4コマでは、本編シリーズのラスボスも単なる一モンスター扱いのためか普通に登場している。

ゲームへの影響

4コママンガ劇場で定番だったネタが、後にリメイク版や新作が発売される際、公式設定として逆輸入される場合もある。
天空編では特に顕著で、「【カジノ】狂いで酒豪の【マーニャ】」、「少し暗い性格の【ミネア】」、「【アリーナ】に片思いしている【クリフト】」、「おばけきのこが仲間になる(元ネタは雑誌での誤報)」、「【テリー】に片思いしている【ドランゴ】」などが挙げられる。
【マッスルダンス】【たんすミミック】は4コマのギャグが本編での特技やモンスターになった珍しい例。
DQ7では【いっぱつギャグ】の中にこの漫画のネタがある。詳しくはリンク先。
 
また、DQ8の【スカウトモンスター】【ホイミスライム】が、「みんなのアイドル」という通り名がつけられているのも、4コマで人気高く、可愛がられていたゆえにつけられた可能性が高い。
ただ、DQ8発売前の2001年に刊行された『ドラゴンクエスト7のあるきかた』に「みんなのアイドル ホイミスライム」というそのものズバリなタイトルのミニコラムがあり(P179。ホイミスライムが同族含め5種類ものモンスターに呼ばれることを解説している)、そちらが由来の可能性もある。

楽屋裏

掲載された作家が元ネタとなったゲームについて1ページを使って語るコーナー。
このコーナーが本レーベルの象徴となり、読者に強く受け入れられることにつながった。
読者から寄せられた手紙に対する返事、リクエストのあったイラスト、ホームページ紹介、作者によっては人気投票などの企画が行われるなど、内容は自由そのものであった。
中でも多く見られたネタは「アイデアが浮かんでこない」、「締め切りに間に合わない」というリアルなネタ。そこに担当から逃げたり電話による催促が頻繁に起こる等といったネタが加えられる。
当初は限られたメンバーのみが楽屋裏を描いていたが、後に全員が1ページずつ描くようになった。

シリーズごとの概要

モンスター物語

【モンスター物語】1巻の巻末に【栗本和博】が描いた、おまけ程度のものが掲載されたのが初。
豪華にも全編カラーである。
怪傑大ねずみはここで初登場した。

ドラゴンクエスト4コママンガ劇場

通称無印(元祖とも)。
DQ1からDQ6までのナンバリングタイトルを総合的に取り扱った全編描き下ろしのシリーズ。全20巻。
1巻発売当時最新作だったDQ4はモンスターネタと表紙イラスト掲載のみ。ネタバレ回避のため……というより、発売時期(FC版DQ4は1990年2月、4コマ1巻は同年4月)を考えると恐らく執筆当時はまだゲーム発売前なので他に描きようがなかったのだと思われる。
その後DQ4キャラ・ストーリーネタは2巻、DQ5ネタは7巻、DQ6ネタは12巻で解禁となった。
本シリーズが4コママンガ劇場のみならず、エニックスの漫画事業(※出版事業そのものではない)の原点となった。
※エニックスは営団社募集サービスセンターという不動産情報誌専門の出版社が前身だった。

ドラゴンクエスト4コママンガ大全集

DQ7までのナンバリングタイトルに加え、DQM・DQM2のネタを取り扱った無印の後継シリーズ。全7巻。

ドラゴンクエスト4コママンガ劇場 番外編

正式名称は恐らく「ドラゴンクエスト 4コママンガ劇場・番外編 ―4コマクラブ傑作集―」(4コマクラブ2巻の「ドラゴンクエストブックシリーズ」のコーナーから引用)。
「月刊少年ガンガン」の読者投稿コーナー「ドラゴンクエスト4コママンガクラブ」に掲載された作品と、選外佳作を収録した傑作集。全23巻。
本編(無印)と比べて1巻あたりのページ数は少ないが、巻数が多いことを突っ込んだら負けである。
ここ出身の作家も数人登場している。

ドラゴンクエスト4コママンガ劇場 ガンガン編

ガンガンの執筆作家が同誌に寄稿したドラクエ4コマを単行本化したシリーズ。全13巻。
後年発売されたDQ9の4コマ劇場は「描き下ろし」「スクエニ全誌」という違いはあるものの、コンセプトはこちらに近い。

ドラゴンクエスト4コママンガ劇場 ギャグ王編

「ガンガン編」の【月刊少年ギャグ王】版。全2巻。

ドラゴンクエスト1Pコミック劇場

「4コマ」ではなく、その書名の通りにひとつのネタを「1ページ」で表現する派生作品。
ギャグ王コミックスとして執筆作家が同誌に寄稿した1Pネタを単行本化したシリーズ。
1994年10月に創刊し、以後は不定期に1998年10月までに計11巻が発行された。
1~6巻はDQ1~5ネタ、7巻からDQ6ネタが解禁された。
コマ割りに関して作家の自由度が高くなり、斜めや縦長のコマも登場するようになった。
一枚絵のように大きなコマもあり、お気に入りの作家の描く好みのキャラが大きく描かれていたりしたときには、大いに歓喜した読者もいたことだろう。
最初の8ページは人気作家たちのカラーページ、以後のページも複数の作家によるアンソロジーと、通常の4コママンガ劇場と同じページ構成となっている。
ただし各作家の楽屋裏はなく、代わりに小さなカットが描かれていることがある。

作品別4コママンガ劇場

ドラゴンクエストシリーズの作品別に刊行されたシリーズの総称。
ナンバリングタイトルはDQ1(全1巻)、DQ2(全1巻)、DQ3(上下巻)が過去に無印で掲載された作品の再録、DQ5(PS2版ベース・全3巻)、DQ7(全8巻)、DQ8(全3巻)は描き下ろしである。
DQ8はその後、3DS版の発売を記念して再録本となる「復刻版」が刊行された(【超ふしぎなきのみ】コードつき)。
DQ9(全1巻)は前述のとおりレーベルと版型を変更しての発行となり、楽屋裏も廃止された。
DQ10は一人の漫画家のみの執筆。ゲストによる特別寄稿もあった。
 
モンスターズシリーズはDQM1(全5巻)、DQM2(全3巻)、キャラバンハート(全1巻)が発行されたが、ジョーカー以降は発行されなかった。
不思議のダンジョンシリーズはトルネコ1(全4巻)、トルネコ2(全2巻)、トルネコ3(全2巻)が発行されたが、少年ヤンガスは発行されていない。
ちなみに、トルネコ3のみエニックスから「プレミアムストーリーズ」(全1巻)という一話完結モノをまとめた本が発行されている。
意外なところでは電子ペットゲームの【ドラゴンクエスト あるくんです】(全2巻)も発行されている。
余談だが、初期の4コマは呪文や一部アイテムが登場した際に注釈付きで効果の説明が書かれていたが、表紙デザインが一新してからはこの説明が廃止された。
 
DQMSLではゲーム内で「DQMSL 4コマ劇場」を読むことができる。実際はゲーム内でウェブページを表示させているだけなので、パソコンのブラウザでも読める。
初期の作品同様、呪文・特技が登場するシーンでは効果の説明が書かれている。
なおタイトルに反して5コマある。

執筆陣

こちらを参照。