【土門弘幸】

Last-modified: 2021-05-21 (金) 23:38:42

概要

【小説ドラゴンクエスト】のうち、【ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち】を担当した作家。
他には電撃文庫にて「五霊闘士オーキ伝」や「セブンス・ヘブン」と言った作品を発表している。
 
特徴として、「ゲーム内設定を無理なく小説に落とし込む」ことについては特に評価されている。
例えば、「【HP】とレベル」について憶測の形ながら語られている。
また「なぜ物語が進むにつれて魔物が強くなるのか?」というRPGのお約束についても、【オルゴ・デミーラ】の正体に関する設定や「【エスタード島】が封印されなかった理由」も合わせて無理なく説明しており、この辺りも評価されている(ただし、ゲーム内設定とは大きく矛盾するため、あくまで小説独自の設定と捉えるべきだろう)。
 
描写としては、何というか【メルビン】無双が目立つ節がある。
特に【マーディラス】編は、【マナスティス】への対策手段の構築から、【ゼッペル】戦での悲壮かつ勇猛な仁王立ち戦法に至るまで、終始メルビン大活躍である。とはいえ茶目っ気のある場面も見せており、原作同様「頼れる好々爺」という立ち位置は守っている。
まぁ元々DQ7は仲間の数が少ないこともあり、全員に違った形で見せ場は用意されている。なんと【キーファ】までも最終戦(正確にはその前哨戦)で、【主人公(DQ7)】を救う活躍を見せる。
 
DQ7は原作ゲームからして重い描写が目立つためか、ノベライズされてもものすごく話は重い。
第一巻からして、【ウッドパルナ】での無残な【マチルダ】との別れからフォロッドでの激闘、キーファとの別れでもたらされたアルスの心の高ぶりなど、ゲームではどうしても省略されがちな部分が真に迫った筆で綴られる。
第三巻での、オルゴ・デミーラ復活からの【フィッシュベル】壊滅、そしてアルスと【アイラ】が「お前たちが遺跡の封印を解いたせいで」と罵られながらもエスタードの町を守るため出陣するシーンは必見。
 
ロトシリーズ天空シリーズの作者に比べると独自設定やキャラ改変はあまり目立たず、オリジナルキャラクターも皆無に近い(一部名無しキャラに名前が追加されている程度。なお、これらの名前は移民から引っ張って来たものが多い。また主人公とアイラがカップリングされているのも、【マリベル】派の人には少々受け入れにくいかもしれない)。
原作既プレイヤーなら割とすんなり作品世界に入り込めるのではないだろうか。キャラクターの性格も概ね原作に沿った形になっているが、元々描写の少ない主人公は「穏やかな中にも確かな芯と反骨精神のある性格」として設定されている。【スイフー】との力試しではあえて彼の手下を殺さずに相手どったり、偽神様との会談では神を試すような言動を取ったりと大胆不敵な行動も見られる。
特にキーファ離脱後は世間知らずな女子供ばかりになってしまったパーティーで、戦力的にも精神的にも主柱になろうと自らに課している節がある。
 
一方で非難されているポイントも少なくない。特に、「描写されずにカットされた町が多すぎる」というのはしばしば指摘されるところ。
なんと、小説内で描写されている石版世界は「ウッドパルナ、【エンゴウ】【ダイアラック】【オルフィー】、【フォロッド】、ユバール族の休息地、ダーマ、マーディラス、【コスタール】(後名前は出ないが恐らく【ルーメン】)」のみ
特に、ダーマ直後からコスタールまでの中盤の石版世界はことごとくカットされており、唯一魔王の設定に関わるからかマーディラスがあるのみ。
四精霊の設定上非常に重要な砂漠地方と聖風の谷地方までもが描写がない始末である。
まぁこの筆致で【レブレサック】とかやられたらたまったものではないので、そこはある意味救いと言えなくもないが……。
 
どうしても小説3巻で納めなければならない都合もあっただろうが、その辺りは実に残念なところである。仮に概ね抑えるとしたら10巻前後無ければやっていられないだろう。
また、ストーリーの都合か【フーラル】【ブルジオ】などの重要キャラはいなくなり、その役割が【カシム】【ホンダラ】に統合されているのも特徴か。
同じくDQ7を原作とした漫画【ドラゴンクエスト エデンの戦士たち】(著者は【藤原カムイ】)のように本筋そっちのけでオリジナル展開に走ったりはしない(かつ途中で打ち切られたりもしてない)ので、その点はご安心を。
 
その他、原作中でのモンスター名や職業などの専門用語であっても極力片仮名言葉を使用するのを避け、「独自の漢字表記+ルビで原作の名称」という形に書き直されているケースが非常に多い(ドラゴスライム→竜スライム、魔物ハンター→魔物狩人、など)。
これについては世界観を意識したというわけでもなく、単に作者本人の作風というだけだろう。