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【法皇就任演説】

Last-modified: 2019-07-13 (土) 15:38:31




DQ8 Edit

【マルチェロ】が新法皇として即位した際に【聖地ゴルド】にてぶちかました大演説。
嫌味を言ったり、【法皇】を暗殺したり、人を【煉獄島】送りにしたりと、何かと嫌なことばかりして印象に残っていたマルチェロだったが、某国民的ロボットアニメの名シーンもかくやという大演説に、彼というキャラが記憶により鮮烈に刻み付けられることだろう。
 
もっともその直後、【主人公】たち一行に聴衆の面前で倒されたことで【ラプソーン】に操られ、自らが前法皇を殺めた事を明かされた挙げ句、杖を【女神像】に投げつけるや否や【聖地ゴルド】大崩壊という、全体としては残念な結果に終わったとも言える。
 
ちなみに演説といえばDQ6(およびDQM)の【ジャミラス演説】があり、「ジャミラス! ジャミラス!」の破壊力からよくネタにされる。
他方、本項のマルチェロ演説は破壊力のあるフレーズもなければ内容も重いため、ネタになりにくいようだ。

演説全文 Edit

「……ご列席の諸侯も ご存知の通り
 亡くなられた前法皇は あまたの祈りと 涙とに 見送られ……
 安らかに 天に召された。
 よからぬ噂を 立てるものもあるが まこと 天寿を全うされたのだ。
 しかし。……私は 次の法皇に 即位する気は ない。
 いや 正確に言おう。これまでのような法皇として 飾り物にされる気は ないのだ。
 王とは 何だ?ただ王家に 生まれついた。
 それだけの理由でわがまま放題、かしずかれ暮らす王とは?
 ただの兵士には 王のようにふるまう事は 許されぬ。
 たとえ その兵が王の器を もっておろうとも 生まれついた身分からは 逃れられぬ。
 ……そう 私もだ。
 不貞の子として生まれ 家を追われた 身分いやしき者は 法皇にふさわしくない。
 教会の誰もが そう言った。
 良家に生まれた 無能な僧どもにしか 法皇の冠は 与えられぬのだ と。
 いと徳高く 尊き前法皇。
 だが 奴が 何をしてくれた?世の無常を嘆き 祈る。それだけだ。
 神も 王も 法皇も みな当然のように 民の上へ君臨し 何ひとつ 役には立たぬ……
 ……だが 私は違う。
 尊き血など 私には ひとしずくたりとも 流れてはいない。
 そんなものに 意味なぞない。だが 私はここにいる。
 自らの手で この場所に立つ権利をつかみ取ったのだ!
 私に従え!
 無能な王を 玉座から追い払い 今こそ 新しい主を選ぶべき時!!
 ……さあ。選ぶがいい。我に従うか さもなくば……
 ……そこにいる侵入者のように 殺されるかだ!」

これを聞いた観衆の反応は、どよめきと戸惑いしかなかった。
終盤の「我に従え~」のくだりを聞いて困惑の表情で退出しようとする人もいたが、マルチェロの配下が無言で剣を突きつけ座りなおさせるシーンがあり、武力で強引に「従うか死ぬか」の二者択一を迫っていることがうかがえる。

3DS版 Edit

3DS版のマルチェロの出自は「【ドニの領主】と平民の女性との間に生まれ、縁談が持ち上がったために捨てられた後、一時は後継ぎとして育てられたもののククールの誕生によってまたしても捨てられた」という設定に変更されている。
そのため「不貞の子として生まれ 家を追われた 身分いやしき者は 法皇にふさわしくない」というくだりが、「平民の母を持つような 身分いやしき者は 法皇にふさわしくない」との文言に差し替えられた。
この変更により、不貞の子と蔑まれることはなくなっているが、マルチェロにとって父親は憎く蔑むべき存在であることは何ら変わっていない。
 
ただし、不貞の子という設定を変えたために、「身分いやしき者」という表現には少々違和感が出てしまっている。
「周囲の人間がいずれも高貴な血筋にある中、自分は平民の母を持つから身分いやしき者」ということになるのだろうが、単なる平民の子供が不貞の子ほど卑しいかというと、疑問符を禁じ得まい。
 
……とは言えその一方で、一般大衆には重すぎて実感が湧かないであろう「不貞の子」という部分が、「平民」という身近な単語に変わった事により、「平民というだけでのし上がる事が許されず、生まれ持った高貴な血だけが物を言う世の中は異常だ」との意図が一層見えやすくなった面もあると言える。
演説・解説においては、専門的用語を使って複雑に説明するより、平易な表現で語る方が一般大衆には伝わりやすいもの。
児童向けの参考書などを見ると分かりやすいだろう。
 
もちろんこの演説のシーンもボイス付きである。
ヘッドフォンなどを使用するとわかりやすいが、よく聴くと、広い場所で演説している環境ゆえ、きちんと声が響いてエコーする演出がされていることがわかる。
なおマルチェロの声を担当した諏訪部順一によると、この演説はとくに熱意を込めた自信作とのこと。

内容について Edit

要約すると、マルチェロは「身分制度は無能な者が高位に就いてしまうので言語道断、相応しい実力を持つ自分こそが法皇となり実権を握るべきだ」と主張している。
跡継ぎに恵まれなかったドニの領主の得手勝手で産み落とされながら、その後【ククール】が生まれたために邪魔者として家を追われたマルチェロからしてみれば、身分制度を激しい憎しみとともに否定するのはごく自然と言えよう。
 
ちなみに、演説の中で「尊き血など私にはひとしずくたりとも流れてはいない」と言っているが、マルチェロは一応マイエラ領主の血、つまり貴族の血が流れている。
ただしその家名は既に断絶してしまっているため、尊い血としては機能していないのだろう。
仮に家名が残っていたとしても、『実力』にこだわるマルチェロにとっては高貴でも何でもなく、むしろ最も憎み蔑むべき血であることは疑うべくもない。
 
身分制度には、個々人が能力に合ったポジションで働くことを阻害する、【ハワード】が当初行っていたような人権蹂躙を誘発する、【チャゴス】のように王族などがその身分を笠に着て大問題を引き起こす(現実世界にも過去のDQ作品にも例あり)といった問題点がある。
しかし一方で、身分を用いて人々の役割を前もって決めることで過度の出世競争による疲弊や腐敗した手法による出世を防ぐなど合理的な部分もあるため、全面的に否定・非難されるべきものでもない。
 
また、劇中には確かに身分制度はあるが、出自に関係なく高い地位にのし上がったキャラクターはいくらか確認できる。
本人が辞退したものの【オディロ】は粉屋の息子という身分から法皇に推薦されたことがあるし、出自不明の孤児であった主人公もエンディングでは【トロデーン】の近衛隊長に出世する上、ルートによってはと結婚し、王家に迎え入れられることとなる。
何より、他ならぬマルチェロ自身も孤児の身分から権謀術数をめぐらせた末、法皇に成り上がっている。
そうすると、DQ8の世界で生まれ持った身分が必要なのは王侯貴族くらいで、それ以外の高い地位に就くことは実力でもっても十分可能であると考えられる。
 
また、この世界の王と呼ばれる人物は、不審者の侵入を許した結果国ごと呪われた【トロデ】、妻を亡くした悲しみの余りに国を巻き込んで喪に服し2年近く引きこもった【パヴァン】後継者育成に完全に失敗した【クラビウス】、恋人を追って自身の義務を捨てた【エルトリオ】、儀式の失敗によって民を苦しめた【竜神王】、病のために若きに国の重務を押し付けている【メダル王】など、それぞれマイナス面もあるにせよ概ね民から支持されておりただの無能とは程遠い。
 
ただし、【トロデーン】【アスカンタ】【サザンビーク】の3王国は、共通して後継者問題を抱えている。
トロデーンは、ミーティアルート真エンディング以外では、【ミーティア】が女王として即位しても、相手に多大な問題があったとはいえ結婚式から逃げ出したという事実が尾を引き、婿探しに苦労することが懸念される。
アスカンタは現状パヴァン王に子も配偶者もおらず、また極端なまでに前妻を愛していた彼のことなので、こちらも再婚がうまく行くかには不安が残る。
後継者候補はいるものの、その唯一の候補がアイツであるサザンビークは言わずもがな。
この先も変わらず王政を続ければいずれは有力な人材が現れなくなり、国が衰退する可能性も出てくるだろう。
現実世界の例を見れば王権の打倒により発展した国家も存在するため、DQ8の世界においても、王政を廃する事は十分に一つの選択肢となっていい。
その点では、マルチェロの言葉にも一理ある。
 
だがマルチェロの姿勢は、指導者に相応しいものではない。
彼は確かに実力はあるのだが、出世のためなら一切手段を選ばず、買収工作や冤罪・暗殺による政敵の排除を行うといった卑劣な行為に及んでいる。
その上、即位式でも聴衆を武力で威圧した挙句、邪魔な主人公達相手に至っては有無を言わさず殺そうとした。
このようなやり方で出世することが容認されては、地位に相応しい実力がない者までも指導者になれてしまう。
結局のところ、マルチェロが唱えた「実力主義」とは旧体制を覆しより良い善政を築くためのものなどではなく、自分が独裁を敷くことを正当化するための詭弁でしかなかったのだ。
 
更にマルチェロは、「神も王も法皇もみな当然のように民の上へ君臨し何ひとつ役には立たぬ」とまで言い放ってのけた。
王や法皇をこき下ろしただけでも、ほぼ全ての国や集落の指導者や前法皇、加えて彼らを尊敬する民衆に喧嘩を売ってしまっているのに、それに飽き足らず信仰の対象たる神まで貶してしまっては、弁解できたものではない。
法皇になっておきながら公の場で人々の信仰を嘲ったのでは、聖職者や指導者どころか、一人の人間としてアウトである。
 
実力主義を広めるならば、信仰を背景に各地の有力者に働きかけ、既存の体制の問題点を指摘しつつ実力主義の良い点を示していけば、支持者もついたことであろう。
また、独裁政治を行うにしても、初めは善政を敷いたり従う者への恩恵を提示したりして民衆の心を掌握し、勢力が拡大したところで次第に都合よく体制を変えていくのが基本である。
さらに、宗教者であるマルチェロが政治に口を出すならば、教会と各国との間に太いパイプを作って発言力を高めるなど、対外関係も含めて慎重に工作を進めていく必要があっただろう。
 
だが、マルチェロは教会内部の平定も終わらないうちに各国の民衆から指導者まで全方位に威圧・挑発的な発言をし、さらには最もひた隠しにするべき独裁主義と不信心を派手に露呈してしまった。
これでは、仮に主人公達の妨害やラプソーンの支配を受けることなく就任式を終えられたとしても、無意味に敵を増やすのみで支持者のつきようがない。
 
今まで狡猾に動いて来たマルチェロにしては迂闊を極めているが、法皇になる野望を果たしたことで思い上がり、油断したのかもしれない。
メタ的に見れば、前法皇暗殺の役目を果たした彼をさっさと退場させ、ラプソーン戦まで持っていかなければならないというシナリオの尺の都合なのかもしれないが……
何にせよ、長い時間をかけてようやく手にした法皇の地位を一瞬で失ったことは、この上ない三日天下と言えよう。