【鎧の魔槍】

Last-modified: 2021-04-02 (金) 12:03:01

ダイの大冒険

【ドラゴンクエスト ダイの大冒険】に登場する武器。魔界の名工【ロン・ベルク】の代表作である、「鎧化(アムド)」系の武具の一つで、槍と鎧が一体化している。鎧化武器の例に漏れず『【デイン系】以外の呪文を無効化する【オリハルコン】の次に堅い金属』でできている。
 
経緯は若干不明瞭だが、【バラン】直属の竜騎衆が一人、陸戦騎【ラーハルト】愛用の槍。
普通に考えればロン・ベルクが作成したのち、鎧の魔剣や光魔の杖と共にバーンに献上された物が、槍使いのラーハルトに丁度良い戦力増強としてバラン経由で下賜されたと考えるのが素直な流れだろうか。
この槍は激闘を交わした【ヒュンケル】に引き継がれ、ロン・ベルクの手で改良されつつ長らく活用されるが、物語終盤で蘇ったラーハルトの手に再び戻った。
また、【アバン】もラーハルトから【ミスト】戦で槍本体を、【バーン】戦では鎧に仕込まれた剣を借り受け利用している。
 
他作品では星ドラに登場しており、原作通り鎧化が可能で、その時だけハーケンディストールが使用できる。

所有者の変遷

鎧の魔槍がラーハルトから譲られるという流れは、敵幹部から頼れる味方になったヒュンケルの衣替えという意味も持っている。
 
不死騎団長として全身を覆う【鎧の魔剣】を装備したヒュンケルは、表情の見えない鎧姿で底知れない迫力を持つ悪の幹部という演出であったが、味方となり頼れる戦士兼美形の兄貴という立場になった後は、表情の出しにくい鉄仮面のような兜が邪魔になってしまった。
ハドラー戦では戦いの後に脱げ落ち、そのまま拾わずダイ達に合流に向かっている(旧アニメ版では、兜につけたまま剣を変形させた負荷によるものか破損してしまったという形になっている)、ラーハルト戦においては挨拶代わりの一撃で早々に兜が破損し顔が見えるようになる。
漫画としては表情を描写する都合から兜は無いほうが良いが、毎回のように兜だけ破損するのでは不自然になってしまう。
そこで登場したのが「鎧の魔剣の兄弟とも言える同等クラスの武器」であり、「ヒュンケルの特徴的なギミックである鎧化もできる」鎧の魔槍だったのである。
鎧の魔槍は、単にヒュンケルの表情の見える鎧への変更のみならず、ヒュンケルとラーハルトの男の友情、それによるバランからは聞きだすことはできないダイとバランの過去の説明、さらにはダイとの武器被り解消という一石四鳥をなしとげ、強烈な存在感を持つ武器となった。
 
ヒュンケルに敗れたラーハルトは力尽きる寸前にバラン、ひいてはダイの為に魔槍を彼に託す。その直後のバラン戦にて魔剣は焼失したためヒュンケルはこれを機に槍使いへと転向するのだが、流石のヒュンケルも槍については全くの素人であったため、アバンの書に記されていたアバン流槍殺法を読み解き、槍の扱いに熟達するために修行の旅に出て、自在に槍を扱えるようになった。
バーンとの初戦における敗北でかなりの損傷を受けたため、【ダイの剣】と共にロン・ベルクの下に帰還、改良修理される事となる。その後最終決戦にてヒュンケルと共に戦い続けたが度重なる戦闘と負傷によってついにヒュンケルは戦線離脱、復活したラーハルトに魔槍は返却された。
ラーハルトの手に戻るまでヒュンケルは魔槍に向かって「友」と呼びかけることが多く、死闘と友情を交わしたラーハルトの分身として愛着を持っていたようだ。
 
最終決戦に入りヒュンケルが激闘の末にリタイア、同時に本来の所有者のラーハルトが復活し彼の元に戻った魔槍だったが、異常な防御力を持つミストバーンとの戦いによる度重なる衝撃の蓄積で穂先が目に見えて傷みだし、バーンとの最終決戦ではラーハルトが玉砕した際についに槍本体がバラバラに大破した。
魔剣の場合は刀身が失われたのをしてヒュンケルが「死んだ」と断言したのだが、魔槍の場合どこをどれぐらい損傷すると修復不能になるのかは明言されていないため、このあとどうなったかは不明である。
 
新旧共にバーン戦で使用されたり、ヒュンケルの因縁であるミストバーン戦で使われたり、グランドクルスの触媒にされたり、戦友同士で受け渡しがあったりと、物語的に中々美味しい活躍をしており、道具としては人間のキャラクターに迫るほどの名脇役と言えるかもしれない。

性能

普段は長さに不釣合いなほど巨大な穂先を持った槍の姿だが、【鎧の魔剣】と同じく「鎧化」の声に反応し穂先が展開して鎧に変わり、シンプルでスマートな槍本体が現れる。
「鎧化」の場面は初登場時のラーハルトvsヒュンケル戦、病床から起きたヒュンケルが死の大地に向かう直前、ヒュンケルがミナカトールに臨む直前、復活したラーハルトが再びまとった時の4回描写されているが、鎧となる部分が大きく展開して装備者の身を覆う特徴的な瞬間は最初の1回きりで、後の回では省略されている
重装備となる【鎧の魔剣】に比べて、胸当て部分は重厚だが腕と脚は大きく露出する機動性を重視するデザインで、軽装なぶん防御性は魔剣にやや劣る。また上記のように表情を見せるための衣替えが主目的でもあるため、頭部はヘッドギア或いは鉢金状となって顔の部分は覆っていない。
鎧の下は魔剣と同じく黒いタイツスーツとなっており、【アルビナス】の毒針が貫通する程度の防御力しかないが、そのぶん動きの自由度は高く、さらに全身の各部に武器を仕込んであり、あらゆる体勢から攻撃を繰り出せるようになっている。ヒュンケル曰く、ラーハルトほど器用では無いため周りに付いた武器はあまり使わないようで、単体で利用することは何度かあったが槍との同時使用はほとんど見られなかった。
 
槍以外の武装としては左手にブーメラン兼小盾を持つ他、右手甲は鋭い先端を活かした投擲武器として使える。
更に胸部には2本の手裏剣を格納、両膝の突起も武器になる。
また、槍自体にも柄を短く伸縮させて盾に格納したり、側面から針状の刃を展開して十字槍に変形する機能が存在している。
単行本21巻末に載っている「キャラクターQ&Aコーナー」によると、「ロン・ベルクとの特訓で聞いた物だけで10か所はあった」とのこと。
 
言葉を発する事は無いが、意思を持ち合わせているらしく、状況次第では持ち主や生みの親であるロン・ベルクの下へ跳ぶことも可能のようだ。
一度【エイミ】によって隠された事もあったが、その際もたとえ素手でも戦いに向かおうとするヒュンケルの前へといつのまにか出現した。また、ラーハルトは「鎧もお前のことが気に入ったみたいだな」と発言しており、武器の側の意思によっては機能や全力を発揮できないらしい。
 
ちなみによく【死の大地】での【バラン】との勝負で「【クロコダイン】が言及してないけど【デイン系】使えばバランはこの勝負に乗らなくてよかったんじゃね?」という無粋なコメントをする輩がいるが、敵地である死の大地でデイン系を使うことは敵に自分の居場所を教えるようなものであり、選択肢になかったものと思われる。
 
物語中盤でバーンに敗れ、かなりの損傷を受けたため【ダイの剣】と共に次なる戦いに備えるべくロン・ベルクの下に舞い戻り修理、改良される。
基本性能の強化の他、右手甲に展開式の片手剣、両足に蹴りを強化する刃など、副武装がより充実した。もっとも、いくつかの武装は改良前にもあった可能性もあり、ロンに使い方を習ったおかげで使いこなせるようになっただけかもしれない。(しかしその後ラーハルトは改良後に仕込まれた筈の剣をヒュンケルから何の説明も受けずアバンに渡すシーンがある。この辺りが器用さの差だろうか)
穂先もシンプルな形から左右にパルチザンのような刃が付き、【グランドクルス】使用時には直角に展開し十字状になる。
右腕は刃のみを伸ばして使うこともでき、ヒムとの戦闘では左手に握るナイフと合わせてグランドクルスの発動を狙っていた。
 
ちなみに鎧化しない状態でもラーハルトはオリハルコンの身体を持つ【マキシマム】の頭部を直接刺突し、すぐさま全身を切り刻んだ。さらに直後、手下の兵士の駒5体を【ハーケンディストール】で纏めて両断、一掃して見せた。この様に、鎧の魔剣は非使用時は鞘として構築されるが、こちらは鎧そのものを巨大な槍としても使用できるようだ。
 
単行本の随所にあるキャラクターデータからの逆算で、
元は攻撃力85、守備力80(16巻)。強化修復後は攻撃力90、守備力85(30巻)。
作中では「攻撃力、防御力が飛躍的に上がっている」と言われているが、それぞれ5ずつしか増えていない。ある意味兄弟武器の【ブラックロッド】も似たようなものだが。とはいえ劇的な強化が可能≒以前作った物に粗があった、手抜きだったということになってしまうので足掻きに近い強化なのだろう。強くなるには使い手のレベルアップしかないとロン・ベルクは語っている。
 
【戦士】の武器としては3の【稲妻の剣】(85)や【魔神の斧】(90)と同等、槍としては最強格の【デーモンスピア】(99)に次ぐ程度と、当時のゲームバランスであれば十分実用に堪える数値。
むしろ防具としての性能が高く、単純に守備力で言えばDQ3の【光の鎧】(75)、DQ4の【天空の鎧】(70)という伝説の勇者の装備以上な上にデイン系以外の呪文に完全耐性があるため、たとえ他の選択肢があってもこれを選ばない方がどうかしているレベルで強い。
ただし、兜や盾も兼ねていると考えるとトータルではやや物足りない。(3の【勇者の盾】で50、4の【天空の兜】で30、【天空の盾】で55)
おそらく物理守備力で考えるならば鎧の魔剣の方がより強力だっただろう。

備考

DQ9に登場した魔槍(まそう)と名の付く武器は同個体と似たような形質をしているが、鎧化するような要素は無く、能力にも相違点はない。
 
旧アニメでも当初は登場が予定されていたが打ち切りの関係で鎧化ラーハルト及び鎧化ヒュンケルの作画はされていたものの未登場となった。
 
コミックス33巻の背表紙には強化後の鎧をまとったラーハルトの姿が描かれているが、胸部の仕込みナイフ(手裏剣)が付いたままの状態に見える。これらのパーツは本編中でヒュンケルが使ってしまったため、ラーハルトが装備する以前に欠損している。
もっとも、返還した時点で鎧はナイフどころか全体的にかなりのダメージを受けており、そのまま背表紙にするには少々格好がつかないという事情はある。
背表紙には「忘れていた」からと【フレイザード】が戦死から10巻近くも空けて出てきたこともあり、このイラスト自体が本編とは連動しておらず、はっきりと言ってしまえば「撮影用」「グラビア」に近い扱いなのだろう。