【指の数】

Last-modified: 2024-02-22 (木) 03:42:34

概要

ドラゴンクエストシリーズに登場する人型モンスターの指の本数が初出時は4本指であったはずが、リメイク・スピンオフ等で再登場するときに5本指に変わっているという問題。
 
そもそもDQ1の原画を見ると、人型モンスターは一様に5本指で描かれている。
例外は【ゴースト】の3本指と【リカント】の4本指で、後者は獣の表現だったと考えられよう。
しかしFC版のグラフィックでは、【ゴーレム】の突き出した方の手や【まほうつかい】【りゅうおう】の開いた手は5本指で描画できているが、【あくまのきし】は4本指になってしまっている。
 
DQ2以降の原画では、人間タイプであるはずの【モンスター】も含めて4本指が基本となった。
これらはドット絵の表現力を考えての配慮である可能性が考えられよう。
手そのものを大きく描いた【マドハンド】が5本指であることからも、そのことが窺われる。
 
その一方で、後述の通り【鳥山明】【ドラゴンボール】で魔族を4本指で描いているため、【ゾーマ】【デスピサロ】等の4本指は、本来の意図として4本指なのか、ドット絵への配慮なのか分かりにくい部分がある。
他方【デスタムーア】は、原画では第一・第三形態がはっきりと5本指で描かれている(第二形態は構図上、指の本数が確認できない。)。
SFC版のグラフィックでは第一・第二形態は4本指だが、第三形態の【みぎて】【ひだりて】は原画通りに5本指となっている。
 
後年、これらはだいたい5本指に修正された。
人型に近いモンスターほど5本指にされる傾向にあるようだが、デスピサロは4本指のままだったり、かと思えばリカントや【グレイトドラゴン】が5本指だったりと、修正の基準が混乱しているようにも見える事例もある。
 
さらには、同じモンスターなのに作品や媒体によって修正の有無が不統一な場合がある。
3DS版DQ11に至っては3Dモードでは5本指のモンスターでも2Dモードでは4本指と、同一作品内で指の数が異なるという珍事が起こっている。DQ2以降の先例を踏まえつつ、3DSの処理能力や視認性に配慮したものだろうか。
バトルロードの【おおきづち】のカードは絵柄の違いによって5本指のものと4本指のものと3本指のものが混在していたが、バトルロードビクトリーでは対戦時に表示されるグラフィックのみ全て5本指に修正されている。ただし、カードアルバムで見られるグラフィックは修正されていない。
スーパーライトでは、【主人公(DQ3)】とゾーマがセットになったモンスター【勇者と闇の支配者】及びその転生先の【そして伝説へ】のゾーマの指の本数が紹介動画やタイトル画面では4本になっているが、ゲーム中のグラフィックは5本指になっている。タクトや『WAR OF THE VISIONS ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス 幻影戦争』のDQタクトコラボで登場したゾーマも、イラストでは4本指だが3Dモデルは5本指という差異がある。
ダイの大冒険では、旧アニメにおける【クロコダイン】の指の数が4本になっているシーンと5本になっているシーンが混在している(原作では4本。新アニメやDQMSL等のゲーム作品では5本に統一されている)。因みに、同作では【超魔ゾンビ】の指の数も原作では4本だが新アニメ等では5本に修正されている。
 
フィギュアなどの立体物にこの傾向は顕著らしく、例えば「モンスターズギャラリー ミニ」シリーズで販売されているモンスターでは前述のゾーマのほか、リカント、【ようがんまじん】、グレイトドラゴン、【アンドレアル】【アクバー】などのモンスターは全て5本指に変更されている。
他方、【ねこまどう】のような動物擬人化系モンスターの場合は4本のままなようだ(猫の指の数は、前足は親指が離れた位置にあるので5本、後足は親指がないので4本である)。

背景

漫画やアニメでキャラクターの指を4本で描く手法はディズニーアニメが起源とされる。
動いていれば5本に見えるということで、作画・色塗りの負担を減らすための工夫だったという。
日本では戦後、手塚治虫・石ノ森章太郎・藤子不二雄などが漫画で用い、一時期は普通の手法だった。もっとも60年代末に劇画が登場して以降は、5本指が普通となっている。
 
【鳥山明】【ドラゴンボール】でピッコロ大魔王やマジュニアなどの魔族を4本指で描いている。
ピッコロ大魔王は原作で5秒を表すジェスチャーの1コマだけ5本指になったことがある。鳥山明はこのコマの枠外に「ゆびが5本になっちゃった」と書き記しており(これについて鳥山は「せっかく格好いいシーンなのに"4秒"じゃカッコつかないから」と説明している)、人間との差別化のために4本指で描いていることがわかる。
 
他方70年代以降、「4本指(ヨツ)」はいわゆる「被差別部落民」を意味する差別表現であるとして抗議の声が高まり、テレビ・出版業界等でガイドラインが整備されるに至った。
ドラゴンボールの魔族も原作は4本指だが、アニメでは5本指に修正された。
 
「指の数」が「大人の事情」のようにデリケートな扱われ方をするのは、ゲーム業界にもこうした政治性のある規制が及んできたように感じられることが背景にある。
なお、文脈と背景はまったく違うが、同様に規制が強まった事例として【おどりこのふく】【性別】の表記、【十字架】【ガネーシャエビル】ランクSSがある。
 
一方で近年になって新たに浮上してきた問題として3Dモデル化がある。かつての静止画や2Dアニメーションの時代からは大きく進歩し、様々なモーションを立体的に見せることが可能になった。その技術の根幹はモデルにボーンが組み込まれており、ボーンを動かすことで簡単に様々なモーションをさせることができる。
しかし人型モデルは複雑であるため、あらかじめテンプレートが用意されていることが多い。このテンプレートが5本指で作られているため、人型モンスターはすべて5本指にせざるを得ないというものである。
なお【鬼眼王バーン】については元々が異形の怪物化というコンセプトだからか3本指のままである。