コプリー 標準 PART.10 幕間

Last-modified: 2024-11-30 (土) 17:53:17

ソルくっそ~、好き勝手飛び回りやがって……ペルシカ、あたしはあいつを追う!
ペルシカなんだか変です……ソルさん、戻ってください!
ソルへっ?わ、わかった!
 ソルは目の前のエントロピーを一刀両断し、颯爽とペルシカのもとへ戻った。
ドレーシーペルルン、どうかしたんですか?
ペルシカええ、なんだか順調すぎる気がして……
ペルシカソルさん、先ほどの戦闘記録を同期して頂けますか?
ソル待って、地形情報を整理するね……よし、送ったよ!
ペルシカありがとうございます……
ペルシカ……やっぱり。
ドレーシー何か見つけたんですか?
ペルシカ下位エントロピーの足止めとオディールさんの機動力を以てすれば、私たちを簡単に引き離せたはずです。そうしないのは、何か目的があるとしか……
ソルあ、バックトラッキングだね、あたしにまかせて。
ソル……ペルシカの言う通りだ。これまで通ったルートと現在の地形から推測するに、あいつ、このポイントにあたしたちを誘き出すつもりだよ……
タラナムここは……生態観測所。
ソルへぇ、教えてくれるんだ?
タラナムまずい……彼女を行かせるな。
ペルシカ「まずい」?そこには何があるんです?
タラナム……
ソルまただんまりか。さっきの、まさか自動応答とかじゃないよね?
ペルシカ少なくとも目的地はわかりました。
ペルシカ生態観測所に向かいましょう。
ソルえっ、罠だったらどうするの?それか、ここで二手に分かれるのは?あたしはこのままオディールを追うよ。
ドレーシー大丈夫。お二人の判断が正しければ、オディールが向かう先は一つ。
ドレーシー生態観測所に先回りして、彼女を止めればいいんです!
ペルシカその通りです。ドレーシーさん、オペランドを少々お借りしても?
ドレーシーえっ……オ、オペランドをですか?
ペルシカあっ、ご、ごめんなさい。一時的に協力し合ってるだけなのに、オペランドをねだるのは失礼でしたね……
ドレーシーいえ、そんな。ただ、わたしのやり方は少~し……乱暴でして。
 ドレーシーはそう言って、尻尾を軽く動かした。
ペルシカかまいません、こんな状況ですし。この際、細かいことは気にしませんよ。
ドレーシーうふふ、それなら遠慮なく……
 
 ……
ペルシカえっ……こ、こんなやり方で?ほ、本気ですか!?
ドレーシーオペランドが欲しいのでしょう?
でしたら我慢してください、すぐに終わりますから♥
ソルおおおっ!?尻尾をこんなふうにねぇ、さすがは人形整備士!
 ……
 準備を整え、ペルシカたちは生態観測所へと向かった。
ソル着いた、あの建物がそうだと思う……
ソルんっ!?あれは……オディール!
 生態観測所からそう離れていない海面上に、黒い人影が浮かんでいる。
 オディールは成熟しつつある黒い翼を羽ばたかせながら、
冷ややかな視線で一行の訪れを待っていた。
オディールまたお会いしたわね、竜殺しへ赴く勇者様方。
オディールシナリオの方向性に気づくだなんて、役者の素質があるわ。
オディールけれど、舞台裏を覗くのは感心しないわね。正しい観客の在り方とは言えなくてよ。
ソルお前なぁ、少しはわかるように喋ったらどうなのさ!
ソル海底の穴と津波はお前の仕業か?
オディール主には温床が必要よ。彼女のために次なる舞台を探し出す、それが我らの使命。
オディールここならすべての条件が揃っている、ただそれだけのこと。
ペルシカやっぱり、地底はエントロピーに蝕まれていた……なら、教授たちは……
ソルペルシカ、あいつが何言ってるかわかるの!?
ソルおい、教授とアンナはどうした!地底で会ったんだろ!?
オディールふふふ……前途洋々たる新星には、それにふさわしき舞台があって当然。より素晴らしい悲劇が、彼らを出迎えるでしょう……
オディールあなた方に至っては……ここで退場なさい!
 刹那、オディールが一筋の黒い影となって、ソルに襲いかかった。
ソルはぁッ!
 ソルもすぐさま剣を抜き、ためらうことなく前方へと斬りかかる。
鋭い刃と爪がぶつかり会い、軽快な音を立てた。
ソルふっ……エントロピー化してその程度か?
 オディールの攻撃はソルの刀によって完全に抑えつけられた。
これ以上はびくともしない。ソルは刀柄を握ったまま姿勢を調整し、
腰の右側に掛けてあるナイフへと両手を近づけた。
 オディールが一歩でも後退すれば、即座にナイフを抜き相手を切り裂ける。
だがオディールが姿勢を変えなければ、
彼女の背後はがら空きになり、他の攻撃を防げない。
ソル残念だったな、お前の負けだ。
オディールこの躯体は戦いに不慣れ、主の改造も未完成……
オディール愚者のように力を張り合う気はないわ。
 次の瞬間、オディールは翼の下から成長しきっていない触手を伸ばし、
エントロピー液をあたりにまき散らした。
ソル!?
 ソルは不利とみて、瞬時にオディールを蹴とばした。
その勢いに乗じて後方へ宙返りし、エントロピー液を避ける。
 それでも、彼女の腹部には数滴のエントロピー液が付着していた。
 ふいに、エントロピー液の触れた箇所が緑色に輝き始めた。
オペランドでできた薄い膜がエントロピー液を相殺し、
白いオペランドとなって剥がれ落ちてゆく。
ソルサンキュー、ペルシカ!
ペルシカ気をつけて!相手は海に逃げました!
 見れば、攻撃に失敗したオディールが海上を飛び回っている。
まるで大海原を自然のシールドに見立てたかのように。
誰も水面上では動けない。メンバーは攻撃手段を失った。
ソルあたしの剣じゃ届かない。ペルシカ、遠隔攻撃できる?
ペルシカダメです!動きが素早くて、うまく狙えません!
ソルくっそぉ……こうなるとわかってたら、教授にバズーカを用意させたのに……
ドレーシーソルルン!こっちへ来ます!
ソルだぁりゃっ!
 ソルは迫りくるオディールに向かって剣を振った。
双方の攻撃がまたしても空を切る。
オディールふぅん……殺陣はなかなかね。
オディールそろそろ変化がなくちゃ――
 オディールが急に空中を一回転したかと思うと、
今度はソルにシールドを提供するペルシカへと牙をむいた。
ペルシカあっ――!
ペルシカソ、ソルさん!
ソルお前の相手は、このあたしだ!
 ソルがペルシカの前へと飛んで来て、再びオディールの攻撃を防いだ。
ソルペルシカ、ドレレン、あたしの近くに来て!オペランドで支援を!
ソルあのアホミニストレーターもだ!奴に狙われちゃ困る!
ドレーシーわかりました!
タラナム……
ソルこちとら野生動物との勝負じゃ負け知らずなんだ!
ソルこの距離なら、みんなを守れる!
ソル奴の体力を削って隙をつくよ!
ペルシカはい!
 オディールはダイブ攻撃を何度か繰り返したが、どれもソルによって弾かれた。
 だが予想に反して、オディールに疲れは見られない。
それどころか、ますます勢いづいている。
執拗な攻撃の嵐に、ソルが先に息を切らした。
ソルなんでだ……ずっと飛び回ってるのに、少しも速度が落ちてない……?
ソルこいつ、バケモノか?……って、バケモノだったわ……
オディールどこを見ているの?役者がよそ見するなんて!
ソルはぁッ!
ソルお前なんざ、よそ見してたって余裕だね!
オディールふふふ……盛大なパフォーマンスの幕開けよ。
オディールあなた方は観客でありながら、役者でもある――
ソルうぉわっ!
ソルくっ……しつこいな……
ペルシカこのままじゃ、こちらが先に消耗してしまいます。
ソルあああああもぉぉぉ!
ソルあたしも飛べたらなんとかなるのに!
ペルシカ飛ぶ……
ペルシカソルさん!考えがあります!
ソルおぉっ!さすがはペルシカ!
ペルシカドレーシーさん!
ドレーシーはい、ここに!
ソルへっ?なんでドレレン――
ソルあ……待って、もしかして……!?
 ドレーシーは一瞬呆然としていたが、すぐに意を察して得意げな笑顔を浮かべた。
ドレーシープッ……なるほど、わかりました!ソルルン、準備はいいですか?
オディール上演中は私語を慎みなさい!
 オディールには三人の会話が聞こえていないか、もしくは興味がないようだった。
 それでも、ひとしきり攻撃を終えると、オディールは警戒して上空へと羽ばたいた。
ソルドレレン、今だ!思いっきりやって!
ドレーシー了解です!
 次の瞬間、ドレーシーは突如180度回転し、自身の尻尾をソルに向かって投げ出した。
ソルうぉぉぉぉぉぉおおお!!
 ゴムでできたケーブルがソルの両足に絡みついた。
ドレーシーはソルを捉えたまま、その場でもう一度大きく回転した。
巨大な遠心力が働き、ソルは宙へと投げ出され空に綺麗なカーブを描いた。
ソルおぉぁあああぁぁぁああっだはッ!!
 ソルの速度が極限に達した瞬間、ドレーシーは尻尾を放した――
ドレーシーソルルンミサイル、発射~~!
オディールなっ……!?
 弓から放たれた矢じりのように、ソルはオディールへと急接近した。
 ソルを避けようとしたオディールだったが、今度は片翼が言うことを聞かない。
――ペルシカの演算攻撃が、彼女を捉えたのだ。
ペルシカワイヤーアクションも大変でしたでしょう。
ご苦労様でした、オディールさん。
オディール貴様――
ソル疾 焔 獅 子 斬 !
 
 炎を宿したソルの二振りの剣が、オディールへと容赦なく振り下ろされる。
オディールぐぅッ……ああああああッ!
 三日月のような火焔が宙を舞い、オディールの翼がたちまち燃え上がった。
 ソルが華麗な着地を決めると同時に、
支えを失ったオディールが地表へと叩きつけられる。
ソルやーっと地に堕ちたか。
オディールふふふふふ……あーはははははは!
オディールお見それしたわ、あなた方の技量は認めましょう。
オディールでも今は駄目、フィナーレはまだ準備中なの。さしあたっては、主の眷属とともに一曲踊って頂こうかしら!
ペルシカソルさん、気をつけて!周囲のエントロピーを盾に逃げる気です!
ソルそうはさせるかッ!