コプリー 標準 PART.23 終幕

Last-modified: 2024-12-03 (火) 20:16:44

ソル逃がしてたまるかッ!!
アントニーナソルさん、戻ってください!深追いは危険です!
ソルダメだ!今捕まえないと、次のチャンスがいつ――
 ……いつ巡ってくるかもわからない。そう言いかけたソルの目の前では、
エントロピーの波が浄化者に襲いかかろうとしていた。
 ゲートを狙撃した後、エントロピーに逆襲されたウィズダムの姿が、
ソルの脳裏によぎる――
 柄を握りしめていたソルは、ゆっくりと剣を下ろした。
ソルそう、だね……アントニーナの言う通り、戻ろうか。
ソル今追うのは危険過ぎる。
{教授}(ソル……)
ラヴエントロピーがコプリーセクターより撤退。哨戒タワー、追跡を。
 命令を下すと、ラヴはこちらに向き直った。
ラヴ浄化者の使命は果たしたわ、教授。約束通り、コプリーセクターのアドミニストレーター権限を渡しなさい。
ソルえっ?約束?権限を、渡すって……
{教授}始めましょう。
ソルま、待って、教授!?アドミニストレーター権限を渡しちゃうの!?これはタラナムがあたしたちに……
ソルア、アンナ!なんとか言ってよ!
アントニーナ……
ソル……アンナ、知ってたの……?
 
{教授}アントニーナ、アドミンセンターの通信装置は使えそう?
アントニーナ通信装置……?壊れてはいますが、修復に時間はかからないかと。
アントニーナ待ってください、まさか……浄化者に救援の要請を……?
 
アントニーナ修復は終わりました……一つだけ聞かせてください。
アントニーナもし浄化者が我々異常エージェントを敵とみなし、殲滅してきたらどうするつもりです?
アントニーナ私たちは確かに「ウィズダム」と協力していましたが、彼女は明らかにイオスフォロス一派です。
アントニーナもし今回、「フェイス」のような話の通じない中位浄化者が現れたら――
{教授}アントニーナ、これは保険なの。
アントニーナ……
 アントニーナはそれ以上何も言わず、顔を背けた。
 私はアドミニストレーター権限を使い、
浄化者の根城――リバベルタワーのチャンネルに接続した。
{教授}こちらはコプリーセクターのアドミンセンター。
セクター内に大量のエントロピーが出現、支援を要請する。
???おろろ~~?この声、それにこの識別信号は……
???久しぶりでおじゃるのぉ、オアシスの{教授}教授。
アントニーナお前は……ユーカリスト?
ユーカリストいかにも、みんな大好きユーカリスト様でおじゃる。
ユーカリストそちはアンナでおじゃるな?噂は聞いておるぞ。
アントニーナ浄化者の戦闘報告から?ありえなくはない。
ユーカリストうきゃきゃきゃ……冗談はさておき。教授殿、先ほど何と?まろの支援が欲しいとな?
ユーカリストふ~む、手伝いたいのは山々でおじゃるが……
ユーカリストこの情況をどう解釈したものか……陸に上がった河童かの?それとも、木から落ちた猿か?
ユーカリスト見ての通り、まろの権限は奪われてしもうた。出来ることと言えば、オペレーター程度のものでおじゃる。
アントニーナ想像に難しくないな。
ユーカリストぬぬぬぬ……なんとゆーヒドイ言い草!それもこれもエニグマでそちらを助けたせいでおじゃると申すに!
ユーカリストあまつさえ恩を仇で返す始末……まろは悲しゅうおじゃる。それがチョコの大事なトモダチへの態度でおじゃるか!?おッよよよよ……
(選択)1.エントロピーの殲滅が浄化者の使命なんでしょ?A
2.事が終わったら、あなたを助けにいくから。B
Aユーカリスト冷たい、冷たいでおじゃるぞ、教授!!!C
Bユーカリストむほッ!ま、まことにおじゃるか!?
ユーカリストなーんての。噓は良くないでおじゃるぞ、噓は。教授の信用ポイントが1減ったでおじゃ~る~C
Cユーカリストさてと、話を戻すでおじゃ。浄化者の敵はエントロピーのみにあらず……意味はわかるな?
{教授}取り引きをしましょう。
ユーカリスト取り引きィ?浄化者はそちらを獲物としか見ておらぬのじゃぞ。そんな相手と取り引きとな?
{教授}あなたに連絡が取れた、即ち――私たちにはコプリーのアドミニストレーター権限がある。
{教授}この権限を浄化者に渡してもいい。
アントニーナなんですって!?
ユーカリストほほぉ。浄化者がその権限を欲しがると?
{教授}アンジェラスの私たちへの態度からして、そうだと思うな。
{教授}あなたが責任を負いたくなければ、この権限を匿名メッセージにして送り出すつもり。
いずれ誰かが応じるでしょ。
ユーカリストなーるへそ、用意周到でおじゃるの。さすがは教授殿、下位浄化者をイジめるのが日課なだけはある!
ユーカリストくふふふ……かまわぬ、要請には応じてやろうぞ。浄化者が到着するまで、せいぜい持ちこたえるがよい。
 
ラヴそれでは、約束通り――
ラヴ【権限移譲プロセス開始、休戦命令有効化】
ラヴ【異常エージェントは1800秒以内に、速やかにコプリーセクターを離脱せよ】
ラヴ【その間、浄化者による異常エージェントへの攻撃は禁じられる】
(選択)1.【取り引き開始】D
Dラヴ……あなた方の、マグラシアへの貢献に感謝するわ。
 ラヴは私たちにお辞儀をした。
ソルまさか中位浄化者が来るとはね。
アントニーナ彼女はユーカリストの命令に従ったまででしょうね。
アントニーナ与えられた情報以外は、何も話そうとしませんし。
ラヴ浄化者の決断を忖度しないでもらえる?
ソル教授もダイタンすぎるよ、協力するのはヤブサカじゃないけどさ……ウィズダムの事もあったし……
{教授}これは保険の一つよ。
アントニーナええ、それも全滅するリスクを伴った、ね。
{教授}自信があったの、ユーカリストが間にいるからね。
{教授}通信を受け取ったのがユーカリストでなければ、
イオスフォロスの部下を呼ぶよう誘導するつもりだった。
アントニーナ……たとえ理解はできても、浄化者内部の派閥を利用した、その行為を認めるわけにはいきません。
アントニーナ人間の手段、人間の考えは、あまりにも複雑で混沌としすぎる。
アントニーナまさに綱渡りですよ。一歩間違えれば、我々全員の生命はありません……
ソルあはは、だからさっきから教授にそっけなかったんだ。
ソルでも、教授の判断はいつだって正しかったじゃん。細かいことは気にしない!
アントニーナもとより教授。なぜ浄化者との連絡に私を居合わせたんです?
E(選択)1.通信設備を修理してほしかったの。F
2.あなたに信頼してほしかったから。G
Fアントニーナよしてください。アドミニストレーター権限があれば、通信なんてあなた一人でも十分可能でしょう。E
G{教授}反対されるだろうとは思ってた、だからあなたを欺きたくなかったの。
アントニーナなるほど?私のほうが感謝するべきでしたね?
{教授}道はまだ長いのよ、一致団結しないでどうするの。
アントニーナチッ……
ラヴオアシスの皆さん、速やかにここを立ち去りなさい。
ラヴじきに本セクターは封鎖され、データの削除を……
ソルおい、浄化者!ウィズダムはどうした?
ラヴ繰り返すわ。オアシスの皆さん、速やかにここを立ち去りなさい。
ラヴ1650秒以内に立ち去らなければ、強硬手段に出るわよ。
ソルはん?仲間の情況すら教えられないってのか?
アントニーナ行きましょう、ソルさん。方法は他にあるはずです。
ソル……わかったよ、行こう。
 
 海水の逆流が止まった。しばらくして、二つの人影が海面から顔を出した。
末宵待った、エントロピーの信号がまだある。気をつけろ。
初塵デミウルゴスは死んだってドレーシーが言ってた。
エントロピー液の影響がまだ残ってるんだよ、きっと。
初塵……それと、彼女のデータも。
 初塵の言う通り、デミウルゴスのデータは依然としてセクター内に漂っていた。
生き物の亡骸のように、音もなく浜辺に座礁している。
初塵空はニセモノだけど、こうして見ると、今にも夕陽に燃やされてしまいそう。
初塵彼女は、夢にまで見た光を手に入れた。
稼働停止する前に、欲しかった自由は得られたのかな?
末宵死んじまったら、自由なんて何の意味もないだろ。
初塵返事してくれるなんて、珍しいね。
末宵こっちは行動モジュールがピンチなんだぞ、モンスターを哀れんでる場合か。
初塵浜辺まで少し距離があるね。私が連れてってあげようか?
末宵いい、自分でできる。
 
 ドレーシーとペルシカは気候ステーションを離れ、ビーチで私たちと合流した。
ドレーシー教授!またご一緒できて嬉しいです!
 ドレーシーが近づいてこようとする横で、ふいにペルシカがよろめいた。
とっさに彼女を支えたソルの行動が、図らずもドレーシーを阻んだ。
ソル大丈夫、ペルシカ?フラフラじゃん!
ペルシカオペランドを消費しすぎたせいです。皆さんがご無事で本当に良かった……
アントニーナドレーシーさん、仲間の初塵さんと末宵さんがまだ戻っていないようです。探すのを手伝いましょうか?
ドレーシーそれでしたら、初ちゃんとは連絡がつきました。もう浮上してるみたいですよ、すぐに合流できるかと。
ソルあっ!海から誰か来る!
ドレーシー初ちゃんと末くんだ!あぁ……末くんの様子が……迎えてあげなくちゃ。
ソルあたしも手伝うよ!
 
 初塵の傍にはもう一人の人形がいた。痩せていて顔色は悪いが、背筋はまっすぐだ。
末宵あんたが教授か。初めまして、オレは末宵。
末宵握手は遠慮しとくよ、今のオレには触れないほうがいいからね。
 彼は腕を出し、エントロピー化の著しい傷跡を見せた。
アントニーナ中程度までエントロピー化が進んでいますね。オアシスでなら治療できますよ、いかがです?
末宵……
ドレーシーあ、ありがとうございます、アンアン!でも、そろそろ戻らなくちゃ。
ドレーシーその……デミウルゴスのソースコードを手に入れたんですよね?よかったら、コピーを頂けませんか?そうすれば、わたしたちでも治療ができます。
 ドレーシーは尻尾を揺らしながら私を見た。どうにもこの視線には抗えない。
{教授}もちろん。
ソル末宵……だっけ?あんた、本当に大丈夫なの?顔、真っ青だよ?
末宵平気だ、心配いらない……
末宵……!?
キッ!
 ふいに末宵がよろめく。とっさに初塵が支えたことで、彼は完全に倒れずに済んだ。
初塵無理しないで、もうずいぶんと弱ってる。
末宵違う、勝手に決めるな。何かがぶつかったんだ。
ソルあっ……海の中に何かいる!
 ソルが剣を抜いた瞬間、海中から何かが飛び出し、
電光石火の勢いでアントニーナに襲いかかった――
アントニーナ……うっ!避けきれない……
小さなエントロピーキキーーッ!
 メンバーの見つめる中、難を逃れたエントロピーはアントニーナに接近し――
 その触手という触手を使って、彼女の足にまとわりついた。
アントニーナえ……えっ!?
ソルアンナから離れろ!
アントニーナま、待ってください……この子……私のオペランドを奪う気はないようです。
ソルえっ?靴下のせいで吸い取れないのかな?
アントニーナくだらない冗談は結構。
 アントニーナは小さなエントロピーを足から引っ剥がした。
エントロピーはまるで抵抗せずに、今度は触手を使ってアントニーナの腕にくっついた。
アントニーナこの状態でも、オペランドを吸収しませんね。
ソルなにそれ、冗談とか言って試してるじゃん……
ペルシカこれは……デミウルゴスがずっと抱いていた、エントロピーの幼体では?
ドレーシーあっ、言われてみれば確かに!しっかりと守られてたおかげで、浄化者の目をごまかせたのかも。
初塵デミウルゴスは、自分の子どもだと思ってたのかもね。
末宵また妄想か。いちいち人間の感情に当てはめるな、こいつはエントロピーだぞ。
ペルシカ研究サンプルとして、この子を引き取ってもいいかもしれませんね。
ペルシカさしあたってはアントニーナさんに懐いているようですし。教授、どう思われます?
(選択)1.危険過ぎる。H
2.いいね。I
Hアントニーナ一時的に保護するのには賛成です。変化のないソースコードよりも、成長し続ける生体サンプルのほうが研究には役立ちますから。
アントニーナ教授、連れて帰りましょう。
ソルほら、専門家のアンナがそう言ってるんだよ。こいつを持って帰れば早く研究が済んで、すぐにクロックたちを元に戻せるかもしれない!
 断る余地はなさそうだ。I
I 末宵は黙っている。ドレーシーは初塵と素早く視線を交わした。
ドレーシーオアシスに託すのも、悪くないですね。
初塵よく見ると、結構かわいい……
ソル攻撃できるのかな。つついてみてもいい?
小さなエントロピーキッ!!
ソルえ、アンナしかダメなの……?エントロピーまで差別すんの!?
アントニーナ腕がネバネバのベタベタになってもいいなら……お譲りしますよ?
 末宵はふざけた討論には加わらず、まっすぐ私の傍へとやってきた。
末宵どっからツッコめばいいやら……
末宵教授、あんた、こんなこと許していいのかよ?
{教授}オアシスでは多くのエージェントがエントロピーに感染している。
ソースコードを手に入れはしたけど、生体サンプルがあればより心強いはずよ。
末宵仲間のためにね……ふーん。
末宵……教授、一つ聞かせてくれ。
末宵オアシスとはなんだ?あんたらは、何のために戦ってる?
(選択)1.この災いの禍根を探し出すためよ。J
2.マグラシアからエージェントたちを助け出すためよ。K
3.あなたには教えられない。L
J末宵なるほどな、幸運を祈るよ。M
K末宵現実のほうがいいっての?賛同しかねるな。M
L末宵言いたくないなら、別にいいさ。M
M末宵オアシスと庇護者の目指すものは違うけど……
末宵オレの目的は……少しだけあんたと似てる。
末宵時が来れば、また協力し合うこともあるだろう。
(選択)1.期待してる。N
2.そうは思わない。N
N末宵そんじゃ、ここでお別れだ。
 
 追放者たちの背中を見送った後で、末宵たちもその場を離れた。
 クラウドにシュミレートされた日光はひときわ眩しく、
末宵は無意識に手のひらで光を遮った。
そしてふりかえり、追放者たちの去っていった方を見つめる。
ドレーシーデミウルゴスを見てるんですか、末くん?
 末宵は視線を逸した。
末宵別に。この先のルートを見てただけ。
末宵合流したからには作戦を続けるぞ。最優先命令を――
 そこまで言うと、末宵は急に倒れた。
ドレーシー末くん!?
初塵今は休ませてあげよう。
 初塵は末宵を支え、傍にあった木に寄りかからせた。
末宵10分もあれば十分だ、すぐに出発するぞ。
初塵うん。庇護者の任務はまだ終わってない。
でもその前に、ソースコードを持って帰って一旦休憩しよう。
末宵……わかった。
 末宵は視線を再び遠くに向けて、自嘲するかのように笑った。
末宵……すべては、【アルカディアのために】、か。