トゥイナー | ギッ! | ||
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「トゥイナー」はエントロピー特有のつんざくような雄叫びを上げた。 すると、地面に引きずられていた触手が突如張りつめ、 チェンソーのように高速回転し始めた。触手の刃がアントニーナへと襲いかかる。 | |||
触手に切り裂かれた空気が、鋭い風切り音を立てた。 | |||
{教授} | 2時の方向! | ||
アントニーナは右後方へと飛び退き、素早く端末を操作した。 無数のコードが集まりシールドとなって彼女の前へと展開する。 | |||
アントニーナはわずかに腰を落し、迫りくるエントロピーを見据えた。 シールドが破られた瞬間に、壊された部位を再構築するつもりなのだ。 だがシールドに触れるやいなや触手は回転を止め、敵は数メートル先へと吹き飛んだ。 痙攣し続けるトゥイナーの躯体から、淡い紫色の粘ついたオペランドが溢れ出る。 | |||
アントニーナ | ……ん? | ||
アントニーナ | 待ってください……このエントロピー、なんだか変です! | ||
アントニーナは再びオペランドを指先に凝集させ、 赤いビームでトゥイナーを攻撃した。 | |||
トゥイナー | ギッ!!!ギガッ!!! | ||
ピエリデスでは、この程度の攻撃じゃビクともしなかったエントロピーが、 ここでは容易く焼き焦がされてしまう。 | |||
アントニーナ | 60……いえ、40です!教授、ここのエントロピーの防御力は、ピエリデスの40%程度しかありません!しかも攻撃力は50%未満です! | ||
{教授} | 地形を利用して攻撃を防ごう、殲滅するよ! | ||
アントニーナ | 了解! | ||
粗悪な模造品のようなエントロピーは、 アントニーナの手で瞬く間に破壊され、液体となって地面へと染み込んだ。 | |||
難を逃れた少数のエントロピーも、以前のように最後まで立ち向かいはせず、 その場から一目散に逃げてゆく。 | |||
アントニーナ | そう簡単に逃げられると思うな! | ||
{教授} | 待って!アントニーナ、深追いはだめ! | ||
そう言ったとたん、黒紫色の波がまた激しく湧き立った。 私はとっさにアントニーナを引き寄せる。 | |||
アントニーナ | またこのウザったい波ですか……チッ! | ||
あたりに響いていた粘つく音が波とともに退いてゆく。 私たちの足元が定まる頃には、洞窟には静けさが戻っていた。 | |||
アントニーナ | 予想はしてましたけど、やっぱり気味が悪いですね。 | ||
{教授} | 波が退いた、追いかけよう。 | ||
アントニーナの検知したエントロピーの信号をたどって、 私たちは洞窟の奥へと向かった。 | |||
奥へと進むにつれて、周囲の景色もだんだんと物騒になってゆく…… | |||
(選択) | 1.アントニーナに忠告する。 | A | |
2.黙っている。 | B | ||
A | {教授} | アントニーナ、焦るのはわかるけど、 ここでのあなたは、あまりにも向こう見ずすぎる。 | |
{教授} | もし私たちに何かあったら、誰もオアシスの感染を止められないんだよ。 | ||
アントニーナ | わかりました……確かにその通りです。 | C | |
B | {教授} | …… | |
アントニーナ | …… | ||
{教授} | …… | ||
アントニーナ | はぁ……言いたいことはわかってます。 | ||
アントニーナ | クロックさんたちの命は、私たちにかかってる。 | C | |
C | アントニーナ | 今後はちゃんと命令に従いますよ。自分たちの安全のためにも。 | |
{教授} | うん。 | ||
アントニーナ | …… | ||
{教授} | …… | ||
アントニーナ | 何か言ったらどうなんです? | ||
{教授} | えっ…… | ||
D | (選択→G) | 1.エントロピーの状態について話す。 | E |
2.エントロピーの戦い方について話す。 | F | ||
E | {教授} | さっきの戦いから、なにか情報は得られた? | |
アントニーナ | ええ、まぁ……ここのエントロピーは明らかに、オアシスやピエリデスのものとは異なります。 | ||
アントニーナ | まだ成長しきってないんです。余計なコードが多い、一種のプロトタイプでしょう。 | ||
アントニーナ | さらに、なにかしらの能力制限を設けられてるようですね。あまりにも弱すぎます、損傷率を確認するまでもない。 | ||
{教授} | 確かに前に遭遇したものよりかは弱いけど、さすがに大げさじゃない? | ||
アントニーナ | もし、ピエリデスとコプリーの…… | ||
{教授} | え? | ||
アントニーナ | いえ、なんでもありません。 | D | |
F | {教授} | 記憶に間違いがなければ、 私たちを見て逃げ出したエントロピーは、これが初めてだね。 | |
アントニーナ | えっ? | ||
アントニーナは私の言葉に驚いたようだったが、すぐに冷静さを取り戻した。 | |||
アントニーナ | 戦闘中の些細な点に気がつくなんて、さすがはあなたです。 | D | |
G | アントニーナ | 認めたくはありませんけど、この会話でわかったことが一つあります。 | |
アントニーナ | 私たちのターゲットは、必ずここにいる。 | ||
{教授} | オディールとは別のターゲット? | ||
アントニーナ | そうです。ここへ来た時、オディール以上に強力なエントロピーの信号を検知しました。 | ||
アントニーナ | エントロピーの不可解な動きも、何者かが操っていると考えれば辻褄が合います。 | ||
アントニーナ | 私たちの探している大物は、ここにいると見て間違いありません。 | ||
{教授} | つまりオディールを追わなくても、ソースコードを入手できるってこと? | ||
アントニーナ | ええ、それも確実に。 | ||
{教授} | 良いニュースね。 でも相手に挑む前に、ペルシカたちに連絡して戦力を整えないと。 | ||
アントニーナ | …… | ||
{教授} | あなた、独りで乗り込むつもりだったでしょ? | ||
アントニーナ | ……まっさか~!アンナは世界でいっちばん親切なサイバーエンジニアなんだよ?守るべき人間を放っておくわけないじゃな~い! | ||
{教授} | 手がかりが見つかって、あなたも嬉しいんだね。 | ||
アントニーナ | チッ。 | ||
地底の洞窟はがらんとしていて、 私たちの足音を除けば、あたりには水の音しか聞こえない。 | |||
ちらほらと会話を交わすことで募る不安をごまかしながら、 私たちは信号の静止する場所へとたどり着いた。 | |||
アントニーナ | ここです。エントロピーの群れが中央の巣穴を守っていますね。 | ||
アントニーナ | まるでミツバチです……女王蜂を守る働きバチ、といったところですか。 | ||
{教授} | あなたの言ってた、強力な信号がこの奥に? | ||
アントニーナ | いいえ。信号を強度別にマークしています。この程度なら、おそらく小型の…… | ||
アントニーナ | 気をつけて!また波です! | ||
とたんに黒紫色の波がエントロピーの巣穴から湧き立った。 私たちは岩の影に隠れて波を凌いだ。ねっとりとした物音が波とともに近づいて来る。 やがて私たちは無数のエントロピーに取り囲まれた。 | |||
アントニーナは再びシールドを展開することで、 エントロピーの波をかろうじて防いだ。 | |||
――その時、洞窟の天井からぶら下がる鍾乳石の中に、私はとある人影を見つけた。 | |||
(選択) | 1.アントニーナに教える。 | H | |
2.様子を見る。 | I | ||
H | {教授} | アントニーナ、上! | |
アントニーナ | !! | ||
アントニーナは端末の分析レンズを人影に向けようとした。 だが前方から迫り来るエントロピーがそれを許さない。 | J | ||
I | ふいに、ぼんやりとした人影が、鍾乳石の中から素早く飛び出した。 | ||
私がその動きを見極めるより早く、人影はすでに落下を始めていた。長い槍を持った何かが、こちらへと迫って来る―― | J | ||
J | トゥイナー | グッ……ガ…… | |
少し離れた場所に浮かんでいたエントロピーが、 どうしたことか地面をのたうち回っている。 | |||
エントロピーは長い槍に貫かれていた。 躯体は瞬く間に液体となり、地面の下へと消えてゆく。 | |||
槍の主人は慣れた手つきで武器を地面から引き抜くと、 わずかにこちらをふりむいた。 | |||
アントニーナ | あれは!? | ||
異変に気づいたのか、地表にたむろするエントロピーが一斉に集まり出した。 湧き立つ波を従え、空中から落下してきた謎の物体を威嚇し始める―― | |||
トゥイナー | ガガァァァーーーー!! | ||
??? | ……かわいそうに。 | ||
刹那、荒波が激しく逆巻き洞窟の天井に触れた。 エントロピーの歪な雄叫びが地底空間にこだまする。 | |||
人影が長槍を手に宙を舞う。槍の先端のブレードを回転させて、 エントロピーの波を自在に操っているようだ。 | |||
続いて、人影は長槍を収めると、水に潜るかのように地中へと姿を消した。 | |||
アントニーナ | 信号解析完了……ニューラルクラウド計画に参加していた人形です! | ||
{教授} | じ……地面に潜った!? | ||
アントニーナ | あそこです! | ||
エントロピーの波の中心から、長槍が音もなく突き出された。 先端のブレードが素早く回転し、目の前のエントロピーを瞬く間に粉々にしてゆく。 | |||
数秒後、人形は徐々に退きつつある波へと降り立った。 槍を振り回し、エントロピーの残党を一掃する。 | |||
私とアントニーナが駆け寄った時には、 ちょうど最後の1体が液体となり、消えていくところだった。 | |||
(選択) | 1.話しかけてみる。 | K | |
2.黙っている。 | L | ||
K | {教授} | あなたは…… | |
私の言葉を待たずして、人形がこちらをふりむいた。 | M | ||
L | 私たちの気配に気づいて、人形がこちらをふりむいた。 | M | |
M | ヘルメットのせいで表情はわからない。ふいに、私は人形の視線を感じた。 だがそれもほんの一瞬で、人形はふりむくのをやめた。 | ||
??? | まだ来るよ、気をつけて。 | ||
淡々とした女性の声だった。次の瞬間、彼女の判断を裏づけるかのごとく、 四方八方からエントロピーが次々と現れた。 | |||
(選択) | 1.彼女とともに戦う。 | N | |
2.黙っている。 | O | ||
N | {教授} | かなり危険な状況だよ、ここは一緒に戦おう! | |
??? | いいよ。指揮は頼むね、「教授」。 | ||
O | 私の視線に気づいてか、人形がこちらをふりむき、私に向かって頷いた。 | ||
??? | 一緒に戦ってあげる。指揮は頼むね、「教授」。 |