コプリー 標準 PART.5 冷静

Last-modified: 2024-12-03 (火) 16:49:32

トゥイナーギッ!
 「トゥイナー」はエントロピー特有のつんざくような雄叫びを上げた。
すると、地面に引きずられていた触手が突如張りつめ、
チェンソーのように高速回転し始めた。触手の刃がアントニーナへと襲いかかる。
 触手に切り裂かれた空気が、鋭い風切り音を立てた。
{教授}2時の方向!
 アントニーナは右後方へと飛び退き、素早く端末を操作した。
無数のコードが集まりシールドとなって彼女の前へと展開する。
 アントニーナはわずかに腰を落し、迫りくるエントロピーを見据えた。
シールドが破られた瞬間に、壊された部位を再構築するつもりなのだ。
だがシールドに触れるやいなや触手は回転を止め、敵は数メートル先へと吹き飛んだ。
痙攣し続けるトゥイナーの躯体から、淡い紫色の粘ついたオペランドが溢れ出る。
アントニーナ……ん?
アントニーナ待ってください……このエントロピー、なんだか変です!
 アントニーナは再びオペランドを指先に凝集させ、
赤いビームでトゥイナーを攻撃した。
トゥイナーギッ!!!ギガッ!!!
 ピエリデスでは、この程度の攻撃じゃビクともしなかったエントロピーが、
ここでは容易く焼き焦がされてしまう。
アントニーナ60……いえ、40です!教授、ここのエントロピーの防御力は、ピエリデスの40%程度しかありません!しかも攻撃力は50%未満です!
{教授}地形を利用して攻撃を防ごう、殲滅するよ!
アントニーナ了解!
 粗悪な模造品のようなエントロピーは、
アントニーナの手で瞬く間に破壊され、液体となって地面へと染み込んだ。
 難を逃れた少数のエントロピーも、以前のように最後まで立ち向かいはせず、
その場から一目散に逃げてゆく。
アントニーナそう簡単に逃げられると思うな!
{教授}待って!アントニーナ、深追いはだめ!
 そう言ったとたん、黒紫色の波がまた激しく湧き立った。
私はとっさにアントニーナを引き寄せる。
アントニーナまたこのウザったい波ですか……チッ!
 あたりに響いていた粘つく音が波とともに退いてゆく。
私たちの足元が定まる頃には、洞窟には静けさが戻っていた。
アントニーナ予想はしてましたけど、やっぱり気味が悪いですね。
{教授}波が退いた、追いかけよう。
 
 アントニーナの検知したエントロピーの信号をたどって、
私たちは洞窟の奥へと向かった。
 奥へと進むにつれて、周囲の景色もだんだんと物騒になってゆく……
(選択)1.アントニーナに忠告する。A
2.黙っている。B
A{教授}アントニーナ、焦るのはわかるけど、
ここでのあなたは、あまりにも向こう見ずすぎる。
{教授}もし私たちに何かあったら、誰もオアシスの感染を止められないんだよ。
アントニーナわかりました……確かにその通りです。C
B{教授}……
アントニーナ……
{教授}……
アントニーナはぁ……言いたいことはわかってます。
アントニーナクロックさんたちの命は、私たちにかかってる。C
Cアントニーナ今後はちゃんと命令に従いますよ。自分たちの安全のためにも。
{教授}うん。
アントニーナ……
{教授}……
アントニーナ何か言ったらどうなんです?
{教授}えっ……
D(選択→G)1.エントロピーの状態について話す。E
2.エントロピーの戦い方について話す。F
E{教授}さっきの戦いから、なにか情報は得られた?
アントニーナええ、まぁ……ここのエントロピーは明らかに、オアシスやピエリデスのものとは異なります。
アントニーナまだ成長しきってないんです。余計なコードが多い、一種のプロトタイプでしょう。
アントニーナさらに、なにかしらの能力制限を設けられてるようですね。あまりにも弱すぎます、損傷率を確認するまでもない。
{教授}確かに前に遭遇したものよりかは弱いけど、さすがに大げさじゃない?
アントニーナもし、ピエリデスとコプリーの……
{教授}え?
アントニーナいえ、なんでもありません。D
F{教授}記憶に間違いがなければ、
私たちを見て逃げ出したエントロピーは、これが初めてだね。
アントニーナえっ?
 アントニーナは私の言葉に驚いたようだったが、すぐに冷静さを取り戻した。
アントニーナ戦闘中の些細な点に気がつくなんて、さすがはあなたです。D
Gアントニーナ認めたくはありませんけど、この会話でわかったことが一つあります。
アントニーナ私たちのターゲットは、必ずここにいる。
{教授}オディールとは別のターゲット?
アントニーナそうです。ここへ来た時、オディール以上に強力なエントロピーの信号を検知しました。
アントニーナエントロピーの不可解な動きも、何者かが操っていると考えれば辻褄が合います。
アントニーナ私たちの探している大物は、ここにいると見て間違いありません。
{教授}つまりオディールを追わなくても、ソースコードを入手できるってこと?
アントニーナええ、それも確実に。
{教授}良いニュースね。
でも相手に挑む前に、ペルシカたちに連絡して戦力を整えないと。
アントニーナ……
{教授}あなた、独りで乗り込むつもりだったでしょ?
アントニーナ……まっさか~!アンナは世界でいっちばん親切なサイバーエンジニアなんだよ?守るべき人間を放っておくわけないじゃな~い!
{教授}手がかりが見つかって、あなたも嬉しいんだね。
アントニーナチッ。
 
 地底の洞窟はがらんとしていて、
私たちの足音を除けば、あたりには水の音しか聞こえない。
 ちらほらと会話を交わすことで募る不安をごまかしながら、
私たちは信号の静止する場所へとたどり着いた。
アントニーナここです。エントロピーの群れが中央の巣穴を守っていますね。
アントニーナまるでミツバチです……女王蜂を守る働きバチ、といったところですか。
{教授}あなたの言ってた、強力な信号がこの奥に?
アントニーナいいえ。信号を強度別にマークしています。この程度なら、おそらく小型の……
アントニーナ気をつけて!また波です!
 とたんに黒紫色の波がエントロピーの巣穴から湧き立った。
私たちは岩の影に隠れて波を凌いだ。ねっとりとした物音が波とともに近づいて来る。
やがて私たちは無数のエントロピーに取り囲まれた。
 アントニーナは再びシールドを展開することで、
エントロピーの波をかろうじて防いだ。
 ――その時、洞窟の天井からぶら下がる鍾乳石の中に、私はとある人影を見つけた。
(選択)1.アントニーナに教える。H
2.様子を見る。I
H{教授}アントニーナ、上!
アントニーナ!!
 アントニーナは端末の分析レンズを人影に向けようとした。
だが前方から迫り来るエントロピーがそれを許さない。
J
I ふいに、ぼんやりとした人影が、鍾乳石の中から素早く飛び出した。
 私がその動きを見極めるより早く、人影はすでに落下を始めていた。長い槍を持った何かが、こちらへと迫って来る――J
Jトゥイナーグッ……ガ……
 少し離れた場所に浮かんでいたエントロピーが、
どうしたことか地面をのたうち回っている。
 エントロピーは長い槍に貫かれていた。
躯体は瞬く間に液体となり、地面の下へと消えてゆく。
 槍の主人は慣れた手つきで武器を地面から引き抜くと、
わずかにこちらをふりむいた。
アントニーナあれは!?
 異変に気づいたのか、地表にたむろするエントロピーが一斉に集まり出した。
湧き立つ波を従え、空中から落下してきた謎の物体を威嚇し始める――
トゥイナーガガァァァーーーー!!
???……かわいそうに。
 刹那、荒波が激しく逆巻き洞窟の天井に触れた。
エントロピーの歪な雄叫びが地底空間にこだまする。
 人影が長槍を手に宙を舞う。槍の先端のブレードを回転させて、
エントロピーの波を自在に操っているようだ。
 続いて、人影は長槍を収めると、水に潜るかのように地中へと姿を消した。
アントニーナ信号解析完了……ニューラルクラウド計画に参加していた人形です!
{教授}じ……地面に潜った!?
アントニーナあそこです!
 エントロピーの波の中心から、長槍が音もなく突き出された。
先端のブレードが素早く回転し、目の前のエントロピーを瞬く間に粉々にしてゆく。
 数秒後、人形は徐々に退きつつある波へと降り立った。
槍を振り回し、エントロピーの残党を一掃する。
 私とアントニーナが駆け寄った時には、
ちょうど最後の1体が液体となり、消えていくところだった。
(選択)1.話しかけてみる。K
2.黙っている。L
K{教授}あなたは……
 私の言葉を待たずして、人形がこちらをふりむいた。M
L 私たちの気配に気づいて、人形がこちらをふりむいた。M
M ヘルメットのせいで表情はわからない。ふいに、私は人形の視線を感じた。
だがそれもほんの一瞬で、人形はふりむくのをやめた。
???まだ来るよ、気をつけて。
 淡々とした女性の声だった。次の瞬間、彼女の判断を裏づけるかのごとく、
四方八方からエントロピーが次々と現れた。
(選択)1.彼女とともに戦う。N
2.黙っている。O
N{教授}かなり危険な状況だよ、ここは一緒に戦おう!
???いいよ。指揮は頼むね、「教授」。
O 私の視線に気づいてか、人形がこちらをふりむき、私に向かって頷いた。
???一緒に戦ってあげる。指揮は頼むね、「教授」。