コプリー 標準 PART.6 単刀直入

Last-modified: 2024-11-30 (土) 17:47:10

ドレーシーそれでそれで?教授はその後どうしたんですか?
ドレーシーその見知らぬ人形を仲間にしたんですか?それとも断った?いったいどうなったんです?
 小さな並木道にて、ドレーシーは楽しげに二人の前を歩き、
背後の尻尾を上下に揺らし続けている。
ドレーシー教えてくださいよ、ペルルン!
ペルシカえっと……その後……その後、教授は……
 彼女の熱意に押され、ペルシカは教授にまつわるエピソードを途切れ途切れに語った。
 だが用心深いペルシカは、肝心な情報は必ず伏せていた。
ドレーシーえーーっ!そんな方法で!?
ドレーシーなんて立派なのかしら……なんて感動的なのかしら!うぅぅぅ……さすがは教授!
ドレーシーあのセクターで、そんなに素晴らしい出来事があったんですね……
 ドレーシーは指を折って、ペルシカの話したエピソードを数えた。
ドレーシーロッサム、キュクロプス、ヘリオス……こんなに短い間に3つもセクターを攻略してしまうなんて!
ドレーシーやっぱり……噂通り教授は偉大な方だったんですね!さっそく記録しておきませんと!
ソルおっ、わかってるね~!教授って、めちゃくちゃスゴイんだから!
ペルシカはぁ……あれだけ話したのに、まだ聞き足りないなんて……
ソルペルシカ、気をつけなよ。
ペルシカな、何をです?
ソルこのままじゃ、あの子が先に「教授語録」を出版しかねな……どぅぉわっ!
ドレーシーペルルン!記録完了しました~~っ!もっとも~っと、お願いできますか!?
ペルシカえっ……?ま、まだやるんですか……?
ドレーシーはぁい!次はエニグマでのエピソードを聞かせてくださいっ!
ペルシカド……ドレーシーさん……教授にお会いしたことは?
ドレーシーへっ?ありませんけど?
ペルシカほ、本当に……?
ドレーシーもちろんです!
ペルシカならなぜ、そこまで教授に……その……熱心というか……
ドレーシーそんなの決まってるじゃないですか!わたし、人形を大切にする人間の方が、
大大大、大好きなんです~!
ドレーシーし・か・も、クラウド上で人形を率いてるだなんて、
もっとも~っと好きになっちゃいました♥
ペルシカ……うぅっ!
ペルシカあとで……教授にきちんと確認しないと……
 
ソルペルルン、ドレレン、着いたよ!
ペルシカた、助かった……
ドレーシーえ~~?まだ聞き足りないのに~……
ソルはいはい、続きはあとでペルシカに話してもらいなよ。
ドレーシーちぇ……は~い、わかりました、ソルルン隊長。
ペルシカありがとうございます、ソルさん……お優しいんですね……
ソルへへへ、ペルシカにも苦手なタイプっていたんだね。
 
ソルどーもー!誰かいるーー?
ソルな、なんか、静かだよ?
ペルシカ変ですね。アドミニストレーターは、めったに仕事場を離れないはずですけれど。
ソルまさか、遅かった!?
ペルシカどうでしょう、エントロピーの痕跡はありません。そう判断するのは時期尚早かと。
ペルシカもしかしたら、ウィルスを見て逃げ出したのかもしれませんね。
ソルそっか……とりあえず中を探そう。
ドレーシーわたしにまかせてください、こういうのは得意なんです!見ててくださいね。
 ドレーシーはそう言って、データケーブルで構成された尻尾をいくつかに分散させ、
誰もいない廊下の先へと伸ばした。
 
ソルそんなことまで出来ちゃうの!?
ドレーシーふっふっふ……何を隠そう、わたしの十八番ですから。
ドレーシーその名も――テイルリサーチの術!
ソルそのまんまやんけ……
 しばらくして、ドレーシーは尻尾を元に戻した。
ドレーシーうーん……建物内には誰もいませんね。
ペルシカ地下室がある可能性は?
ドレーシーもしあったら、そのうち地下室から這い出て来たりして……
ソルヒッ……や、やめてよ!アドミニストレーターをゾンビみたいに……
 
???……
ソルギャアアアアアアア!
ドレーシーあら……本当に出て来ちゃいました……
ペルシカあなたが……アドミニストレーター?
???……
ソルど、どっから出てきたの!?
ペルシカいきなり現れたわけではなさそうです。いつの間にか背後に立っていたというだけで……
ソル余計コワいんだけどぉぉ!?
ソルはッ……!だ、だめだ……しっかりしろ、ソル……!
ソルおいこら!アドミニストレーター……さん?
ソル何か言ったらどうなのさ!?
???……外のエージェント……ここにいるべきじゃない。
ドレーシーあ、喋りましたね。
???早く立ち去れ。
ソル待って、あたしたちがここにいるのは理由が……!
???早く立ち去れ。
ソルうぅ……し、仕事の邪魔したんなら謝るけどさ、あたしたちホントに……
???早く立ち去れ。
ソルうわぁ……やばい。ヘリオスに続いて、ここにもアホミニストレーターが……
???誰がアホ……
ソルうわっ、ツッコんできた!?
???言葉は、面倒……
???早く立ち去れ。
ペルシカあの……アドミニストレーターさん、なんとお呼びすれば?
???……タラナム
ペルシカタラナムさんと仰るんですね。せめて、お話だけでも聞いて頂けないでしょうか?
タラナム聞かない。立ち去れ。仕事がある……
ペルシカ私たち、ここへ仲間を探しに来たんです。
タラナム仲間は……研究対象外。
タラナム立ち去れ、研究がある。
ソル……こりゃまた、違ったタイプのアホミニストレーターだねぇ。
ドレーシーなんだか疲れてるように見えますね。まるで96時間連続で働いたあとの科研人形みたい……
ペルシカえっ?
ソルだね。まさにドレレンとは正反対。
ドレーシーえっ?それって褒めてます?
ソルいいじゃん、どっちでも!それより、これからどうするの?
ドレーシーあの……タラナムさん?
タラナム早く立ち去れ。
ドレーシーさっき、研究があるって言ってましたよね!どんな研究なんですか?
タラナム……立ち去れ。
ドレーシーはぁい、すぐに立ち去ります!でもその前に一つだけ――もしかして、生態関係の研究ですか?
タラナムそう。立ち去れ……
ドレーシーそれなら、セクターの海底に隠された地下構造も、あなたの研究の一部なんですね?
タラナム……地下構造?
タラナム知らない。立ち去れ。
ソルおっと!言い逃れしたって無駄だよ!あたしたち海底の岩が開くの、この目で見てんだからね!
タラナム聞いたことも、見たことも、目にしたこともない。さっさと出ていけ!
タラナム研究が終わらない。作り話に興味はない。
ドレーシーもし作り話じゃなかったら?研究者なのに、少しも気にならないんですか?
ドレーシーどうして海底に、あんな奇妙な生態が生まれたのか。
タラナム気にならない。誰にも命令されていない。
タラナム……部屋に戻る。
ソルまさかのガリ勉かよ……
ソルペルシカ、何か言ってよ。
ペルシカその……彼女の口を割る方法を思いついたんですが、ただ……
 ペルシカはドレーシーを見た。視線はやや泳いでいる。
 二人がタラナムにかけ合っている間に、
ペルシカは教授とアントニーナにもう一度連絡を試みた。
 やはり、通信はつながらない。
 ペルシカは眉間をかたく寄せて、ついに覚悟を決めた。
ペルシカタラナムさん。
タラナム立ち去れ。
ペルシカ地底はあなたと無関係だと仰いましたね。ですが、セクターの秩序の維持は、さすがに無関係と言えないのでは?
タラナムわかっているなら、外のエージェントは立ち去れ。
ペルシカ私たちなら、すぐにでも立ち去れます。しかし、他はどうでしょうね?
タラナム……他?
ペルシカはい。実は私たち「エントロピー」と呼ばれるコンピューターウィルスを追って、ここまで来たんです。
ペルシカこちらの調査によると、ウィルスはすでにコプリーセクターの内部へと侵入しています。
ペルシカアドミニストレーターですらご存知ないのでしたら、地底はとっくにウィルスに蝕まれた後かもしれませんね。
ソル……げっ……?気持ちワルッ……!
タラナム……
ソルそうだよ!あんたが研究ばっかで他に見向きもしないから、ここがエントロピーの根城になっちまったんじゃないか!
ソルもし何かあったら、あんたのせいだからね!
タラナムなぜ?
ペルシカセクターの安定を維持することも、アドミニストレーターの責務だからです。
ペルシカタラナムさん、地底を調べては頂けないでしょうか?
タラナム……信じない。
タラナムウィルスの駆除は浄化者の管轄、奴らにまかせればいい。
ソルあ、あんたね……
ソルだったら呼べば!?できるもんなら浄化者呼んできなよ!
タラナムそうする。
ソル呼べ呼べ!たかが下位浄化者の一つや二つ、こちとら何体もブッ潰し……
タラナム来た。
ソルへっ?はっや……もう?
ドレーシーソルルン、後ろ!
エントロピー化した浄化者ギギ……ギ……
ソル!!
 エントロピー化した浄化者が、アドミンセンターの入口へと突如現れた。
ソルは目にも止まらぬ速さでナイフを抜き、攻撃を防いだ。
ソルあのなぁ!これのどこが浄化者だよ、おい!?
タラナム……ん?
ソル「……ん?」――じゃないっつの!!
ドレーシーソルルン、手伝います!
ソル気をつけろ!こいつら感染するんだ!
ペルシカ私がシールドを張ります!
ソルよっしゃ!ちゃっちゃと片付けるよ!